(ロックダウン中の上海住民向けに食料品や必需品を運ぶ担当者(4月5日)【4月7日 Bloomberg】 2500万人に配るというのは大変な量・作業です)
【増え続ける感染者 封鎖解除は見通せない状況 長期化の懸念も】
周知のように中国最大の商業都市・上海で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が続いていますが、収束の見通しがたたないまま封鎖期間が延長されています。
****上海の感染拡大、解除見通せず 都市封鎖2週間****
中国上海市で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が始まってから11日で2週間となる。同市での封鎖開始から8日までの感染者(無症状含む)は、空港検疫などを除き計約14万人。1日当たりの感染者数は8日連続で過去最多を更新し、封鎖解除の時期は見通せない状況が続いている。
新規感染者数が減らない理由は分かっていない。市は9日の記者会見で、全市民対象のPCR検査を改めて行うと表明。これまでの検査結果も踏まえ、居住区ごとに封鎖を続けるかどうかを判断すると説明した。
市の封鎖は東部で3月28日に開始。日本人が多く住む西部で4月1日から始まった。【4月9日 共同】
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上海の8日の新規感染者数は、2万3,624人と過去最多を更新しています。
封鎖に入る前は、感染が増えているとは言っても、ゼロコロナを続ける中国基準の話で、日本・東京と比べたらそれほどでも・・・というレベルでしたが、今では東京(9日の新規感染者8102人)を大きく超える状況になっています。
(もっとも、上海ではしらみつぶしに検査していますので感染者も多数見つかる側面はあります。東京も全員のPCR検査を行ったら・・・こんなものではすまないでしょう。)
中国ではゼロコロナ政策のもとで、無症状でも片っ端から隔離処置を行っていますが、その隔離施設がお粗末で、感染拡大を助長しているのでは・・・との指摘も。
****“劣悪”隔離施設で感染拡大か 上海・ロックダウン****
事実上のロックダウンをしている中国・上海で、新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を更新している。
隔離施設の劣悪な環境が、感染拡大を助長しているのではとの声も聞かれる。
投稿した人たちは、「飲める水はない、充電はほぼできない、トイレはほぼつまっている」などと、劣悪な環境だとのコメントを寄せている。(後略)【4月9日 FNNプライムオンライン】
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感染拡大を助長しているかどうかは証拠も明示されていませんが、布団や食料の供給といった最低限の対策すら追いついていないのは間違いないようです。
““ロックダウン”続く中国・上海 隔離施設で“物資”奪い合いも…”【4月7日 日テレNEWS】
【「餓死者が出てからでは遅い」】
上海に関する多くの報道の論点は大きく分けてふたつ。
一つ目は、上海市民への食料供給がいきわたっておらず、住民からも不満の声が強まっていること。
二つ目は、生産・物流拠点である上海が封鎖されたことで、日本など世界に及ぼす影響が大きいということ。
まず、食料供給の面。
****タイトルは「助けて!!」。食料不足の上海で「餓死」の危機を訴えた文章が削除される****
「求助!!(助けて!!)」。
中国・上海市の食料不足について危機感を露わにした文章が、現地のネット空間で話題を呼んでいる。
事実上のロックダウン措置の続く上海では、食べ物を買えない人たちがネットなどで不満の声を上げている。この文章では、上海市東部に住むという匿名ユーザーが「餓死者が出てからでは遅い」と警鐘を鳴らす。
文章はネット空間で拡散されていたが、原文は削除されている。一体、どんな内容だったのか。
■1%でも25万人が食べられない
上海市では、新型コロナウイルスのオミクロン株などが猛威を振るい、4月8日には症状ありで1015例、無症状で2万2609例の感染者が見つかっている。
市内では、東西に分けた事実上のロックダウン措置が3月末から4月初めにかけて開始された。
住民は自宅から出られず、食料不足を訴える投稿が次々とネットに上がっている。政府からの物資配給もあるが、地区などによってばらつきが出ているとの声もある。
こうしたなか、文章で声を上げたのは、上海市東部に住むという「stormzhang」という匿名ネットユーザー。4月8日にアップされ、この時点で「封鎖されてから22日目」だという。
