孤帆の遠影碧空に尽き

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フランス  大統領選挙でマクロン氏に「誤差の範囲まで肉薄した“極右”ルペン氏 「脱悪魔化」奏功

2022-04-08 22:55:04 | 欧州情勢
(【4月8日 TBS NEWS】)

【マクロン対ルペン 「誤差の範囲」に縮まる】
フランスでは大統領選挙が10日に投開票が行われ、過半数を超える候補がいない場合には24日に上位2人による決選投票が行われます。

これまでのところ、10日の投票で現職マクロン大統領が1位、極右マリーヌ・ルペン氏が2位につけ、両者の決選投票になれば、さすがに極右ルペン氏への抵抗感が根強いので、マクロン大統領が勝利する・・・・という大方の予想でしたが、投票直前になってルペン氏の追い上げが急で、決選投票での両者の差がどんどん縮まっています。

ルペン氏がそうした勢いで10日に善戦すれば、さらに勢いは加速して決選投票でマクロン氏を破りフランス大統領に・・・という可能性もまったくゼロではないような状況にもなっています。

****仏大統領選が10日投票 極右ルペン候補が現職猛追****
10日に第1回投票が行われるフランス大統領選で、極右「国民連合」党首のルペン候補が選挙戦終盤になって、支持率で首位に立つマクロン大統領を猛追している。2人が24日の決選投票に進出するとの見方が強まっている。

7日発表の支持率調査によると、マクロン氏は26・5%で、2位のルペン氏は24%。その差は2・5ポイントと、これまでで最も接近した。3位は急進左派のメランション候補で17・5%だった。

マクロン氏の支持率は2月、ロシアのウクライナ侵攻後に31%に上昇し、その後、下降線をたどった。選挙運動をほとんど行っていないうえ、マクロン政権と密接な関係にあった米コンサルティング会社で脱税疑惑が浮上したことなどが、痛手となった。

これに対し、ルペン氏は、最近のエネルギー価格高騰は「マクロン氏の失策のせい」と攻撃し、生活支援を訴えて地方行脚を重ねた。

国民の関心が高いウクライナ紛争では、「ウクライナは欧州の一員」として難民受け入れを訴えた。「移民排斥」という極右の強面(こわもて)イメージを和らげ、支持基盤を広げた。

ルペン氏の伸長を受け、マクロン氏は7日付仏紙フィガロで「極右は変わらない。根幹に反ユダヤ主義、外国人嫌悪がある」と述べ、警戒感を示した。

大統領選は、第1回投票で過半数を獲得した候補がいない場合、上位2人が決選投票に進む。2017年の前回大統領選では、マクロン氏が決選投票でルペン氏に勝利した。【4月8日 産経】
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****仏大統領選、決選投票調査でルペン氏の支持率が過去最高48.5%****
フランス大統領選が極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏とマクロン大統領の決選投票となった場合、ルペン氏に投票する意向の有権者の割合が48.5%と、過去最高を更新した。調査会社ハリス・インタラクティブが週刊経済誌シャランジュ向けに実施した世論調査が4日発表された。

過去数カ月間はマクロン氏の勝利が既定路線と考えられていたが、ルペン氏はここ数日で勢い付いており、両氏の差は誤差の範囲内に縮小した。

シャランジュは「2017年(の大統領選)の決選投票に残った両候補の差がこれほど縮まったのは初めて」と指摘。3月時点では、両候補の支持率は53─47%から58─42%の間でマクロン氏が依然としてリードしていたと説明した。

過去1カ月間に実施された他の調査と同様、今回の調査でも依然としてマクロン氏が勝利する確率の方が高い。

しかしマクロン氏はウクライナ危機に忙殺されて選挙戦の開始が遅れ、リードが著しく縮小。退職年齢の引き上げといった不人気な改革に重点を置いていることも痛手となっている。

一方、4月10日の第1回投票まで1週間を切る中、中間所得層と低所得層の購買力低下に焦点を絞ったルペン氏の戦略は奏功している

同氏の支持率は、第1回投票と4月24日の決選投票の双方とも改善し続けている。【4月5日 ロイター】
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48.5%対51.5%・・・差はわずか3ポイント、何がおきてもおかしくない数字です。

【選挙戦が盛り上がりを欠くなかで、物価上昇を批判するルペン氏に勢い】
マクロン大統領としてはウクライナ問題で存在感を示すことで大統領選挙を優位に進める戦略でしたが、当初こそそうした戦略が奏功して支持率が上昇した。
“マクロン氏、ロシア侵攻追い風に 投票まで1カ月、大統領選で独走”【3月10日 共同】
“仏大統領の支持率42%に上昇 コロナ対応の20年4月以来”【3月20日 共同】

