(4月13日 ストックホルムで首脳会談に臨むスウェーデンのアンデション首相(左)とフィンランドのマリン首相(右)【4月15日 ロイター】 ともに女性首相、日本とは別世界・・・)
【プーチン大統領によって存在感を回復するNATO】
今更の話ではありますが、プーチン大統領がなぜウクライナ侵攻というロシアにとってハイリスクな行為にでたのか・・・ザックリ言ってプーチン大統領の頭の中には二つのことがあるように思えます。
ひとつは、約束を反故にしたNATOの東方拡大によってロシアが危険にさらされているという現状認識、もうひとつはウクライナはロシアと一体であり、ロシアあってのウクライナであるという歴史認識。
戦前日本で言えば、欧米列強によって日本の活路・資源獲得の可能性が狭められているという現状認識と、大東亜共栄圏みたいなアジアのあるべき姿に関する認識みたいなものでしょうか。
ただ、NATOに関して言えば、ロシアのウクライナ侵攻によって、逆にロシアの脅威が改めて強く意識され、NATOはその存在を確固たるものにして求心力を高め、更に拡大の方向にすらあります。
(もっとも、反ロシアの動き、ロシアの脅威云々は欧米では明確ですが、世界全体で見ると、必ずしも「ロシアが孤立していている」とは言い難い面もあります。そのあたりはまた別機会に)
ロシアのウクライナ侵攻以前のNATOは、地域的には東方拡大しつつも、冷戦時代のような確たる存在感は薄れたような感もありました。内部の結束も緩んだような感も。
こうしたNATOをフランス・マクロン大統領は「脳死」とも。
****NATOは「脳死」とマクロン氏 加盟各国が反論、ロシアは称賛****
エマニュエル・マクロン仏大統領は7日、英週刊誌エコノミストが掲載したインタビューで、北大西洋条約機構(NATO)が「脳死」に至っていると発言した。
これを受け、加盟国の間ではNATOの真価をめぐる議論が勃発。独米はNATOを強く擁護したのに対し、非加盟国のロシアはマクロン氏の発言を称賛した。
70年の歴史を持つNATOは来月、英国で首脳会議を開催する予定。同誌が掲載した英語の書き起こしによると、マクロン氏はインタビューで「われわれが今経験しているのはNATOの脳死だ」と表明。欧米間の協調欠如や、主要加盟国トルコによるシリアでの一方的な行動を非難した。
マクロン氏は「米国と他のNATO同盟国の間には戦略的意思決定での協調が全くない」と指摘。「われわれの利害にかかわる地域で、NATO加盟国のトルコが協調を欠いた攻撃的行動に出ている」と述べた。
しかしアンゲラ・メルケル独首相は、NATOは「必須」の存在であると擁護。マクロン氏の「十把一からげの批判」は「不要」と述べた。
訪問先のベルリンでメルケル氏と共同記者会見を開いたイエンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、欧米間同盟の弱体化は「欧州を分割する」恐れがあると警告。同じく訪独中のマイク・ポンペオ米国務長官も、NATOは「重要で、不可欠」だと述べた。
一方、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はマクロン氏の「脳死」発言について、「最高の言葉だ……NATOの現状についての的確な定義だ」と評した。【2019年11月8日 AFP】
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マクロン仏大統領に対し、ドイツ・メルケル前首相はNATOは「必須」とはしていましたが、一方でアメリカ・トランプ前大統領は防衛費支出に関しNATO加盟国、特にドイツと「もっとカネを出せ!」と激しくやりあっていました。
あまりカネをだしたがらない欧州各国・ドイツなどの対応は、NATOの存在意義・必要性に関する認識の反映でもあったでしょう。一方で、トランプ前大統領にはNATO同盟国をパートナーとして見ているのかという疑問も。
****トランプ氏、NATO加盟国の防衛支出増を要求 ドイツを名指し批判****
ドナルド・トランプ米大統領は11日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し防衛費支出を、目標の倍に当たる対国内総生産(GDP)比4%に引き上げるよう求めた。
ホワイトハウスは、トランプ大統領がこの日ブリュッセルで開幕したNATO首脳会議でこの発言をしたことを認めている。トランプ大統領はまた、防衛費に関してドイツを名指しで攻撃した。
NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、全ての加盟国が防衛費にGDP比2%を支出することに注力するべきだと話した。
ストルテンベルグ事務総長はトランプ氏の発言に直接関係する質問には答えなかったものの、「まずは2%を達成するべきで、今はそこに集中するべきだと思う(中略)幸い目標に向かっている」と記者団に述べた。
NATO加盟国は冷戦終結後、防衛費を削減し続けたものの、今は緊張が高まっているため増額する必要があると、事務総長は付け足した。(中略)
トランプ大統領のドイツ批判とは?
