(【7月30日 WSJ】 4歳以下の子供では、新型コロナより、通常のインフルエンザ・肺炎のリスクが10倍以上大きい・・・という話にも)
【WHO緊急委員会「その影響は今後数十年続くだろう」】
WHOは新型コロナ感染拡大について、長期化し「その影響は今後数十年続くだろう」とも。
****コロナは「長期化」、「対応疲れ」にも警鐘 WHO緊急委****
世界保健機関は1日、前日の7月31日にスイス・ジュネーブのWHO本部で開かれた新型コロナウイルスへの対応に関する専門家の緊急委員会の内容を発表した。緊急委員会は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は長期化するとの見通しを強調した。
緊急委員会の開催は、新型コロナウイルスの流行が始まった昨年12月以降4回目。会合は6時間近く続き、一部の出席者はテレビ電話を通じて参加した。
WHOの発表によると、緊急委員会は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は長期化するとの見通しを強調し、各国が社会経済的な圧力を受けているとして「対応疲れ」のリスクに警鐘を鳴らした。
WHOは今年1月30日、新型コロナウイルス感染症がWHOの警告としては最もレベルの高い「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言。委員17人、アドバイザー12人から成る緊急委員会は全会一致で現在もその緊急事態は継続していると判断した。
緊急委員会は、「社会経済的な圧力がみられる中で対応疲れのリスクを軽減するため」、新型コロナウイルス感染症への対応に関して表現に配慮した実用的な助言を提供するようWHOに求めた。
緊急委員会の開催に当たり、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「6か月前、緊急委員会がPHEICを宣言すべきだと勧告したときは感染者は100人足らずしかおらず、中国以外に死者はいなかったことを思うとはっとする」と述べ、「今回のパンデミックは1世紀に1度の健康危機であり、その影響は今後数十年続くだろう」との見方を示した。
緊急委員会は、新型コロナウイルスの流行だけでなく季節性インフルエンザなどの他の病気の流行にも対応できる医療システムの整備を各国に呼び掛けた。また、新型コロナウイルス感染症の対応には「世界的な連帯」が必要だと指摘するとともに、このウイルスをめぐる「誤った情報や偽情報」への対応も呼び掛けた。 【8月2日 AFP】
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【ウイルスは消滅せず、リスクに関する冷静な判断が必要】
「その影響」というのが具体的に何を指しているかは判然としませんが、少なくとも短期間にウイルスが消えてなくなるということはなさそう。
そうなると、文字通り「ウィズ・コロナ」というように、どのように新型コロナウイルスと「共存」していくかという発想のもと、一定の感染は不可避という判断で、必要以上に騒いだりすることなく、長期的に継続可能な対応をとっていくことが必要になります。
ロックダウンはもちろん、移動辞職・営業自粛というは、ごく短期的には可能でも長期的に継続することはできません。どうしても必要なときの臨時措置です。
普段の社会生活については、ゼロにすることはできない新型コロナのリスクを、「どこまでなら許容できるか」という冷静な判断が必要になります。
下記は、そうした観点からのアメリカにおける学校再開を中心に論じた記事です。
****コロナ感染リスク、どこまで許容するか****
ウイルスは消滅せず、米国人は冷静に判断を
これまで感染を封じ込めてきた地域も含めて、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が再燃している。新型コロナ感染症(COVID-19)のリスクは当面のあいだ排除できず、制御する以外にないことが明らかになっている。
つまり、米国人はどれほどのリスクを許容すべきかを決めなければならない。今秋の学校再開を巡る議論が示すように、それは単純なことではない。
活動の再開は必然的に、感染に弱い人々を脅威にさらすリスクを伴う。多くの親や教師、地元のリーダーは、そうしたリスクは許容できないと結論付けている。