東部のロックダウンが始まったのは3月28日。一方で居住エリアごとの封鎖措置が先行して始まっていたケースもあり、stormzhang氏も巻き込まれた可能性がある。
文章では、「上海がこうなった原因を語りたいわけではない。責任を問うこともなく、そんな権力はない。話したいのは、全ての人が無視できない、上海人民の基本的な生活保障についてだ」と切り出す。
生活保障とは食料のこと。stormzhang氏の元にも、これまでに3度の配給があった。しかし「もって2日。焼け石に水だ」と実情を明かす。居住エリアごとに管理能力や供給される物資に差異があり、配給が届かない地区すらあるという。
この現状について「多くの人は信じないかもしれません。2022年のきょう、国際的な大都市で、人々が食べ物を買えずにいるだなんて、自分が経験していなければ私だって信じません」と自嘲する。
そして、ある計算を持ち出す。
上海の住民はおよそ2500万人だが「1万歩譲って、99%の住民に物資が行き届き、食べられずに困っているのが1%だけだとしても、25万人です。国際的な大都市で25万人が食べられない。災難ではありませんか?」。
そして、一部の人たちは実際に食料不足に苦しんでいるとして「もし万が一、この大都市で餓死者が出て、人道主義上の災難が起きれば、国際的な笑いものです」と警鐘を鳴らす。
文章はこう締め括られる。「問題を解決する人の目に留まるよう、この文章を拡散してください。明日の上海の人々が食料を手に入れ、食べる肉があることを願います。最後に、災難が起きているときには、正能量(ポジティブエネルギー)をやめてください。助けを求めるシグナルに道を譲ってください」。
ポジティブエネルギーとは、物事のプラス面や、政府にとって好ましい情報などを指す。
この文章の原文は「規約違反」だとして中国のSNSから削除された。一方でSNS・ウェイボーでは、複数のネットユーザーたちが、文章の書かれた画像などをシェアしながら「彼の書いたことは全て事実だ」などと抗議している。
stormzhang氏は自らのウェイボーで、削除されたことについて「歴史の流れの中で力は尽くした。何も恥じることはない」と投稿した。
■文章で抗議、西安でも
中国では、厳格な水際対策と、徹底した検査と隔離を組み合わせた「ゼロコロナ」政策を取り続けてきた。一方で政策のしわ寄せを受けた市民らが文章などで抗議するケースも出てきた。
2022年1月には、ロックダウンとなった西安市で、現地在住のジャーナリスト・江雪(こう・せつ)さんが「長安十日」という文章を発表。食べ物が住民の手の行き届かない事態に対して「本質的には人災だ」と指摘した。【4月9日 HUFFPOST】
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自宅・社区から出られない・・・ということの一方で、「通行証」というものもあるようです。
****“ロックダウン”の中国・上海「通行証」不正販売も…****
感染拡大が止まらず、事実上のロックダウンが続く上海では、“通行証”をめぐる不正が相次ぎ、警察も捜査に乗り出しています。(中略)
長引く“ロックダウン”に、市民の我慢も限界に近づき、それにつけ込む動きも出ています。
大型スーパーの周辺には、食料などを求める車の長い列ができていました。しかし、今、上海では「臨時通行証」をもった政府関係者や医療従事者などの車両しか通行できません。
そこで明らかになったのが、SNS上での「通行証」の代理販売です。(後略)【4月8日 日テレNEWS】
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そもそも“ロックダウン”のさなかに大型スーパーが営業しているのも「そうなの?」ってとこですが、従業員はどうしているのか? 仕入れの業者はどうしているのか? ネット通販の商品の配送は誰が?等々、“ロックダウン”の実態はよく知りません。
ですが、住民の困窮が深まっているのは間違いないところ。もちろん当局は食料配布に全力をあげているのでしょうが2500万人に配るというのは・・・至難の業にも思えます。stormzhang氏の言うように1%でも配布がいきわたらない者がいれば大変な数になります。
“新型コロナ 上海で5日連続過去最多 市民悲痛「物資よこせ」”【4月7日 FNNプライムオンライン】
“上海市、食品など配送体制改善へ 価格つり上げ取り締まり”【4月7日 ロイター】
“ロックダウンなのに食料配給なし 上海居住の日本人、不安な日々”【4月9日 毎日】