トランプ氏は首脳会議に先立ち、アンゲラ・メルケル独首相と衝突した。
トランプ大統領は、ドイツがGDPに対して「1%ちょっと」しか防衛費を支出していないと批判した。米国は「実際の値で」4.2%を投じているとしている。NATOの最新統計によると、ドイツの防衛支出はGDP比1.24%、米国は3.5%。
トランプ氏はまた、「ドイツは完全にロシアに制御されている。なぜならエネルギーの60~70%と新しいパイプラインまで、ロシアからもらうことになるからだ。特に問題ないことだと思うならそう言ってほしい。私はそうは思わないし、NATOにはとても悪いことだと思う」と話した。(中略)
ツイッターではドイツを含む同盟国への非難を繰り返し、「ドイツがロシアのガスとエネルギーに何十億ドルも払っているようでは、NATOは何の役に立っているのか。どうして29カ国中5カ国しか約束を守っていないのか? 米国は欧州の防衛のために金を払って、貿易で何十億ドルも失っている。2025年まででなく、今すぐにGDPの2%を払うんだ」と書いた。(中略)
しかしこれらの根底にある実際の問題は、トランプ大統領のNATOへの献身度合いだ。トランプ氏はNATOをただの取引相手としか見ていないのか、それとも第2次世界大戦以降、欧米の安全保障の中心的要素だった大西洋パートナーシップを掲げる組織だと認めているのだろうか?【2018年7月12日 BBC】
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しかし、今やNATOはロシアの脅威に対抗するための必要欠くべからざる存在になったかのようです。
【フィンランドとスウェーデンのNATO加盟でロシア包囲網 ウクライナ侵攻が逆効果】
そして、プーチン大統領の思惑とは逆に、これまでNATO加盟をためらっていた国が、ロシアの脅威を目にしてNATOに駆け込む動きも。結果、(ウクライナの帰趨に関らず)ロシア包囲網が更に狭まり、より強固になると予想されます。
****フィンランドとスウェーデン、NATOに今夏にも加盟する見通し 英有力紙****
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、北欧のフィンランドとスウェーデンがNATO(=北大西洋条約機構)にこの夏にも加盟する見通しであると、イギリスメディアが報じた。
イギリスの有力紙「タイムズ」は11日、アメリカ当局者の話として、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟への準備が早ければ夏にも整う見込みだと伝えた。この当局者によると、先週行われたNATO外相会合でも両国の加盟について議題となり、複数の協議が行われたということだ。
フィンランドの加盟申請は6月に予定されていて、スウェーデンがそれに続くと伝えている。
ロシアによる一連の侵攻の結果、両国のNATO加盟への動きが加速することとなり、この当局者は「プーチン大統領にとって大規模な戦略的失敗以外の何ものでもない」と指摘している。【4月11日 ABEMA Times】
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フィンランドのマリン首相は13日、スウェーデンの首都ストックホルムでスウェーデンのアンデション首相と共同記者会見し「北大西洋条約機構(NATO)に加盟しなければ安全の保証が得られない」と述べ、加盟への意欲を表明しています。
****フィンランド、NATO加盟申請「数週間以内」に決定****
フィンランドのサンナ・マリン首相は13日、北大西洋条約機構への加盟申請の是非について、今後「数週間以内に」決定すると述べた。
マリン首相は、訪問先のスウェーデンの首都ストックホルムでマグダレナ・アンデション首相と共同記者会見に臨んだ際、自国のNATO加盟申請に関しては比較的早く決定が下されるとの見方を示し、「数か月以内ではなく、数週間以内だ」と強調した。
ロシアが2月24日にウクライナに侵攻したことを受けて、スウェーデンもNATO加盟の是非を議論している。 【4月13日 AFP】
