違和感の正体 (新潮新書) 新書 ? 2016/5/13
先崎 彰容 (著)
5つ星のうち 3.4
14件のカスタマーレビュー
amazon 内容紹介
「正義」の耐えられない軽さ! 国会前デモ、絶対平和、道徳教育、反知性主義批判、安心・安全――メディアや知識人が好む「正義」はなぜ浅はかなのか。騒々しいほどに「処方箋を焦る社会」へ、憂国の論考。
内容(「BOOK」データベースより)
メディアや知識人によって語られる今どきの「正義」、何かがおかしい。どうも共感できない。デモ、教育、時代閉塞、平和、震災など、現代日本のトピックスをめぐり、偉大な思想家たち―網野善彦、福澤諭吉、吉本隆明、高坂正堯、江藤淳―らの考察をテコに、そんな「違和感」の正体を解き明かす。善悪判断の基準となる「ものさし不在」で、騒々しいばかりに「処方箋を焦る社会」へ、憂国の論考。
amazon 登録情報
新書: 208ページ
出版社: 新潮社 (2016/5/13)
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9月新着
著者の名前は知らなかったが、TVの若者向け討論番組で顔は知っていた。
それで目次を見る気になったのだが、タイトルと違い、目次は読む気をさそう文字が躍っていた。
ネットで日々の時事問題の表層を追い、他人の解説をつまみ食いを続けていても、
時間的にも知力のうえからも、とても全体を理解するのは無理だ。
右から左へ忘れてしまい、情報収集が便利になった分、考える力は衰えるばかり。
そんな頭には、なかなか刺激的な内容だった。
東日本大震災の被災者でもある著者の言葉には、迫力がある。
「違和感の正体」というタイトルは副題もなく抽象的だが、読後にあらためて納得した。単なる時事問題の解説ではない。網野善彦、福澤諭吉、吉本隆明、高坂正堯、江藤淳―、三島由紀夫、勝海舟など、先人の思想の中にある現在の問題を考えるうえで迫力ある言葉を紹介。
新書で紹介するには、内容は多岐にわたり濃いが、基礎知識が十分でなくても熟読すれば何とか理解できる。それも言葉の迫力だろう。
以下、メモ風に、納得した箇所をあげておこう。
知性主義とは「ピューリタニズムの極端な知性主義」のことであり自分の力で聖書を読む学力をもつこと、古典語などの高度な教養をもつ牧師たちの態度等を指して言われます。p102
知性主義も、そして対抗的に生まれてきた反知性主義もきわめて特殊アメリカ的現象、信仰の在り方をめぐる態度なのです。
これで反知性主義について混乱していた理解がすっきりした。
吉本隆明の沖縄論P150
沖縄返還問題をめぐる世間を騒がす議論のほとんどは、
本土の人間も、また沖縄人自身みずからも、沖縄の人々を「弱者」や「被害者」「辺境」の人間だと思い込んでいることに吉本は激しい疑問をもった。
「弱者」とは?「被害者」とは?
言論の大空位時代にp159
沖縄の聞得大君(きこえのおおきみ)就任儀式は本土の新嘗祭より古い形態を現在まで保持している。
もし天皇制よりももっとはっきりと人間が何かを「信じて」しまうカラクリが暴けるならば、沖縄は独自の役割を担う可能性をもつと吉本は思ったのです。
沖縄と本土の関係を「空間」ではなく「時間」でとらえる。
辺境にはすぐさま弱者の匂いがつく
「南島の継承祭儀について」より
ワンフレーズのことばに絡めとられるばかりはでなく、政治から刺激や昂奮をもらうのではなく、むしろ思想にたてこもることで政治を射っている。この迫力をもって・・・
他人に意見や、多数の常識を簡単に信じて己を疑わない者のこころこそが弱いのでは。吉本は確かそういっていたと思う。がその箇所のページをたどれない。