孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  「文化戦争(Culture War)」の分断 民主・共和党内も更に分断 様々な憶測も

2023-01-21 22:34:13 | アメリカ

(14日、米インディアナ州のアパートの廊下で銃を持つ男児の映像【1月18日 共同】)

【アメリカ「文化戦争(Culture War)に関する最近の話題 銃・中絶・移民からガスコンロまで】
アメリカで、銃規制、人工中絶、移民対策などを争点とした「文化戦争(Culture War)」とも評される厳しい対立・分断が深まっているのは今更の話です。最近の記事から関連のものを拾うと・・・

****米で4歳男児が銃振り回す 父親を逮捕、TVで生中継****
米中西部インディアナ州インディアナポリス近郊のアパート廊下で、男児(4)が実弾入りの拳銃を振り回し、警察は17日までに保護責任者遺棄の疑いで父親(45)を逮捕した。米メディアが伝えた。警察に密着していたテレビ番組の生中継で男児の映像が放送され、衝撃が広がっている。

14日夕、銃を持った男児がいるとアパート住民から通報があった。引き金に指をかけて発砲するふりをする様子が防犯カメラに写っていた。

駆け付けた警察官が男児の住居から銃を押収し、父親を逮捕。弾倉に15発入っていたが薬室に装填されておらず、すぐに発砲できる状態ではなかった。【1月18日 共同】
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日本的には「何を考えているのだか・・・」ということになりますが、銃を子供の玩具にするほど身近に感じる文化がアメリカにはあるということでもあるのでしょう。

銃規制への賛否は分断社会にあっては、相手を識別する試験紙であり、攻撃する材料でもあります。

****米テキサス州、銃器産業「差別」でシティの地方債引き受け禁止****
米テキサス州のケン・パクストン検事総長の事務所は18日、米金融大手シティグループが銃器産業を差別したため、同社による州内での地方債引き受けをほぼ全て禁止したことを明らかにした。ロイターが確認した幹部の書簡で明らかになった。

米共和党はESG(環境・社会・企業統治)投資慣行を巡って金融業界への圧力を強めており、テキサス州の措置はその一環。同州は2021年、銃器産業を差別する法人との政府契約を禁止する法律を施行していた。

同州は18日以降、次に通知するまでシティグループが購入もしくは引き受けを行う公的証券の発行を承認しないとしている。

シティ広報はロイターへの電子メールで「シティは銃器セクターを差別しておらず、テキサス州の法律を順守していると信じている」とした。

フロリダ州の高校で銃乱射事件が起きた2018年、シティは銃器を販売する企業との新たな取引に関し、バックグラウンド・チェックを通った企業に限るとする規則を導入した。【1月20日 ロイター】
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先の中間選挙で、敗北必至とされていた民主党の予想外の善戦を支えたのが厳しい人工中絶規制に反対する世論でした。

この問題では共和党支持者のなかにも厳しい規制に反対する者も一定に存在するようですが、規制強化を求める勢力はもはや宗教的信念となって動かしようもない状況です。

****米首都で中絶反対派が大規模デモ さらなる規制強化要求****
米最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決から22日で50年となるのを前に首都ワシントンで20日、中絶反対派による大規模デモがあった。

最高裁が昨年6月に同判決を覆したことを受け、中絶のさらなる規制強化や胎児の保護を求めて数万人が最高裁に向けて行進した。

一方、バイデン大統領(民主党)はロー対ウェード判決から50年を記念する声明を発表し「基本的な権利を奪い、女性の命と健康を危険にさらした」と昨年6月の最高裁判決を批判した。中絶の権利擁護を全米で法制化する法案を議会が通すべきだと強調した。【1月21日 共同】
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賛否両勢力のせめぎあいが継続しており、中絶規制問題は今後も敏感な政治問題であり続ける様相です。

バイデン政権・民主党にとってアキレス腱となっているのが移民問題対応。
党内左派は移民の人権を重視した寛容な対応を求めていますが、結果として不法移民が急増すれば共和党からの恰好の攻撃材料となります。

