孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  自動運転車開発の現況 位置情報を提供する中国版GPS「北斗」全面稼働

2020-08-03 23:10:40 | 中国

(乗客は後部座席に取り付けられたタブレットを操作し、乗車確認をする【8月2日 朝日】)

 

【上海 公道上で自動運転タクシーの無料体験サービス】

いろんな技術革新があるなかで、個人的に一番期待しているのが「自動運転」

 

私は原付しか免許持っていないので、早く「ハンドルのない車」ができないものか・・・と思っています。

私を含めて、移動が困難な高齢者がますます増加する日本社会にあっては、必要かつ急務な課題でしょう。

 

ただ、日本の現実的な状況を考えると、「いつのことになるやら・・・」という感も。

 

そこで中国です。

 

****自動運転タクシー、上海快走 体験サービス、混み合う公道もスムーズに****

自動運転タクシーの無料体験サービスが中国・上海で始まっている。

 

人工知能(AI)など先端の技術が凝縮された自動運転をめぐっては、各国が開発競争でしのぎを削っている。政策的に重視する中国は官民が連携し、先行する米国勢の背中を猛追している。

 

自動運転タクシーの無料体験乗車は6月、中国配車大手の「滴滴出行」が、上海市嘉定区の「自動運転車試験運行モデル区」で始めた。モデル区とは言え、タクシーが走るのはれっきとした公道だ。大学や駅、ホテルやショッピングセンターもあり、交通量は多い。

 

米自動運転企業のウェイモが2018年からアリゾナ州で自動運転タクシーの営業を始めたが、上海のような大都市の混み合う公道で、一般市民を乗せて行う実験は世界でも珍しい。滴滴出行はデータを蓄積し、技術の向上を図る狙いだ。

 

試乗は予約制。最新のテクノロジーを体験してみたいという人たちで、1日約30組の枠は連日ほぼ埋まる。7月、ようやく予約を取った記者が、指定された出発地点で待っていると、車体上部にセンサーを搭載した乗用車がやって来た。

 

自動運転のはずなのに、運転席と助手席には人が乗っている。無人ではないのかと尋ねると、「完全無人化までにはまだ少なくとも数年かかる」という。

 

助手席の「安全引率員」は、センサーやカメラなどから送られてくる各種のデータが正しく運転に反映されているかをチェックするのが役割。トラブルが起きたら、運転席の運転手が手動運転で対応する。

 

記者がタブレット端末で「出発」を指示すると、車は静かに動き出した。タクシーは車間距離を保ち、加速減速もスムーズだった。交差点では、対向車が何秒後にどこを通過するか、その速度などからはじきだし、衝突しないタイミングで右左折した。

 

ハンドルが自動的に動く様子を見ているうちに、約15分の乗車はあっという間に終わった。結局、運転手は記者が乗り降りする際にハザードランプをつけた以外、何の操作もしなかった。

 

今年以降の10年間は、自動運転にとって「黄金の10年」と言われる。各国の政策的な後押しを追い風に、技術開発が飛躍的に進むとみられているからだ。

 

中国政府は各地に試験区を設けてメーカーの開発を支援。限定された走行区域内で走ることができ、緊急時には人が運転する「レベル3」の自動運転車を、25年までに量産する目標を2月に示した。【8月2日 朝日】

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【トヨタは実験的スマートシティで自動運転車を走らせると言いものの・・・】

日本では、「事故が起きたらどうするのか?」という議論で、まず不可能でしょう。

そこは中国、走りながら考える、問題があればそのときに対応する・・・という発想です。

 

日本の自動運転ということでは、トヨタが実験的なスマートシティで走らせると発表しています。

 

****トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ"****

トヨタ(TOYOTA)は2020年1月7日(火)、アメリカ・ラスベガスで開催中されている世界最大規模のエレクトロニクス見本市「CES 2020」において、静岡県裾野市に「ウーブン・シティ(Woven City)」と呼ばれる実験都市を開発するプロジェクト「コネクティッド・シティ」を発表した。

