孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダンでは女性器切除を犯罪化 女性問題改善への一歩 日本ではジェンダー・ギャップ指数年々悪化

2020-07-12 23:07:52 | 女性問題

(年々低下する日本のジェンダー・ギャップ指数ランキング【4月15日 データのじかん】)

 

【スーダン 女性器切除を犯罪化】

2014年に発効した欧州評議会の「女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス防止条約」(イスタンブール条約)は女性に対する暴力を犯罪とすることを締約国に義務つけており、該当する行為として精神的暴力(33条)、ストーカー行為(34条)、身体的暴力(35条)、レイプを含む性的暴力(36条)、強制的女性性器切除(38条)、中絶・不妊手術の強制(39条)が規定されています。

 

犯罪とされる女性に対する暴力のひとつが「女性器切除」

 

****女性器切除****

女性器切除(Female Genital Mutilation、略称FGM;「女性性器切除」とも表記する)あるいは女子割礼(じょしかつれい、Female Circumcision)とは、女性器のクリトリス切除を中心に小陰唇切除や大陰唇縫合あるいする行為。

 

主にアフリカを中心に行われる風習であり、成人儀礼のひとつ。

 

麻酔も無く行われることで死者も多発する、この風習では、どのパターンでも必ず性感帯である陰核切除をするので性行為に女性が快楽を感じることを悪とする考えの下で女性差別かつ児童虐待であると批判する人々が使う呼称であり、、一方で男性器の包皮切除を行う男子割礼と同等の儀礼であると肯定的に主張されるる場合では「女子割礼」の語が主に使われる。【ウィキペディア】

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後出の国連人口基金(UNFPA)の報告によれば、世界で性器切除(FGM)を経験した女性は2億人いるとも。

 

こうした悪しき風習がいまだに広く行われているのは、単に男性側の女性差別的発想だけでなく、それを受け入れる女性側の問題など、多くの要因があるとは思われます。それにしても・・・。

 

これまでもブログでしばしば取り上げてきましたが、まとまったものとしては、2008年3月9日ブログ“「国際女性の日」に女子割礼を考える”(「女子割礼」という言葉を使用したのは、別に、肯定的にみなした訳ではありません)

 

女性への身体的暴力の風習としては、胸の発育を強制的に止めるために胸を焼きつぶす「胸アイロン」といった風習も。

2017年1月8日ブログ“男性優位社会で女性に強いられる身体的犠牲「胸アイロン」 男性の性的暴力に関し、女性への責任転嫁も

 

遅々とした歩みのなかで、喜ばしい一歩も。

 

****女性器切除を犯罪化 スーダン統治機構が承認*****

スーダンの統治機構である「最高評議会」は10日、同国に広がる慣習の女性器切除を犯罪とする法律を裁可した。同国法務省が発表した。

 

同省の発表によると、軍人と文民で構成される最高評議会は、「女性の尊厳を傷つける」長年の慣行である女性器切除の犯罪化を含んだ一連の法案を承認した。

 

同国では、長年強権支配を続けてきたオマル・ハッサン・アハメド・バシル前大統領が、数か月にわたって続いた改革を求める大衆デモを受けて失脚。女性たちが重要な役割を果たしたデモから1年後、今回の改革が実現した。

 

内閣は4月、女性器切除を施した人物を処罰する刑法の改正を承認。同国法務省は、「女性器切除は今や、犯罪とみなされる」と述べており、最長3年の禁錮刑が科される可能性もある。女性器切除を施した医師や医療従事者は罰せられ、手術が行われた病院やクリニックなどは閉鎖され得るという。

 

同国のアブダラ・ハムドク首相は、10日の決定を歓迎し、「司法改革の途上における重要な一歩であり、また自由、平和、正義という改革のスローガンを達成するための重要な一歩だ」とツイッターに投稿した。

 

最も乱暴な方法では陰唇からクリトリスまで切除され、膣口は縫合して閉じられる。施術は不衛生な環境下で麻酔なしで行われることが多く、嚢胞(のうほう)や感染症が生じることも少なくない。また施術を受けた女性たちは後に性交痛に悩まされたり、出産時に合併症にかかったりすることもある。 【7月11日 AFP】AFPBB News

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スーダンでは“意外なほどの”民主的プロセスを経て、バシル前大統領独裁からの脱皮が実現しましたが、その民主的な流れは今も消えていないようです。

