ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

マラソン大会は26kmまで それ以降は「遠足」だった④(最終) ~2022新潟シティマラソン~

2022-10-12 21:30:42 | RUN
痛い、痛い、歩けない。
ここで棄権か?
いや、もったいない。
せっかく33kmまで来たのに…。

足を引きずりながら、少し前へ進んだ。
痛みはあっても、これなら行けるかも。
どうせ制限時間は、7時間。
まだ3時間近くある。
残り9km、それまで歩ける限り歩くことにしよう。
覚悟が決まった。
土手の上の道を前に向かって歩き始めた。

ありがたいもので、ゆっくり歩いているうちに、少しずつ股関節の痛みは和らいでいった。
脚全体の痛みは消えなくても、歩けるようになっただけで御の字。

そこからまもなくして、エイドがあった。
ここは、新潟大橋からつながるガード下、第10・11エイド。
行きのランナーも帰りのランナーも利用できるフードエイド、というわけだ。
そこで珍しいものが。
なんとアイス、県内産氷菓の「もも太郎」。

疲れている身には、「うわあ、いいなあ。食べたいなあ」と思えた。
だけど、この後、35kmの第3折返しを回って戻ってきたときにも食べられるはず。
「よし。折り返してきてから、残っていたら、自分へのごほうびとしていただこう」と決めた。
代わりに、1口で頬張れるパック詰めご飯をいただいた。

小さなパックに、ご飯とその上に細かくした梅干しか鮭フレークが載っていた。
おにぎり代わりとして、よく考えられていたし、コシヒカリのご飯は冷たくてもおいしかった。

ひたすら歩いたけれど、なかなか35km折り返しは近づかなかった。

よく、マラソン大会の後半には、ゾンビのような人たちがぞろぞろと歩いている、と言われるが、そのとおり。
私も、そのゾンビの一人である。
時折、ゾンビの歩く狭い道を緩いスピードですり抜けていく「人間」がいる。

やっと35km。

そこから土手下の道路に降りて、歩く、いや走るコースとなる。
上も下も、ゾンビの群れ、壮観。

ゾンビが歩きながら、ようやく待望のエイドに着いた。
そして、憧れだった「もも太郎」をゲット、口に入れた。
冷たい。一気に体が冷える。
そのうえ、冷たすぎるから一度にたくさんは食べられない。
子どもたちには見せられない食べ歩きをしながら進んだが、全部は食べ切れず、道路わきにアイスは落とし、ゴミは短パンのポケットに入れた。
先ほど高橋尚子さんと会ったガード下にすでに彼女はいなくなっていた。
きっと多くのランナーを引き連れて、ゴールに向かったのだろう。

そこから関屋分水にかかる国道116号線の平成大橋を渡る。
その橋上が37kmのポイント。
橋を渡り終えると左に折れて、ゴールまであと5km。
この分水堤に至っても、歩くことが中心の自分がもどかしい。
目の前の女性ランナーも、自分と同じような状態。
だから、歩きながら話しかけてみた。
「走りたい気持ちはあるけど、走れない。走ると脚に痛みが出て走れなくなってしまう」と言う。
私と全く同じなのだ。
みんな、好きでゾンビを演じているわけではない。
タイムも、歩きがほとんどでほんの少し走るだけなので、10分/km前後が普通になってしまった。
㉞10分08秒 ㉟9分46秒 ㊱9分46秒 ㊲10分29秒 ㊳10分9秒

関屋分水堤から、信濃川にかかる本川大橋を渡ると、あと残り3kmとなる。


目の前を歩いていたランナーが、やたらブツブツ言いながら立ち止まり、何やら叫んでいる。
「キツイ!脚が痛い。吐きそうだ」
などのようだ。
そばを通りながら、「あと30分歩けぼ、ゴールですよ」と気持ちを和らげようとしたが、聞く耳をもっていただけなかったようだ。

そこからの3kmがえらく長かった。
歩き続けながら、たまに走るが、70歩ぐらいで走るのが限度になる。
太ももが痛くなり走れない。

なかなか陸上競技場が近づかない。

ラストスパートとばかりに、私を抜いて走っていく何人ものランナーを、うらやましく見守った。


ようやくあと残り数百メートルというところで、本日3回目のレース中の出会い、高橋尚子さんが反対側から走ってきた。
例によって励ましながら、ラストスパートを促す。
これだけレースの各所で励まし続けるゲストランナーは、私の知る限りでは、高橋尚子さんだけだ。
このエネルギッシュな姿勢は、本当にすばらしいと思う。
…でも、私はその後も歩くしかなかったのであった。
㊴9分55秒 ㊵9分25秒 ㊶8分57秒 ㊷9分25秒

ついに、道路から陸上競技場の入口へ。
ここから先は、走ってゴールしたい。

ジョギングのペースで、日本文理高のチアガールたちが励ましのダンスを踊る前を通り、フィニッシュ。
5時間27分台のフィニッシュ。

情けない姿のゴールだったが、ガッツポーズが出た。


場内では、21km地点で会ったHKさんと再会、記念に写真を撮らせていただいた。

やがて、移動して手荷物を返却してくれる場所で、息子と会った。
息子は、自分のペースで走り切り、自己新記録だったとのこと。
私は、フルマラソンの自己最低新記録だったが、なんだかとても満足していた。


4年ぶりにフルマラソンの大会に参加できたこと。
最後までたどり着いてゴールできたこと。
制限時間いっぱいの7時間ではなく、5時間30分を切って「完走」できたこと。
体がもたなくなっても、がんばって進むたくさんの人たちを見たこと。
高橋尚子さんのすばらしい激励ぶりにふれたこと。
出走しなければわからないこと、感じられないことがたくさんあった。

26kmまではマラソン大会だったが、その後は、間違いなく「遠足」だったからなあ。
いろいろ飲み食いもできたし、マラソン遠足、とても楽しいものだった。
…ということにしておこう。
めでたし、めでたし…!?
コメント
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