バイデン大統領も対応に苦慮しています。

****移民問題、共和に協力要請=政権3年目の課題―米大統領****
バイデン米大統領は政権発足から2年の節目を迎えた20日、ホワイトハウスで演説した。中南米などからの移民急増が重要な課題との認識を示した上で、下院で多数派を占める野党共和党を含め議会に対し「包括的な移民制度改革を可決するよう求める」と呼び掛けた。

共和党は国境管理を統括するマヨルカス国土安全保障長官の弾劾を模索するなど、政権への追及を強めている。バイデン氏は「二つの政党が話し合いもできないままでは米国は維持できない」と述べ、超党派の協力を訴えた。【1月21日 時事】
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もちろん共和党が協力するはずもありませんが、バイデン大統領としては、今後、共和党が協力を拒否して政治問題化させているという批判につなげる布石でしょう。

変わったところでは「ガスコンロ」をめぐる争いも。環境問題の象徴としての「ガスコンロ」のようです。

****「ガスコンロ」の是非で“炎上”…トランプ氏“対抗馬”も参戦「キッチン政治バトル」****
銃の所持や人工妊娠中絶など、さまざまな問題で分断しているアメリカでは、新年早々「ガスコンロ」をめぐって“炎上”している。

今回の特徴は、誰も「禁止」とは言っていないのに、論争となっている点だ。アメリカの「台所」をめぐり、環境問題・エネルギー問題に対する民主・共和の隔たりが改めて浮き彫りとなっている。

発端は「ぜんそくリスク」論文
きっかけは、ブルームバーグ通信のインタビューに答えた、消費者製品安全委員会のコミッショナー、トラムカ氏の発言だ。

ガスコンロからの排気について問われ「隠れた危険だ。いかなる選択肢も検討している。安全が守られない製品は禁止されることもある」と答えたのだ。

2022年末、「全米の子供のぜん息の12%は、ガスコンロからの排気に関係している可能性がある」という研究論文が発表(International Journal of Environmental Research and Public Health)された。そのタイミングでのバイデン大統領直轄の組織の幹部の発言に、ガスコンロで調理をする家庭からは「我が家のガスコンロも禁止になって、買い替えといけないのか?」と不安が広がった。

しかし、「消費者製品安全委員会」は以前から、ガスコンロは有害物質を出す可能性があることに言及しており、新規購入の際にはIHコンロを推奨している。

今回のブルームバーグの記事では、「既存のガスコンロを禁止する」とは発言していないにも関わらず、そのように受け止めらたため、数日後、発言したトラムカ氏本人や、幹部が「既存のガスコンロを禁止する予定はない」と明言し、“火消し”に走った。」

「ガスコンロのために立ち上がる」“フロリダのトランプ”も参戦
これで事態は収束すると思ったが、その後も「ガスコンロを守れ!」と主張しているのが、共和党の政治家たちだ。
そのうちの1人、フロリダ州のデサンティス知事が11日、自身の集会でこのように力強く演説し、支持者から拍手喝采を浴びた。

「誰も私たちのガスコンロを取り上げることはできない!ガスコンロかIHかの選択はあなたの自由だ。料理をする人は、ガスコンロを手放したくないと思うでしょう、だから我々は立ち上がる!」

デサンティス氏は2024年の大統領選挙の共和党の有力候補になるのではないかと目されている、44歳の若きホープだ。その保守的な考え方から「フロリダのトランプ」の異名を持つが、すでに大統領選に立候補しているトランプ氏からはライバル視されている。

いまアメリカで最も注目されている政治家の1人であるデサンティス氏の発言をみても、保守派が「ガスコンロ」を争点化したいことがわかる。

メディアも保守とリベラルで対立「ガスコンロは文化戦争」
そのほかにも、共和党の下院議員も「絶対に手放さない。できるものなら来て取り上げてみろ!」と徹底抗戦のツイートをして話題になった。それに対して民主党議員は「ガスコンロによる悪影響」を主張しSNSで反撃するなど、政争の具になっている。