 

ロボットやAI技術を駆使、トヨタが作る未来都市  あらゆるモノやサービスを情報で繋ぐ

同プロジェクトの目的は、ロボット・AI・自動運転・MaaS・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証出来る実験都市を新たに作り上げること。

 

NTTをはじめとするパートナー企業や研究者と連携しながら、技術やサービスの開発・実証のサイクルを素早く繰り返し、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報で繋がることで生まれる、新たな価値やビジネスモデルを見出す。

 

なお、NTTとのタッグにおいては、NTTの通信インフラにおける高い技術力を生かした、新たなサービスの開発も進めていく模様。

 

東京ドーム約15個分の土地に2,000人が入居

建設場所は、2020年末に閉鎖を予定しているトヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地。東京ドーム約15個分に値する175エーカー(約70.8万m2)の範囲で街づくりを進めていく。

 

着工は2021年を予定しており、プロジェクト初期はトヨタの従業員や関係者をはじめとする2,000名程度の住民の入居を想定。将来的には、一般入居者の募集や、観光施設としての運営も期待されるところだ。(中略)

 

実験都市「ウーブン・シティ」の構想  街を構成する3つの“道”

 

プロジェクトの核となる実験都市「ウーブン・シティ」は、日本語に直訳すると「編まれた街」の意。これは、街を通る道が網の目のように織り込まれたデザインに由来する。

 

その道とは具体的に以下、3種類に分類される。

 

1:スピードが速い車両専用の道として、「e-Palette」など、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道

2:歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道

3:歩行者専用の公園内歩道のような道

 

これらが、まるで血管のように、それぞれが街の交通や物流において重要な役割を担う。なお、人々の暮らしを支える燃料電池発電も含めて、この街のインフラはすべて地下に設置されるという。

 

サステイナビリティを前提とした街づくり

街の建物は主にカーボンニュートラルな木材で建設、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、環境との調和やサステイナビリティを前提とした街づくりが基本。住民は、室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーのデータを活用するAIで健康状態をチェックするなど、日々の暮らしの中に先端技術を取り入れる。また、街の中心や各ブロックには、住民同士のコミュニティ形成やその他様々な活動をサポートする公園や広場も整備される。(後略)【6月5日 FASHION PRESS】

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これは自動運転だけにとどまらず、いろんな未来の技術を集めて・・・というコンセプトではありますが、自動運転に関して言えば、「こんな箱庭みたいなところで走らせてどうするの?」という感も。

 

中国のように雑多な障害・問題がある公道でいろいろ試行錯誤して、初めて実用化への道が開ける技術でしょう。

 

この姿勢の差を見るだけでも、「日本では当分無理かな」って感じになります。

新しい技術というものは、現実問題としては、中国のように「まずやってみる。問題があればそのときに対応」という姿勢でないと、日本の「石橋をたたいて、壊してしまう」ような社会環境では難しいでしょう。

 

【中国独自の「軍民共用インフラ」、中国版GPS「北斗」が全面稼働】

自動運転に不可欠なものが位置情報を把握するGPS.

この分野でも中国は独自のシステムを構築しています。

 

****中国版GPS「北斗」全面稼働=開発26年、「世界をナビゲート」****

中国版全地球測位システム(GPS)「北斗」が31日、全面稼働した。北京の人民大会堂で同日開かれた式典で習近平国家主席が、全世界をサービス対象とする「北斗3号」システムの「正式開通」を宣言。

 

米国のGPSに依存しない中国独自の「軍民共用インフラ」が、開発着手から26年で完成した。

 

習氏や李克強首相らが見守る中、式典で上映された宣伝映像では「北斗を通じ世界をナビゲートする」と強調。防災や海難救助への活用実績のほか、自動運転やモノのインターネット(IoT)など幅広い産業への波及効果をアピールした。

 

北斗関連製品の輸出は既に120カ国以上に及んでおり、ナビゲーション分野でも米中の覇権争いが本格化する見通しだ。【7月31日 時事】 

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「北斗」は30基で全世界をカバーしますので、上記のように世界各国に利用を提供することが可能になります。

