NHKの朝ドラ「らんまん」の主人公は、槙野万太郎という植物大好きな男である。
植物学者牧野富太郎の人生をモチーフに作られている。
これがなかなか面白く、毎朝楽しんでみている。
私は、野草の花々が好きなので、ストーリーの展開だけでなく、番組ではいろいろと登場する草花が、とても興味深くて楽しめている。
見ているうちに、今までよく知らなかった牧野富太郎という人について、もっと知りたいと思うようになった。
そこで、まず、図鑑でよく知られている平凡社から出ている薄い1冊を選んで、図書館から借りてきた。
「牧野富太郎 植物博士の人生図鑑」(コロナ・ブックス編集部編;平凡社)
植物図鑑を作った牧野博士の「人生図鑑」だなんて、面白い着眼だと思った。
127ページまでの薄い本なのだが、牧野富太郎の人生、考え方、描いた植物、業績など、かかわりのあることが浅く広く、様々な視点から紹介されている。
内容的には、大きく、4章から成っている。
1 牧野式植物図 — とことんまで精密
2 牧野式評伝 — 草稿-青年牧野、そして植物採集のことなど
3 牧野の実り — 図鑑と標本と蔵書
4 牧野式評伝 — 木篇-暮らしや晩年のことなど
ぱらぱらとめくってみると、興味を感じる絵や写真、文章に出合うことができた。
今までテレビの朝ドラで紹介されたエピソードが、事実だということが分かったり、脚色されたものだと分かったりした。
朝ドラを見ていて、牧野富太郎が描いた植物の絵や、採集した植物の標本などを、多くなくてもよいから見たいと思っていたのだが、その願いが叶う本でもあった。
ドラマで最近よく出ている石版印刷は、確かに繊細な線が美しい。
なるほど、植物誌を出版するために、印刷工場で石版印刷の稽古をしたことも本当で、実際に役に立っていたというわけだ。
本の終わりの方には、牧野愛用の眼鏡の写真の隣ページに牧野の言葉が載っている。
どうかみなさんも、植物に親しんでください。
そして少しでも多くの知識を身につけてくださ
い。それが一生を通じ、どれほど人生を豊かに
するかわかってもらえると思います。
たしかに、私が野草の草花に興味を持つようになり、その名を知ったり美しさに感心したりするようになって、精神的に豊かになれたように実感している。
巻末には、略年譜や主な著書、牧野ゆかりの植物園なども紹介されている。
牧野富太郎の入門書として、見やすくいい本だ。
次は、彼がどんなことを考えて生きていたのか、その考え方がもっとわかるような本を読んでみようと思う。