孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラム世界の女性問題  少女をレイプしても結婚すればOK? 家庭内暴力を隠す化粧法? 日本は?

2016-12-15 23:00:26 | 北アフリカ

(女性への暴力の根絶を求め、抗議の声を上げるチュニジアの人々【12月15日 CNN】)

チュニジアの裁判所 妊娠した13歳少女とレイプ犯の結婚承認
北アフリカ・チュニジアは「アラブの春」の先駆けとなり、2014年には民主的な選挙による政権交代が実現するなど、混迷するアラブ世界では比較的順調に民主化が進んでいる国です。

しかしテロの影響で主要産業の観光が低迷し、経済の立て直しに苦慮しており、イスラム過激派に走る若者も少なくない状況にあります。

“チュニジアはアラブ諸国の中で最も女性が活躍している国だと自負している。男性と同等の権利で、あらゆる分野で働く女性の力は成功のカギの一つだ。女性国会議員の割合は約3割で、日本より高い。”【2015年10月12日 朝日】という国情にはありますが、一方で、イスラム主義政党が世俗派と拮抗する勢力を持っている国でもあります。

そんなチュニジアの、レイプした少女と結婚すれば罪に問われないのか・・・という、女性・児童の権利、性的暴力に関する話題。

*****妊娠の13歳少女の結婚承認、親類男性と チュニジア*****
チュニジアの裁判所は15日までに、13歳の少女とこの少女を妊娠させた義理の兄弟の1人(20)との結婚を認める判断を示した。

子どもの権利保護活動を進める非政府組織(NGO)などはこの決定に強く反発している。

同国の刑事法では、15歳以下の少女と暴力を行使せず性行為に及んだ場合は禁錮6年の判決と定められている。ただ、被害者と結婚すれば罪に問われず、裁判所判事の今回の判断はこの規定に準じたものとなっている。

裁判所の同僚の判事は、結婚の認可はこの旧式化した法律を単純に尊重したものと指摘。チュニジアは子どもの権利保護に関する国際条約を北アフリカ地域では最初に認めた国の1つだが、問題の刑事法の是正にはこれまで取り組んでこなかったと説明した。

裁判所の今回の判断を受け、同国北西部ケフ出身の少女と義理の兄弟は双方の両親が立ち会う中で結婚したという。

これに対しNGOなどは裁判所周辺で座り込みの抗議活動を展開。13歳の少女と「強姦(ごうかん)犯」の結婚を認可した判断に怒りを示す声明を発表し、政府に対し少女の保護と学業の継続の保証を求めた。

女性・家族・子ども省は声明を出し、今回の判断を深く懸念しているとの立場を表明。少女の利益を考え結婚の無効を求める考えを示した。

同時に議会に対し女性への暴力根絶を目指す法案成立の作業を早めることを促した。同法案は2014年に上程されたが、審議は始まっていない。

この法案には夫婦間のレイプを違法とし、レイプの犠牲者が20歳以下の場合、結婚すれば刑事免責される規定の廃棄などの内容が含まれている。【12月15日 CNN
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同様の問題は、最近、イスラム化が進むトルコでも表面化しています。

イスラム主義の与党が“未成年者への性的暴行の罪に問われた被告人が、被害者と結婚している場合、判決言い渡しを無期限延期する”内容の法案を制定しようとして、人権団体・野党の反対にあって法案を取り下げたことが話題になりました。

****児童婚救済法案を取り下げ=世論の批判受け―トルコ首相*****
トルコのユルドゥルム首相は22日、自身が率いる与党・公正発展党(AKP)が提出した児童婚救済法案を取り下げると発表した。

この法案は未成年者への性的暴行の罪に問われた被告人が、被害者と結婚している場合、判決言い渡しを無期限延期する内容。野党や人権団体から「レイプの合法化だ」などと批判が上がっていた。
 
首相は22日、最大都市イスタンブールでの記者会見で、合意形成を図るべきだとのエルドアン大統領の意見を踏まえて法案取り下げを決めたと説明。「もし(野党から)提案があれば、それを法案化する。そうでなければ、NGOや市民、専門家、学者からの意見を取り入れて修正する」と述べた。
 
