孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オーストリア、イタリア明日投票 岐路に立つ欧米民主主義 「頭でなく気持ちで行動しろ」ってか?

2016-12-03 20:31:34 | 欧州情勢

(来年3月に総選挙を控えたオランダでは、反イスラムを掲げる極右・自由党のヘルト・ウィルダース党首が最大の支持を集めていることが、最新の世論調査で明らかになっています。【11月29日 AFP】)

フランス・ドイツでの選挙を占う墺伊両国の選挙
明日4日は、欧州オーストリアのやり直し大統領選挙とイタリアのレンツィ首相が進退を懸ける憲法改正(上院改革)に関する国民投票が行われます。

ともに、アメリカのトランプ新大統領を生み出した既成政治への強い国民不満を受けて、これまでの政治の流れを変える方向での変化の可能性が指摘されています。

****オーストリアのトランプ!? EU初の極右元首誕生か 4日に大統領選決選投票****
オーストリアでは4日、大統領選挙の決選投票が実施される。極右、自由党候補のノルベルト・ホーファー氏(45)とリベラル系の緑の党前党首、アレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏(72)の一騎打ち。

米国でのトランプ次期大統領選出が、欧州での右派ポピュリズム勢力の動向にどれほどの影響を与えるかが注目されている。
 
今回は5月に行われた決選投票のやり直しとなる。当時はファン・デア・ベレン氏が薄氷の勝利を収めたが、不正開票で憲法裁判所が再実施を命じた。各種世論調査では両氏の支持率は「誤差の範囲の差」とされるほどの接戦状態だ。
 
オーストリアは昨年、ドイツなどに向かう難民・移民の主要な経由国となったことで、国民に反移民感情が強まった。移民反対を主張し、欧州連合(EU)にも批判的なホーファー氏はこうした有権者の不満を吸収する一方、ファン・デア・ベレン氏は移民への寛容姿勢で対抗する。
 
トランプ氏勝利についてホーファー氏は「有権者から離反したエリートは落選する」と強調。自身も既存政治勢力と一線を画し、追い風にしようともくろむ。一方、ファン・デア・ベレン氏は米大統領選を「欧州への警鐘」として、「反極右」の結集を呼びかける。
 
ホーファー氏が勝てば、EUで初の「極右出身の国家元首」誕生となる。このため、欧州の他の極右勢力も「米国の次はオーストリアだ」(オランダ自由党のウィルダース党首)とその行方を注視している。【12月3日 産経】
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****4日に憲法改正是非問うイタリア国民投票 ここにもトランプ現象****
イタリアで4日、憲法改正の是非を問う国民投票が行われる。投票は事実上、レンツィ首相の信任投票とみなされ、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な勢力は米国でのトランプ次期大統領登場の余勢を駆って反対運動を展開。劣勢に立たされる首相は否決の場合、退陣も辞さない構えで、イタリア政治が混迷する事態が懸念されている。
 
「イエスなら国は強くなる。だが、ノーならこれまでのままだ」。投票キャンペーン最終日の2日、レンツィ氏は南部シチリア島で開かれた集会で憲法改正への支持を訴えた。
 
憲法改正は上院改革が柱だ。上下両院がほぼ同じ権限を持つ現行制度は、短命政権が繰り返される同国政治の不安定さの一因とされてきた。改憲は、そうした状態の解消が目的で、上院は定数が3分の1以下の100に減り、公選議員でなく地方代表で構成する。内閣不信任や法案審議の権限も大幅に縮小される。
 
イタリアでは戦前のファシスト政権の反省から戦後は権限の分散が重視されてきたため、上院の権限縮小に反発も強い。ただ、投票が信任投票の性格を強めたのは、レンツィ氏が実現に進退をかけると発言してきたためだ。その姿勢が揺れたこともあるが、最近も「国が今のままなら、もうゲームはしない」と否決の場合の辞任を示唆した。
 
国内では経済低迷や高失業率が続き、労働市場改革などを実行してきたレンツィ政権には不満も渦巻く。国民投票は憲法改正よりも政権に対する「審判」との受け止め方も有権者には強く、改憲反対デモでは「レンツィは去れ」とのプラカードも掲げられた。
 
主要野党は倒閣のため改憲反対で歩調をそろえる。既存政治批判で台頭する新興政党「五つ星運動」リーダー、グリッロ氏はトランプ氏勝利に「真の愚か者は知識人だ」とし、「頭でなく気持ちで行動しろ」と反対投票を主張。
中道右派の「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相も「米国は(既存政治に)ノーと投票した」と訴えた。
 
