孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本  更に拡大が見込まれる外国人労働者 “外国人材”ではなく“人間”としての受入れ態勢を

2019-05-20 23:14:50 | 難民・移民

(【4月14日 朝日】)

【急増する外国人労働者 しかし、依然として外国人受入れに厳しい日本社会】

日本政府観光局(JNTO)によれば、2018年の年間訪日外国人数は前年比8.7%増の31191900人で統計開始以来の最高記録を更新しています。

 

また、周知のように日本では深刻な人手不足の解消を外国人に頼る改正入管法が4月に施行され、政府の構想どおりにいけば外国人労働者が大きく増えることになっています。

 

現在でも、(工場労働者の実態を目にする機会は私はありませんが)コンビニとか外食チェーン店、格安宿泊施設などでは、ごく普通にアジア系外国人が働いているのを目にします。

 

しかし、日本社会が外国人に開かれているか・・・という話になると、また別問題で、日本社会は依然として外国人に対して門戸を閉ざしている面が強く存在します。

 

****難民認定申請、前年比47%減 認定は昨年の2倍の42人****

法務省は27日、2018年の難民認定申請数などを公表した。申請数は前年比9136人(約47%)減の1万493人で8年ぶりに減少。

 

難民認定されたのは同22人増の42人、認定されなかったものの人道的配慮で在留が認められたのは同5人減の40人だった。難民保護の迅速化を図るため、昨年1月に開始した就労目的などの申請を抑制する運用が影響しているとみられる。

 

難民認定申請数は10年3月に、申請から半年後に就労を認める運用が始まったことなどから急増。そこで法務省は昨年1月、難民の可能性が高い申請者には就労が可能な在留資格を速やかに与える一方、明らかに難民に該当しない理由を訴えたり、再申請を繰り返したりする申請者には新たな資格を与えない運用に切り替えた。

 

申請者の国籍は74カ国。最多はネパールの1713人で、(2)スリランカ1551人(3)カンボジア961人(4)フィリピン860人(5)パキスタン720人――と続き、この5カ国で申請総数の約55%を占めた。一方、世界で難民認定申請者を多く出しているとされる5カ国(アフガニスタン、イラク、シリア、ベネズエラ、コンゴ民主共和国)の申請者は計50人だった。

 

申請処理数は前年比2129人増の1万3502人。認定された42人は、コンゴ民主共和国13人▽イエメン、エチオピア各5人▽アフガニスタン、中国各4人▽イラン、シリア各3人――など。認定者増加について担当者は「乱用的・誤用的な申請が減り、審査業務が進んだのが一因」とみている。

 

法務省は27日、18年に入管法違反で強制退去手続きをとった外国人数も公表。前年比2583人増の1万6269人で、1万86人が不法就労をしていた。【327日 毎日】

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難民認定数が2倍になったといっても“42人”・・・・ほんとんど認められていないと言うべきでしょう。

 

難民・移民流入で揺れる欧州や、アフリカ・中東からの難民受け入れ国となっているトルコやヨルダンなどで“万人”単位(国よっては“十万人”単位)の数字が問題となっている状況とは雲泥の差があります。

 

****なぜ日本の難民認定数は著しく少ないのか?****

(中略)日本で難民認定数が極めて少ない理由として、軍事政権下のミャンマーからの民主活動家が多くの申請を行っていた時期は例外として、難民が多数発生する地域から日本が遠く離れていることや、言語的・文化的な違いが障壁になっていることから、日本には真の難民が来ていないという見方もある。

 

しかし、紛争が長期化・複雑化し、多数の難民が発生しているシリアからの難民申請について、日本では201712月までに約80人が申請をしたのに対し、大半は人道配慮による在留が許可されたにすぎず、難民認定は12人にとどまっている。

 

また、集団的な虐殺がされるなどミャンマーで民族浄化の対象となっている少数民族のロヒンギャについても、これまでに約120人が申請を行ったのに対し、19人が難民認定、約80人が人道配慮による在留許可を得たにすぎず、それ以外の約20人は在留許可も与えられていない状況にある。

 

このような状況は、必ずしも日本には真の難民が来ていないのではなく、日本の難民認定の基準が著しく厳しいことを示唆している。(後略)【20187月 ヒューライツ大阪】