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ロシアと約1300kmにわたって国境を接するフィンランドはNATOのパートナー国ですが、これまでも戦火を交えた隣国ロシアに配慮し、加盟はしていません。そのことでソ連の圧力をかろうじてかわしてきたとも言えます。
マリン首相はウクライナ侵攻で「全てが変わった」と強調し、NATOの集団防衛と抑止力以外に国の安全を保証する手段はないとの見解も示した。
****スウェーデンとフィンランドがNATO非加盟である理由****
・第二次世界大戦後、両国ともロシアに比べて軍事力は弱小ながらも非同盟の立場を堅持してきた。
・フィンランドは1917年にロシアから独立したが、第二次世界大戦中にソ連と2度交戦し、その過程で領土の一部を奪われた。1948年にロシアと友好協力相互援助条約を締結。これにより、軍事的には西欧諸国から切り離されることになった。
・冷戦終結とそれに続くソ連解体によってモスクワからの脅威が低減し、フィンランドはロシアの影響下から脱っした。
・フィンランドの平和は、自国の軍事的抑止力とロシア政府との友好関係によって守られてきた。だが、ロシアが「特別軍事作戦」と称するウクライナ侵攻を行ったことで、プーチン露大統領は友好的とは言い難い存在になった。
・スウェーデンは200年間戦争をしていない。戦後の外交政策においては、国際的な民主主義の支援、多国間での対話、そして核軍縮推進を柱としてきた。
・同国は冷戦終結後、軍事規模を縮小した。紛争が発生した際には、援軍が到着するまでロシアの侵攻を遅らせることを目指したものだった。プーチン大統領によるウクライナ侵攻により、軍事支援が保障されることの魅力が格段に増した。
・とはいえ、スウェーデン国内の左派勢力の多くは、究極的には米国による核抑止をベースとしたNATOの安全保障体制に依然として懐疑的である。
・フィンランドとスウェーデンは、1995年の欧州連合(EU)加盟を機に、公式の中立政策から軍事上の非同盟へと立場を転換した。
・だがロシアの威圧的な態度が強まる中、両国は近年、情報機関の交流や演習への参加という形でNATOへの接近を強めてきた。
・NATOに加盟すれば、スウェーデンとフィンランドは北大西洋条約「第5条」の対象となる。加盟国1国への攻撃をNATO全体への攻撃とみなすという規定だ。【4月15日 ロイター】
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・第二次世界大戦後、両国ともロシアに比べて軍事力は弱小ながらも非同盟の立場を堅持してきた。
・フィンランドは1917年にロシアから独立したが、第二次世界大戦中にソ連と2度交戦し、その過程で領土の一部を奪われた。1948年にロシアと友好協力相互援助条約を締結。これにより、軍事的には西欧諸国から切り離されることになった。
・冷戦終結とそれに続くソ連解体によってモスクワからの脅威が低減し、フィンランドはロシアの影響下から脱っした。
・フィンランドの平和は、自国の軍事的抑止力とロシア政府との友好関係によって守られてきた。だが、ロシアが「特別軍事作戦」と称するウクライナ侵攻を行ったことで、プーチン露大統領は友好的とは言い難い存在になった。
・スウェーデンは200年間戦争をしていない。戦後の外交政策においては、国際的な民主主義の支援、多国間での対話、そして核軍縮推進を柱としてきた。
・同国は冷戦終結後、軍事規模を縮小した。紛争が発生した際には、援軍が到着するまでロシアの侵攻を遅らせることを目指したものだった。プーチン大統領によるウクライナ侵攻により、軍事支援が保障されることの魅力が格段に増した。
・とはいえ、スウェーデン国内の左派勢力の多くは、究極的には米国による核抑止をベースとしたNATOの安全保障体制に依然として懐疑的である。
・フィンランドとスウェーデンは、1995年の欧州連合(EU)加盟を機に、公式の中立政策から軍事上の非同盟へと立場を転換した。
