(【7月12日 FNN PRIME】 西宮市の武庫川女子大学を訪れたエルドアン大統領夫妻)
【「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 国内には「日本は世界的に女性の地位が低い国のひとつだ」との批判も】
トルコのエルドアン大統領が、イスラムを公的な場面に持ち込まない世俗主義を是としていたそれまでのトルコにあって、イスラム主義を推し進めていることは周知のところですが、G20で来日した際に大統領が目をつけたのが日本の「女子大」だったとのこと・・・・なるほどね。
****「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 熱弁をふるうエルドアン大統領の狙いは?****
「トルコにも日本のように女子大が必要だ!」 熱弁をふるうエルドアン大統領の狙いは?
女子大を絶賛したエルドアン大統領
トルコのエルドアン大統領が6月27日、G20大阪サミットに参加するため来日した。滞在中は安倍首相やアメリカのトランプ大統領と会談し、天皇皇后両陛下とも会見した。
これらは本国トルコでも当然報じられたが、それよりもトルコで話題になったニュースがある。エルドアン大統領が兵庫・西宮市の武庫川女子大学を訪れ、名誉博士学位を授与されたあとの演説だ。
エルドアン大統領:「日本には800の大学があり(注1)そのうち10%に当たる80校が女子大だ(注2)。 大学には、女子の学生しかいない。幼稚園から小中高校、そして大学まで、独特な女子教育システムが構築されている。このような日本のシステムがわが国においても非常に重要だ。トルコも日本と同様のステップを歩むべきだ。」
(注1)総務省統計局調査で、国内の大学は780校(2017年)
(注2)武庫川女子大学教育研究所調査で、国内の女子大は77校(2017年)
日本型の女子大設立を熱く訴えたエルドアン大統領。日本のメディアではあまり大きく取り上げられていないが、トルコメディアは一斉にトップで伝えた。
アナドル通信(国営) 「トルコにも日本のように女子大が必要」
ビアネット(ウェブニュース) 「日本の女子大を参考に」
アフバルニュース(左派系) 「トルコ初の女子大設立を目指し調査を指示」
日本国内の女子大の数が減少傾向にある中で、エルドアン大統領の狙いは一体どこにあるのか?
なぜいま女子大なのか?
トルコでは1914年に国内初の女子大が設立されたが、その7年後には共学化された。その後、全ての小学校、中学校が共学化され、1973年に男女共学を基本原則とする教育法が制定された。男女別の学校はイスラム系の高校に限って存在していた。
それが、2012年を境に一変した。
エルドアン大統領(当時は首相)が世論の反対を押し切って法改正を行い、中学においてもイスラム系の学校を復活させたのだ。これにより、女子学生のみが通う中学、高校が激増し、現在に至っている。
ただ、大学について言えばいまだに全て共学で、女子大は1つも存在しない。トルコは世界でも有数の親日国と言われるだけあって、エルドアン大統領が「日本を手本に」と言うのもわからなくはないが、なぜ今、女子大なのか?その目的は何なのか?
