孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日中関係  緊張関係が高まるなかで更に難しさを増すかじ取り

2021-04-09 22:53:00 | 中国

(2020年11月に来日した王毅外相と茂木外相【4月6日 YAHOO!ニュース】)

 

【「日本側の行動はレッドラインに近づいている」】

日中関係の在り様について日本の側の認識としては、それがいいかどうか、あるいは、今後も続けられるかどうかは別として、安全保障の面ではアメリカと連携して中国包囲網としての日米豪印戦略対話(通称、Quad:クアッド)を進める一方で、経済的な結びつきは極力維持しようとしている・・・という、微妙なバランスに留意した対応というように見えます。

 

そうした日本側の対応、また、中国側からすれば日本をなるべく中国側に引きとどめておきたいという対米けん制の狙いもあって、近年は比較的穏やかな関係が続いていましたが、ここにきて、日米の「2プラス2」(外務・防衛閣僚会議)共同文書で名指しで中国に言及し、中国の海洋進出などに懸念を表明するなど、中国からすると日本の言動は中国を苛立たせるものに変わってきていると映っているようです。

 

****日本の対中姿勢が強硬に変化、中国に「異例」の要求―仏メディア****

仏国際放送局RFI中国語版サイトは6日、「日本が立場を強硬に変化、中国に対し新疆・香港でのやり方を改めるよう異例の促し」と題する記事を掲載した。

 

茂木敏充外相は5日、中国の王毅外相と電話会談を行った。記事は、「今回の日中外相電話会談の背景には、4月中旬に菅義偉首相が訪米しバイデン大統領と会談するとともに、日独が初めて“2+2”(外務・防衛会合)を開催し、中国を念頭に置いた海洋安全保障について議論することがある」と指摘した。

 

そして、ロイター通信や米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道を基に、茂木外相が中国側に新疆ウイグル自治区の人権問題や香港情勢について具体的な行動を起こすよう求めたことを紹介。「日本がこの非常に強いシグナルを送った後に、菅首相が米国を訪問することになる」と論じた。

 

記事は、「日本は普段、最大の貿易相手国である中国を怒らせないように慎重に振る舞っている。米国の親密な同盟国ではあるが、3月には米国や他の国とともに、ウイグルの人権問題で中国に制裁を行うことはなかった」と説明。

 

そして、「日本の対中姿勢が突然強硬になったのは、台湾との関連が指摘されている」とし、「米軍高官が『中国は6年以内に台湾を攻撃する』と予想したことを受け、日本と米国は米軍の台湾防衛において協力する見通しだ」と伝えている。【4月7日 レコードチャイナ】

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****日中関係に漂う緊張感、「日本側の行動はレッドラインに近づいている」と中国メディア****

日本と中国の関係に緊張感が漂っている。

 

日米両国の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が海洋進出などを強める中国を名指しして批判したのに対し、中国の王毅外相は「ある超大国の意志は国際社会を代表しない」などと反発。中国メディアは「日本側の行動はレッドラインに近づいている」と警告した。

王外相は5日に行われた茂木敏充外相との電話会談で「中国側は終始、自国が担う国際的な義務を意識している。国連を軸とする国際レジームを断固支持し、国際法を基礎とする国際ルールを断固支持し、真の多国間主義を断固支持し、世界の公平と正義を断固守る」と主張。

 

米国を念頭に「ある超大国の意志は国際社会を代表せず、この超大国に追随する少数の国にも多国間ルールを独占する権利はない」と断じた。

これに先立ち、“戦狼外交官”とも呼ばれる外交部の趙立堅報道官は日本を猛烈に非難。「内政干渉」とした上、「中国の発展を阻止したいというエゴを満足させるため、人の顔色をうかがい、米国の戦略的属国になっている」と糾弾した。


こうした流れを受けて、中国網は「日本は米国が構築した『中国対抗同盟圏』の中でぴょんぴょん飛び跳ね、香港特別行政区、台湾地区、新疆ウイグル自治区などの中国の内政問題について最近四の五の言っている」と批判。

 

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事を引用し、「王外相は中国に偏見を持つ国のペースに乗るのではなく、独立した自主的な国として中国の発展を客観的かつ理性的に見据えるよう促した」と伝えた。


さらにロシア・スプートニクの記事を紹介。「中国の外相がこれほど厳しい表現を用いたのは、日本側の行動が事実上、すでにレッドラインに近づいているからだと論じた」と報じた。

