孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  コロナ1日30万人 「ワクチン大国」も国内需給ひっ迫 英・日首相、訪印中止

2021-04-21 23:18:40 | 南アジア(インド)

(【ロイター】 インドでは、天井を突き破るような勢いで感染が急拡大しています。)

 

【1日30万人 ワクチンが効きにくい恐れもある「二重変異株」も 医療体制は「限界に来ている」】

新型コロナ感染者のこれまでの累計を国別にみると、もっとも多いのがアメリカで3186万人、2位がインドの1561万人、3位がブラジルの1404万人。(今日のテーマではありませんが、アメリカの数字は突出しており、理由・事情はともあれトランプ前政権のもたらした被害は甚大です)

 

1日あたりの新規感染者(4月20日)では、ピークを越した(ただし、3月中旬からやや増加傾向に転じていますが)アメリカが約6万人、ブラジルは3月25日の10万人からは減少して約7万人、これに対しインドは2月中旬の1万人強を底にその後急激に増加、30万人に迫る勢いとなっています。【ロイター集計より】

 

上記新規感染者でわかるように、世界の感染の中心は現在はインドです。

 

****インドの感染最多、30万人迫る 二重変異株も、医療逼迫****

インド政府は21日、新型コロナウイルスの1日当たりの感染確認者数が約29万5千人、死者が2023人になったと発表した。いずれも同国では過去最多。感染急拡大に医療体制は逼迫している。

 

インドでは一つのウイルスで二つの変異が起きる「二重変異株」が見つかり、強い感染力や免疫をかいくぐる可能性も指摘される。しかし政府は「証明されていない」と強調。急拡大の原因が不明のまま各地で外出制限が出され、人々は不安な暮らしを強いられている。

 

首都圏政府は19日、医療体制が「限界に来ている」として、同日から約1週間の外出禁止令を出した。【4月21日】

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感染急拡大の背景としては、ワクチン接種開始による「気の緩み」や人が密集する大規模な「お祭り」も指摘されています。

 

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インドでは、1月中旬にワクチン接種が始まり、市民に気の緩みが生じた。また、ヒンズー教の春の祝祭「ホーリー」や、3年に1度の祭り「クンブメラ」で厳しい規制を取らなかったことも、感染再拡大の要因とみられる。

 

インド各地では病床不足などが深刻化。1億人以上が1度目のワクチン接種を終えたものの、供給体制の不備から、希望者にワクチンが行き渡らない状態も続いている。【4月19日 時事】 

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なお、これまでの死者数では、アメリカの約57万人、ブラジルの約38万人に比べ、インドは18万人と比較的少ない数字に収まっています。

 

これがなんらかのインド的事情(年齢構成の違いなど)によるものか、あるいは、単に正確に把握されていないだけなのかは知りません。(後出記事によれば、統計の漏れも専門家から指摘されているようです)

 

いずれにしても、新規感染者0.4~0.5万人の日本が医療体制がひっ迫云々と騒いでいるぐらいですから、新規29万人のインドの医療体制が「限界に来ている」のも当然でしょう。(なお、日本については、この程度の数字でひっ迫するのなら、それは医療システムに基本的な欠陥があるせいではないかとも推測されます)

 

下記の事故も、そうした「限界に来ている」ことがもたらしたものでしょうか。

 

****インドの病院で酸素漏れ 治療中コロナ患者ら22人死亡****

インド西部ナーシクの新型コロナウイルス患者の治療にあたる政府系病院で21日、病院敷地内のタンクに貯蔵されていた医療用酸素が漏れ、患者への供給が約30分間止まった。これにより、酸素吸入や人工呼吸器を使った治療を受けていた患者ら少なくとも22人が死亡した。

 

地元メディアによると、酸素吸入が必要な患者80人のうち、31人を別の病院に搬送したという。タンクから酸素が漏れた原因はわかっていない。

 

新型コロナの感染が急拡大しているインドでは、感染者が1日当たり約30万人増えている。各地の病院では医療用酸素が不足しており、感染者への治療に支障が出ている実態が指摘されていた。【4月21日 朝日】

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【各地でロックダウンがとられるものの・・・】

この状況を受けて、インド各都市でロックダウン(外出禁止措置)が取られています。

 