【サプライチェーン寸断で日本経済は多大な影響 コンテナ取扱量世界一の上海港の機能マヒで世界経済への影響も】
二つ目の論点の世界経済・日本への影響の問題。こちらも脅威です。
****ゼロコロナに固執で上海ロックダウンの惨状 半導体工場は世界不況の“時限爆弾”か****
(中略)
上海に居住している人や4月1日に上海から東京に来たばかりの人などと密接に連絡を取る、シグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏が現地の様子をこう話す。
「いま上海市民の間では“封鎖は2か月くらい続くかも……”と諦めとも絶望ともつかない声が上がっているそうです。食料難やインフラが止まるといった事態には至っていませんが、スーパーに買い物に行こうにも48時間以内に発行されたPCR検査の陰性証明がないと店内に入ることすらできない。また、生鮮食品の価格はネット通販ではあまり変わらないが、個人商店では2倍から3倍に跳ね上がっているとのことです」
市内各所に設置されたPCR検査会場も長蛇の列で、場所によっては“4時間待ち”もあるとか。とはいえ、“時間がないから”と列に割り込もうとして揉め事を起こせば、すぐにスマホ搭載の信用スコア(個人の信用格付情報)に反映され、ネットショッピングをはじめ、ありとあらゆる行動に影響が出かねない。そのため皆、不満を胸の内に秘めて大人しく並んでいるという。(中略)
「“ゼロコロナ”を掲げている以上、中国当局は陽性者がゼロになるまでPCR検査を繰り返し実施していく方針です。しかし、それでは検体の解析が追い付かず、検査会場でのクラスター発生リスクにも繋がる。実際、4月1日に行った1回目のPCR検査の検体数は1400万を超え、マンパワーも限界に達しつつあった。そのため上海市は3日、抗原検査キッドを各戸に配る方針に切り替えたのです」(同)
市民が自らキットを使って検査し、陽性が出たらPCR検査を受けるという方針への転換は、当局が長期戦を見据えていることの表れとも見られている。
世界的な半導体不足の危機
中国が世界有数の半導体消費国であるのと同時に、上海は国内の半導体産業の集積地として知られる。半導体を重点産業に位置付ける習政権の意向に沿って、半導体受託生産最大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)は昨秋、約1兆円を投資して上海に新工場を建設すると表明したばかり。
「すでにSMICは上海に巨大工場を持っていますが、他にも市内には半導体の製造工場がたくさんある。そこで造られているのはTSMC(台湾積体電路製造)が製造しているような最先端の半導体ではなく、一世代あるいは二世代前のもの。
ただ、電子機器は最先端のモノと旧型の半導体が混在する形で機能する仕組みとなっているため、上海製半導体の重要性に変わりはありません。つまり世界に向けた一大供給拠点となっている上海の半導体工場がストップすると、スマホやパソコン、そして自動車など世界中のメーカーの生産に直接影響を与えるのです」(同)
コロナ禍以降、サプライチェーンの混乱で世界的な半導体不足が起きているが、上海の工場群が稼働を止めれば、トヨタをはじめとした各自動車メーカーやアップル、サムスンなど名だたる企業の経営を直撃する可能性があるというのだ。
「そうなれば、中国の経済成長も冷え込ませる一大事。だから上海当局は半導体工場だけは稼働させ続けるため、感染対策として工員を工場に寝泊まりさせる措置を取っています。とはいえ、工員らの疲労も限界に近づきつつあるといわれ、いまや綱渡りのような状況にある。ウクライナ危機以上に世界恐慌を誘発しかねないリスクを秘めた上海のロックダウンは、世界最大の“時限爆弾”のような存在となりつつあります」(同)【4月9日 デイリー新潮】
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検査場での秩序維持にディストピア的格付け社会を象徴する「信用スコア」が威力を発揮している(あるいは「信用スコア」によって住民の不満が封じ込められている)というあたり、興味深いです。
サプライチェーン寸断という点では、海外で一番影響をうけるのは日本でしょう。
上海港のコンテナ取扱量は12年連続で世界一ですから、長期の機能マヒは世界経済にも影響します。
****中国の「ゼロコロナ」政策、世界経済リスクに…ロックダウンで部品調達滞り生産に影響****
中国政府の「ゼロコロナ」政策が世界経済のリスクとなり始めた。上海をはじめとする中国主要都市の封鎖(ロックダウン)で住民の行動が徹底的に規制され、現地の工場や店舗が休業しており、中国からの部品調達も滞って日本など海外企業の生産活動に支障が出ている。影響が長期化すれば世界経済への打撃は避けられない。
