孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

男女格差  日本、パキスタン、アフガニスタンの現状

2022-07-31 23:04:24 | 女性問題
(【7月13日 NHK】 「ジェンダーギャップ指数」の4分野バランス)

【女性に認められた法的権利は、男性のスコアを100とすると平均でわずか4分の3の76.5】
世界の多くの国・地域で、多くの場面で女性が男性に比べて劣後した権利しか有していない・・・というのは“今更”の自明の事実です。

****男性と同じ経済的権利を持たない女性は世界全体で24億人近く****
2021年、パンデミック下でも23カ国が女性の経済的包摂促進に向け法改正を実施
男性と同等の経済的機会を与えられていない労働年齢の女性は約24億人、女性の完全な経済参加を阻む法的障害が残る国は178カ国に上る、と世界銀行は報告書「女性・ビジネス・法律2022」(WBL)で指摘している。86カ国で女性が何らかの雇用制限を受けており、95カ国は同一労働同一賃金を義務付けていない。

世界全体で見ると、女性に認められた法的権利は、男性のスコアを100とすると平均でわずか4分の3の76.5に過ぎず、法的格差は明らかだ。

ただし、世界規模のパンデミックによる悪影響は女性の生活や暮らしに偏ってはいるものの、報告書によると、2021年に23カ国が法改正を実施し、女性の経済的包摂促進に向け不可欠な措置を講じた。

「進捗はみられたものの、男性と女性で期待できる生涯賃金には世界全体で172兆ドルの差がある。これは、年間の世界GDPの2倍近くに相当する。」と、マリ・パンゲストゥ世界銀行専務理事(開発政策・パートナーシップ)は述べた。「環境に配慮した強靭で包摂的な開発の達成に向けて前進するため、各国政府は、女性がその潜在能力をフルに発揮でき、100%の恩恵を平等に享受できるよう、法改正を加速させる必要がある。」

同報告書は、可動性、職場、賃金、結婚、育児、起業、資産、年金の8つの分野の法規制が女性の経済参加にいかに影響を及ぼしたかを190カ国を対象として検証している。こうして得られたデータは、ジェンダーの平等に向けた世界的進展の客観的かつ測定可能なベンチマークになる。(中略)

報告書最新版はまた、25カ国において「女性、ビジネス、法律」の分野別に法律の施行状況を検証している。分析の結果、紙の上の法と施行実態には大きな開きのあることが明らかになった。ジェンダーの平等向上には法律だけでは十分ではなく、履行や施行だけでなく、社会・文化・宗教上の規範といった要素も関わってくる。こうした開きについては、今後の「女性・ビジネス・法律」報告書でさらに掘り下げていく。(後略)【3月1日 世界銀行】
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【日本のジェンダーギャップ 改善の傾向がないことが問題】
“紙の上の法と施行実態には大きな開きのあること”・・・日本もその事例でしょう。
法律的には一定に平等が実現しているにもかかわらず、毎年発表される「ジェンダーギャップ指数」(経済、政治、教育、健康の4分野に関する統計データから算出する男女格差を示すもので、世界経済フォーラム(WEF)が発表)では、日本は下位を低迷しています。

2022年版では、日本の指数は146カ国中116位と主要7カ国(G7)で最低でした。

****ジェンダーギャップとは 日本はG7で最低****
▼ジェンダーギャップ 
社会や家庭などで男女の違いから生じている格差を示す。各国の格差の度合いを比べる指標として世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数」が知られる。

2022年版で日本の指数は146カ国中116位と主要7カ国(G7)で最低だった。日本はこれまでも下から2~3割の順位が定位置となっており、男女平等の実現で出遅れている。

指数は経済、政治、教育、健康の4分野に関する統計データから算出する。日本は特に政治が139位、経済が121位と遅れが目立つ。識字率や初等教育の就学などでは男女同等だが、国会議員や管理職の女性比率の低さなどが足を引っ張る。意思決定の場に女性が少ないと格差を生む社会構造が温存されやすい。

多岐にわたる男女格差のなかで特に焦点となるテーマの一つが賃金だ。ジェンダーギャップ指数が1位のアイスランドは18年、企業が男女の同一労働同一賃金を証明するよう世界で初めて義務付けた。期限までに証明できない企業には罰金を科す。

