孤帆の遠影碧空に尽き

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ロシア  チェコ弾薬庫爆発、米へのサイバー攻撃、ウクライナ国境の緊張、ナワリヌイ氏健康悪化で批判・制裁

2021-04-20 23:40:35 | ロシア

(【4月19日 ロイター】 ロシアのプーチン大統領(68)が2036年まで大統領の座にとどまることを可能にする改正大統領選挙法が4月5日成立しましたが、多くの国際批判、国内では「プーチン宮殿」批判などを抱えて、権力トップにいることにうんざりすることはないのでしょうか?)

 

【2014年のチェコ弾薬庫爆発めぐる外交バトル ロシア版007か?】

最近、ロシアに対する批判・制裁などの記事を多く目にします。

 

批判にさらされている事柄は幾つかありますが、一つ目は「2014年のチェコ南東部の弾薬庫爆発」がロシア人によるものだったという案件。

 

正直なところ、「そんな事件があったかな・・・・?」って感じですが、6年半たった今、チェコとロシアの間の激しいバトルになっています。

 

****チェコとロシア、互いに外交官追放 2014年のチェコ弾薬庫爆発めぐり*****

2014年10月にチェコ南東部の弾薬庫が爆発し2人が死亡した事件をめぐり、チェコとロシアが互いに外交官を国外追放にしている。

 

さらに、2018年に英南部ソールズベリーで有毒の神経剤ノビチョクが使われた事件の実行犯とされたロシア軍情報機関の工作員2人の名前が、チェコの事件でも浮上した。

 

チェコ政府は17日、2014年10月16日に南部ヴルベティツェの森で弾薬庫が爆発した事件について、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の特殊工作部隊「29155」が関与したと捜査結果を発表。それに伴い、ロシアの外交官18人を、情報機関の工作員だとして国外追放にした。

 

これを受けてロシア政府は18日、チェコの外交官20人を追放すると発表。チェコ政府の判断は「前例のない」「敵対的行為」だと反発した。「アメリカがこのところ対ロ制裁を連発していることを背景に、アメリカに気に入られようとした」チェコ政府によるスタンドプレーだと批判している。

 

チェコのヤン・ハマチェク外相代行は、19日の欧州連合(EU)外相会議で弾薬庫爆破について報告するほか、北大西洋条約機構(NATO)にも同様に報告する方針を示している。

 

米国務省は、「チェコ国土におけるロシアの破壊工作に対してきっぱり行動」したチェコ共和国を支持するとコメントしている。

 

米政府は今月15日、米テキサス州のソーラーウィンズ社が開発したネットワーク管理ソフトへの大規模攻撃にロシアが関与していたほか、ウクライナを威圧したり、2020年米大統領選に介入したりしたと主張し、ロシア外交官10人を国外追放にしたほか、ロシア政府関連の団体などに経済制裁を科している。

 

弾薬庫爆発と毒殺未遂

2014年に起きたチェコ南部ヴルベティツェの弾薬庫爆発では、近隣の建物の窓が割れ、周辺の学校では生徒たちが避難した。弾薬庫で働いていた56歳と69歳の男性2人の遺体は、爆発から1カ月以上たって発見された。

 

爆発の原因は当時、事故だとされていたが、捜査当局はロシアGRUの工作員、アレクサンドル・ミシュキンとアナトリー・チェピゴフ両容疑者が関与したと発表した。

 

両容疑者は2018年3月に英南部ソールズベリーでロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏(66)と娘のユリアさん(33)が有毒の神経剤「ノビチョク」による毒殺未遂に遭った事件をめぐり、英当局が殺人未遂容疑で指名を公表したロシア人2人と一致するとされる。(後略)【4月19日 BBC】

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2014年のチェコ南東部の弾薬庫爆発の犯人と2018年に英南部ソールズベリーで有毒の神経剤ノビチョクが使われた事件の犯人が同一人物・・・まるでスパイ映画のような「その世界」で暗躍する工作員がいるんですね・・・ロシア情報機関の007的存在でしょうか。

 

なぜ今になってこの事件が浮上しているのかは知りませんが、流れ的には、ロシアが反発しているように、相次ぐアメリカや欧州の対ロシア制裁と軌を一にしています。

 

【米政府機関などが昨年に大規模なサイバー攻撃を受けた問題で、アメリカの対ロシア制裁】

ロシア批判の二つ目は、そのアメリカによる「ロシアのサイバー攻撃」に対する制裁。

 