・だがロシアの威圧的な態度が強まる中、両国は近年、情報機関の交流や演習への参加という形でNATOへの接近を強めてきた。
・NATOに加盟すれば、スウェーデンとフィンランドは北大西洋条約「第5条」の対象となる。加盟国1国への攻撃をNATO全体への攻撃とみなすという規定だ。【4月15日 ロイター】
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両国の国内状況については、スウェーデンは加盟に反対する声も多くあります。
*****NATO加盟への支持は広がっているか****
・世論調査によれば、スウェーデンではNATO加盟に賛成する声が過半数をわずかに超えており、議会でも加盟申請を支持する会派が優位に立っている。
・申請に抵抗する最も有力な勢力と見られているのは、スウェーデン社会民主労働党だ。同国最大の政党であり、20世紀の大半の時期にわたり政権を担当していた。しかし同党も反対の方針を見直している。
・スウェーデン左翼党(旧共産党)と緑の党は反対している。
・フィンランドの民間放送局MTVが最近実施した世論調査によれば、フィンランドではNATO加盟賛成が68%、反対はわずか12%だった。
・報道によれば、左派連合を例外として、フィンランドの国会議員の過半数と大半の政党がNATO加盟を支持している。【同上】
・世論調査によれば、スウェーデンではNATO加盟に賛成する声が過半数をわずかに超えており、議会でも加盟申請を支持する会派が優位に立っている。
・申請に抵抗する最も有力な勢力と見られているのは、スウェーデン社会民主労働党だ。同国最大の政党であり、20世紀の大半の時期にわたり政権を担当していた。しかし同党も反対の方針を見直している。
・スウェーデン左翼党(旧共産党)と緑の党は反対している。
・フィンランドの民間放送局MTVが最近実施した世論調査によれば、フィンランドではNATO加盟賛成が68%、反対はわずか12%だった。
・報道によれば、左派連合を例外として、フィンランドの国会議員の過半数と大半の政党がNATO加盟を支持している。【同上】
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両国の動きは、プーチン大統領のウクライナ侵攻を“無駄骨”にすることにも。
一方、ロシアはそうした動きに対し、「核のないバルト海はなくなる」(メドベージェフ前大統領)と核兵器の配備も示唆して牽制しています。
****フィンランドのNATO加盟はプーチンに大打撃──ウクライナ侵略も無駄骨に****
<ウクライナを取りに行ったせいでフィンランドがNATOに加盟するのは完全な誤算、プーチンの立場も危うくなるが、米ロ対立の新たな火種にもなりかねない>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ東部への大攻勢を準備するなか、西側の戦略家は一貫して、停戦交渉の落としどころはウクライナの「フィンランド化」、言い換えれば「強いられた中立化」になる可能性があると見てきた。
ところが、そのフィンランドが中立の立場を捨てて、西側の軍事同盟に加わる動きを見せ、プーチン大統領に手痛い失点をくらわそうとしている。(中略)
「ロシア包囲網」が完成
NATO加盟には現在の加盟国30カ国の全会一致の承認が必要なため、申請が受理されるには最長で1年程度かかる。それでも伝統的に防衛協力を2国間に限定してきたフィンランドとスウェーデンがそろってNATOの集団安全保障体制に入れば、地域全体のパワーバランスが一気に激変するのは確実だ。(中略)
過去1世紀フィンランドに中立を保つよう圧力をかけ続けてきたロシアにとって、これ以上に壊滅的なダメージはまず考えられないと、専門家は言う。あるとしたら、目下プーチンが必死で避けようとしているウクライナにおける全面的な敗北だけだろう。