アメリカメディアも同様の論調で、保守寄りとされるFOXニュースは「ガスコンロが禁止されて調理の仕方が変わるかもしれない!」と危機感をあおるいう論調だが、リベラル派はその逆。タイム誌などは「文化戦争(Culture War)において、保守派がガスコンロを大義名分としている理由」との見出しを取っている。改めて指摘するが「禁止」でもないのに、だ。

おおまかに分けてしまうと、環境対策に前向きなのが民主党で、消極的なのが共和党―特に「トランプ派」と言っていいだろう。

トランプ氏は大統領時代に温暖化対策の世界的枠組みの「パリ協定」から離脱した。気候変動対策より、経済・雇用重視するという姿勢を打ち出し、「アメリカファースト」のイメージを固めてきた。その後、パリ協定はバイデン政権になってから復帰している。

ガスコンロについては、連邦政府は「禁止しない」としているが、リベラル派が主流の自治体では、すでに多くの規制が始まっている。

高層ビルが立ち並ぶニューヨーク市では2021年、「新築の建物はガスコンロ設置を禁止する」という条例が成立していて、2023年に施行される予定だ。

目的は健康問題だけではなく、化石燃料を減らすことが気候変動対策のひとつとしているので、近い将来、「ガスコンロからIHに移行させよう」という流れが、リベラル派・環境重視派からさらに起きるのは間違いないだろう。

食洗器、洗濯機をめぐる”幻”のトランプ・ルール
リベラル派が「環境対策重視」で、保守派が「経済・効率優先」のため対立しているという構図だが、家庭のキッチン周りをめぐる対立はガスコンロが初めてではない。

もともとオバマ政権下でのエネルギー省は、省エネ対策のため「食洗器で使う水の量」、「洗濯機・乾燥機で使える電力の量」に上限を設けていた。

その後、省エネ対策より企業の利益を追求したいトランプ氏が政権を取ると、「もっと早く食器を洗うべきだ!新しい食洗器を買いに行こう」との主張を展開し、演説会場で支持者にこう呼びかけた。
「『60分で終わる食洗器』『30分で終わる洗濯機』などのカテゴリーを設置させた」

これはトランプ氏のキャッチフレーズ「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」をもじり、「Make Dishwasher Great Again(食洗器を再び偉大に)」キャンペーンとも報じられた。結局、トランプ政権下で、「高速食洗器」を申請するメーカーはなく、バイデン政権はオバマ時代の基準に戻した。

与野党が対立しているのは、コロナ対策、中絶問題、銃所持問題などさまざまな範囲に及ぶ。今回の問題は、科学的な根拠を政治イデオロギー化して利用してしまう危険性もはらんでいる。2024年に控える大統領選挙に、ガスコンロが「政争の具」として誇張されてしまうと、分断はさらに進んでしまうかもしれない。【1月17日 FNNプライムオンライン】
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【民主・共和党内もそれぞれ二つに分断】
分断は民主・共和のふたつの勢力間だけでなく、それぞれが内部に更なる分断を抱えています。
かねてより民主党には党内急進左派と主流穏健派の対立があります。
一方、共和党におけるマッカーシー議員の議長選出の際の混迷ぶりは、共和党内の分断を明らかににました。

****米下院、強硬派の発言力増す 機能不全でバイデン政権のリスクに****
米下院は7日未明、通算15回目の投票で共和党トップ、マッカーシー議員の議長選出にこぎつけたが、共和党の一勢力の抵抗に振り回された異常事態は今後の議会運営に暗い影を落とした。同党は票と引き換えに保守強硬派に大幅な譲歩も強いられた。

バイデン大統領にとって妥協を拒む野党強硬派の影響力は、下院を機能不全に陥れ、残る任期2年の政権運営へのリスクとなる可能性もある。(中略)

5日まで造反を続けた強硬派20人のほぼ全員はトランプ前大統領に連なる「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」に所属。議連は2015年、民主党のオバマ政権下で勢力を広げた保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)に後押しされた議員らが創設、党内最右翼に位置する。

マッカーシー氏はそうした強硬派から、大胆な財政緊縮に消極的な「現状維持派」とみなされた。連日の条件闘争では議長解任の動議提出のハードルを下げ、予算案審議に絡む主要委員会のポストを分け与えるなど、のまされた妥協案は同派の発言力を保証するに等しい内容とされる。