日本も今年7月、女性活躍推進法の省令改正で大企業などに男女の賃金格差の情報開示を義務付けた。実際に賃金の男女差がどこまで縮小されるかが注目される。【7月31日 日経】
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日本の問題は単に格差が大きいということだけでなく、長期的に見て事態が改善されていないということにあります。

****韓国に大差をつけられ116位…日本のジェンダーギャップが「12年前のレベルに“後退”した」ワケ****
(中略)
今年も1位はアイスランドだったが、日本は分析対象国146カ国中116位だった。G7で最下位にあるのは変わりなく、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国の中でも、124位のトルコを除くともっとも低い。

さらに今年は、去年まで日本より順位が低かったバヌアツ共和国が日本より順位を上げたため、東アジア・太平洋地域でも最下位の19位となった(去年日本より下位にあったパプアニューギニアは、今回の評価に参加しなかった)。アジア・太平洋地域で政治・経済的リーダーの役割が期待される日本にとって、とても残念な結果である。

対象国数が近い2015年より大幅にダウン
(中略)日本の順位は昨年156カ国中120位だったため、一見今年は順位(116位)が上がったかのように見えるが、今年は対象国が10カ国も減ったので、相対的な順位が上がったとは言えない。
分析対象国数が145カ国で、今回と近かった2015年の日本の順位は101位と、今年よりはるかに高かった。

もちろん、ジェンダーギャップ指数だけで男女格差を十分に表すことはできない。女性の間の格差や性的マイノリティーの状況はこの指数だけでは分からないし、性別以外の属性もクロスして分析しなければ、社会のあらゆる格差を明らかにすることはできない。ジェンダーギャップ指数は、社会に存在する不平等のあり方を分かりやすく表す手法のうちの一つであることを留意したうえで、有効に活用することが大事だ。

それでは、15年間のジェンダーギャップ指数から何が見えてくるだろうか。世界と日本の15年間の変化を手がかりに日本の課題を考えてみたい。

「他国が頑張っているから遅れて見える」わけではなかった
ジェンダーギャップ指数は男女のギャップを0から1の数値で示しており、最高スコアである1は男女格差がない平等な状態(パリティ)を示す。反対にスコアが0に近くなるほど、男女のギャップが大きいことを意味する。

13年連続1位であるアイスランドと日本の総合スコアを比較してみると、アイスランドが0.908と、ジェンダー平等が90%程まで達成されているのに対して、日本は0.650にとどまっており、ジェンダー平等から程遠い状況がうかがえる。

日本のジェンダー格差は今年に限ったことではない。今年の総合スコアは0.650であるが、これは昨年の0.655を下回る。

また、ジェンダーギャップ指数が初めて発表された2006年からの長期的な変化を見ても、日本の総合点はほとんど変わっていない。2006年は0.645で、2015年にかろうじて0.670まで上がったものの、その後はスコアを落とし、挙げ句の果てに今年は2010年(0.652)以前の水準にまで後退した。

つまり、男女格差が大きいだけでなく、長期的にみても改善の傾向がないのであり、それこそが問題なのである。
この数値から言えるのは、これまで言い古されてきた「諸外国が頑張っているから相対的に日本が遅れて見えるだけ」というのは言い訳に過ぎず、「日本はこの十数年間ジェンダーギャップを放置してきた」ということである。

コロナでさらに開いた格差
分野別の数値からはさらに詳細が見えてくる。
経済と政治分野で男女差は一貫してとても大きい。とりわけ、昨年(2021年)と比べると、今年は経済分野で121位まで順位を下げて(昨年117位)おり、スコアも0.604から0.564に下がった。経済分野の男女格差が開いたのは、女性の労働参加率の下落幅が大きかったことが響いた。

「男女共同参画白書」でも、コロナ禍の影響には男女差があると指摘されている。特に小、中、高校の一斉休校があった2020年3月から4月には、男女ともに就業者数が大幅に減ったが、女性の就業者の減少幅は男性より1.8倍も大きかった。

その後も、女性の就業率はなかなか回復せず、回復の速度も男性より遅い。元々貧困率が高くケア責任も担っているシングルマザーたちは、特に苦しんだ。コロナ禍は「女性不況」とも言われるほど、女性に大きなダメージを与えたが、それに対する政府の対策はジェンダー格差を十分に考慮していたとは言えない。