販売減
「新型コロナの蔓延まんえんにより、サプライチェーン(供給網)が混乱する中で生産や販売も影響を受けた」
日産自動車の中国合弁会社トップの山崎庄平総裁は8日、中国での3月の新車販売台数が激減した背景をこう説明した。日産が同日発表した販売台数は8万7902台で、前年同月比32・6%減と大きく落ち込んだ。
ホンダも33・2%減と激減。トヨタ自動車は中国全体では横ばいだったものの、都市封鎖中の吉林省長春市に工場を構える現地企業との合弁会社「一汽トヨタ」の販売台数は17・3%減だった。
中国のロックダウンは、PCR検査を受けるとき以外は家の外に出られないなど、欧米に比べて厳格な措置となっている。従業員が出勤できず、客も来ないため、現地の工場や店舗は休業せざるを得ない。経済活動は大きく制約される。
ソニーグループは3月28日から、主にテレビを生産する上海の工場で操業を停止している。「再開の見通しは立っていない。上海市政府の方針次第だ」(担当者)という。
日立製作所はエレベーター工場で一時操業を止め、再開した一部の工場でも稼働率を落としている。
流通・小売りへの影響も広がっている。ファーストリテイリングは、上海の「ユニクロ」全86店舗、「GU(ジーユー)」全8店舗で休業している。ファミリーマートは、上海にある約1500店舗の一部が休業中だ。
日本に影響
日本国内への影響も出てきた。三菱自動車は、スポーツ用多目的車(SUV)「アウトランダー」などを製造している岡崎製作所(愛知県岡崎市)で11日から5日間、操業を停止する。中国からの部品供給が滞っているためで、従業員の一時帰休も実施する見込みだ。
ホンダは鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で、4月の生産を計画より3割減らすことを決めた。部品調達の遅れに加え、現在も続く半導体不足も影響した。
中国に進出する米国企業でつくる中国米国商会が1日に発表したアンケート結果によると、製造業の81・6%が中国政府による閉鎖指示などにより、「生産の遅延か減少があった」と回答した。「サプライチェーンに支障が生じた」との回答は製造業で85・5%に上った。
上海港
世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻だ。中国メディアの財新によると、中国欧州連合(EU)商会幹部は6日のセミナーで、「上海港に出入りできるトラック運転手が不足し、製品輸送が制限されている」と指摘。上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算を示した。
第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは、「中国の景気減速は避けられず、影響は経済的なつながりが深い東南アジア諸国などにも及ぶ。ロックダウンが長期化すれば、世界経済の下振れにつながる可能性がある」と指摘する。【4月9日 読売】
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サプライチェーン寸断で日本経済は多大な影響を被りますし、コンテナ取扱量で12年連続で世界一の上海港の機能マヒが長期化すれば日本だけでなく世界経済への影響も拡大します。
更にウクライナ情勢をうけてエネルギー・食料品価格が上昇。
当分は波乱含みの展開が予想されます。
****感染拡大の上海市の共産党委「いかなる困難も人民を倒せない」とメッセージ****
中国上海市の共産党委員会は6日夜、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないことを受け、「コロナとの戦いの最前線で党旗を高く掲げなければならない」と党員に奮闘を呼びかけるメッセージを公開した。
コロナとの戦いで生まれた人々の「感動的な行為」を広めるよう指示し、「いかなる困難も英雄の上海人民を倒すことはできない」と訴えた。愛党、愛国感情を刺激し、長引く封鎖で高まる住民の不満を抑える狙いがありそうだ。【4月7日 読売】
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「ゼロコロナ」を世界に誇ってきた習近平国家主席のメンツがかかっています。不手際が続けば地方政府幹部の首がとびます。本当はそんな習近平国家主席のメンツなどより、住民の生活・命が大切なはずですが・・・。