ただ、エビデンスを現実的な視点で見れば、学校閉鎖を続けても大して安全性が高まるわけではないことがうかがえる。
新型コロナ感染症は季節性のインフルエンザに比べ、子どもへの危険度は低い。教師は他の労働者より感染しやすいというわけでもない。一方、学校閉鎖の継続は子どもの教育や心身の健康、働く親の生計に至るまで、その他のあらゆる代償を伴う。
そうした不安は経済全体に影響する。買い物や仕事、医師の診察が家にいてもできるようになり、日常生活の多くの活動に関しては感染の脅威を排除することができたかもしれない。
だが、飛行機での移動や外食など他の多くの活動では、それは不可能だ。このため、リスク志向を調整しなければならず、さもなければ広範な経済活動が停止されたままになるだろう。
コロナのリスクは不透明なため、どの程度のリスクを許容すべきか理解するのも難しい。感染した場合の致死率は0.5~1%(インフルエンザの5~40倍)だが、そもそも感染する確率は分からない。
地域社会での流行度や、感染しやすい人が何人いるか、感染拡大ペースを抑える上でどのような措置が講じられているかによって変わるからだ。
さらに、一人一人の行動が他の人々に影響するため、個人のウイルスへの恐怖心だけでなく、他人にうつしてしまうことへの恐怖心(もしくはその欠如)も、それぞれのリスク志向に反映される。
リスク志向は人によって大きく異なる。コロナ感染が多発する場であることを知りつつも、若者の多くは混雑するバーやパーティーに行きたがる。
それとは反対の方向で間違う人もいる。米キニピアック大学が4月に実施した調査では、自分自身や家族がコロナで入院する可能性を非常に懸念している、もしくは幾らか懸念している、との回答が75%に上った。
ところが米疾病対策センター(CDC)によると、今のところ入院率は全米人口のわずか0.1%にとどまっている。感染が確認された人のうち、入院したのは14%にすぎず、2%が集中治療室に入った。
人はこれまでなかったようなリスクや、不安をかき立てるリスクに対し、より強い恐怖心を抱く傾向がある。そのため、石炭やガス、石油の方が多くの死亡事故につながっているにもかかわらず、原子力発電の方を一段と恐れる。また、自分で管理できないリスクには警戒心を強めるため、自家用車を運転する以上に厳しい安全基準を航空会社に守らせる。
こうした行動面の特異性が、コロナに対しても作用している可能性がある。CDCによると、2~7月にインフルエンザで亡くなった子どもの数はコロナの3倍だった。だが親たちにとって、インフルエンザはよく知られているがコロナ感染症は未知の病気であるため、ますます警戒心が高まるのだ。(中略)
全体的なリスクが高いか不確実だったとしても、職業と活動内容における相対的なリスクを指針として用いることができる。
一例として、スーパーマーケットはパンデミックを通して営業を続けているが、労働組合に加入している従業員の間では、コロナによる死亡率は労働人口全体をやや下回る。食品加工や食肉加工工場の従業員ははるかに高水準だ。
スウェーデンのある研究によると、タクシーやバスの運転手は全職業の平均に比べ感染率が4倍に上った一方、同国の学校で授業を続けた教師らの間では、ほぼ平均的な感染率となった(オランダ政府は教育・保育関連の労働者の感染率が他の職業より大幅に低いと指摘している)。
こうしたことが示唆するのは、マスク着用など予防策を講じれば、店舗や学校の再開は経済全体のリスク上昇にはつながらず、しかも失業や教育機会の減少、隠れた児童虐待など、別のリスクが抑えられるということだ。
とはいえ、店舗の従業員や教師は社会全体のために個人的にリスクを負う面もある。社会はそれを認識すべきだ。
「警察、消防、建設、鉱業、軍関係者は危険な職業に就いているが、そうすることでより高い報酬が支払われている」とインディアナ大学のジョン・グラハム教授は指摘する。
ジョージ・W・ブッシュ政権で規制コストや給付金の審査を担当したグラハム氏は、「教師はそのような状況で働くために職に就いたのでは決していない。感染リスクに直面しながら働く意志のある教師に対し、米国はコロナプレミアムを支払うべきだ。だからといって、教師は仕事を強いられるべきではない」と語った。【7月30日 WSJ】