****「サイバー攻撃犯はロシア」と初断定 米政府、制裁発動****

米政府機関などが昨年に大規模なサイバー攻撃を受けた問題をめぐり、ホワイトハウスは15日、ロシア対外情報庁(SVR)が「犯人」であると初めて断定し、発表した。関連する企業などへの制裁も発動した。SVRは関与を否定している。

 

問題のサイバー攻撃は昨年12月に発覚し、米国を中心に大きな問題となった。

 

米IT企業ソーラーウィンズ社がハッキングを受けたことを契機に、同社が顧客に送っている更新プログラムを通じて被害が広がった。製品を通じて顧客を標的とする「サプライチェーン型」と呼ばれる手法だった。

 

米メディアによると、国務省や財務省、米航空宇宙局(NASA)など幅広い政府機関や企業でサイバー攻撃が確認された。

 

米国では当初からロシアの関与が疑われてきたが、ホワイトハウスは今回、一連のサイバー攻撃についてSVRを「広範にわたるサイバースパイ活動の犯人」だと公式に発表。調査結果には「強い自信を持っている」とした。

 

発表によると、ソーラーウィンズ社のソフトウェアを通じて、SVRは世界1万6千以上のコンピューターシステムへの諜報(ちょうほう)が可能になっていたと分析している。「ロシアがサプライチェーンを利用して世界規模に企業を標的にするリスクが浮き彫りとなった」と指摘した。

 

SVRはロシアで国際スパイ活動を担う機関として知られる。インタファクス通信によると、SVRは米国の発表について「ナンセンスだ」とコメントした。

 

この問題をめぐっては、英国も同日、英国立サイバーセキュリティーセンターによる分析の結果から、ソーラーウィンズ社へのサイバー攻撃にSVRが関与した可能性が極めて高いと判断していると発表。ラーブ外相は声明で「英国は、ロシアが我々の民主主義を弱体化するために何をしているかを知っている」と述べた。

 

ロシア反発、首脳会談実現は視界不良に

バイデン米大統領は15日、対ロシア制裁を発動したことを受けてホワイトハウスで記者会見し、サイバー攻撃や米大統領選への介入について「ロシアが関与したと結論づけた」と述べ、ロシアに対して「安定した予測可能な関係を望む」と呼びかけつつも、強く牽制(けんせい)した。

 

今回はバイデン政権下でて初めての大規模な制裁で、トランプ政権と比べてロシアに対する厳しい姿勢の表れとなった。バイデン氏は会見で「ロシアとの対立を深刻化させるつもりはない」とは述べたものの、「我々の民主主義に介入しつづけるのなら、さらなる行動を取る用意がある」と警告した。

 

バイデン氏はこの日、対ロ制裁の大統領令に署名した。ロシアの外交官10人を追放するほか、サイバー活動に関連した企業や米大統領選への介入を試みた組織、個人などを制裁対象とすることを発表した。

 

また、バイデン氏は13日にロシアのプーチン大統領と電話会談をした際に、夏に欧州で首脳会談をすることを提案したと明かし、「我々2人が直接対話することは、より効果的な関係のために重要だと伝え、(プーチン氏は)その点において同意した」と語った。

 

ただ、その後の対ロ制裁を受けてロシアは激しく反発しており、バイデン政権になって初の米ロ首脳会談の実現は見通せない状況にある。【4月16日 朝日】

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バイデン大統領による対ロ制裁の大統領令は、上記サイバー攻撃の他、大統領選挙への介入も理由としてあげられています。

 

****米国、ロシア外交官10人の国外退去を発表 バイデン政権で初制裁****
米政府は15日、連邦政府などを対象にしたサイバー攻撃や2020年の大統領選介入などにロシア政府が関与したとして、米国で活動するロシアの外交官10人に国外退去を命じるなどの制裁を科すと発表した。

 

バイデン政権下でロシアに対する初めての包括的な制裁発動で、アフガニスタンで米兵を殺害した武装勢力にロシアが報奨金を出しているとの疑惑も理由に挙げた。

 

ホワイトハウスによると、30以上の団体・個人も制裁対象に指定。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。

 

サイバー攻撃は昨年12月に発覚し、国務省や国防総省など主要省庁のほか民間企業に対するハッキングも判明している。大統領選介入では米情報機関が3月、ロシアが共和党候補のトランプ前大統領の再選を手助けしようと、民主党候補だったバイデン大統領に不利な情報を流したと断定した。(後略)【4月15日 毎日】

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こうした制裁の常で、嫌疑を否定するロシア側も対抗措置をとっています。