トルコでは18歳未満の結婚は違法だが、地方部では児童婚の習慣が残っている。法案には、違法性を認識せずに、18歳未満の少女と結婚し、性的暴行の罪に問われた男性を救済する狙いがあった。【11月22日 時事】
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トルコの場合は、直接にはレイプ犯の救済が目的ではなく、地方農村で見られる“違法とは認識せず未成年者と結婚して罪に問われる事例”を救済しようというイスラム保守勢力の要請を受けての法案でしたが、結果的に“レイプの合法化”につながるとして批判されていたものです。

モロッコ “キス容疑”の少女と、薬物を摂取したレイプ犯の異なる処遇
北アフリカのモロッコも世俗主義とイスラム主義がせめぎあう国ですが、キスをしているのが見つかったとされる10代の少女2人が同性愛の罪で当局に告発される事件も。

****キスした疑いの少女2人を同性愛で告発、今週裁判 モロッコ****
北アフリカのモロッコで、キスをしているのが見つかったとされる10代の少女2人が同性愛の罪で当局に告発され、今週裁判にかけられることが2日、地元人権団体の発表で分かった。
 
モロッコ人権協会の活動家、オマール・アルビブ氏によると、警察は10月27日、マラケシュで少女2人を拘束した。身元については「16歳のサナー」と「17歳のハジャル」とだけ明らかにされている。
 
アービブ氏はAFPの取材に「2人はハイ・モハンマディ地区にある家の屋根の上でキスや抱擁をしているところを見つかった。何者かが写真を撮って家族の元に送り付け、家族側が警察に通報した」という。
 
2人は検察の聴取を受け、4日にモロッコの刑法489条に規定されている「同じ性の個人同士によるわいせつな行為または不自然な行為」をした罪で公判が開かれる予定。有罪と認められれば6か月~3年収監される可能性がある。
 
人口3500万人のモロッコは、宗教を重んじる保守派と西側諸国の価値観に開かれたリベラル派に国民が二分されており、同性愛をめぐって近年議論を呼ぶ事件が相次いでいる。【11月3日 AFP】
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この事件は、結局、12月9日に無罪が言い渡されたています。

モロッコでは、キスをしたとされる少女が告発される一方で、レイプ容疑で逮捕された人気歌手の裁判費用を国王が負担するという話も。

****モロッコ国王、強姦容疑の人気歌手の裁判費用を負担へ****
フランスで強姦容疑で逮捕されたモロッコの人気歌手、サアド・ラムジャレッド(31)の裁判費用を、モロッコ国王のシディ・モハメド6世が賄うことが明らかになった。マグレブ・アラブ通信(MAP)が1日、報じた。在仏のモロッコ大使館もこの情報を認めた。
 
MAPによると、モハメド国王はラムジャレッド被告の家族に、有能と評判の仏人弁護士が「彼を弁護する」と伝え、裁判に付随する費用を賄うことを決めたという。
 
モロッコ大使館によると、ラムジャレッド被告の家族はモハメド国王に対しこの件への介入を願い出ており、同国王の決定は、家族の嘆願に応じたものだという。
 
ラムジャレッド被告はモロッコだけでなくアラブ諸国で人気があり、インターネット上の動画へのアクセス数は数百万に上っている。
 
ラムジャレッド被告は先月28日、20歳の女性からの訴えを受け逮捕され、「加重の強姦」および「故意の加重暴行」の罪で起訴された。訴えによると、ラムジャレッド被告はパリのシャンゼリゼ通り近くのホテルの一室で女性に暴行を加えたという。

取り調べの結果から、ラムジャレッド被告は犯行当時、アルコールと薬物を摂取していたとみられている。【11月3日 AFP】
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部外者からすれば、イスラム主義とは言いながら、“キス容疑”の少女と、薬物を摂取したレイプ犯で、随分と扱いが違うのでは・・・という感も。

虐待による顔の傷を隠して日常生活が続けられるようにする化粧法を国営TVが放映
同じモロッコでは、家庭内暴力を受けている女性が顔の傷を化粧で隠して日常生活や出勤を続けられるようにする化粧法を国営TVが放映し、不適切と問題にもなりました。