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上記は、累計の死者数が15万7千人、8月1日の1日の死者数が1207人(感染者数ではなく死者数!)というアメリカにおける議論です。
累計の死者数が1026人、7月31日の1日の死者数が6人(7月に入って0から3人という状況でしたが、感染者数の増加に伴って、さすがに増えてきました。それでも4月、5月の20~30人が毎日が死亡していた状況とは明らかに異なります)であれば、もっと落ち着いた議論が可能と思われます。
その際重要なことは「人はこれまでなかったようなリスクや、不安をかき立てるリスクに対し、より強い恐怖心を抱く傾向がある」という特異性を冷静・客観的に認識して、その影響を排除していくことでしょう。
【異例のスピードで進むワクチン開発 患者急増も治験には有利】
「ウィズ・コロナ」の在り方を決定的に変えるのが、ワクチン・治療薬の開発状況です。
ワクチン開発は、従来は数年の期間を要していましたが、今回新型コロナに関してはその緊急性・重要性に鑑みて異例のスピードで進展しているようです。
(「緊急性・重要性」というのは、欧米社会にとってということであり、アフリカなど途上国にとって「緊急・重要」な感染症拡大は新型コロナ以外にも多々ありますが、それらが「異例のスピード」で対処されることはありません。)
一時期、第1波が収まりつつあった時期、患者数の減少によってワクチン開発の治験に時間がかかるのでは・・・という懸念がありましたが、最近の感染拡大の“おかげ”で、治験に必要な患者数も確保できそうです。
****コロナワクチンの成否、感染者急増で秋にも判明か****
米国をはじめ世界中で新型コロナウイルスの感染者が急増していることで、予防ワクチン候補の成否が早期に判明する可能性が出てきた。
ワクチンが有効であることを証明するには、特定数の被験者がまず標的とするウイルスにさらされる必要がある。ワクチンを投与されている被験者の方が投与されていない層と比べて、罹患(りかん)数が著しく低いことを研究者が確認できるようにするためだ。
新型コロナの流行が落ち着けば、ワクチンの効果を見極めるのに長い時間を要する可能性がある。だが、足元で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が大幅に増えていることで、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、最終の治験結果を得るまでの期間が数週間、もしくは数カ月短縮され、今秋半ばか終盤に早まることもあり得ると指摘する。(中略)
世界保健機関(WHO)によると、現段階で20のコロナ予防ワクチン候補が治験段階にある。これまで実施された小規模な初期段階の治験では、ワクチン候補が総じて安全で免疫反応を引き起こすことが確認されたが、そうした治験は実際にコロナ感染を予防するかどうかを証明する設計にはなっていない。
現在、ワクチンがCOVID-19感染を予防、もしくは感染リスクを低減できるのかを明確に判断する最終段階の大規模な治験が相次いで始まっている。3万人を対象とする米モデルナ、および米ファイザーと独バイオNテックのワクチン候補の治験は月内に開始される見通しだ。
当初は、ワクチン開発の成否を見極めるには何カ月もかかるとの見方が出ていた。ウイルス封じ込めに向けたロックダウン(都市封鎖)で、感染者の伸びが鈍化傾向にあったことに加え、気温が上がる夏季にはさらに感染者が減る可能性があったためだ。
2016年に流行したジカ熱など、過去の感染症では、早期に流行が収束したことで、ワクチン開発が間に合わないケースがあった。
だが、COVID-19については、ブラジルやペルー、南アフリカなどの国々で増加が続いている。米国でも6月半ば以降、カリフォルニアやテキサス、フロリダ州などで感染者が急増している。
モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「米国で状況が悪化していることで、早ければ10月にも結果が判明する可能性がある」と述べた。(中略)
5月にオーストラリアで初の治験を開始した米ノババックスは、感染者が急増している米国で大規模な治験を計画している。同社のグレゴリー・グレン研究・開発(R&D)部門社長がインタビューで明らかにした。