もちろん、それによって、中国が得る軍事的・政治的・経済的メリットは多大なものがあるでしょう。何より“アメリカに依存しないシステム”で、アメリカに対抗していくことが可能になります。

 

****中国が「北斗」地球測位システムを完成、「軍事力向上」の指摘も****

中国は(6月)23日、四川省内にある西昌衛星発射センターから全地球測位システム「北斗3号」における最後の衛星の打ち上げに成功した。同システムは民間向けに大きな利便性をもたらすと同時に、中国の軍事力向上にも直結するとの指摘がある。

「北斗3号」とは個別の衛星の呼称ではなく、複数の衛星により運営する地球測位システムそのものを指す。中国は、1994年に計画を開始した「北斗1号」で自国内を対象とする衛星による測位を実現し、2004年開始の「北斗2号」では対象範囲をアジア太平洋地域全域に広げた。09年に着手した「北斗3号」では全世界をカバーする地球測位システムを完成させることになった。

衛星がすべてそろったことで、「北斗」は米国のGPS、ロシアのGLONASS(グロナス)、欧州のガリレオと並んで、全世界の四大測位システムの一つになった。「北斗3号」は測位、精密時報以外にもショートメッセージ通信の機能を備えている。同機能は災害や感染症対策の正確性や効率を向上させると考えられている。

一方で、「北斗3号」の運用が中国の軍事力の大幅な向上をもたらすとの指摘もある。米国の華字メディア、多維新聞の2020年6月26日付記事によれば、「北斗3号」が一般向けに無料提供する測位では、アジア太平洋地区ならば誤差が268センチメートル以内、地球のその他の地域ならば360センチ以内だ。

 

しかし、「北斗」側が「特定の対象」に情報を提供する場合には測位の誤差は10センチ程度で、誤差が30センチである米国のGPSよりもはるかに正確という。

そのため、潜水艦を含む軍艦の行動、空中からの精密誘導爆弾の投下、ミサイルの発射などで、「北斗」システムを利用できる中国軍の作戦能力は大幅に向上するとみられるという。

 

また、精度の高い測位システムは合理的な作戦決定や、戦場に取り残された自国軍将兵の救出などにも威力を発揮するという。

中国軍が1996年に台湾沖で軍事演習を実施した際にはミサイル3発を発射したが、1発目は予定海域に着水したものの、2発目と3発目は大きくそれた。軍事専門家の間からは、中国軍がミサイルの測位に米国のGPSを利用していたことが原因との見方が出た。

 

中国軍は「北斗3号」の完成で、自国が開発した衛星測位システムを「心配せず」に利用でき、しかもその範囲を全世界に広げたことになる。【6月28日 レコードチャイナ】

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【「北斗」活用で膨大な市場創出】

軍事利用はもちろんですが、民生利用の面でも「北斗」は膨大な市場を提供することになります。

 

***中国独自のGPS「北斗」が完成 5GやAIと組み合わせてスマホや自動運転への活用進む****

6月23日、中国の衛星測位システム「北斗3号」を構成する最後のグローバルネットワーク衛星が打ち上げに成功した。同衛星は55基目となる北斗測位衛星で、打ち上げ後は順調に軌道に投入された。これで北斗3号を構成する衛星30基が全て所定の位置についたことになる。

 

「北斗衛星測位システム(BDS,BeiDou Navigation Satellite System)」は中国が独自に開発・運用する衛星測位システムで、米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileoとともに世界の四大衛星測位システムと呼ばれている。完成した北斗システムは、国家の重要な宇宙インフラとして高精度の位置情報やナビゲーションなどのサービスを提供する。

 

衛星測位システムと聞いて多くの人がまず思い浮かべるのはGPSだろう。しかし中国のスマートフォンの70%は北斗システムのサービスが活用されているとの報道もあるとおり、北斗システムはすでに人々の生活の隅々にまで浸透しているのだ。

 

