「好きを生きる 天真らんまんに壁を乗り越えて」(牧野富太郎著;興陽館)を読んだ。
「天真らんまんに壁を乗り越えて」という副題に、「らんまん」の文字がある。
それからすると、この本の著者は牧野富太郎だが、NHKの朝ドラに決まってから出されたものかな、と思って後ろの方を見てみた。
案の定、
2023年1月15日 初版第1刷発行
2023年1月30日 第2刷発行
となっていた。
朝ドラ人気に乗っかろうとしたことが見え見えの本ではあった。
でも、文章のまとまりは長めではなく短めで読みやすそうだった。
前書きに、「本書は、植物を愛した植物学者牧野富太郎が書き続けたエッセイ集です。」
とあった。
そして、巻末に、参考文献として5冊の書名が列記されていた。
興陽館の編集部が、それらの牧野の出版物から選り抜いて構成したものなのだろう。
その主な構成は、
1好きを生きる
2仕事を愛する
3健康の秘訣
4花や植物が好き
5「牧野富太郎自叙伝」より選り抜き
(以下略)
となっている。
5冊からの選り抜きなので、同じような内容の文章が何度も出てきたのはやむを得ないところかな。
だが、牧野富太郎自身の文章なので、彼の考えたことやしてきたことについて、嘘でない真実を読み取ることができた。
「らんまん」だけあって、たしかに、そのモデルとなった牧野富太郎は、好きな植物のことだけして生きてきたし、生きたということがよくわかった。
そのために、金銭に関して無頓着で、本人や家族は相当苦しんだようだけど。
彼の根底に流れている植物への愛情は、半端なものではなかった。
誰もがそのような愛情を持てるようになれば、牧野の言うように、命が大事にできて世界に争いがなくなるのかもしれない。
また、文章のあちこちに、妻の寿衛子はじめお世話になった人たちへの感謝の言葉が出てくる。
彼を冷遇した東京帝国大学の教授たちもいたのだが、彼らに対してもその恨みつらみを述べるのではなく、さらっと触れていることが多い。
それなのに、お世話になったことは、ちゃんと感謝しているのがさすがだ。
だからこそ、金銭上苦しむことがあっても、彼に救いの手を差し伸べる人が次々に現れたのだろう。
最後に、いかにも天真爛漫だなと思い、笑ってしまったのは、関東大震災の件だった。
地面が左右に激しく揺れたのだが、その揺れ方をしっかりと覚えていないのが残念だという。
そのあげく、
「もう一度生きているうちにああいう地震に遇えないものかと思っている。」
という文章を読んで、何と好奇心の強いお方だ、と半分呆れかえった。
朝ドラ「らんまん」も、もう4か月近くがたち、残り2か月となってしまった。
神木隆之介が、「槙野万太郎」として、その「らんまん」な役柄を好演している。
今回の読書で、牧野富太郎の人生の概要や考え方はだいぶわかってきた。
これから、ドラマでどのようなことが起こるのか、それを楽しみにしながら見て行くことにしよう。