 

***女性器切除禁止、スーダンも****

アフリカや中東などの一部の国では、女性器の切除が長い間、慣習として続いてきた。今回、その禁止に踏み切ったのがスーダン。長期支配を続けた指導者が失脚して発足した暫定政権が、「人権侵害」と非難してきた欧米との関係改善などを図ったとみられる。すんなり浸透するのだろうか。

 

■指導者失脚、欧米との関係重視

(中略)ユニセフが2016年に出した報告書などによると、スーダンでは15~49歳の女性の87%が女性器の切除を経験していた。「性欲を抑えて貞操を守る」「結婚するために必要」「大人になるための儀礼」などとして行われていた。

 

ただ、術中に大量に出血したり、感染症になったりするケースが少なくない。欧米諸国を中心とした国際社会は「人権侵害だ」と批判してきた。スーダン国内でも、切除に反対する声が徐々に高まっていたが、状況はすぐには変わらなかった。

 

転機となったのは、スーダンで30年にわたる強権支配を続け、禁止措置に後ろ向きだったバシル前大統領が昨年4月に解任されたことだ。バシル氏の失脚につながった大規模デモでは、男性と比べて教育や職業の機会が限られてきた大勢の女性が参加し、自由や公平を求めた。

 

その後発足した軍と文民組織による暫定政権は、民主化に向けた取り組みや、前政権時代に対立していた欧米諸国との関係改善を模索。女性器切除の禁止もその一環とみられる。バシル氏についても汚職と外国通貨の違法所持などの罪で訴追に踏み切った。

 

ただ、切除の禁止がすぐに浸透するかどうかはまだ見通せない。複数の現地住民によると、性の話題をタブー視する家庭は今も多く、女性器切除について、話題にする機会はほとんどないという。

 

住民の一人は「切除が禁止されても、慣習が根強い地域ではしばらくは闇で行われる恐れがある」と心配している。

 

■根強い慣習、「闇」手術に懸念

女性器の切除は、スーダンだけの問題ではない。

 

ユニセフは報告書で、アフリカや中東などの約30カ国で少なくとも約2億人が女性器を切除した、と指摘している。15~49歳の女性のうち、切除した女性の割合はソマリアで98%、ギニア97%、ジブチ93%、シエラレオネ90%。5歳になるまでに切除する子どもも多く、イエメンでは85%の女児が生後1週間以内に切除していたという。

 

その一方、「人権侵害」との批判の高まりや女性の地位向上が進み、各国は撲滅に向けた取り組みを少しずつ進めている。

 

15~19歳で切除した少女は、1985年の51%から2015年ごろには37%にまで減った。国連は同じ年に定めた持続可能な開発目標(SDGs)で、30年までに女性器切除を含む有害な慣行を撤廃することを掲げている。

 

15~49歳の女性の2割が切除を経験しているというアフリカ東部のケニア。11年から女性器の切除を禁止し、違反者は禁錮か20万シリング(約20万円)の罰金が科されるようになった。ケニヤッタ大統領は昨年11月、「22年までに女性器切除を根絶する」と宣言した。実現するかは不透明だが、国内で切除する人は減少傾向にある。

 

スーダンの隣国エジプトでは、1990年代ごろから女性器切除に反発する声が強まり、2008年に違法になった。現在は法律に反して手術を行うと禁錮5~7年、女性が死亡したり重い障害が残ったりした場合はさらに刑期が長くなる。ただ、「切除してこそ一人前の女性」といった考え方もいまだに根強く、闇で切除が実施されているという。【6月9日 朝日】

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かつてはスーダンと言えば、約30万人が殺害され、約270万人が避難民になったとされる、国連が「世界最悪の人道危機」と呼んだバシル前大統領時代のダルフール紛争のイメージでしたが、いろいろ問題はあるにしても、こういう変化は喜ばしいことです。

 

そのダルフール紛争に関しては、暴力行為の中核にあったアラブ系民兵組織ジャンジャウィードの元幹部が13年越しで逮捕されたとか。【6月10日 時事より】

 

バシル前大統領に関しては、“スーダン政権を暫定的に運営する主権評議会は11日、ダルフール紛争をめぐって人道犯罪などに問われているバシル前大統領を国際刑事裁判所(ICC)に引き渡す方針を明らかにした。”【2月12日 CNN】とも報じられていました。現在の状況は知りません。

