ミレーの描く落ち穂拾いは、薄暮の中の農婦の姿であるが、こちらの落ち穂拾いは、真昼間、恐怖を感じるような団体の、落ち穂拾いである。
これは、部屋の中にいても飛び立ちの羽音が聞こえ来た、昨日の裏の田圃の出来事。
なんとなく裏にざわめきを感じたので、障子を開けてガラス窓越しに外を見た。
家に近いところと、田圃の向こうの端のほうの、二つの集団が見えた。
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あんなに夢中になって、落ち穂拾いに余念がなさそうだった彼らは、カシャッという音に、一斉に飛び立った。
お寺や、駅のホーム、公園などにいる鳩は、人が近づいても全く無視するかのように傍若無人であるのに、彼らの敏捷さに驚いた私は、カメラで追っかけるのがやっとだった。
集団行動が徹底して、東へ東へと飛んで行く。
沢山いるのでその方向にカメラを向けると、撮りはぐれのない面白さで追った。
集団は東へ飛んで行く。
もう彼らは降りてこないのだろうと、家に入った。
ガラス越しに見ていると、いつの間にかまた、田圃の隅で落ち穂拾いを始めていた。
稲作農家の友人に、もみが田圃に落ちることがあるのか尋ねたら、その人の収穫作業の時には、すぐ刈り取り機の中で籾と藁に切り離されて、籾は袋に、藁は田圃に細かく切断して撒いていくといっていたので、裏の田圃ではどんな機械を使っているのだろうかと不思議に思ったが、野鳩の落ち穂拾いは、一昨日もあった。
これだけの集団が上空を飛ぶと、脅威を感じてしまう。
「ポッポッポ 鳩ポッポ」の優しい世界ではない。