伊紙レプブリカが報じた世論調査では憲法改正への反対が41%で賛成は34%。レンツィ氏は2割以上を占める態度未定の有権者の取り込みを図ってきたが、苦しい状況とされる。レンツィ氏が辞任すれば、政治が混乱。2018年に予定される総選挙が前倒しされ、五つ星運動などが一段と勢いを増す可能性がある。【12月3日 産経】
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分断をもたらす極右政治
オーストリアの大統領は儀礼的役割が中心で、政治的実権はありません。
5月の決選投票ではリベラル系のファンデアベレン氏が僅差で勝利しましたが、開票作業の不備が明らかになり、投票やり直しが決まったものです。主要な争点は難民・移民問題となっています。

政治的実権の有無にかかわらず、今後の欧州政治の流れを示すものとなることが注目されています。

オーストリアでは、すでに社会の分断の兆しが見られます。

****<オーストリア>極右政党が旧ユーゴ移民分断 大統領選****
極右と左派の候補が激しく争うオーストリア大統領選の影響で、同国に住む旧ユーゴスラビア移民らが分裂の危機にある。
極右政党・自由党がキリスト教徒であるセルビア移民らを支援する一方、ボスニア人らイスラム教徒の移民らを強く非難しているからだ。

旧ユーゴ紛争で戦った両者は、オーストリアでは助け合って暮らしてきたが、「今後は仲良くやっていけない」との声が出始めている。
 
ウィーン市内にある旧ユーゴ移民の集住地区。1980年代にセルビア移民らが暮らし始め、旧ユーゴ紛争で難民となったボスニア人らも集まってコミュニティーを作った。両者は隣り合って生活している。
 
「自由党はなぜ宗教や国籍で人々を区別するのか。信じられない」。精肉店で働くボスニア人のセルマン・タツェディンさん(32)はそう訴える。大統領選で自由党が勝てば、セルビア人との衝突が起きかねないとの懸念があるからだ。
 
両者の表立った衝突はないが、インターネット上ではオーストリア在住のセルビア人とボスニア人が大統領選を巡って非難し合うコメントがあふれる。
 
自由党は元々、「外国人労働者の排斥」を訴えていたが、近年はイスラム教徒移民について「テロを起こし、職を奪う」と「排斥」を強調する一方、キリスト教徒移民を容認し始めた。背景にはセルビア移民約30万人の票を獲得する狙いがあるとみられる。
 
自由党関係者によると、党がセルビア寄りの姿勢を強めたのは2008年ごろ。自由党はオーストリア政府が独立を承認したコソボについて、セルビア政府と同様に認めず、ボスニア内の自治共和国で独立を検討する「セルビア人共和国」政府とも関係を深める。
 
大統領選でもキャンペーンは強化された。自由党候補者のホーファー国民議会議員(45)は11月9日、セルビアのニコリッチ大統領と候補者として異例の会談を行い、親密ぶりをアピールした。一方、約26万人いるとされるボスニア人の多くは左派候補を支持している。
 
セルビア人のデューロ・スボティッチさん(52)は、「自由党はオーストリアで唯一セルビアを支援している党で、(自由党への投票を)非難される理由はない。(ボスニアの首都)サラエボからセルビア人を追放したボスニア人とは今後、仲良くできないだろう」と言い切った。【12月1日 毎日】
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レンツィ首相辞任の場合、政治と経済の不安定化は必至
イタリア・レンツィ首相は、既成政治の改革者とし登場しましたが、その彼が今では新興政治団体「五つ星運動」などから既成政治の象徴として批判にさらされています。

“レンツィ首相は2014年2月の就任以降高い支持率を誇ってきた。しかし、失業率の高止まりを背景に最近は人気が陰り気味。フィレンツェに住む音楽家の50代男性は「首相の強引な政治手法がさらなる批判を招き、『レンツィ下ろし』の動きが急速に広がってしまった」と安定しない政治を嘆く。”

憲法改正というよりは、事実上のレンツィ首相の信任投票となっており、形勢は首相にとって厳しい情勢と言われています。
ただ、今後については、“負け方”にもよるとの指摘も。

****イタリア国民投票・・・・レンツィ首相の信任投票****
イタリアの国民投票では、上院の権限・規模を縮小して非公選議会に改編し、地方に対する中央の権限を強化する国会・行政改革案の是非が問われる。

米大統領選で浮き彫りになったポピュリズム(大衆迎合主義)旋風が波及するかが焦点だ。レンツィ首相(41)に対する事実上の信任投票で、否決なら辞任するとみられ、政治と経済の不安定化は必至だ。三つのシナリオが想定される。
 