共産党機関紙・人民日報系の環球時報によると、中国社会科学院の王鍵研究員は「日本は米国の対中外交に協力すると同時に、より積極的な役割を演じて利益を手にしようとしている。今回の中日外相電話会談は非常にタイムリーだった」と指摘。「中国側の表明は米日の結託に対する真っ向からの注意と警告で、日本に中国の外交のボトムラインをよりはっきり理解させる目的があった」と分析した。


別の記事で中国網は「日本は適切に対処し、世界の信頼を得るべき」とも強調した。「米日2プラス2で、日本は米国と結託し中国に矛先を向け、岸信夫防衛相は台湾を守る米軍との協力を研究し、台湾を支援する米軍を保護する必要があると述べ、中国の軍事に公的に挑発した」と言及。

 

「日本の黒歴史を見れば、世界の人々が日本の軍事動向に十分な警戒を抱くのも当然である。日本に侵略され最も被害を受けた国として、中国は日本の軍事挑発を十分に警戒する必要がある」と訴えた。【4月9日 レコードチャイナ】

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こうした中国側の空気を反映してか、ややきな臭い記事を目にするようにも。

 

****中国が日本の首根っこを押さえるための4つの方法****

中国のポータルサイト・百度に8日、「日本を制圧するには、この4つの方面から着手せよ」とする記事が掲載された。

記事はまず、周辺国と呼応して共同で日本の首根っこを押さえることを挙げた。日本はインド同様に周辺国との関係が決して良くなく、中国はロシア、韓国、北朝鮮といった国との関係を保ちながら、一緒に日本に圧力をかけるべきだとした。

次に、経済的な制裁を「武器」の選択肢として残しておくことを挙げている。中国が日本にとって最大の貿易相手国であり、最大の輸出相手国であることが、日中間の対立が深まった時には「使える武器に」なるとした。

 

しかし一方で、経済制裁は諸刃の剣であり、日本のみならず中国自身をも傷つけるリスクがあるために、あくまでも日本が先に経済的な攻撃を仕掛けた時の痛烈な反撃手段として取っておくべきだと伝えている。

3つめに挙げたのは、「韓国の経験に学ぶこと」だ。記事は、かつては「北朝鮮がソウルを火の海にするというのは口先だけ」などと騒ぎ立てていた韓国について、北朝鮮が本当に大量の火器をソウルに向けて配備していることを知ったとたんに韓国国内が静かになったと紹介。相手にリアルな脅威をちらつかせることによって、相手を黙らせるという手法を中国も参考にすべきだとの考えを示した。

そして、最後は「中国がさらに強くなることこそ、究極的な制圧手段だ」とし、国力をさらに強め、国際社会における自信を一層強めてしまえば、日本から聞こえてくる反中的な声も取るに足らなくなるとした。【4月9日 Searchina】

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今後、いろんな局面で中国からの圧力が強まる事態も想定されます。

例えば、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出の方針を固めたことなども、そうした政治的駆け引きに使われることもあるのかも。

 

****中国、処理水海洋放出は「周辺国と協議し慎重に決定を」****

中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は9日の記者会見で、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出の方針を固めたと報じられたことについて、「周辺国との十分な協議を基礎とし、慎重に決定すべきだ」と述べた。

 

趙氏は日本政府に対し、「自国民や周辺国、国際社会に対して高度の責任を負った態度を堅持し、処理計画がもたらす影響を深く評価」するよう求めた。

 

中国メディアも9日、処理水処分問題について相次ぎ報じた。国営中央テレビは「日本政府が、多方面からの疑義に遭遇している」と、日本国内などで反対論があることを伝えている。

 

中国は、日本が米国と対中連携を深めていることにいらだちを隠さなくなっており、今後の動向次第で処理水の処分問題を対日圧力の一環として利用する可能性も指摘されている。【4月9日 産経】

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【「中国側の対日関係改善というスタンスは当面変わらないだろう」との見方も】

中国の王毅国務委員兼外相は4月5日、茂木外相との電話会談で「日米には同盟関係があるが、日中も平和友好条約を結んでいる。日本は条約を履行する義務がある」と、菅首相訪米をけん制したとのことです。

 

ただ、あくまでも日米関係強化への「けん制」であり、欧米の対中国人権批判が強まる中で「(国際的孤立は避けたい)中国側の対日関係改善というスタンスは当面変わらないだろう」との見方も。