エルドアン大統領は日本での演説で、「わが国にもかつて男女別の高校があったが、のちに共学化されてしまった。今、我々は再び秩序を回復する時期に入ったのだ」とも述べていた。ここにヒントがありそうだ。
イスラム色を増すトルコ
トルコはアタチュルク初代大統領が1923年に共和国宣言をして以来、政教分離の世俗主義を国是としてきた。しかし、エルドアン大統領は2001年に与党である公正発展党(AKP)の初代党首に就任して以来、イスラム色の濃い政策を推し進めてきた。
女性の公務員が職務中にスカーフを着用できるよう憲法を改正したり、今年に入ってからは博物館として親しまれているイスタンブールの観光名所、アヤソフィアのモスク化さえも示唆している。
世俗化する社会に対し、今こそ“念願の”女子大を新設し、より一層イスラム色を前面に出した政策を推し進める構えのように見える。こうしたエルドアン大統領の“構想”に対し、トルコのメディアは次のように伝えている。
ハベルトゥルク紙(大手紙):
・日本のような先進国に女子大があるなら、国民の9割以上がイスラム教徒のトルコで女子大が設立できないわけがないと保守層は絶賛している。
・大統領が気に入ったのは女子大だけなのか?先進国日本から学ぶことはもっと他にあったのではないか?という批判の声もある。
・日本でも女子大の需要は下がっているという。
・社会進出を重要視する女性たちは、女子大ではなく、東京大学や京都大学のような共学大学を選ぶのではないか。
キュルトゥル・セルヴィスィ紙(文化紙):
・女子大構想は笑止千万。
・大統領が参考にした日本は、社会生活において男尊女卑が顕著な国である。
・世界経済フォーラム(WEF)が発表した報告書によると、日本の男女平等ランキング(2018年)は149カ国中110位と、順位が低い国の一つ。トルコは、130位だ。
・女子大新設は完全な女性差別であり本末転倒だ。
・トルコの教育システムは近年悪化しており、いま必要なのは教育改革だ。
保守層と世俗派で意見が分かれるのは当然だが、トルコのメディアをチェックする限り、女子大新設構想には否定的な論調が多いようだ。
6月23日に実施されたイスタンブールのやり直し市長選では、エルドアン大統領率いる与党が擁立した候補が、最大野党の新人に大敗。求心力低下が叫ばれるエルドアン大統領だが、今回の女子大新設をはじめとする教育改革が今後トルコ国民にどう受け止められるのか、注目していきたい。【7月12日 FNN PRIME】
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【なぜ女子大が必要なのか?】
もちろん各女子大は、それぞれ崇高な女子教育の理念のもとに運営されているのでしょうが、しょうじなところ、これだけ性による差別をなくしていくことが重視される現代社会において、女性だけ、あるいは男性だけの教育を行う必要性がどこにあるのか、素朴な疑問を感じるのも事実です。
“日本の男女平等ランキング(2018年)は149カ国中110位と、順位が低い国の一つ。”ということの結果、かつ、原因のひとつが「女子大」の存在ではないかとも思えます。
そもそも、(トルコのように)国によっては「女子大」が存在しないことも。
アジアやアメリカには存在しますが、欧州にはないようです。
****「日本にはまだ女子大があるのか!」…驚く欧州人 ルーツや存在意義を考える ****
実践女子大学でメディア論を教える松下慶太さんをミラノ工科大学に案内した。松下さんは、1年間のサバティカル(長期休暇)でベルリンを拠点に、欧州各地でソーシャルデザインのリサーチをしている。
彼が東京の女子大に勤めていると自己紹介すると、相手の先生は怪訝な表情をする。
「女子大という存在が、日本にはまだあるのか?!」との驚きが見てとれる。そして「男性の教員もいるのか?」とかいくつかの質問を矢継ぎ早に聞かれた。
日本以外にも、韓国・中国・インド・中東・米国・英国という国々では女子大がそれなりの存在感を放っているようだが、欧州の大陸の国では「忘れられた」存在になっている。
ぼくは女子大についてほとんど知らないので、少々好奇心が芽生え、松下さんにこのあたりの事情を聞いてみた。そもそも女子大とは何か?というところから。
「大きな流れとしては、キリスト教宣教師などによって開かれた語学や、アメリカなどで見られるようなリベラルアーツを展開するもの。もうひとつは生活科学や医学・看護など実学・専門領域の教育を展開するものがあると思います」
