10年余り前は、夫婦で浄土平周辺によく出かけていた。
標高1600mくらいの高さがあるが、登山しなくても吾妻スカイラインを使って行けば、車で簡単に行けるうえ、行った先では、高山植物の花がたくさん見られるからだ。
特に、この7月上旬だと春の花と夏の花の両方を楽しむことができるのが、いい。
だから、花見の場所として2人で最も気に入っていた所の一つだった。
とんとご無沙汰していたのは、娘が入院してから。
入院していたときはともかく、退院して自宅で生活するようになってからは、体調が不安定な娘から目を離すわけにはいかなかったし、体調不安があるのに連れて歩くこともできなかった。
退院直後や数年間は、足元が不安でよく転んだものだった。
その娘も、毎日歩いたり少し鍛えたりして、足腰を強化してきた。
入院から10年がたち、日常生活もほとんど支障がなくなった。
だから、われわれと同行させてもいいと思い、一緒に出かけることにしたのだ。
昨日、満を持して(?)出かけてきた。
だけど、ドジだったのは私。
かつてよく行ったからと思い油断していたら、道を間違ってしまい、車で山道を20数キロもさまよってしまった。
到着はしたが、くねくねの山道で妻と娘を軽い車酔いにしてしまった…⤵
さらに、やっとのことで浄土平に着いてみたら、雲の中。
レストハウスの後ろの一切経山は、一切見えず。
梅雨の時期だから日を選んで、雨の可能性が少ない日にしたのだが。
まあ、快晴は見込めず、夕方には雨もありそうな日予報はあったのだけれど。
それでも、2人が行けそうだし、くもっていても花は逃げないはず、雨も降らないだろうと、木道から鎌沼方面へと出発した。
整備された広い木道から下を見れば、白い花が見えた。
いくつも固まって咲いている、イソツツジ。
それよりも背が高く緑の葉が美しい、マルバシモツケ。
木道の下に少しだけ咲いていた、シャクナゲ。
そんな花たちを見ながら、それなりにウキウキし始める。
あった、あった、こんな花もあった…と見つけるたびに、久々に会う種類の花々に喜びが増す。
ノギラン。
珍しく花が開いているものを見られた。
ウラジロヨウラク。
花の時期は終わりに近いのかな。
クロマメノキ。
秋になると黒い実がなるはず。
浄土平の周辺だけで、非日常的な花々を見つけられて喜んでいた。
ここから、いよいよ少しずつ道は上りになっていく。
足元に、イワオトギリ。
家によく咲くオトギリソウよりも丈が低い。
ツマトリソウ。ポツンと咲いているのを最初に娘が見つけた。
その先では、急にたくさん咲いていた、ゴゼンタチバナ。
ゴゼンタチバナの花に会うのは9年ぶり。
こうして見ると、花がなんだか家紋のように見えてくる。
9年ぶりの再会なら、さらにちいさく可愛らしいアカモノの花もそう。
このアカモノの花がそこここにたくさん見られるようになって、さらに楽しくなってきた。
私自身は、ルンルンと道を上って行っていた。
ところが、である。
数年前からめまい症を持病にする妻が、日当たりのよいところに出たら、先ほどまでの車酔いに加え、花見で立ったりしゃがんだりした影響で気分が悪くなって、座り込んでしまったのであった。
(つづく)