まず、トランプ氏勝利が追い風となり反対派が圧勝するケース。民主党党首のレンツィ氏は大打撃を受け、退陣する。新興政治団体「五つ星運動」創設者のベッペ・グリッロ氏(68)は26日、ローマで開いた反対派デモで「頭(理性)でなく腹(本能)で投票しろ」と国民の反エリート感情に訴えた。
 
反ユーロ、移民排斥を掲げる右翼政党「北部同盟」のサルビーニ書記長(43)ら欧州連合(EU)に批判的な欧州懐疑派の声が強まる。
 
小差で反対派が勝利した場合、レンツィ氏がマッタレッラ大統領に辞表を提出しても首相候補に再指名される可能性がある。中道右派野党「フォルツァ・イタリア」を率いるベルルスコーニ元首相(80)は大連立政権を視野にレンツィ氏と協力する用意を示唆している。
 
賛成派が勝利した場合、レンツィ氏が政権基盤を強化し、反旗を翻したダレーマ元首相(67)ら民主党内左派少数派は離党を迫られる。総選挙は2018年の予定だが、レンツィ氏が早期選挙に打って出る可能性もある。【11月27日 毎日】
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欧州のアイデンティチーとは「白人=キリスト教徒」】
オーストリア、イタリア、更には今後に控える“本命”フランス大統領選挙、ドイツ総選挙に共通してみられる政治的流れが「アイデンティティー運動」(IB)と称される国家・民族のアイデンティティーを重視するものですが、結果として、排他的な白人至上主義の「新極右」ともなります。

****欧州で繁殖する「白人至上主義****
ネオナチより危険な「新極右」

「スキンヘッドに革ジャンとブーツで、すぐに見分けがついた連中とは違う。おしゃれで、時には長髪、何よりもインターネットに強いのが、最近の極右の特徴だ」と、ドイツ人放送記者が言う。ヨーロッパでじわじわと広がる、白人至上主義の「新極右」のことである。
 
ドイツで注目を集めたのは、今年八月二十七日。ベルリンのブランデンブルク門に突然、「安全な国境、安全な未来」と大書した横断幕が登場した。
 
この日は「連邦政府庁舎開放の日」で、首相府や議事堂を見ようと観光客がベルリン中心部に集まっていた。穏便な表現ながら「難民流入反対」の要求は明白だった。
 
続く九月には、ベルリンの地方局電波が一時乗っ取られた。「難民」をめぐる公開討論会が生中継されていたところ、「アイデンティティー運動」(IB)を名乗る極右組織の十数人が突然、「難民歓迎なんて、偽善だ」と叫び始め、会場から排除されるまでの約一分間、この放送には、「偽善者、偽善者」の連呼が続いた。

「手法は、国際環境団体『グリーンピース』そっくりと言ってよい。目立つ場所で、派手なパフォーマンスをして、それをフェイスブックで世界中に広める。身なりも普通の若者で、ほとんど警戒されない」と、前出放送記者は言う。
 
グリーンピース同様に、欧州各国に広がるのが新極右の特徴。黄色の背景に、ギリシャ文字の「λ(ラムダ=L)」をデザインした共通のロゴマークを持つ。
 
これは、約二千五百年前のペルシャ戦争で、アテネ・スパルタ連合のギリシャが、侵入するペルシャ軍を打ち破ったことを象徴するもの。「西洋が東洋の侵略を打破する」という含意は疑いようがない。

「最も重要なのは『民族の血』」
新極右は二〇〇三年にフランスで、最初の組織が結成されたのが発端。各国語で「アイデンティティー」を組織の名に冠している。「自らが拠って立つところ」という意味で、欧州土着の「白人=キリスト教徒」を指している。
 
ドイツの治安機関「憲法擁護庁」の推計では、同国内のIBは中核メンバーが数百人規模。だが、ある擁護庁関係者は、「外見が今風で、格好がいい上に、極右のメッセージを巧みに隠している。潜在的な同調者は、これよりはるかに多い」と見る。
 
ドイツの極右では、ネオナチ政党「ドイツ国家民主党(NPD)」(一九六四年創設)が老舗である。「スキンヘッド、革ジャン」の本家で、スローガンや集会、デモは非常に粗暴で、威嚇的だ。
 
最近では、一三年に結成されたばかりの反移民政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が急速に台頭し、今年行われた五つの州議会選挙で躍進した。AfDやIBに象徴される新極右は、公には「ネオナチと一線を画する」とするものの、NPDと競合せず、若者を中心に、より洗練された白人至上主義で同調者を増やしている。
 
欧州の新極右を勢いづかせたのは、十一月の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利したことである。トランプ次期政権では、「首席戦略官」に任命されたスティーブ・バノン氏や次期司法長官候補のジェフ・セッションズ上院議員ら、反対派から「人種差別主義者」と攻撃される人たちがずらりと要職に並ぶ。
 