日本であれば、東京女子、聖心女子、東洋英和、フェリス、白百合などはリベラルアーツを中心とした前者にあたる。東京女子医大や日本女子は後者となる。アジアの他国をみても、どちらの流れの大学もある。
そして、彼はこう指摘する。
「学祖の留学先などにも、結構影響されているかもしれないですね。津田梅子が津田塾大をつくり成瀬仁蔵が日本女子大を開校しましたが、彼らはアメリカから戻った後に学校をつくっていますね」
松下さんのこれまでの経験からすると、北欧はジェンダーギャップが少ないのと大学制度が比較的新しいので 、特に日本の女子大への質問が多いそうだ。他方、カナダやアメリカなどでは、女子カレッジの存在を知っているので、松下さんが女子大で教えていると説明しても、「ふーん」という反応だという。
以上から、ミラノ工科大学の先生の女子大への「あからさまともみえる好奇の目」は、欧州大陸における典型的なものだったといえる。どうもジェンダー差別撤廃への意識が高いほど、女子大という存在に戸惑うようだ。
しかし、こうした現象は日本においてもないわけではない。
実践女子大のオープンキャンパスの際、保護者などから「男子がいないということは、多様性や現実社会への対応としてどうなのか?」との質問を受けたこともあるようだ(「うちの娘はおっとりしているから女子大が安心」という親も多いが)。
松下さんは、次のように考えている。
「日本の社会や企業における男女格差などを考えると、女子大で育むリーダーシップや女子向け教育のメリットもあると思います」
「これが現実の社会だから、と(男子のリーダーシップを優先する状況を)納得させるのもなにか違いますよね」と松下さんは首をかしげる。
そもそもの前提として、女子大というカテゴリーを俎上にのせて論じる時代でもなくなったとの意識が松下さんにはある。それぞれの立ち位置や地域・学部の特色などを踏まえて考えるべきことが多い、と彼は認識している。(後略)【2018年12月7日 安西洋之氏 SankeiBiz】
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省略した部分に松下氏の女子大を含めた大学の在り方に関する持論が述べられていますが、正直なところピンときません。
むしろ、一番「だろうね・・・」と感じられるのは、“「うちの娘はおっとりしているから女子大が安心」という親も多い”という部分でしょう。
そういう現実の上にのっかって、旧態依然の「良妻賢母」を目指す女子教育を行うということであれば、現在のジェンダーフリーの流れの中で存在意義を見出すのは難しいかも。
【トランスジェンダーへの門戸を開くお茶の水女子大 「共学化に向けた議論へのパンドラの箱を開いた」とも】
ジェンダーフリーの流れということで言えば、「女子大」を代表する立ち位置にあるお茶の水女子大が昨年、「心は女性」というトランスジェンダーへの門戸を開くことを明らかにし、改めて「女子大」の意義が問われることにもなっています。
****パンドラの箱を開けた? 「心は女子」学生受け入れ決めたお茶の水女子大 「女子大の存在意義」議論の呼び水に****
国立のお茶の水女子大(東京都文京区)が全国に先駆け、平成32年度から戸籍上は男性でも自身の性別が女性と認識しているトランスジェンダー学生の受け入れ決定に踏み切った。
他大学にも波及しそうだが、施設整備や受験資格の確認など課題も残る。文部科学省内では「男女共学化議論の呼び水になりかねない」(幹部)との声もあり、減少傾向にある女子大の存在意義も改めて問われそうだ。
受験資格の確認は?
(中略)出願期間前に診断書があれば提出してもらい、自己申告の場合も今後設置する委員会で総合的に判断する方向だが、受験資格の線引きに曖昧さが残りかねない。
全国の女子大に影響
お茶の水女子大の決定は他大学の動向にも影響しそうだ。「まだ正式に決まっていないが、前向きに検討している」と話すのは国立の奈良女子大(奈良市)の担当者。29年9月に大学理事などで構成するワーキンググループを立ち上げ、問題の洗い出しを行っている。
公立では群馬県立女子大(群馬県玉村町)がお茶の水女子大の決定を受け、学内委員会で検討を開始。福岡女子大(福岡市)は「1年生全員が寮生活をするため保護者の理解などを含めクリアすべき課題は多い」(担当者)。状況把握のため他大学の情報収集に乗り出している。
女子教育を大学の理念に明確に掲げる私立でも検討は進んでおり、津田塾大(東京都小平市)、日本女子大(同文京区)、東京女子大(同杉並区)などで29年から議論している。
女子大の存在意義とは?