 

【出産前後の性差別によって「消失」した女性】

女性への暴力、女性差別といった問題に話を戻すと、その類の話は山のように世界でも、日本でもあって話は尽きませんが、そうしたもろもろの結果としておきることのひとつが・・・

 

****性差別により「消失」した女性、世界に640万人と推計****

国連人口基金(UNFPA)は30日、出産前後の性差別によって「消失」した女性がこの5年間で640万人に上った、という推計を発表した。UNFPAは女性差別をなくすための対策を続けているが、新型コロナウイルスの感染拡大で一部の支援が滞り、悪影響を懸念している。

 

UNFPAによると、男児と比べた出生率の低さや出産後の死亡率などから推計すると、「生きていたはずなのに、消失した女性」は1970年時点で6100万人いた。

 

一部の国で女児であれば中絶したり、育児放棄したりするためだ。この傾向はその後も一定の割合で続いており、今年までに累計で約1億4千万人に上る。特に、中国では累計7230万人、インドでは同4580万人が「消失」したという。

 

UNFPAは「世界人口白書」を毎年公表しており、今年は女性の人権侵害に焦点を当てた。処女検査や、性被害から守るために乳房を焼き潰す「胸アイロン」といった19の行為を「有害な慣行」と認定。世界で性器切除(FGM)を経験した女性は2億人、児童婚をした少女は6億5千万人いるという。

 

UNFPAはこうした差別をなくすための支援に取り組んでいるが、新型コロナによって一部の政策が中止を余儀なくされている。ナタリア・カネム事務局長は会見で「女性をモノのように扱うことをやめ、全ての人間には平等な権利があるということを理解しなければならない」と訴えた。【6月30日 朝日】

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【年々悪化する日本のジェンダー・ギャップ指数】

「消失」した女児の84%を中国・インドが占めていますが、日本も女性問題では世界的に非常に遅れた位置にあることは毎年の「ジャンダー・ギャップ指数」で明らかにされています。

 

しかも、経年的に悪化する傾向があります。

 

****ジェンダーギャップの縮まらない日本に光明はあるのか?ジェンダーギャップ指数2019が発表****

世界経済フォーラム(WEF)が、毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数の2019年度版を発表しました。

 

日本は昨年よりもランキングを11位落とし、調査対象となった153カ国のうち121位となりました。この結果は、主要7カ国(G7)の中で最低だっただけでなく、2006年から開始したジェンダーギャップランキングの歴史の中で日本にとって史上最低のランクとなっています。

 

「女性の活躍を推進する」や「男女平等社会を目指す」という言葉がテレビなどでもよく見受けられるようになった一方で、なかなか進まないジェンダー格差の解消。日本が抱える課題とは一体何なのか、指標から探っていきます。

 

日本が史上最低のランクとなったジェンダーギャップ指数。過去の推移から原因を探る

ジェンダーギャップ指数とは、健康・教育・政治・経済という4つの分野を14項目に分けてそれぞれの分野の指標におけるジェンダーギャップから総合的に判断されるものです。(中略)

 

ジェンダーギャップランキングの推移を見て行くと、計測開始の2006年から、年々ランキングが下がる傾向にあることがわかります。(中略)

 

つまり日本のジェンダー格差の状態は、この十数年間でほとんど解消されておらず、その結果、相対的な順位が徐々に下がっていていると言えます。

 

では日本のジェンダーギャップにおける課題とは一体何なのか、分野別に見ていくと「政治」・「経済」の分野での遅れが足を引っ張っていることがわかりました。

 

特に「政治」の分野は昨年の125位から20位近くランクを落とし、144位と大きく出遅れています。

また、他国で「教育」の分野におけるジェンダーギャップの解消が進む中、変化のない日本は昨年の65位から大きくランキングを下げました。

 

それではジェンダーギャップにおける日本のウィークポイントである「政治」・「経済」の分野について項目ごとにその指数を見ていきましょう。

 

「経済」分野で指数となるのは次の5つの項目です。

労働参加率 男女間の同一労働での賃金格差 男女間の収入格差 管理職につく男女の人数の格差 専門職、技術職につく男女の人数の格差

 

