飛鳥川上坐宇須多伎比売命(あすかのかわかみにいますうすたきひめのみこと)神社という長~い名前の神様である。
稲渕の飛鳥川の上に張られている、男綱に対してここ、栢森の森には女綱が張られている場所である。
ここに来たのは、確か4度目であるが、この「飛鳥川上坐宇須多伎比売命」の石標と石段を仰ぎ見るだけで、登ってみる元気は全くなかった。(石標の画像の上が写しきれていない。そこには「飛鳥川」という文字がある)
見上げては溜息をつくばかりの急勾配の石段である。
それだけに、どんなお社があるのか興味は深かった。
見上げても石段の1番上は深い木の茂りがあるだけで、鳥居も、お社も見えない。
「どんなお社があるんやろなぁ・・・」
いつものように見上げながらそう呟いた。
「行って来ましょうか。」
「登ってきます。」
何か言いかけるより、マオママさんの行動の方が早かった。
タッ、タッ、タッタ
軽い足取りで見る見る上の方に。
やがて見上げている私の視界から消えていった。
上の方ばかり見ていた私の傍に、3人の高齢の男性ハイカーが通りかかって立ち止まった。
3人も上を見上げた。
「あっ!降りて来た。子供さんですか。あの降り方の早いこと。」
「子供さんじゃないよ。お孫さんでしょ。」
「足の運びが違うよ。」
「石段に足を横にして降りてくるよ。早いね。」
3人は、私と一緒になって石段を見上げながら、それぞれに思ったことを話す。
汗こそかいていたが、息切れもしていないマオママさんの元気さに感動した。
「192段でしたよ。石の幅が狭いので足を横にしないと降りられなくて・・・」横に石段を踏みしめて下りてきたわけが分かった。
娘より少しだけ年上のマオママさんの行動が、見上げていたおじさんたちの目に、もっと若い学生のように見えたのも納得する。
お社は、本殿でなく、遥拝殿の形をとっているので、山そのものが、三輪さんのようにご神体ではなかろうかと思われる。
マオママさんのお陰で、4度目にしてやっと、目にすることの出来たお社である。
栢森から眺めた、飛鳥川源流近くの山に囲まれた秋の空が一層美しく見える。
右は高取城へ続く山であり、左が胸突き石段のお社のある宮山である。
青く澄んだ空に流れる白い雲を背にしながら、山から里へと下っていった。