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外国人を受け入れることについて強い抵抗があるのは法制度だけではなく、社会全体の意識の問題が根底にあるように見えます。

 

****外国人施設「反対」、遠い対話****

住宅の軒先に、いくつもののぼりがはためく。「住環境の破壊 ダメ!絶対!」「子ども達の安全・安心を守れ」。昨年秋、大阪府摂津市にある住宅地の風景が変わった。

 

約1500世帯が暮らすこの地区には、古くから代々続く家も多い。そこに外国人技能実習生を受け入れる監理団体が研修施設を計画し、反対運動が巻き起こった。計画によると来日直後の実習生に約1カ月間、日本語や生活習慣を教え、最大60人余りが暮らせる。

 

(中略)しかし、この件については対話の糸口を見いだせない。「実習生と言葉が通じない」「怖い」という漠然とした不安を聞き、「ならば、なぜ不安なのか、どうしたら解消するのか話し合えばいい」と思った。しかし、「とにかく反対」「なぜ、反対しないのか」とたたみかけられ、話を進められなかった。

 

反対運動について「地元住民が猛反発」などと複数の報道が批判的に取り上げたことも、人々の感情を複雑にした。いまは、施設の立地条件や監理団体の計画の進め方などへの不満がより強く打ち出されている。反対運動を続ける住民の男性(63)は取材に対し、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」と憤った。

 

互いの不安の正体を直視しあえないまま、議論を深められずにいる。

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背景の違う人々への理解はどうしたら進むのか。日系3世で、各地の日系コミュニティーを研究する武蔵大教授のアンジェロ・イシさん(51)は壁を目の当たりにしてきた。

 

来日したのは1990年。バブル景気のただ中のこの年、就労制限のない在留資格が与えられたのが日系人の2世、3世だった。製造業の労働者を中心に各地で急増した。自治体やコミュニティーによっては共生する態勢が大きく進んだが道は平坦(へいたん)ではなかった。

 

ゴミ出しをめぐるトラブルや生活習慣の違いなど、日本人との差異ばかりに目が向けられてきたと指摘する。「『トラブルを引き起こす存在』というイメージがつくられてしまった」

 

イシさん自身は留学生として来日したが、引っ越しのたび「外国人だから」という理由で入居を拒まれることが続いた。

 

多くの労働者が職を失った2008年のリーマン・ショック後には、職を失い苦境に陥る日系人も出た。政府は、当分日本に戻らないことを条件に、今度は帰国の費用を支給する施策を打ち出した。

 

「手切れ金か」と指摘され、日系人を労働力の調整弁に使う身勝手さへの批判は出たものの、社会に外国人労働者を位置づける議論はこのときも広がらなかったと、イシさんは残念に思っている。

 

「外国人の大多数は、目立たず、ごく普通に暮らしてきた。そこに視線を向けて議論をしなければ、警戒感はなくならない」【54日 朝日】

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【想像の中の外国人への不安】

当然、異なる文化・習慣の人々とともに暮らすことになれば様々な問題が発生しますが、そうした問題をどのように解決していくのか・・・という方向ではなく、そうした面倒な人々は頭から断るといった対応が目に付きます。

 

外国人への不信感・拒否感は、実際の外国人との付き合いの結果生まれたというより、まだ見ぬ“想像上”の外国人への抵抗感であることも多いようにも思われます。

 

****想像の移民におびえるよりも*****

移民はやっぱり移民と呼んだ方がいいのかもしれない。衆議院立憲会派の中川正春議員(68)は最近そう考える。

 

7年前の民主党政権時代、内閣府の特命大臣として共生社会を担当した。就任直後に「移民基本法を作りたい」と発言したら抗議が殺到した。「移民を容認するのはけしからん」

 

移民という言葉を使うと反発が強くなるようだった。その後、外国人材などといった言葉に言い換えてきた。中川議員に限らない。政界はこの言葉の使用にずっと及び腰だった。

 

「そうやって真っ向から問題を考えるのを避けてきたのでは」と振り返る。「移民ではないと言いながら技能実習生や日系定住外国人などは実質的に移民として受け入れる二枚舌をやってきた。これではなかなか本物の政策はできない」