 

****「日本は中国との条約を履行する義務がある」 日米首脳会談を前に反発する中国側の本音****

(中略)茂木外相は沖縄県尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題などについて深刻な懸念を伝え、具体的な行動を求めた。

 

王外相は、「日本側が香港や新疆ウイグル自治区などに関する中国の内政に介入することに反対する」とし、日本の要求は内政干渉とはねつけた。

 

一方、日中関係については、「ようやく迎えた改善と発展の大局を大切にし、維持すべきであり、いわゆる大国間の対抗に巻き込まないことを確保すべきだ」と述べ、日本が米中対立に関わらないよう求めた。また、「中国に偏見を持つ国のリズムに乗せられないよう希望する」と、暗にアメリカに同調しないよう釘を刺した。

 

日中の関係者からは、「菅首相の訪米を前に言うべきことは言っておくというけん制ではないか」という見方が出ている。

 

(中略)きっかけとなったとみられるのが、日米の「2プラス2」(外務・防衛閣僚会議)だ。発表された共同文書では名指しで中国に言及し、中国の海洋進出などに懸念を表明した。

 

これに対し、中国外務省は日米両政府に「内政干渉だ」と抗議したことを明らかにした。さらに、「中国の発展を阻止したいというエゴを満足させるため、人の顔色をうかがい、アメリカの戦略的属国になっている」と日本を強く非難した。

 

その後も日中の防衛会合で国防省が日本を非難するなど、中国側は反発を強めている。それでは中国側は日本との関係悪化を望んでいるのか。

 

日本に対米警戒を呼びかける中国メディア

「日本は警戒を怠ってはならない。米国はただでは守ってくれないだろう。そのために日本は『高額な勘定』をすることになる」

 

これは中国国営メディアの1つ、中国国際放送局(CRI)がインターネット上に掲載した評論記事の一部だ。日米の「2プラス2」を受けて3月18日に掲載された。

中国国営メディアは中国共産党や政府の「喉と舌」とも言われ、当局の方針を宣伝したり、世論を誘導する役割も担っている。記事は日本語で書かれていて、日本向けに中国側の立場や主張を宣伝する狙いがあるとみられる。

 

記事は、「隣国である日本は、地域経済の一体化と中国との経済貿易協力から大きな利益を得ている。米国による中国封じ込め戦略の手先となるなら、経済面で莫大な代償を支払うことになるだろう」と日本に警告を発した。

 

その上で、「米国の新政権は同盟国との『共通の価値観』などといった決まり文句をよく使うが、最優先に確保するのは間違いなく米国ファーストの利益だ」と指摘している。同盟国として中国抑止で歩調を合わせる日米両国に、少しでもくさびを打ち込みたいという思惑も透けて見える。

 

中国共産党系メディアの関係者は、「習近平指導部は、対立するアメリカをけん制する意味でも日本との関係は改善していきたいと考えている」との見方を示す。

 

また、別の関係者は、「中国側の対日関係改善というスタンスは当面変わらないだろう」と指摘。その理由としてある会談に関する中国での報道ぶりを挙げた。

 

関係者が指摘したのは、垂駐中国大使と中国共産党でトップ25にあたる政治局委員との会談だ。(中略)

政治局委員であり、天津市トップの李鴻忠書記との会談では、李書記から日米の「2プラス2」を強く非難する発言が飛び出したのである。(中略)

 

垂大使は天津市に続き、その2日後には新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した湖北省武漢市も訪問した。現地では応勇湖北省書記と会談し、武漢封鎖当時のチャーター便による日本人帰国に関する協力について謝意などを伝えた。

 

湖北省の地元テレビ局はこの会談について、「経済貿易の往来を強化し、多くの領域での実務的な協力を深めていく」と好意的に報じた。一方、書記が日本非難に言及した天津市の訪問は、地元メディアも含め一切報道が見つからないのである。

 

中国では国内メディアの報道は当局の方針により事実上統制されている。ではなぜ、報道対応が分かれたのだろうか。FNNの取材では垂大使の湖北省訪問について、日本側が事前に中国側に対し、天津市でのような日本非難は控えるように求めたことが判明している。

 

日中の関係者からは「中央から統一指令が出ていたわけではないのではないか」という見方や、「アメリカと歩調を合わせる日本に対して釘を刺すものの、日本との友好ムードを完全には壊したくないという配慮が働いたのではないか」と見る向きもある。

