(“flickr”より By mashroms
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【撲殺、乱闘、人身売買・・・】
中国では経済的問題・社会的不公正などをめぐって、数千人、数万人規模の民衆暴動が頻発していること、著しい経済格差が存在していること、中国共産党の一党支配による歪みが存在すること・・・などは周知のところですが、ここ数日のニュースを見るだけでも中国社会の問題の根深さが窺えます。
****買収反対で経営者を撲殺、中国の鉄鋼労働者****
中国・吉林・省通化市の鉄鋼大手・通化鋼鉄集団で24日、業界再編に伴う解雇を示唆された労働者が、同社の買収計画を進めていた同業の建竜鋼鉄(本社北京)の社長を殴り殺すという事件が起きた。事態を受けて当局は27日、買収計画の中止を発表した。
国営英字紙チャイナ・デーリーによると、民間企業の建竜鋼鉄の陳国軍社長は同日、通化鉄鋼の工場を訪れ、同社の買収を発表。「労働者の多くを3日以内に解雇すると告げて、労働者を幻滅させ、怒らせた(地元警察官)」という。 約3000人の労働者が工場を占拠して抗議し、陳社長を何回も殴打。その後、警官隊と衝突した。労働者らは、救急隊が重傷を負った陳社長を搬送するのを妨害し、陳社長は病院で死亡が確認されたという。(後略)【7月27日 AFP】
****中国で武装警官と海軍、100人以上が乱闘*****
香港の人権団体・中国人権民主化運動ニュースセンターは27日、中国浙江省舟山市で25日に、武装警察官と海軍兵士が街頭で衝突し、3人が負傷したと伝えた。
両者の衝突は異例。武装警察官10数人と海軍将校ら3人が、口げんかから殴り合いを始め、乱闘の参加者は100人以上に膨れあがった。地元派出所の警察官が介入し、両者を引き離したという。武装警察は公安省に所属して治安維持などを担当する。【7月27日 読売】
****人身売買から子ども5人を保護、中国******
中国・貴州・省貴陽に24日、人身売買から救出された子ども5人が、列車で到着した。中国では、女性や子どもの人身売買が依然として問題となっているが、多くの社会学者が、同国の「一人っ子政策」が人身売買に拍車をかけていると指摘している。一人っ子政策の下では、男の子が重宝されており、男の子が欲しい夫婦が女の子を売り飛ばす事例が目立っている。【7月27日 AFP】
****胡主席長男の関連企業に贈賄疑惑、中国がウェブ情報を遮断*****
中国の胡錦涛国家主席の長男、胡海峰氏(38)が前年まで社長を務めていた企業が、贈賄の疑いでナミビア当局の捜査を受けていると報道されたことを受けて、中国当局は23日、この企業「Nuctech」に関連する検索を検閲するなど、インターネットの情報遮断を開始した。国営メディアはこの問題について全く報道していない。(後略)【7月25日 AFP】
****中国“世襲将軍” ネット上で批判 人民解放軍「上将」に劉少奇の子ら3人*****
中国国家軍事委員会主席を兼務している胡錦濤国家主席は20日、馬暁天副総参謀長(中将)ら軍幹部3人を階級最高位にあたる上将に昇格させる人事を発表した。胡錦濤指導部が積極的に進めている軍幹部の若返りの一環だが、昇格した3人はいずれもかつての指導者の子供であることが話題となり、インターネットなどでは「世襲批判」が起きている。(後略)【7月22日 産経】
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労働争議での経営者撲殺、警察と軍の乱闘、人身売買、権力者親族の汚職と隠蔽工作、権力者子弟の出世・・・・それぞれの問題の背景にはそれぞれの事情がある訳ですが、少なくとも日本的価値観に立つと、中国社会が未だ“民主的成熟”の段階とは程遠いところにあること、社会の根底をなす最低限のルール・モラルに関する意識が未成熟なこと・・・そんな印象が否めません。
いくら生活がかかった労働争議だからといって、いくら経営者が不公正に思われるからといって、撲殺してしまうというのは・・・・
警官と軍人が喧嘩することはあるでしょうが、周囲が止めることなく、逆に100人以上の乱闘になるというのは・・・・
一人っ子政策のゆがみはあるのでしょうが、我が子を売り飛ばしてしまうというのは・・・・
相変わらずの権力者優遇がまかり通り、国家的にそれを隠蔽しようというのは・・・・
もちろん、中国社会の全てがこうしたことばかりではありませんが、未だ“やっていいこと、やってはいけないこと”に関する最低限のルールが確立されていない側面を引きずっているように思われます。
しかし、“民度の低い国民だ”と嘲笑ってすむ問題ではありません。
中国社会内部がどのような問題を抱えていようが、国際社会における中国の経済的・政治的・軍事的存在感は着実に高まっています。
【「世界第2位の経済大国」と米中新時代】
経済的には、日本を抜いて「世界第2位の経済大国」になることが確実な情勢です。
****中国「世界2位の経済大国」へ 「内需主導」成長路線で*****
第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)成長率が7・9%となり、政府目標の「8%前後」達成が視野に入った中国。今年、マイナス成長を見込む日本を尻目に、GDPで米国に次ぐ「世界第2位の経済大国」の地位を射止めることがほぼ確実となった。「巨大市場」を武器に成長の軸足を「内需」に移す経済政策が奏功した。
2008年は9・0%成長と6年ぶりに1ケタ成長にとどまった中国だが、同年のGDPはドル換算で約4兆2950億ドル(約404兆円)で、日本の約4兆3480億ドルにあと530億ドルに迫っている。中国はすでに07年、ドイツを抜いて世界3位に浮上している。
人口差が大きく、1人当たりGDPではなお隔たりはあるものの、中国の経済学者は、「GDPで日本を抜いて世界2位になれば心理的、政治的に象徴的な出来事」と指摘する。(後略)【7月17日 産経】
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中国の存在感の高まりによって、国際情勢はアメリカと中国を基軸とした動きを見せるようになりつつあります。
*****米中新時代占う好機に=27日に戦略・経済対話初会合*****
米中両国が安全保障や経済分野の課題を閣僚レベルで討議する「米中戦略・経済対話」の初会合が27日、ワシントンで開会する。ブッシュ前政権時代の経済対話の枠組みを安保・政治分野にも拡大し、「最大規模の中国代表団」(米高官)を迎えて行う会合で、米中新時代の方向性を占う好機になりそうだ。
戦略・経済対話は、2006年から米財務長官と中国副首相の間で行われてきた戦略経済対話(SED)に安保・政治分野を加えた枠組みで、オバマ大統領と胡錦濤国家主席が4月の首脳会談で正式合意した。年1回開催される。
ワシントン開催の今回は、クリントン国務長官とガイトナー財務長官が、それぞれ戦略対話、経済対話を主宰。中国側は戴秉国国務委員と王岐山副首相が代表団を率いる。【7月26日 時事】
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【望まれる社会的成熟】
こうした国際情勢において、中国には「責任ある大国」となってもらわないと困りますし、何より日本にとっては協調していける隣国になってもらわないと困ります。
今の中国社会は、社会主義的理念が機能しない社会に、過去の封建的因習と剥き出しの弱肉強食的な資本主義がはびこっているようにも見えます。
社会を調整する何らかの価値観が必要とも思えます。それが単純な民族主義・愛国思想であっても困ります。
あまりにも急速な国際的役割の高まりに、国内社会内部の成熟が追いついていない感がありますが、世界のためにも、日本のためにも、今後の社会的成熟が望まれます。