しかし、最近は物価上昇の方が国民の関心の大きなウェイトを占めるようになり、そこを大統領の失政としてルペン氏がアピールする形に。

一方で、マクロ大統領陣営はウクライナ問題に集中した結果、地道な選挙戦で遅れをとった格好にもなっています。
現職大統領としての活躍を示せれば、特別の選挙運動をしなくても勝てる・・・といった油断が裏目にでる形にも。

マクロン大統領にとっては、最近のエネルギー価格や食料価格などの物価上昇(消費者物価指数は年内、最大で4.4%上がるという試算も)、後述の密接な関係にあった米コンサルティング会社の問題に加え、大統領選挙が盛り上がりにか欠ける、投票率が伸びないことが予想される状況も懸念されるところです。

****フランス大統領選まで2日 終盤極右候補が猛追 マクロン大統領陣営に危機感****
(中略)
世論調査では常にトップを走ってきたマクロン氏ですが、選挙戦が終盤にさしかかるにつれ、陣営は危機感を募らせています。その背景にあるのは。

記者 「マクロン陣営が懸念しているのは、今回の大統領選挙がなかなか盛り上がらないということです」

パーカー姿でヒゲもそらず、疲れた表情を見せるマクロン氏。ウクライナ問題で外交に取り組む様子を公開する一方、選挙運動は最小限にとどめてきました。

メディアの報道がウクライナ情勢に集中する中で、選挙が盛り上がらず、投票率が過去最低になる可能性も指摘されています。

陣営は「マクロン氏、再選濃厚」のムードが広がることで、支持者の“ゆるみ”を心配しているのです。(中略)

一方、前回の選挙でマクロン氏と決選投票を争った極右・国民連合のルペン氏は(中略)過激な発言を抑える「脱悪魔化」路線を進めながら、国内問題を優先する姿勢をアピール。物価高への対策を重点的に訴えていて、支持率では、この1か月でマクロン氏との差を一気に縮めています。(後略)【4月8日 TBS NEWS】
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【マクロン政権の「コンサル巨額支出問題」】
マクロン大統領の足を引っ張る米コンサルティング会社の問題については、以下のようにも。

****仏検察、マクロン政権の「コンサル巨額支出問題」で捜査開始****
フランス金融検察局(PNF)は6日、エマニュエル・マクロン大統領率いる政権のコンサルタント会社への巨額な支払いに関連する脱税疑惑について、捜査を開始したと明らかにした。
 
フランスは、10日に大統領選の1回目投票を控えている。対立候補の極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首が追い上げを見せる中、再選を目指すマクロン氏に逆風が吹いた格好だ。
 
PNFは、上院調査委員会の報告書を元に3月31日に予備捜査を開始した。
上院調査委員会は、2018~21年に米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーなどへの政府支出が倍増し、昨年には過去最高の10億ユーロ(約1350億円)に達したとの報告書をまとめていた。
 
PNFの捜査チームは「無計画な広がり」を非難。マッキンゼーは、フランス国内売上高が3億2900万ユーロ(約440億円)だったにもかかわらず、過去10年間にわたり国内で法人税を払っていないと指摘した。一方のマッキンゼーは、これを否定している。
 
PNFは捜査の詳細を明かしておらず、対象となる企業名も挙げていない。
 
マクロン氏は投資銀行の出身。現職に就いて以降も、対立候補からは「富裕層の大統領」とやゆされるなど、今回の調査は格好の攻撃材料となる。
 
マクロン氏は、コンサルタント会社の使用に問題はないと述べ、世界中の政府が行っている普通の慣習だと擁護した。【4月7日 AFP】
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マクロン大統領は「何か不透明なものがあるとの印象があるようだが、それは正しくない」と反論。政府調達に関する政策は厳格に順守されており、新型コロナウイルスの感染拡大で省庁や公務員の職務遂行能力が逼迫し、外部からの支援が必要だったと弁明しています。一方、ルペン氏率いる国民連合は「国家的なスキャンダルだ」と非難しています【4月1日 AFPより】

【ルペン氏 「脱悪魔化」のソフト化戦略が結局は奏功 ただ50%の壁を超えられるか、これからが正念場】
一方、マリーヌ・ルペン氏は、反ユダヤ主義を隠そうともしないような典型的極右の父親を追放する形で「国民戦線」(「国民連合」の前身)のリーダーとなり、ソフト化を進めてきましたが、最近は特に極右的な過激な主張を控えるようになっています。

おそらく、前回大統領選挙での敗北で、「極右」イメージを払拭しないかぎり、決選投票で過半数を得ることはできない・・・との思いを強くしたのでしょう。

ただ、そういうソフト化、「脱悪魔化」は身内からも反発を招き、離脱が相次ぎ、一時は極右姿勢を明確に示すゼムール氏に主導権を奪われるよな展開にもなりました。

****フランスで極右王朝に反旗 ルペン党首の姪がゼムール氏支援に****
フランスで4月に行われる大統領選で、極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首(53)の姪、マリオン・マレシャル元下院議員(32)が6日、ルペン党首の対立候補、極右評論家のエリック・ゼムール氏(63)に支持を表明した。