1カ月前は、米国内での感染者が減ると想定し治験場所として適切ではないとみていたが、状況が変わったという。同社はまた、ブラジルや南アなどの国でも治験実施を検討している。
オックスフォード大学とコロナワクチンを共同開発する英アストラゼネカは、5月に英国内で開始した大規模な治験の結果が得られるのが遅れないか懸念している。英国内での感染者が減っているためだ。
同社はそのため、8月から米国で開始予定の大規模な治験で、早期に結果が得られるのではないかと期待を寄せている。治験場所の選定にあたっては、感染者が急増している地域などを基準とするとしている。
アストラゼネカとオックスフォード大はブラジルですでに治験を開始しており、感染者が多いチリへの拡大も検討中だ。【7月28日 WSJ】
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こうしたなかで、ロシアは10月から実用化に入るとの情報も。
****ロシア「10月からワクチン接種」 安全・有効性に疑問視も****
ロシアのムラシュコ保健相は1日、現地メディアの取材に「10月から広い範囲でワクチン接種を始めることを計画している」と述べた。
アメリカなど各国で実用化に向けた臨床試験が続く中、ロシア政府は、研究機関で開発中のワクチンを8月10日ごろにも承認する見通し。
ただ、このワクチンは、3段階ある臨床試験の2段階目を終えた段階で承認される見込みで、一部の欧米メディアは、安全性や有効性を疑問視している。
ワクチンをめぐっては、イギリス政府が7月、ロシアがワクチン情報を狙ってサイバー攻撃をしていると名指しで批判し、ロシアは、「根拠のない非難だ」と反発していた。【8月2日 FNNプライムオンライン】
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このロシア製ワクチンを各国が使用できるのなら、「ロシアが大規模治験をやってくれる」と、その結果を待てばいいという話になるのでしょうが、仮に効果・安全性が確認できても、ロシアは「まずは自国民に投与する量を確保してから」ということで、他国には譲らないのでしょう。
ロシアだけでなく、アメリカ、欧州、そして日本も、ワクチン開発の青田買いで「囲い込み」に奔走しているのが実情で、ここでも国際協調は吹き飛び、カネのない途上国は後回しということになります。
【欧米の「自国第一」のなかで、中国の「ワクチン外交」? すでにフィリピンは中国頼みの状況】
そうなると有効になるのが「ワクチン外交」
おそらく中国などは、「マスク外交」ならぬ「ワクチン外交」で、途上国などの中国への傾斜を得ようとするのでしょう。
すでにフィリピン・ドゥテルテ大統領は中国への傾斜を強めています。
****「フィリピンを優先して」ドゥテルテ氏、ワクチン提供で中国に懇願―中国メディア****
中国共産党機関紙、人民日報海外版のニュースサイト海外網は28日、フィリピンのドゥテルテ大統領が27日の施政方針演説で、新型コロナのワクチンができればフィリピンが最初に供給を受けられるよう中国に懇願したことを明らかにしたと報じた。(中略)
フィリピンの新型コロナ感染者数は8万2000人を超えている。(中略)
フィリピンは、10月に5つのワクチンについてフェーズ3の臨床試験を開始する予定で、うち3つは中国で開発中のワクチン候補だという。【7月29日 レコードチャイナ】
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****比、ワクチンで領有権棚上げ? 中国の海洋進出勢いづける恐れ****
フィリピンのドゥテルテ大統領が、中国から新型コロナウイルスのワクチンを提供してもらう代わりに、南シナ海領有権問題を棚上げしかねない消極的な発言をして波紋を呼んでいる。中国の海洋進出を勢いづける恐れもあり、識者から「敗北主義者」との批判も飛び出した。
「(領有権を争う海域近くの)パラワン島沿岸に海兵隊を派遣した途端、ミサイルが直撃するだろう。わが国には中国と戦争する余裕はない」
ドゥテルテ氏は7月27日の施政方針演説で、中国との軍事力の差に触れ「冷静になった方がいい」と国民に呼び掛けた。【8月1日 共同】
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