 

移民という言葉はやっかい者のイメージをまといがちだが、問題の多くは仕組みの方にあると言う。「職業選択の自由がなく、使用者にいじめられても低賃金で働き続けなければならない。そんな環境から逃げると犯罪だとなる」

 

議員は三重の高校から米国の大学に進んだ。不法移民家庭の出身だった親友は名門大学を出て医師となった。そんな例をいくつも目の当たりにした。「人間の才能は環境によって花開く。日本もそんな人たちを活力にしていくべきです」

 

今は、日本で暮らす外国人にとってまず必要なのは言葉の習得と考え、その法整備に与野党の仲間と取り組んでいる。(中略)

     *

人々が不安を抱くのは、しばしば現実の中の外国人より想像の中の外国人だ。

 

フランスで移民排斥を掲げる右翼政党への支持は、移民系の住民が多いパリでは低い。ドイツでは旧東独のドレスデンなどが移民や難民排斥の運動拠点だが、旧西独に比べて移民の数は少ない。

 

日々、同じ街に暮らしていれば誤解が生じても話せば理解は進む。だが、これからやってくる外国人は不安をかき立てやすい。トラブルメーカー、雇用を奪う者、文化の破壊者……。政治家の仕事はそこにつけ込むことではない。現実的解決への道筋をつけることだ。

 

フランスの人口統計学者、フランソワ・エランは著書「移民とともに――計測・討論・行動するための人口統計学」の日本語版(林昌宏訳)序文で、日本での「移民の増加は国の文化的な均質性にとって有害」という考え方に、これまでも日本文化は「明治時代進駐軍の支配という衝撃を乗り越えてきた」と反論する。「移民の人口に占める割合が2%ではなく10%になったからといって脅かされるようなことがあるのだろうか」

 

想像の移民におびえるよりも、現実の移民と向き合う。そのためにも、移民は移民と呼んだ方がいいと思う。【519日 編集委員・大野博人氏 朝日】

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【現状の問題が改善されないまま拡大する“外国人材”受入れ】

現実には“外国人材”といった言葉で糊塗した形で、人間としての労働者が今後増加することへの日本社会の対応が遅れていることは、いろんなところで指摘されているところです。

 

人間として許容できる賃金・労働条件を確実にするのは、まずもって最低限のスタートラインですが、そこすら現状の問題が改善されないまま、新た制度による受け入れ拡大が図られようとしています。

 

****日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生、早急な対策が必要****

2019429日、日本新華僑報は日本でまた中国人技能実習生への賃金未払いが発生したと伝えた。

記事は、「青森県むつ市の77歳の社長が、4人の中国人技能実習生を含む15人の従業員に賃金を支払わなかったとして、むつ労働基準監督署により書類送検された。容疑は最低賃金法違反である」と伝えた。(中略)

記事は、「昨年2月に、青森県青森市の成邦商事株式会社が、15人の中国人技能実習生を含む31人の従業員に、月100時間を越える時間外労働をさせて書類送検されたほか、今年3月にも八戸市にある縫製会社が、ベトナム人技能実習生に賃金を適正に支払わなかったとして書類送検されている」と指摘した。

その上で、「青森県で連続して同様の問題が発生していることは、日本の労働力不足が深刻であることを説明しており、そのため政府は外国人労働力を導入する新たな政策が必要になった。また、日本政府も『口だけで行動せず』、監督不行届であるため問題が次々と発生し、関係する部門の行動も遅く効率が悪い」と批判した。

このため記事は、「中国人技能実習生を含む外国人労働者の権益を守るため、日本社会はこの方面で早急な対策が必要だ。さもないと、日本の労働力市場は圧力が緩和したとしても、日本社会の国際的名誉は落ちるだろう」と警告した。【429日 レコードチャイナ】

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こうした実態をチェックする制度も実態に追いついていません。

 

****働く外国人、守るには 監督機関を新設、でも「成果乏しい****

 ■「落差」ある検査結果

「暴力に抗議したら強制帰国させられた」「妊娠2カ月で帰国か中絶か迫られた」――。外国人労働者を支援しているNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(東京・上野)には、技能実習生からの相談がいまも続々と舞い込む。