ピーク時には100近くあった女子大だが、定員割れに伴う学生募集強化や統廃合などを背景に共学化が相次いだ。29年度の学校基本調査では、女子大数は国立2校、公立2校を含め計76校。780ある大学の約1割にとどまる。
お茶の水女子大の記者会見では女子大の存在意義に関する質問も相次いだが、室伏学長は「共学化の議論はなかった」とし、「女性が社会で男性と同等に暮らせる状況にはなっていない。女子大の存在意義はまだまだある」と強調した。
ただ、27年には福岡女子大に入学願書を受理されなかった福岡市の男性が、不当な性差別で違憲だとして、不受理処分の取り消しなどを大学側に求め提訴したことがある。その後、訴訟継続が困難などとして取り下げられたが、公立女子大の存在意義を問うものとして注目された。
お茶の水女子大の決定について文科省幹部は「共学化に向けた議論へのパンドラの箱を開いた。今後、公金で運営される女子大の存在意義が広く問われる場面もあるのではないか」と指摘する。
元東京都国立市教育長で教育評論家の石井昌浩氏は「これだけ男女共学が進んだ時代に、女子大が存続する理由はよくわからない。この際、女子大という枠組みを問い直すべきではないか」と話している。【2018年7月25日 iZa】
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【いよいよ緊迫するトルコのロシア製「S400」導入問題】
トルコの話に戻すと、喫緊の課題が6月29日ブログ“トルコ・エルドアン大統領 S400問題、シリア、更にはリビアと問題山積、国内でも新党の動き”でも取り上げた、ロシアからのミサイル防衛システム「S400」導入をめぐるアメリカとの対立です。
****内憂外患で追い込まれたトルコ・エルドアン大統領****
トルコのエルドアン大統領の求心力の低下が囁かれている。最大の理由は、6月23日に再投票された最大都市イスタンブールの市長選で、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマームオール候補者が、得票率で約9ポイント、得票数で約80万票もの大差で与党候補のユルドゥルム元首相に勝利したことである。(中略)
エルドアン大統領の党内の掌握力が弱まりつつあることを示す今一つの動きが、AKP創設メンバーのババカン元首相とギュル元大統領による新党結成の動きである。既にババカン元首相筋は、今秋を目途に新党結成の可能性の高いことを明らかにしている。
エルドアン大統領は外交面でも難問に直面している。最大の課題は、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」の導入を巡り悪化した米国との関係をいかに修復するかである。
トランプ米大統領とエルドアン大統領は6月29日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開催された大阪で会談し、ロシア製ミサイルの購入に関して意見交換している。
トランプ大統領は、同会談冒頭でトルコがロシア製ミサイル・システムを導入した場合に制裁を発動するかを記者団に問われ、検討していると答えるに留めた。その上で会談後の記者会見において、トルコが同ミサイル・システム購入を決定したことに懸念を表明し、トルコに対して、北大西洋条約機構(NATO)の同盟強化につながる対米防衛協力の推進を要請していた。
他方、トルコ大統領府は同会談後、トランプ大統領は両国関係を害することなく問題の解決を図りたいとの願いを口にしていたと発表していた。
今のところ、ロシア製ミサイル・システムのトルコ導入が始まっていないこともあり、米国の制裁も発動されていない。
ただし、米国は既に6月中旬時点で、ロシア製ミサイル・システムの購入を撤回しない限り、米国の最新鋭ステルス戦闘機「F35」をトルコに納入しないと表明している。また、仮に導入となった場合に備えて3種類の制裁が検討されていることも明らかにされている。
求心力が低下するなか、内憂外患に陥ったエルドアン大統領が、次に如何なる手を打ってくるのか注目したい。【7月12日 WEDGE】
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そのロシア製「S400」の第一陣がトルコに搬入されたことが今日報じられています。
エルドアン大統領は、トランプ大統領との会談で「米政権は制裁を行わない」との感触を得たとしていますが・・・・。【7月5日 産経】 ウマが合うトランプ大統領はともかく、米政権・議会がどう判断するか・・・。
もっとも、アメリカは中国、イラン、北朝鮮、ベネズエラと制裁を振りかざす「敵」が多い中で、インドとも貿易でもめていますし、デジタル課税ではフランスとも制裁が話題にのぼることにもなっています。
更に、NATO一員でもあるトルコとも・・・となると、まわりは「敵」だらけと孤立し、お友達はイスラエル、サウジアラビア、そして日本ぐらいのものになってしまいます。
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