この項目のうち「労働参加率」、「男女間の同一労働での賃金格差」、「男女間の収入格差」の三つの項目で日本は世界平均を上回っています。

 

一方で、「管理職につく男女の人数の格差」や「専門職、技術職につく男女の人数の格差」世界平均を下回り、特に前者の項目については、平均の半分以下のスコアとなっており、ランキングも131位と著しく低く、女性が要職につきにくいという日本の課題が顕著に表されました。

 

続いて日本のジェンダーギャップの縮小のボトルネックとなっている「政治」分野で指数となるのは次の3つの項目です。

 

国会議員の女性率 閣僚の女性率 過去50年間の女性元首

 

日本は政治分野の全項目で世界平均を下回っていることがわかります。

過去50年間に国家のトップとなる女性がいなかったというのはもちろんのこと、閣僚の女性率の低さも目立ちます。

このような課題は経済での課題として見えた、「女性が要職につきにくい」とも合致しています。(中略)

 

女性が管理職につきにくい状況に変革を。企業の取り組みを探る

女性がなかなか要職に付けない背景には、日本社会に年功序列が根付いており、労働時間に比例して役職につきやすいということがあります。

 

育児や介護などの負担が女性にかかりやすい日本では、必然的に女性の労働時間が長くなったりキャリアに空白期間ができたりして、年功序列から外れてしまう、という事例が多いのです。

 

そこで、近年、女性の活躍にもつながる新たな制度の導入に乗り出す企業も少なくありません。(中略)

 

ジェンダーギャップを解消するためには社会全体での取り組みが必要

一方で、福利厚生を充実させることにも、まだまだ課題は多くあります。

 

例えば、課題の一つとして、家庭の中で福利厚生の充実している企業に勤めている人にライフイベントに伴う負担の比重が偏ってしまい、その人自身だけでなく、企業側にも負担がかかりやすくなる、ということが挙げられます。

 

こうした課題を解消するためにも、働きやすい制度を特定の企業のみが採用するのではなく、社会で広く導入することで、きちんと負担を分け合うことが重要になってくると考えられます。

 

ジェンダーギャップを解消するための様々な改革を取り入れることははじめは負担が大きいかもしれませんが、少子高齢化で労働力不足が続く昨今、継続的に取り組めば、女性の労働力を最大限に活用することもでき、結果的に利益に繋がっていくと考えられます。(後略)【4月15日 データのじかん】

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最近目にした、興味深い記事。

明治時代の女性は、それまでの「まげ」をやめて髪を短く切った時に、役所に届け出る必要があったとか。

 

****明治の女性、髪を切るのに「断髪届」 千葉の民家で発見 ****

明治時代の女性が髪を切った時に千葉県に届け出る「断髪届」が、同県白井市の民家から見つかった。文明開化で男性はまげをやめたが、女性が髪を短くしてまげをやめることは禁止され、届け出をしないと罰せられた。

 

市教育委員会の戸谷敦司・学芸員は「女性に伝統的な美を守らせたいという、当時の価値観を示すとみられる貴重な資料」と話している。

 

市教委が谷田(やた)地区にある旧家の井上家で行った古文書調査で見つかった。日付は1876(明治9)年10月25日。井上家長男の妻が長患いが治るよう願をかけて7月に髪を切った、と義父らが届け出ている。押印されていないことから控えとみられるという。

 

71年に「散髪脱刀令」が出され、「ざんぎり頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」と歌われたように男性の断髪が進んだ。女性でも髪を切ってまげをやめる人が出てきた。

 

まげは油で固めるため、洗髪は半日がかり。夏場でも月に1度洗髪できるかどうかで、悪臭のため頭痛に悩まされる人もいたという事情もあったようだ。

 

ところが、女性の断髪に対して世論は反発。72年以降、東京府(当時)を皮切りに全国で軽犯罪を取り締まる「違式●(ごんべんに縦に「土」を二つ。かい)(かい)違条例」が制定され、立ち小便や入れ墨などと一緒に、理由のない女性の断髪も禁止された。

 

戸谷学芸員は「井上家の場合、7月に病気回復の願かけとして髪を切ったのは、病気で夏場は耐えがたかったというのも理由なのでは」と推測している。【6月29日 朝日】

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“夏場でも月に1度洗髪できるかどうか”・・・・想像できない苦労ですね。

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