マレシャル氏はこの日、ゼムール氏が南仏トゥーロンで開いた選挙集会に出席。「政界は再編成されると確信する。新しい勝利が可能」と述べ、ゼムール氏を称えた。マレシャル氏はルペン党首の姉の娘。当初は後継者とみなされていたが、17年に下院議員を退任後、国民連合と距離を置いていた。

国民連合は、ルペン党首の父が創設した「国民戦線」が前身。ルペン党首は2011年に党首選で勝利し、ユダヤ人差別発言を繰り返す父親を党指導部から排除し、実権を握った。

大統領選の支持率ではマクロン大統領が首位に立ち、ルペン、ゼムール両氏が2位を争っている。【3月7日 産経】
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しかし、現在の状況を見ると、ルペン氏の「脱悪魔化」とも評されるソフト化路線は正しい戦略だったようです。

****「脱悪魔化」ルペン氏が現職追い上げ 極右色抑えて支持層拡大 フランス大統領選****
<極右の潮流㊦>
フランス大統領選の公式選挙運動期間が始まった3月下旬の昼下がり。パリから100キロほど北に位置する人口2000人弱の町コンティの商店街で、スーツ姿の男性が歩き回っていた。
 
2017年の前回大統領選で決選投票に進出したマリーヌ・ルペン(53)率いる極右政党「国民連合」の地方議員フィリップ・テブニオ(61)。少ない人影を見つけては小走りで近寄って声を掛ける。「マダム、暮らしはどうですか?」
 
買い物の足を止めた女性(72)は「40年以上働いたのに年金が月940ユーロ(約12万円)しかもらえないから、燃料費の値上がりで苦しんでいる」と嘆いた。テブニオがすかさず「ルペンなら燃料の消費税が20%から5.5%に下がります。年金も最低1000ユーロを保証しますよ」と政策チラシを手渡すと、女性は「期待しているわ」と返した。

◆根強い政党不信が背景に
コンティは現大統領エマニュエル・マクロン(44)の出身地アミアンに程近い。ただ、主要な産業がなく、町の経済は疲弊しているため政党不信が強く、5年前の決選投票でもルペンが僅差で上回っていた。
 
町出身の国民連合スタッフ、バンサン・ドゥヌ(30)は「今回はさらに手応えが良い」と話す。元社会党支持者の男性(65)は「左派も右派も中道も、誰がやっても暮らしは良くならなかった。ならば、ずっと頑張ってきた彼女に一度任せてみたい」と話し、「この町では8割くらいがルペンに入れるだろう」と予想した。

◆信頼できる候補調査で2位
選挙戦終盤に入り、再選を目指すマクロンと支持率の差を縮めているルペン。政治学者バンジャマン・モレル(34)は「支持率だけでなく『最も信頼できる候補は誰か』を問う調査でもマクロンに次ぐ2位につけた。極右である彼女のイメージがこれほど向上したことは過去にない」と驚く。
 
鍵となったのは、半世紀前に国民連合の前身「国民戦線」を創設した父ジャンマリ(93)との決別だ。ルペンはマクロンに敗れてからの5年間、人種差別的な言動で批判された父の影を薄めて他党支持層にも浸透するため、党名変更をはじめ「脱悪魔化」と呼ばれるソフト路線を加速。遊説では経済や医療政策を強調し、「庶民派」をアピールする。

テブニオも昨年6月の統一地方選前までは中道右派に所属していた。「彼女に人種差別的な言動が1度でもあったら離党することを条件に入党したが、問題は起きていない。国民連合は、人々が恐れてきた国民戦線とはまったく別の政党に生まれ変わった」

◆極右なのか、否か
ただ、選挙公約の移民政策では、家族呼び寄せの禁止や失業者の強制送還、雇用や公共住宅入居でのフランス人優先策などが並び、ルペンを「生ぬるい」と批判する極右評論家エリック・ゼムール(63)の公約とも共通点が多い。
 
マクロンは選挙戦で「国民連合はあくまで極右。普遍化してはいけない」と繰り返すが、テブニオは言う。「彼女が極右か、それは有権者が判断することだ」【4月6日 東京】
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ただ、ルペン氏にとっては「誤差の範囲」まで追い上げたこれからが正念場でしょう。

ルペン氏の勢いが増すにつれて、「ルペン・国民連合はあくまで極右」という反発、バネも強まります。

50%の壁を崩すことができるのか・・・万一、そうしたことになれば、(ルペン氏・国民連合はEU離脱路線から転換したとはいえ)EUに激震が走ります。ウクライナどころではなくなるかも。

国内では、ルペン氏警戒感から株・債券を売る動きも。
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