ロシア国内で活動するアメリカの外交官10人に国外退去を迫る方針を明らかにし、アメリカの連邦捜査局(FBI)長官をはじめとした政府高官の入国を禁じるとしています。

 

【ウクライナ国境でのロシア軍増強への欧米の批判】

ロシア批判の三つ目はウクライナ情勢の緊迫化に関するもの。

ロシアはウクライナ国境・クリミアに2014年のクリミア併合時を上回る軍部隊を配置しているとされています。

 

***ロシア、ウクライナ国境に軍部隊15万人超を集結=EU代表****

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は19日、ロシアがウクライナとクリミアの国境付近に15万人を超える軍部隊を集結させていると述べた上で、「状況がさらにエスカレートする危険性が明白だ」と危機感を示した。数字の根拠には触れなかった。

ウクライナ国境での軍備増強は過去最大規模であるとしながらも、当面は新たな経済制裁やロシア外交官の追放などは予定していないとした。

こうした中、ウクライナのクレバ外相はEUに対し、ロシアに新たな制裁を加えるよう求めた。

一方、米国防総省はロシアの軍増強規模が2014年時を上回るとし、演習目的かどうか定かではないと指摘。

ある米当局者は匿名で、軍増強は数万人規模として15万人以上という情報は知らないと述べた。【4月20日 ロイター】

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この問題に関しては、ウクライナを支援するアメリカ・独仏がロシアに部隊撤収を求め、緊張が高まっています。

“米独首脳、ロシアにウクライナ国境からの部隊撤収を要求”【4月15日 ロイター】

“ロシア、ウクライナが軍事訓練 米軍も艦船派遣、クリミアめぐる緊張高まる”【4月15日 Newsweek】

“ロシアに軍増強停止要求=仏独ウクライナが首脳会談”【4月17日 時事】

“ロシア、黒海で艦艇増強 ウクライナ巡る緊張の中で”【4月19日 ロイター】

 

常識的には、ロシアがウクライナに軍事進攻するということは、そう可能性は高くないと思われます。

 

ロシアとしてはクリミアは本来自国領だという認識ですし、ウクライナ東部の紛争・緊張で親ロシア勢力を通してウクライナに一定の影響力を確保することは目論んでいますが、それ以上のウクライナ進攻といったものは必要性もありませんし、国際的孤立というリスクも大きすぎます。

 

エスカレートの危険性があるとしたら、次の取り上げる四つ目の国内情勢混乱で、プーチン政権として国民の目を外にそらしたい、そして対外危機を作り出すことで求心力を高めたいという、クリミア併合のときの成功体験再現を狙ったときでしょう。

 

【収監中のナワリヌイ氏健康悪化をめぐる国内外の批判】

ロシアがさらされている批判の四つ目は収監中のナワリヌイ氏の容体悪化の問題

 

****収監中のナワリヌイ氏の容体悪化懸念 死亡すれば「報い」とアメリカはロシアに警告****

深刻な体調悪化が懸念されているロシア野党勢力の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)について、アメリカは18日、収監されている刑務所で死亡すれば「報い」を受けることになるとロシアに警告した。

 

ナワリヌイ氏の医師団は、背中の激しい痛みと足の感覚喪失を早急に治療しなければ、同氏は「数日内に死亡する」としている。

 

血液検査の結果から、ナワリヌイ氏が腎不全を患い、いつ心不全になってもおかしくない状態のようだという。

16日には医師4人が、ナワリヌイ氏はカリウム濃度が「危機的レベル」に達したとして、緊急面会の許可を当局に要請した。

 

ナワリヌイ氏の担当医の1人で、同氏の収監に抗議して逮捕されたこともあるアナスタシア・ワシリエワ氏は18日、医師3人とともに「2時間立って(面会を)懇願した」が、刑務所内に入るのを断られたとツイートした。

 

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を批判しているナワリヌイ氏は、かつて言い渡された横領罪での有罪判決を理由に今年2月、刑務所に収監された。(中略)医師団との面会が認められないことに抗議するとして、3月31日にハンガーストライキに入った。

 

一方、ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使は、18日に放送されたBBCのアンドリュー・マー司会者のインタビューで、ナワリヌイ氏は危険な状態にはないと述べた。

 

「もちろん、彼が刑務所で死ぬようなことは認められない。ただ、ナワリヌイ氏は定められた規則すべてに違反しようとフーリガンのように振る舞っている」ケリン大使はまた、ナワリヌイ氏は「注目を集めようと」していると話した。

 