 

途上国の外国人に日本の技術を学んでもらう目的で1993年に始まった技能実習制度を巡っては、賃金の未払いや長時間勤務の強制などの労働法違反の行為が減らないことへの批判が高まり、2017年11月に実習生の保護策を強化した技能実習適正化法(技能実習法)が施行された。

 

新法で、監督権限がある認可法人「外国人技能実習機構」が新設された。実習機構が、受け入れ窓口である商工会などの監理団体や、職場に受け入れている企業に立ち入り検査し、実習生への不正行為があれば、政府と連携して罰則を科せるようにした。

 

「実績」はどうか。「実習生保護という点では成果は乏しい」と、移住連代表理事の鳥井一平さんは言う。

 

約2500の監理団体のうち実習機構の検査で不正が明らかになり、許可が取り消されたのは1団体。業務停止や改善命令の行政処分はゼロだ。

 

4万8千社あるといわれる受け入れ企業に関しては、実習機構に認定された実習計画を取り消されたのは8社の151人。改善命令を受けたのは三菱自動車1社にとどまる。

 

法務省が賃金未払いなどの不正行為があったと認定した監理団体や企業数は17年まで毎年200を大きく超えていた(18年は未公表)。実習機構の検査結果との「落差」は大きい。

 

実習機構は、行政処分の手前の「改善勧告」を少なくとも1400団体・企業に出していることを明らかにし、「勧告後も改善されない場合は行政処分に踏み切る」と強調する。(中略)

 

 ■チェック追いつかず

新制度にはもう一つ狙いがあった。受け入れ人数の大幅増だ。少子高齢化で若手の労働者が急減するなか、景気拡大が重なり2010年代半ばごろから人手不足が深刻化していたためだ。

 

(中略)こうした技能実習システムの急膨張に実習機構のチェックが追いついていない。18年4月から9月に実施した企業への実地検査は2600件。これだと「企業への検査は3年に1回」という低めの目標の実現さえ不可能だ。

 

実習機構の人員は昨年度より241人増えて587人となったが、当初から専門家らは「受け入れ枠の拡大は、保護強化策が効果を発揮する態勢が整い、制度の改善が確認されてからの話だ」(自由人権協会の旗手〈はたて〉明理事)と警鐘を鳴らしていた。

 

技能実習制度の「構造問題」も切り込み不足のままだ。ほとんどの技能実習生は来日する前、現地の人材派遣会社やブローカーに多額の手数料や謝礼を払っている。借金を背負った実習生は、日本では就労環境が悪くても我慢せざるを得なくなり、受け入れ側が図に乗って不正行為に走っていた。

 

新制度に合わせて、日本政府は実習生の送り出し国と、悪質な仲介業者を排除する取り決めを結ぶことにした。現在、最多の人材の送り出し国のベトナムなど13カ国と結んでいるが、取り決めが相手国を法的に拘束するわけではない。

 

 ■懸念残る「特定技能」

(中略)特定技能はこうしたまやかしをやめ、「労働者として正面から受け入れる制度」と評価された。一方で「実習制度と同じ過ちをおかすのではないか」との懸念が広がっている。

 

特定技能も、外国で人材を集めて日本に送り出すのは実習制度と同様の民間業者だ。応募者から様々な名目で金品を搾取する恐れがある。

 

実習生のように多額の借金を背負って来日したすえに、受け入れ企業に「逃げられない」とつけ込まれて酷使される可能性があるのだ。報酬も「日本人と同等以上」としているが、技能実習法で同じように約束されている実習生の大半は最低賃金で働いている。

 

国内外で「人身売買」とまで指弾されている実習制度を教訓に、外国人の人権を保護し、安心した就労・生活環境を提供する体制を整えないと新資格は根付かないだろう。

 

それは外国人との共生を巡る課題そのものでもある。

人口が加速度的に減少している日本は早晩、外国人を「労働者」ではなく「国民」として受け入れることが避けられなくなる。特定技能は「移民国家」への覚悟を問うている。【520日 織田一氏 朝日】

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外国人労働者の問題に限らず、個人の生き方・価値観、ジェンダーに関する問題等々、多様性を認め合う社会になってもらいたいのですが・・・。

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