そして北斗システムの背後には3400億元(約5兆2000億円)もの巨大な産業があり、毎年20%ほどのペースで成長を続けることが見込まれている。

 

北斗システムの背後にある巨大市場

宇宙インフラというステージは整った。そのステージに登場するのは北斗システム関連産業だ。

 

中国企業情報サイト「企査査」によれば、2013年以降に衛星測位に関連した企業の登記数はネズミ算式に増加しているという。今年6月の時点で、存続状態にある衛星測位の関連企業は全国で7500社に上る。

 

北斗システム関連産業を上流、中流、下流で分類すると、北斗システムの背後に巨大な市場が広がっていることがよく分かる。

 

関連産業は、上流の基礎データ、チップやアンテナなどの部品、GNSS受信機と電子地図を組み合わせるソフトウェア、中流のシステムインテグレーションの研究・生産・販売、そして下流の技術や製品の活用、運用サービスに大別できる。

 

データから分かるのは、北斗システム関連産業の中で活用や運用を担う下流産業が今後、最も大きな比率を占めるようになり、急成長を遂げるということだ。現在、北斗システムは通信やカーナビゲーション、情報サービス、スマートシティー、測量などの分野で幅広く応用され始めている。

 

中国の衛星測位サービス関連企業の応用分野

北斗システムの中心機能は位置情報、ナビゲーション、時刻配信だ。北斗システムはインフラであり、多くの先端技術を活用して初めて全天候、24時間、高精度というサービスの特性を発揮することができる。そして最終的には応用を進める下流産業に、より良いサービスを提供することにつながる。

 

中国信息通信研究院(CAICT)が発表した「北斗システムの測位技術および産業発展白書(2019年)」によると、地上型衛星航法補強システムや5G、IoT、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、AIなどの先端技術を衛星測位技術と融合させることで、北斗システムはスマートシティー、ウエアラブルデバイス、スマート製造、自動運転など多くの分野で実用化されており、今後も活用分野を広げていくという。

 

一例として、北斗システムのナビゲーション機能を搭載した無人トラクターは、データや方向を入力するだけで正確に作業を行うことができる。このような農業分野での活用は、すでに北京市や上海市、黒竜江省、遼寧省、山西省、湖北省、江蘇省、浙江省、新疆ウイグル自治区などで始まっている。

 

自家用車の自動運転に関してはサブメートル級、場合によってはセンチメートル級の精度が求められるため、今後は5G基地局による測位精度のアシストや北斗の地上型衛星航法補強システムを活用することで、コネクテッドカーに必要な精度と可用性を備えた位置情報サービスを提供できるようになるとしている。

 

家庭用の電子機器においても実用が進んでいる。2019年第3四半期までの時点で、中国本土で発売された位置情報サービス付きの携帯電話414機種のうち、4Gと北斗システムのサービスを利用しているものが273機種、5Gと同サービスを利用しているものが16機種あり、合わせて全体の70%を占めている。

 

現在は、北斗2号システムと北斗3号システムが共同で位置情報サービスを提供しているが、2020年以降は北斗3号システムをメインにサービス提供するよう移行していく計画だという。今後は、2035年までに北斗システムを中心とした、より高度でユビキタスな衛星測位(PNT)システムを構築することを目指している。【7月14日 36Kr Japan】

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中国の「走りながら考える」発想は多くの問題・トラブルを惹起しますし、先端技術活用に積極的な姿勢は、そこにアクセスできない高齢者などの便益が配慮されていない等々の問題は多々あります。

 

私もそうした観点からのブログ記事は再三書いてはいますが、ただ、それでも前へ突き進む中国は、結局のところ10年後、20年後には日本など遠い後方に置き去りにしたところへ行くのだろうな・・・という感も。

 

こうした「多少の問題はものともせず突き進む」やり方は、中国のような政治体制だからできるということも言えるのでしょう。もちろん中国の政治体制が問題なのは言うまでもないことですが、「安全・安心第一」で、あまりにも変革に消極的な日本を考えると、なんだかため息が出ます。

 

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