****「虐待痕隠す化粧」紹介で非難殺到、モロッコ国営TVが陳謝****
モロッコ国営テレビ2Mが、虐待を受けた女性の顔の傷を化粧で隠す方法を番組で紹介したところ、ソーシャルメディア上で非難が殺到し、謝罪に追い込まれた。
 
同局は毎年11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に合わせ、23日朝の情報番組の中で「女性が暴力を受けた際に役立つメークの種類」を紹介していた。
 
番組には、顔を腫らした女性が登場。司会者は視聴者らに対し、女性のけがは本物ではなく「特殊効果」だと説明し、「このようなアドバイスを必要とする女性たちが日常生活や出勤を続けられるよう、解決策を提示する」ための化粧法を紹介した。
 
放送当日は大きな注目を集めなかったが、同局ウェブサイトに収録映像が掲載されると、25日までにはソーシャルメディア上に大きな反響が寄せられ、映像は削除された。
 
同局は25日の声明で、放送内容が「完全に不適切」だったと認め、「この問題のデリケートさと深刻さに鑑み、この過失について心より陳謝する」と言明。また、28日にもフェイスブック(Facebook)上に謝罪動画を投稿した。
 
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)によると、モロッコで2009~10年に行われた公式調査の結果、身体的・精神的・性的・経済的な虐待のいずれかを受けたことがあった女性は全体のほぼ3分の2に上り、うち約55%が家庭内暴力(DV)の被害者であることが明らかになっている。【11月29日 AFP】
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「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に合わせての放映だというのが驚きです。

少女をレイプしても(親同士の承諾で)結婚してしまえば罪にならないとか、家庭内暴力の傷をいかに隠すかとか・・・基本的に、女性の権利がないがしろにされているというように思えます。

サウジアラビア 女性の運転を擁護する王子も
イスラム世界の女性の権利という話になると、サウジアラビアが“本家”にもなりますが、そのサウジアラビアで女性の運転を解禁することを求める王子がいるようです。

****サウジアラビア王子、「女性も運転すべき」と主張****
率直な物言いで知られるサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子が、同国で女性が禁じられている車の運転を「早急に」解禁するよう呼び掛けた。王子は自身のツイッター(Twitter)で「もう議論はやめよう。女性も運転する時が来た」と主張している。

サウジアラビア王族の中では珍しく、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で知られるアルワリード王子は政治的な役職には就いていないが、米金融大手シティグループやフランスのディズニーランド・パリを運営するユーロ・ディズニーなどに出資している投資会社キングダム・ホールディングを率いている。

また慈善家でもある同王子は、かねてからサウジアラビアにおける女性の権利を主張してきた。
 
サウジアラビアは、女性に対する制約が世界で最も厳しい国の一つで、世界で唯一、女性の運転を禁止している。【12月1日 AFP】
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まあ、サウジアラビアは星の数ほど王族が多い国ですから、こうした意見の持ち主もいるのでしょうか。

他国を云々できない日本の男女格差
今回は、イスラム世界の問題をとりあげましたが、女性の権利の問題は別にイスラム世界だけの話ではなく、日本を含めた世界各国で問題とされるべきものがあるのは、言うまでもないことです。

特に日本は、イスラム世界を云々できるような状況にはありません。

*****男女平等ランキング、日本は過去最低111位 ****
世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本の順位は調査対象144カ国のうち111位だった。前年より10下がり、過去最低の水準になった。

「男女の所得格差」で順位が大幅に下がった影響が大きく、配偶者控除見直しを含む税制論議にも一石を投じそうだ。
 
同指数は女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析する。日本は健康や教育で順位を上げたが、「経済」が118位と12も下げた。政治は1つ上昇したが103位にとどまった。
 
項目別では「所得格差」が75位から100位に急落。WEFが収入の比較方法を改め、主に先進国で過小評価していた所得の差を実態に近づくように修正し、順位に反映したためだ。
 
米国も同じ要因で総合順位が28位から45位に下がった。ただ、購買力平価で比較した米国女性の平均所得は日本の女性より7割ほど多い。
 
WEFは世界全体の傾向として、教育や健康では男女の格差縮小が進んだのに対し、経済では改善のテンポが鈍っていると指摘。今回調査のペースが続いたと想定すると、男女が経済的に平等になるには170年かかるという。【10月26日 日経】
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自国の“特殊性”というのは、普段に生活していると“当たり前”のことのように思えてきて、なかなか認識されないもののようです。
コメント
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