保守系紙ウォールストリート・ジャーナルは「大きなリスクは、対立の絶えない状況が今後の政府の基本的機能を危険にさらしかねないことだ」と危惧する。

与党・民主党が上院のみで多数派を維持する「ねじれ議会」の中、法案をホワイトハウスに届けるには、下院での超党派合意は不可欠。だが、下院議長が民主党に妥協を示せば、強硬派は解任動議を脅しに圧力をかける可能性がある。

特に連邦政府の債務上限引き上げに関する審議を使って民主党に歳出削減を迫るのは必至だ。引き上げができなければ既存債務の償還に充てるための国債発行が滞り、デフォルト(債務不履行)につながる。その回避のため、強硬派の要求は無視できなくなる。

強硬派議員は外交的に孤立主義が色濃く、ロシアの侵略と戦うウクライナ向け支援の継続に冷淡な態度を示す。ウクライナの戦闘継続能力も左右しかねない。

米ギャラップ社が昨秋の中間選挙後に実施した世論調査で米議会の支持率は22%と国民の不信は強い。マッカーシー氏が共和党内の分断を克服し、米国や民主主義世界の利益を重視したかじ取り役となるか。内外から厳しい視線が向けられそうだ。【1月7日 産経】
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トランプ前大統領が前面に出た中間選挙の失敗で、共和党内には「トランプ離れ」を模索する動きがあります。

今回、造反議員がトランプ前大統領の呼び掛けにも応じなかったことで、同氏の求心力低下を指摘する向きもありますが、“議長就任後、マッカーシー氏は「特にトランプ前大統領に感謝したい」とも語った。「彼の影響力を疑う人はいないと思う。彼は最初から私を支持してくれた」として、議長選の最後まで連絡を取り合い、造反組の説得に力を借りていたことを明らかにした。”【日系メディア】ということで、トランプ前大統領が少数の強硬派議員を介してトランプ氏が強い影響力を持ち続ける展開も考えられます。

【“不人気・高齢”バイデン氏をめぐる“陰謀説”や“電撃辞任説”も】
この共和党の混乱を喜んでいた民主党でしたが、バイデン大統領に機密文書問題が浮上して慌てています。

バイデン大統領の支持率は低迷しており、高齢による健康問題もあって、もともと民主党内には次期大統領選挙に向けてカリフォルニア州のニューサム知事など「バイデン以外」を模索する動きがありました。

ところが中間選挙の“予想外の善戦”でバイデン大統領が続投に意欲を示すことになり困惑も。
そこてもってきての機密文書問題。 

そんなことはないとは思いますが、機密文書問題は「バイデン降ろし」を画策する民主党内の一部勢力が仕掛けたものではないかとの“陰謀説”もあるとか。

“機密文書持ち出し問題で「バイデン下ろし」陰謀説も…後任候補にカリフォルニア州知事が急浮上”【1月16日 FNNプライムオンライン】

そんなことはないにしても、そんな話が囁かれるような状況だということでしょう。

いずれにしても、不人気、高齢、そして機密文書問題ということで、バイデン大統領をめぐる状況を厳しいものがあります。

次期に向けて党内のバイデン一本化は難しい状況。

一方、「次期大統領選挙に出ない」と言えば、たちどころにレームダック化します。
また、自身の後継者たるハリス副大統領はバイデン氏以上に不人気。予備選を勝ち抜けるのは難しい。
自身が再選に立候補するが、「対立候補がいるなら予備選で決着を着けよう」と言っても、激しい党内抗争がスタートします。

そこで窮余の一策として、即座に大統領を電撃辞任して、ハリス副大統領を大統領に自動昇格させ、バイデン-ハリスラインを維持するという策もあるとか、ないとか。
“米国でバイデン電撃辞任説が急浮上。1月中にもハリスが米国初の女性大統領に?”【1月18日 MAG2NEWS】

まあ・・・・そこまで(不謹慎ながら)面白い展開にはならないでしょうが・・・。
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