アメリカがロシアに警告

アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は18日、「もしナワリヌイ氏が亡くなれば(ロシアは)報い」を受けることになるとし、「国際社会から責任を問われる」だろうと米CNNに述べた。

 

また、「ナワリヌイ氏は直ちに解放されるべきだ。彼の命を狙ったとんでもない襲撃の実行犯らは責任を追及されなくてはならない。ロシア政府によるナワリヌイ氏への襲撃は人権侵害にとどまらず、声を上げているロシアの人々を侮辱するものだ」とツイートした。

 

ジョー・バイデン大統領も、ナワリヌイ氏が受けている医療措置について「まったく不公正でまったく不適切だ」と話した。

 

アメリカは、ナワリヌイ氏が神経剤ノヴィチョクで襲われて生命の危機に直面した昨年の事件をめぐり、ロシアと対立している。

 

ナワリヌイ氏はプーチン大統領が襲撃を指示したと訴えているが、ロシア政府はそれを否定している。米情報当局は、襲撃にロシア政府が関わっていたと結論づけており、ロシア当局幹部らを対象とした制裁を発動している。

 

欧州諸国も懸念

ナワリヌイ氏の処遇をめぐっては、イギリス、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)も懸念を表明している。

 

EUは19日にこの問題を協議する予定。EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表はツイッターで、ナワリヌイ氏の健康悪化を「深く懸念している」とし、同と医師団の面会が直ちに認められるよう求めた。(後略)

【4月19日 BBC】

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EUは19日、オンライン形式で外相会議を開き、ナワリヌイ氏の健康状態悪化について協議、ロシアの責任を追及していく姿勢を確認しています。

 

こうした欧米からの批判に加え、21日には国内で、釈放を求める大規模デモが予定されていることもあって、ロシアはナワリヌイ氏を収監者用の病院に移送すると発表しています。

 

****釈放要求デモ前にナワリヌイ氏病院移送へ…露当局、体調「『満足』な状態」****

ロシアの刑務当局は19日、モスクワ近郊の刑務所に収監されている反政権運動指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏について、収監者用の病院に移送することを決定したと発表した。ナワリヌイ氏を支援する医師団が17日に「生命の危機にある」と緊急治療の必要性を訴えていた。

 

ナワリヌイ氏は背中の激痛などの症状を訴え、3月末から適切な治療を求めてハンガーストライキを続けてきた。刑務当局は、ナワリヌイ氏の体調について、「満足」のいく状態だとしたうえで、病院では本人の同意を得てビタミンを投与するとしている。

 

ナワリヌイ氏の支援者は、釈放を求めるデモを今月21日に緊急で実施すると発表していた。特設サイトでは、国内各地で計46万人超が参加の意思を示した。21日はプーチン大統領の年次教書演説が行われる予定になっており、当局としては、混乱を回避するためにナワリヌイ氏の病院移送を認めた可能性がある。

 

ナワリヌイ氏の扱いを巡っては、米政府が新たな制裁発動も辞さない構えを示すなど、国際社会も懸念を強めている。【4月19日 読売】

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ただ、ロシアはナワリヌイ氏支持勢力を「過激派」認定して徹底的に封じ込める強硬姿勢を示しています。

 

****ロシア、反体制派を過激派認定へ 政権、組織の壊滅目指す****

ロシアのモスクワ市検察は20日までに、反体制派ナワリヌイ氏が率いる汚職追及組織や各地の事務所を「過激組織」と認定するよう求め、モスクワ市の裁判所に提訴した。

 

政権批判の急先鋒、ナワリヌイ氏を敵視するプーチン大統領の意向を受け、司法当局が反体制派の組織や支持者を「過激派」と認定し、9月の下院選を前に壊滅に追い込むのが狙いとみられる。

 

ナワリヌイ氏陣営は、刑務所で健康が悪化している同氏の救出を要求し、プーチン氏が年次報告演説を行う21日に全国規模の抗議行動を計画。政権側は各地で事務所を捜索し、関係者を拘束、激しい弾圧に動いている。【4月20日 共同】

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以上のように、厳しい、かつ、多くの批判にさらされているロシアですが、クリミア併合以来続く制裁で、プーチン政権としては一定に「制裁慣れ」しているところはあるのかも。

 

なお、“ロシア大統領府は19日、米国が主催するオンラインの気候変動サミットに、プーチン大統領が22日に出席し、演説を行うと発表した。米ロはこのところ制裁の応酬により対立が激化しているものの、プーチン氏のサミット出席は両国の対話の余地を残すものとみられる。”【4月19日 ロイター】とも。

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