2023年9月2日、国の重文 「旧春日大社板倉(円窓)」の見学に参加させていただきました。
私の記憶の中の「円窓」は奈良公園の梅林に静かに建っていましたが、令和3年に春日大社萬葉植物園に移築されました。
外から見上げるだけだった「円窓」の建物内に入らせてもらう機会を得て、私は喜んで春日大社へ向かいました。
9月に入ったとはいうものの、とても日差しの強い、暑い一日でしたが、参道は大きな木が太陽を遮ってくれるので、歩きよい状態でした。
受付を済ませて、萬葉植物園内にある「円窓」に案内してもらいました。
旧春日大社板倉(円窓)は、元々春日大社に所在した神社仏教関連施設の1つ、西ノ屋附属の経蔵で、鎌倉時代後期に建設されたものです。
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「円窓」に入ると、すっと涼しい感じがしました。
空調設備があるとのことでした。
いつも填められている障子が取り外されていました。
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あずまやに座るとほっとします。
風雨に耐えて、だんだん朽ちていくのが自然の摂理だと思えるので、こういう素朴な建物が好きです。
窓のガラスがなければ、風を感じたり音が聴こえたりするので更に自然に近づけて、更にうれしいのですけれどね。
窓の高さが、座って外を見るのにちょうどよい高さです。
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赤い欄干がきれいです。
サルスベリと空と木々が夏らしい景色です。
秋のトンボが何匹もすいすいと飛んでいました。
面取り 
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柱幅は約170㎜、面内は約120㎜、面は約25㎜
※柱幅を100とした時、面内は70.5
鎌倉時代の面の大きさは1割5分ほどなので、円窓の面取りは鎌倉時代の特徴をよく示しているそうです。
面取りの大きさ(面)は、面取りが初めて現れた平安時代は大きく、時代が下がるにつれて次第に小さくなっていくそうで、面取りの比率は、柱幅を100とした場合、面内の値は、平安時代は約66、鎌倉時代は約72、室町時代は約78だそうです。
「円窓」は、木の床ではなく、畳が敷いてありました。
私の好みは木ですけれど。
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四方向すべてに付けられた縁
縁 
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内部を見た後は、外から見学しました。
「円窓」外観 
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蟇股( かえるまた)
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西面北端の蟇股は、唯一の当初材で、彫刻の一部が残っているそうですが、残念ながら西面は見ることができません。
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正面の腰組 
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移築工事にあわせて耐震補強工事が実施されました。
建物内部の四隅に鉄骨柱、天井裏には鉄骨梁を入れたそうです。
礎石に柱を載せたままです。
高床の下に斜めの耐震補強材が見えます。
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これで耐震補強ができるのなら、古民家の耐震工事はそれほど大変なことではないような気がしました。
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鎌倉時代の板倉形式を見るものとして貴重な建物で、当日いただいたパンフレットを見ると、
板倉の建築的特徴
■「蟇股( かえるまた)」の透かし彫り
■「片蓋式(かたぶたしき)」の蟇股と組物
■部材の面取り
■縁・腰組の形式
とありました。
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