境内の染野井の中に、曼荼羅を織るための糸を持った、美しい少女の像がある。
不運な姫君中将姫である。
井戸を別の角度から眺めた。
楚々とした美しい薄幸の姫君が藁苞の中の、寒牡丹と重なる。
染めた糸を干すために掛けたという、糸掛けの桜が今の時期には葉をすっかり落として、井戸の傍らにあり屋根に枝が枝垂れている。
山門の傍らに、白に近い薄いピンクの混じった美しい花をつけた木がある。
下を見ると、形のまま花を落としているのもあれば、花弁を散らしているのもある。
寒椿なのか、山茶花なのかお尋ねしたら、交配種のようですと教えてくださった。
咲いている様子は、やはり山茶花のようだなぁとじっと見上げていた。
この花も美しい。
寒牡丹との嬉しい出会いに心安らいで、もまた次回には牡丹園を楽しみにしようとお寺を辞した。
遠く東の方に生駒山が見える。空気が澄んでいるので遠くの山の電波塔までがはっきり見えていた。