 

中国側としては、香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などで、アメリカやヨーロッパなどと対立が深まる中、日本をできる限り中国につなぎ止めておきたいと考えているようだ。

 

垂大使は1月、FNNのインタビューで日中関係について、「極めて脆弱な関係にあり、いつでも何か物事、事件、事故が起きればすぐに大きな影響を及ぼしかねない関係」と指摘。安定した関係を構築する必要性を訴えた。

 

米中対立のあおりで緊張もはらむ日中関係、今後は米中の狭間で日本が難しい選択を迫られる可能性もある。まずは16日の日米首脳会談が試金石となりそうだ。【4月8日 FNNプライムオンライン】

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【「いいとこどり」はできないとの指摘もあるなかで、そこをなんとか・・・】

いずれにしても、「米中は民主主義と専制主義の戦い」(バイデン大統領)という認識が強まる中で、日中関係はこれまで以上に微妙なものになっていきますが、そもそも、バランスをとって・・・という発想自体を捨てる時期にきているとの指摘も。

 

****米中対立下の世界で「いいとこどり」はできない****

(中略)こうした香港情勢をとらえて、エコノミスト誌3月20日号は‘How to deal with China’と題する社説を掲載し、これから中国に見られる専制と自由の価値を擁護する勢力間の長い闘争が行われていくという情勢判断をしている。

 

(中略)日本は、米中対立の時代が来ていることを明確に理解し、その価値観からして米国の側に立つというのが基本である。安全保障は米国に依存するが、中国との関係も特に経済面では重視するというような姿勢をとれるような生易しい状況ではない。

 

この米中対立については、イデオロギー対立なのか、経済・技術の主導権争いなのか、あるいは大国間の勢力争いなのか、いろいろな説明があるが、これらの対立が複合的に重なり合ったものであると考えるべきだろう。

 

米ソ冷戦時代はソ連の経済力は弱く、対立はイデオロギー対立と軍事対立を中心に行われたが、今度の米中対立は、中国が強い経済力を持つ中で、経済技術面での競争がかなりの比重を占めることになるだろう。これが物事を複雑化する。

 

短期的には、もし選択を迫られれば多くの国は西側より中国を選ぶ可能性もある。中国は64か国にとり最大の商品貿易パートナーであるが、米国は38か国にとりそうであるに過ぎないからだ。

 

長期的には、国の大きさ、多様性、革新性により、中国は外部圧力に適応できる能力を備えているかもしれない。香港での民主主義の後退は香港のドル決済や株式市場の繁栄に影響を与えていないし、中国本土への投資も盛んであるという。(中略)

 

上記社説は、厳しい米中対立を予測しつつも、対応策として対中国「関与」が唯一賢明な道であるというが、これには必ずしも賛成できない。

 

「関与」は何を意味しているのか、分からないが、中国の国際法違反を看過して普通の対話をするということならば、賛成しがたい。ダメなものはダメとし、それなりのコストを課していくべきであろう。

 

より長期的には、中国の勢いはそれほど続かないと思われる。人口の少子高齢化はすでに始まっており、一人っ子政策のマイナスは大きくなっている。特に若年層での男女の比率の不均衡は、さらなる少子化につながる。環境面での制約、水不足や大気汚染はいまそこにある危機である。

 

さらに言うと、専制体制は政治の不安定化の危険と隣り合わせである。国民の負託を受けているとの正統性がない政権には脆弱性がついて回るものである。【4月9日 WEDGE】

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ただ、“安全保障は米国に依存するが、中国との関係も特に経済面では重視するというような姿勢をとれるような生易しい状況ではない。”と言うのは容易で、いさぎよいですが、居酒屋談義ならともかく現実問題としてはなかなか・・・・

 

“生易しい状況ではない”なかで、カッコ悪く右往左往・右顧左眄しつつも、なんとか乗り切る知恵と忍耐・自制心が必要なようにも思えます。

 

5日の茂木外相と王毅外相(兼国務委員)との電話会談についても“日本の報道によれば5日、茂木外相は相当に厳しいことを言ったことになっているが、中国の正式報道によればその逆で相当に中国寄りだ。来週の日米首脳会談の対中強硬本気度が問われる。”【4月6日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】といった指摘もありますが、そうしたバランスは当然と言えば当然なところでもあるでしょう。

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