****インド、コロナ死者が過去最多 多くの地域で都市封鎖****

インド政府は20日、新型コロナウイルス感染による1日当たりの死者が1761人と、過去最多を記録したことを明らかにした。

国内の多くの地域でロックダウン(都市封鎖)が導入されている。

保健省によると、新規の感染者は25万9170人で、世界最多。1日当たりの感染者は6日間にわたって20万人を超えている。累計の感染者は1532万人で、米国に次いで世界で2番目に多い。

感染者が急増しているデリーは、19日遅くから6日間のロックダウンを導入。

デリーや、人口が最も多いウッタルプラデシュ州では、家族の入院先を探してほしいとの投稿がツイッターで相次いでいるほか、酸素や治療薬の「レムデシビル」が極端に不足しているとの報告も出ている。

累計の死者は18万0530人で、米国の56万7538人を大幅に下回っているが、専門家は統計から漏れている死者がいると警告。医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、今後、死者が急増する恐れがあるとの見方を示している。

関係者や地元メディア、政府統計によると、すでに複数の主要都市で、公式統計の死者を大幅に上回る火葬・埋葬が行われている。

モディ首相は19日、ワクチン接種の対象を5月1日から18歳以上にするよう指示。政府によると、同国では1億0850万人が1回目のワクチン接種を受けているが、同国の人口は13億人で、接種率は低い。【4月20日 ロイター】

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もっとも、ロックダウンを前に、酒店のまえには買い求める人々の長蛇の列で、ぎゅうぎゅうの押し合い状態とか。【4月21日 日テレNEWS24より】

 

もっと深刻なのは、首都の感染拡大や封鎖を恐れ、故郷に戻ろうと大勢の人々が鉄道の駅に集まっているという状況で、結果的に首都圏の感染状況を地方に拡散する危険性があります。

 

【「ワクチン大国」インド 感染急拡大で「ワクチン外交」停止 国内需給もひっ迫】

ワクチンに関しては、“あの”インドがワクチン接種1億回なのに、どうして日本は・・・という当然の疑問もありますが、インドはワクチン製造で世界一を誇るワクチン大国です。ワクチンに限らず医薬品(特に、ジェネリック)に関してはインドは世界の「薬局」的存在です。

 

そうした「ワクチン大国」の立場を活用して、これまで中国に対抗するような「ワクチン外交」を展開してきましたが、国内事情の急激な悪化でそうした「ワクチン外交」も一時停止となっています。また、途上国にワクチンを供給する枠組み「COVAX(コバックス)」にも影響が出ています。

 

****インド、感染急増でワクチン輸出停止 隙狙う中国に危機感****

インドで新型コロナウイルス感染者が急増している。政府はワクチンの国内接種を優先させるため、輸出を一時停止。

 

インドが大口供給元となる予定だった、ワクチンを共同購入して途上国に供給する枠組み「COVAX(コバックス)」にも影を落としている。

 

ワクチン輸出を通じて国際的な影響力拡大を狙うモディ政権の「ワクチン外交」は方針転換を迫られた形だ。(中略)

 

インドは国内需要を優先させるため、3月下旬ごろからワクチン輸出を制限した。英アストラゼネカが開発したワクチンを製造する地元企業セラム・インスティテュート・オブ・インディア(SII)は生産が逼迫(ひっぱく)し、政府に生産設備増強への資金援助を求めている。

 

政府は今月13日、ロシアのワクチン「スプートニクV」の緊急使用を承認するなど、輸出どころか逆に輸入推進にかじを切った。

 

影響を受けているのが、2月に分配を開始したコバックスで、5月までにSIIから1億回分以上のワクチンを受け取る予定だったが、輸出制限でまだ約1900万回分にとどまる。

 

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は9日、「課題はコバックスを通じてワクチンを出すことではなく、コバックスに入れることだ」と述べ、インドの輸出制限を念頭にワクチンの供給不足を指摘した。

 

インドは世界のワクチンの6割を生産する「製薬大国」。モディ首相は「インドは世界の薬局」と話し、ワクチン輸出を通じ、インドの国際的な存在感を高めたい意向だ。

 

日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は3月の首脳会合で、インド太平洋地域での新型コロナ対策としてインドでワクチン製造を拡大させる方針も決めていた。

 

インドは約13億人の人口を抱えるため国内の需要拡大は続くとみられ、インド政府関係者によると輸出制限は解除の見通しが立たない。

 

隙を突くように中国がワクチン外交を加速させる可能性もあるため、モディ政権は国内の感染を早急に押さえ込みたい考えだ。【4月19日 産経】

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ワクチン外交、コバックスだけでなく、国内ワクチン事情もひっ迫しています。