中でも、保守系ニュースサイト「ブライトバート」の会長であるバノン氏は、米国で「オルタナ右翼(もう一つの右翼)」と称される新極右の代表的論客だ。
 
バノン氏は、「僕は国家破壊を目指す点で、レーニン主義者だ」と述べて、自己をソ連建国の父になぞらえるなど、旧来の左右の枠を超えた自在な主張に、「反移民」「反イスラム教」のメッセージを織り込んで、米国内のリベラル派から敵視される人物。高価なスーツ、ネクタイが定番のトランプ派幹部の中で、ノータイ、ノースーツでも異彩を放っている。自身はハーバード大経営大学院卒業の経歴を持つが、「反エスタブリッシュメント(支配階級)」を平然と語る。
 
欧州の新極右は、「オルタナ右翼」の欧州版とも言える。ネオナチとの相違は、本人たちが強調するほど大きくはない。
 
IBは、「民族多文化主義」を唱え、一見するとイスラム教などキリスト教以外の他宗教や他人種との共存を認めているように見える。だが、それは「自分たちが生まれ育った地に留まる限り」においてであり、中東やアジアから欧州にやってきたイスラム教徒の難民・移民には適用されない。
 
IB支持者のドイツ人女性と接触したところ、「最も重要なのは、『民族の血』である」という主張を聞かされた。「欧州は、白人=キリスト教徒のもの」という確信は、従来のネオナチと同じ。「専門技能を持った人に積極的に門戸を開放する」という独経済界の要請さえ、この女性は「彼らは自分の郷土で頑張ればいい」と受け付けない。

隠れた人種差別意識を掘り起こす
今風の極右は、様々な「踏み絵」で、文化闘争を仕掛ける。
 
フランスのアイデンティティー組織が広めているのは、「豚肉スープ」だ。学校の食堂や大衆レストランの定番メニューに、イスラム教徒とユダヤ教徒が禁忌する豚肉を多用して、非キリスト教徒を締め出そうという運動だ。

ドイツやオーストリアの新極右もこれに追随して、両国内のイスラム教徒団体から「許しがたい挑発だ」と、激しい反発を招いている。
 
前出の憲法擁護庁関係者が「ある意味ではネオナチより危険」とするのは、「反移民」「反イスラム教徒」の主張が、一般の白人市民が漠然と抱く不安感や「隠れた人種差別意識」をじわじわと掘り起こす点だ。
「ポリティカル・コレクトネス」への挑戦や既存の主流メディア敵視は、英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票や米大統領選で、大きな共感を呼んだ。
 
バノン氏は政権入りが決まった後、米誌「ハリウッド・リポーター」のインタビューで「ディック・チェイニー(元米副大統領)、(スター・ウォーズの悪役)ダース・ベイダー、悪魔」を自分が目指すものにあげ、「悪役で、大いに結構」と語った。

主流メディアがどう攻撃しようと、次期政権は反移民路線を淡々と追求するという怪気炎だ。これには、保守系のウォール・ストリート・ジャーナル紙まで社説で、「こうした勢力を好きにさせれば、トランプ政権は破滅に向かう」と警告を発した。
 
欧州各国の政府や主要メディアも、台頭する極右への非難を欠かさない。新極右は、既成政党や既存メディアを「権力エリート」と一括して、その「偽善性」に焦点を当てる。

欧州世論がどれだけこの種の主張に耳を傾けているか。欧州の民主主義は、十二月四日のイタリアでの憲法改正をめぐる国民投票、来春のフランス大統領選、来秋の独連邦議会選と、立て続けに大きな試練を迎える。【12月号 選択】
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【「頭でなく気持ちで行動しろ」・・・その先に待ち受けるものは?】
欧米の既存政治は大きな曲がり角というか、崖っぷちに立っているようです。
人類の学習能力は限られており、過去の経験の記憶が薄れ、現実社会への不満が高まると、“向こう側”にあるものへの期待感からこれまでの道を踏み外すことにもなります。その先にあるのは、破滅に向けて転がり落ちる崖かもしれませんが・・・・。

そういう瀬戸際にあって、「頭でなく気持ちで行動しろ」「頭(理性)でなく腹(本能)で投票しろ」というのは・・・・

言わんとするところは分からないではありませんが、また、極めて常識的もの言いではありますが、「それでいいのか?」と思わざるを得ません。

理性より感情を優先させる言動は、やはり悪い意味でのポピュリズムと言わざるをえません。

シリア・イラクなどを破壊し、各地でテロを行ったイスラム過激派は、欧米社会の破壊という“大成果”を手中にしようとしています。
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