孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ハマス最高指導者、カーター元大統領と会談

2008-04-22 15:05:39 | 国際情勢

(中央がハマス最高指導者メシャール氏、アッバス・パレスチナ自治政府議長(左)と握手するハマス内閣のハニヤ首相(当時)(右)
今となっては、こんな時代もあったのか・・・と思わせる写真です。
“flickr”より By khilafaah1924
http://www.flickr.com/photos/7235645@N02/413556490/)

昨夜、素人的には大きなニュースに思える記事を目にしました。
パレスチナを訪問していたカーター元大統領との会談で、ハマス最高指導者がイスラエルの生存権を認める発言をしたというものです。

****ハマス:イスラエル生存権「認める」 カーター氏通じ****
中東歴訪中のカーター元米大統領は21日、エルサレムで「ハマスにはイスラエルを隣人と認める用意がある」と述べた。AP通信が伝えた。ハマスは綱領でイスラエルの生存権を否定しているが、元大統領との接触を通じ、ガザ封鎖の打開につなげたい考えとみられる。
元大統領によると、ハマスはパレスチナ人による住民投票の実施を前提条件に挙げた。住民が認めるならば、アッバス自治政府議長によるイスラエルとの和平交渉を妨害せず、ヨルダン川西岸とガザ地区で構成するパレスチナ国家の建設に反対しない考えだ。
元大統領は「アラブ世界、ハマスとも67年(第三次中東戦争)の国境線でイスラエルの生存権を認める用意がある」と指摘し、「問題は米国とイスラエルが交渉に含まれるべき者(ハマス)との接触を拒絶していることだ」と強調した。【4月21日 毎日】
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しかし、会談の一方の当事者であるハマスのメシャール氏は、その後の記者会見で「イスラエルの生存権については認めない」と言明しています。

****パレスチナ建国後も「イスラエルを認めない」 ハマス最高指導者*****
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの最高指導者、ハレド・メシャール氏は21日、在住するシリアの首都ダマスカスで記者会見し、ハマスは1967年の第3次中東戦争の境界線内にパレスチナ国家を建設することを受け入れる用意があるとしたが、イスラエルの生存権については認めないと言明した。
メシャール氏によると、エルサレムを首都とした、入植地のないパレスチナの主権国家の建設と合わせ、パレスチナ難民が帰還する権利を受け入れるが、イスラエルは承認しないという。【4月22日 AFP】(c)AFP
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また、【時事】の報道では“メシャール氏はこの版図について、パレスチナ民衆の意思であれば「われわれの信念に反していても尊重する」と述べる一方、「イスラエルを承認することはない」と明言した。”との表現になっています。

【22日 毎日】では“メシャール氏は67年(第3次中東戦争)の国境線に基づくパレスチナ国家の建設は認めるとし、その条件として(1)エルサレムを首都(2)真の主権(3)完全な難民の帰還権--が必要と説明。また、「イスラエルの67年国境線までの撤退と引き換えに10年間の停戦を実施」との従来の主張を繰り返した。”

第3次中東戦争の境界線でのパレスチナ国家建設を“自分らの信念には反するものの”住民が認めるならこれを尊重するということは、実質的には境界線の反対側に存在するイスラエルとの共存を認めたものともとれますが、“従来主張”から踏み込んだ部分があるのか、ないのか・・・よくわかりません。

これまで長く世界情勢の中心に中東情勢の不安定があり、中東情勢の中核にはパレスチナ問題がある。そのパレスチナ問題はハマスとイスラエルの相互否定的な対立によって交渉の余地がなく全く進展しない・・・という構図が続いてきました。
そして、ガザ地区の封鎖、壁の爆破、イスラエルの大規模な侵攻というここ数ヶ月の流れで、結果的にパレスチナの人々のハマス支持が強まったことは以前も取り上げました。

その意味で事態打開のためにはどうしてもハマスを取り込んだ取り組みが必要になっていました。
その段階でのカーター元大統領との会談でした。
ハマスとしても、このままガザ地区に封鎖され続けることには軍事的限界を感じるところもあるでしょう。
また、ガザ地区住民の生活を守る立場にたって新たに考えるところもあるのでは。

今回のハマス・メシャール氏の発言が従来のハマスの主張から踏み込んだ部分があるのかないのかよくわかりませんが、全く交渉を拒絶しているようにも見えません。
うまく交渉の場に導けば、現実的対応もやぶさかでないようにも思えるのですが。

ところで、周知のように、カーター元大統領はその任期中はイラン大使館占拠事件やソ連のアフガン侵攻などがあって、国内的には“弱腰外交”と不評でしたが、人権外交を掲げて、エジプトとイスラエルの間の和平協定・キャンプデービッド合意を締結させるなど中東における平和外交を推進しました。
また、アメリカ大統領として初めてパレスチナ人国家建設を容認する発言をしています。
その後も一貫してイスラエルの占領政策を非難し、「There will be no peace until Israel agrees to withdraw from all occupied Palestinian territory.」と語っています。

カーター元大統領がその本領を発揮するのはむしろ退任後で、金日成北朝鮮主席と会談して南北朝鮮首脳会談への道筋をつくったり、キューバを訪問してカストロと会談したり、世界を驚かせる活躍を見せています。
その功績を評価され、02年にはノーベル平和賞を受賞しますが、「史上最強の“元”大統領」とか「最初から"元大統領"ならよかったのに」などと皮肉られることもあります。

アメリカはカーター元大統領のハマスとの接触を非難していましたが、次は現政権がイスラエルの首に鈴をつける番ではないでしょうか。
ブッシュ大統領が何か言うと事態が硬直してしまいそうですので、バランス感覚がありそうなライス国務長官あたりになんとか働いてもらいたいものです。

コメント
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