 

****ワクチン製造大国のはずが国民には「在庫切れて接種できない」…海外へは6400万回分輸出****

新型コロナウイルスワクチンの製造大国であるはずのインドが、一転してワクチン不足に陥っている。3月から感染第2波に見舞われて国内需要が急増する一方、海外向けの供給を絞るのが遅れたことが原因だ。

 

国内では先週以降、接種会場の閉鎖や接種制限が相次ぎ、国民には不安が広がる。

 

「在庫が切れたので接種はできないと言われた」

北部ウッタルプラデシュ州の接種会場前で9日、ナレンドラ・シンさん(64)は、整理券を握りしめながら困惑していた。会場に届くワクチンの数が減っているといい、シンさんは、「政権と地方政府の管理ミスだ」と憤る。

 

インドの新規感染者数は12日、過去最悪となる16万人超を記録した。それでもマスクをしない国民はいまだに多い。新たな変異ウイルスも見つかった。(中略)

 

一方で海外への供給は、約6400万回分に上っている。政府は先月下旬、輸出を制限して国内に回そうとしたが、手を打つのが遅く、8日頃から在庫不足が一気に表面化した。

 

ハルシュ・バルダン保健家庭福祉相は、「ワクチン不足は根拠がない」と否定するが、民放NDTVによると、新規感染者が最も多い西部マハラシュトラ州では、70以上の接種会場が閉鎖された。南部や北部の州も「在庫がなくなる」と訴えている。

 

ワクチン製造最大手の関係者は、「国内需要に対し、生産は月約3000万回分足りない」と分析する。

 

ワクチンの原料が、米国と欧州連合(EU)の輸出制限措置で不足していることも不安材料だ。早急に確保できなければ、ワクチン製造にも影響し、問題が深刻化する恐れがある。【4月13日 読売】

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【英首相に続いて菅総理も訪印中止】

インドの感染状況に関しては、以下のような話も。

 

****インド発の香港便、乗客少なくとも53人コロナ陽性****

香港当局は20日、インド首都ニューデリー発の航空便の乗客少なくとも53人が、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定されたと発表した。香港は新たな感染拡大を懸念し、インドからの航空便の乗り入れを急きょ禁止した。

 

乗客らは4日、インドの航空会社ビスタラ便で到着。世界的に見ても特に厳しい入境制限が設けられている香港で、乗客らは3週間の強制隔離に入り、この期間中に陽性が判明した。同機の定員は188人だが、搭乗者数は公表されていない。(後略)【4月20日 AFP】

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百数十名の乗客のなかで53人が陽性・・・・これではインドへの入国はためらわれます。

ということで、外交にも影響が。

 

“英首相官邸によると、ジョンソン首相は19日、来週予定していたインド訪問を中止した。インドで新型コロナウイルスの感染が拡大していることが理由。”【4月19日 ロイター】

 

イギリス・ジョンソン首相に続いて、日本の菅総理も。

 

****菅総理がGW中のインド・フィリピンへの訪問中止 感染拡大受け****

新型コロナウイルスへの対応のため、菅総理大臣が外遊を取りやめることになった。

菅総理は、今月末からゴールデンウィークの機会を利用してインドとフィリピンを歴訪する方向で調整していた。しかし、国内で東京、大阪、兵庫に緊急事態宣言を出すことを検討しているほか、インドでも新型コロナウイルスの感染が拡大していることなどから取りやめる方針を固めた。

今回の訪問には、先週のアメリカのバイデン大統領との首脳会談を踏まえ、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた連携を深める狙いがあった。【4月21日 ANNニュース】

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“インドでは、変異が2カ所同時に起こる「二重変異ウイルス」が確認されていて、現地メディアによると、4月2日以前の60日間に採取されたウイルスの24%を占めていた。「二重変異ウイルス」は、ワクチンの効果が下がるおそれが指摘されている。”【4月20日 FNNプライムオンライン】

 

上記の「二重変異ウイルス」を考えると、訪印して帰国したら、ワクチン接種済みの菅総理といえど2週間の厳重な隔離措置が必要になりますので、現時点での訪印は無理でしょう。

 

外交の停滞はともかく、衛生状態も良くない、また、マスク着用も徹底されていない13億人インドでの爆発的感染拡大による犠牲者の増加が懸念されます。

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