フィンランドの首都ヘルシンキはプーチンの出身地サンクトペテルブルクから約300キロしか離れていない。フィンランドがNATOに加盟すれば、「ウクライナのNATO加盟とNATOの拡大政策を止めることを口実に」ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチンに「正義の鉄槌」が下った格好になると、(米シンクタンク・戦略国際問題研究所の)モナハンは言う。
「プーチンはさらに追い詰められる」と見るのは、かつて米政府の北朝鮮担当特使を務め、現在はシンクタンク・ランド研究所に所属するジェームズ・ドビンズだ。
「たとえウクライナの中立化に成功しても、フィンランドを失えば、大した成果を挙げられなかったことになる。ウクライナ、フィンランドの両方を失ったら、下手な侵攻作戦で事態をこじらせ、国境の向こうにNATOの圧倒的な兵力が展開するという悪夢のシナリオを招いた責任を問われかねない」
フィンランドはロシアと1300キロ余りにわたって国境を接している。これが加われば、NATO陣営とロシアとの境界線は今の倍に延び、EUとロシアがにらみ合う前線の距離は史上最長に延長されることになる。「それにより軍事面だけでなく、文化的、経済的にも厄介な問題が生じる」と、ドビンズは指摘する。
自らの挑発行為で包囲網を完成させたとなると、プーチンは壊滅的な戦略上のミスを犯したことになると、プリンストン大学の政治学者で元米政府高官のアーロン・フリードバーグはメール取材に応えて述べた。
ドイツはロシアのウクライナ侵攻を見て、軍備拡大に転じたが、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は「少なくともそれと同等か、ことによるとそれ以上に」ロシアにとっては手痛い誤算だと、フリードマンは見る。
米ロ一触即発の危機
(中略)しかし、そうした変化は「重大な危険性」を伴うと、ドビンズは警告する。「無防備に歓迎すべきではない」
フィンランドにNATOの基地ができて、兵士と武器が送り込まれれば、ウクライナ侵攻で一気に高まったアメリカとロシアの一触即発の危機はさらにエスカレートする。
(中略)今でも名目上はアメリカが主導権を持つにもかかわらず、米政府関係者は同盟国に先んじてこの件に言及することを慎重に避けている。(中略)それでもジュリアン・スミス米NATO大使は5日の記者会見で、アメリカが他の29カ国と同様に、両国のNATO加盟を歓迎する考えであることを示唆した。(中略)
NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は6日、NATOはフィンランドを「温かく歓迎する」つもりだと発言。「彼らを加盟国として迎える決断は、迅速に下すことができる」とつけ加えた。(中略)
特にフィンランドにとっては、NATOへの加盟申請は、ロシアに対するこれまでの慎重なアプローチの大きな転換を意味する。フィンランドは冷戦の際、表向きはロシアに服従するという屈辱的な立場に耐え(その姿勢は「フィンランド化」揶揄された)、西側諸国やNATOと距離を置くことで、ソ連中心のワルシャワ条約機構に加盟せよという圧力をなんとかかわした。
世論もNATO支持に
しかし冷戦終結後は、長年貫いてきた中立主義政策を捨て、徐々に西側諸国に同調。EUに加盟し、アメリカとの防衛協力関係を強化してきた。F18とF35の購入もその一環だ。
ロシアによるウクライナへの本格侵攻が始まった2月24日前までは、フィンランド国民は大半がNATO加盟に反対だった。しかし3月にシンクタンク「フィンランド・ビジネス政策フォーラム(通称EVA)」が実施した世論調査では、回答者の60%(2021年の調査から34ポイント増加)がNATO加盟を支持した。そのほかの複数の調査でも、同じような結果が示された。
過去100年の間に2度にわたってロシアと戦い、第2次世界大戦の際には勇敢にもその侵略を撃退したフィンランドがNATOに加盟すれば、プーチンから見ても歴史的な勢力転換であり、大きな打撃となるだろう。【4月15日 Newsweek】
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