定額給付金は世帯主にまとめて支給され、雇用維持のための各種支援も企業を通じて行われた。コロナ禍以前から存在していたケア負担や不安定な労働条件が原因で労働市場から撤退せざるを得なかった女性たちに、スピード感を持って的確な支援を届けることができなかったのである。(中略)

「善意にお任せ」だったが女性候補者3割超に
日本でも2003年に、「2020年までに社会のあらゆる意思決定の場における女性の比率を30%にする」という目標を掲げていた。しかしこの、いわゆる「202030」は達成できず、政府はその原因に対する精査もせず、「2025年までに国政選挙の候補者の女性割合を35%にする」という新しい目標を立てた。目標を立てているだけでそれを強制する方法は設けず、各政党の善意にお任せ状態である。

それでも、先日行われた参議院選挙では、各政党が世論に後押しされる形で女性候補者を増やす努力をした結果、女性候補者比率が初めて3割を超えた33%となった。

女性候補者を50%にする目標を掲げた立憲民主党が先導的にその目標を達成したほか、自民党も最終的に比例代表の女性候補者比率を3割に上げることに成功した。(中略)

まずは候補者を増やす努力を続けることで、政治を志す女性が増え、次の選挙にはもっと有能な人材が政治に参入することが期待できる。有権者にとっても女性候補者が増えると自分たちを代表してくれる人を選べる選択肢が増え、それ自体が選挙や政治に対する市民の関心を高めることになる。(後略)【7月26日 お茶の水女子大学 ジェンダー研究所教授 申 琪榮 (しん・きよん)氏 RESIDENT WOMAN】
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【パキスタン 女性、トランスジェンダー、移民労働者、遊牧民など数百万人は電子身分証明(ID)カード不所持】
“紙の上の法と施行実態には大きな開きのあること”の事例として日本を取り上げましたが、法律・制度的に差別が既定されているという話になれば当然ながらより深刻な問題になります。

****問題根深いパキスタンの電子ID、数百万人締め出し****
パキスタンでは選挙で投票したり、さまざまな公的サービスを受けるのに電子式の身分証明(ID)カード「CNIC」が必須だが、父親のIDカードを提示しないとCNICを取得できなかった。

しかし母子家庭で育った女性がCNICの発行を求めて起こした訴訟でシンド州の高等裁判所は昨年11月、女性の訴えを認める画期的な判決を下し、母親の市民権記録に基づいて発行するよう当局に命令。母子家庭で育つとCNICを取得できない状況に風穴が開いた。

もっともパキスタンでは女性やトランスジェンダーなど数百万人が依然としてCNIC制度から除外されており、問題は根深い。

訴訟を起こしたのはカラチ出身のルビナさん(21歳)。CNICを手に入れようと3年間にわたって何度も挑戦した挙句、提訴に踏み切った。

「申請に行くと父親のカードを持ってくるように言われる」とルビナさん。「私が生まれた直後に父は私たちを捨て、母が育ててくれた。父のID書類がそろえられるわけがない」

今回の判決により、ルビナさんは母親の定年退職後に州の教育局で母親の仕事を引き継ぐ申請が可能になった。

非営利団体「パキスタン人権委員会(HRCP)」のハリス・カリクエ事務局長によると、今回の判決で母子家庭の子どもは事実上CNICが取得できないという問題に終止符が打たれた。

CNICがないと、公立教育機関や医療保障制度を含めたあらゆる公的サービスへのアクセスができない上、銀行口座の開設や就職活動もできず、「端的に言って、市民としての権利がまったくない」

CNICを管轄する国家データベース登録局(NADRA)は、これまで制度から除外されてきた人々への接触に努めていると説明。連邦政府の政策の実施状況を監督する、首相直属の戦略改革チームを率いるサルマン・スフィ氏は、「データベースに登録されるはずの人々を排除しないというのが政府の明確な方針だ」と述べた。

<まるで外国人>
2000年に設立されたNADRAは国の生体認証データベースを管理し、成人の96%に相当する約1億2000万枚のCNICを発行しているという。パキスタンの総人口は約2億1200万人。

