コースの表示にしたがって飛鳥川を遡る。
片方は護岸がされているが、もう一方は枯れ草がそのまま岸辺になっている。
川面に映る早春の空を、万葉人も眺めたのだろう。狭い川幅に浮かぶ空も雲も、変わりのない自然風景に違いない。
飛鳥風にのって、ほのかに香ってきた梅が、次第に近くなってくる。
「いい香り、白梅が咲いてる」ラジオを耳にしているので、言葉を交わさず娘と笑顔で顔を見合わせる。
たった1本の梅が遮られるものもなく散策する人に春を知らせている。
対岸に常夜灯2基が見える。その横にある家の藁屋根が、守り続けているものの存在感をしっかり演出しているようだ。塀の中に二棟建っているが、両方とも藁屋根である。今回歩いた中で、ここでしか見られなかった。
藁屋根は、飛鳥によく似合う。