各カードは13桁の固有のID番号、本人の写真、署名、マイクロチップで構成され、チップには虹彩スキャンと指紋のデータが記録されている。

しかし女性、トランスジェンダー、移民労働者、遊牧民など数百万人はいまだにCNICを手にしていない。

世界銀行によると、全世界で身分を証明する手段を持たない人は10億人余りに上る。

各国政府はガバナンスを改善するためと称してデジタルID制度の導入を進めているが、国連の人権特別報告者は、こうした制度は疎外されたグループを排除しており、社会保障制度を利用する前提条件にすべきではないと訴えている。

HRCPが昨年行ったカラチの移民労働者への調査で、女性はCNICを持っていないケースが多く、夫が死んだり家を出たりすると貧困に陥る危険性があることが分かった。

親が身分登録をしていないと子どもは出生証明書を取得できないため、特に弱い立場に置かれ、人身売買や強制労働のリスクにさらされているという。

HRCPは、移動式の登録拠点や、特に立場の弱い人々の登録を支援する女性スタッフの増員、さらには手続きの簡素化、移民の申請を難しくしている書類要件の緩和などを提言している。

パキスタンに何十年も住んでいるアフガニスタン難民約280万人のうち、登録しているのはわずか半数。パキスタンには、未登録のベンガル系やネパール系、ロヒンギャ族の移民がかなりの数で存在する。

CNICの発行を求める活動を率いるシェイク・フェロス氏は最近の抗議行動で、「ベンガル系パキスタン人の大多数はCNICを持たず、自分の国であるにもかかわらず外国人や不法移民のように暮らしている」と訴えた。

NADRAは、バングラデシュ、ケニア、ナイジェリアのデジタルIDシステムの構築も支援しており、「特に女性、少数民族、トランスジェンダー、未登録者」に専門に対応する登録部門を設置していると説明している。

「女性が男性職員と接するのをためらうという社会文化的な障壁を克服するため」、特に国境沿いの州には女性専用の拠点が複数置かれ、高齢者や障害者を優先しているという。(後略)【7月30日 ロイター】
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【アフガニスタン タリバンによって就業機会を奪われた女性】
法律や明示された制度であれば改善の余地もありますが、権力者の恣意的意向で決まるという話になると、権力者の考えを変えさせるか、権力者そのものを変えるしかないということにもなります。

上記パキスタンの隣国アフガニスタンで、タリバンの意向によって女性の教育・就業の機会などが大きく制約されていることは、これまでもしばしば取り上げてきました。

タリバンによる女性に対するニカブ・ブルカ(顔を隠す衣装)の強要という問題もありますが、一番の問題は女性の就業機会が奪われたことでしょう。

失業した女性は生活の糧を失い、生きがい・夢を失い、追い詰められていきます。

****【アフガン】髪も抜け落ち… タリバン政権で失業 うつ病に苦しむ女性たち****
イスラム主義勢力タリバンの暫定政権発足後、たくさんの市民が仕事を失っています。

特に生活においてさまざまな制限が課されている女性たちが、失業をきっかけにうつ病にかかってしまうケースが増えているといいます。 仕事を失い希望まで奪われてしまっている女性たちの現状を、現地通信員が取材しました。【7月16日 日テレNEWS】
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****タリバン「女性の生活破壊」=デモ参加者に暴行、児童婚増加―人権団体****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは27日、アフガニスタンでイスラム主義組織タリバン暫定政権の発足後、「女性の生活が破壊」されているとの報告書を公表した。暫定政権に抗議した女性への暴力や、児童婚が増えていると指摘。労働や教育の機会が奪われていると非難した。

アムネスティの調査員がアフガンを訪れ、14〜74歳の女性101人と面談するなどして状況を調べた。抗議デモに参加し、数日間拘束されたという女性は、タリバンの看守から家族の写真を見せられ「全員殺せる」と脅迫を受けた上、強く蹴られてけがをしたと証言した。

中部で暮らす女性(35)は昨年9月、生活苦から670ドル(当時のレートで約7万4000円)相当の現金と引き換えに13歳の娘を30歳の隣人と結婚させた。もう一人の10歳の娘には英語を学び、職を得て家族を支えてくれることを期待している。一方で「もし学校が再開しなければ、娘を結婚させなければいけない」と懸念も漏らした。タリバン政権下で女子が中等教育から排除される状態が続いている。【7月27日 時事】 
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