孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

融和に悩む韓国社会と脱北者

2007-06-04 20:49:22 | 国際情勢
20061120韓国板門店CIMG124420061120韓国板門店CIMG1244 posted by (C)さかき

一昨日日本海の荒波を越えて青森県に不法入国した北朝鮮からの脱北者4名は、韓国への移住を希望しているとか。
日本もあまり面倒なことにしたくないし、韓国も受け入れを拒むこともないでしょうから、覚醒剤所持の問題は出ているみたいですが、恐らくその線で決着するのでしょう。
(午後のTVのニュースでは当初“0.7g”と報じて、その後わざわざ“0.7mgの間違いでした”と訂正していましたが、0.7mgなんてよっぽど精密な秤でないと秤量できない超微量ですが、本当かな?)

受け入れる韓国について、脱北者がなかなか社会にうまくとけこめない現状が先日報道されていました。
韓国の脱北者は年間2000人、累計で1万人を超える状況だそうですが、職場・地域社会で脱北者と韓国社会のコミュニケーションが上手くいかないことが多いようです。
職場を転々とする脱北者も多く、脱北者のうち定職についているのは約1割で、残り9割の約半分が無職、半分がパート・アルバイトとのこと。
理由には、指示された内容の中の簡単な英単語がわからず仕事に失敗した、中国潜伏中に人を疑う習性が身にしみ込んでしまった云々・・・といったようなささいなことなどいろいろでしょうが、基本的には韓国の競争社会に馴染めない部分があるのではないかとも推察します。

韓国人側には「何故、脱北者ばかりにお金をかけて援助するのか」「(今までずっとそのように教えられてきたので)北の人は怖い」とか言う反応があるようで、地域社会でもなかなか交流が進まないようです。
また、「普通の韓国人は実際に脱北者と接する機会はまだ殆どなく、脱北者の事件・犯罪を伝えるTV等の報道によって脱北者に対するネガティブなイメージがつくられている。」との指摘もあります。

同民族とは言え、数十年全く異なる社会システムで暮してきた人達が互いを受け入れあうことは簡単ではないようです。
現在は1万人ですが、今後“北”が崩壊するような場合、大量の人々が“南”に流れ込むことが想定されます。
1万人ですらうまく消化しきれないわけですから、その際の混乱・不協和音は容易に想像できます。
韓国に限らず、残念ながら人間には自分と他者をことさらに区別して、他者を差別したがる、問題を他者のせいにしたがる、自分のプライドを満足させたがる・・・そのような性向があるようですので、南北統一が実現した場合の社会混乱は相当の負荷になるでしょう。
単に経済的負担にとどまらず、“二等国民”的な立場におかれることへの“旧北”の人々の反発、混乱の原因は“北”の人達にあると考える“韓国”の人々の反発、社会は深刻な亀裂を抱える危険があります。

こうした問題に象徴されるように、韓国では建前としては“民族統一”を口にするものの(先日、軍事境界線を越えて直通列車が走る“デモンストレーション”がありましたが)、本音では「せっかくここまで成長した韓国社会を混乱に巻き込みたくない。できれば“北”にこのまま存続してもらいたい。」という気分が広まっていると言われています。
北に対する融和政策が韓国社会に受け入れられる背景には、そのような事情もあるのでしょう。

また、「“北”に存続してもらいたい」という本音の背景として、中国への脅威をあげる考えもあります。
“北”を飲み込んだ場合、直接中国と国境を接することになる訳ですが、古来中国との関係に苦慮してきた韓国の人達のDNAには中国への脅威が深く刻まれており、干渉地帯としての“北”を残しておきたいという思いが強いとのことです。

面白いのは中国も同様で、“北”が消滅して経済的に発展した親米的な韓国と接するようになった場合、「自国内に多数存在する朝鮮民族を刺激することになる」「中韓国境にアメリカ軍が展開することになる」といった理由で、中国もまた“北”にこのまま干渉地帯として存続してもらいたい(政権はよりコントーロールしやすい政権に変われば一番いいが・・・)という希望があるとも言われます。

今“親米的な韓国”という表現を使いましたが、最近は全く事情が異なるとの指摘もあります。
「アメリカと北朝鮮が戦争を始めた場合どちらに味方しますか?」というアンケート(2005年)に対し、「米国に味方する」が23.4%、「北朝鮮に」が21.3%で、「中立」が48.7%だったそうです。
若者を対象にした同種アンケートでは、「戦争時に北を支持」が65.9%、「米国を支持」が28.1%という結果もあるそうです。
親米どころか現在の韓国社会には“反米”の空気が蔓延しているようです。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/suzuoki/20070508n5a58000_08.html

上記記事で面白い説明を紹介しています。
要約すれば、「日本は少なくともアメリカと対等の立場で戦争をやった。一方、韓国は戦後ずっとアメリカの庇護下に置かれてきた。しかも、アメリカは何かにつけ韓国を作ったのはアメリカだ・・・的なものの言い方をする」そういった反感というかコップレックスが反米感情の背景にあるのではないか・・・との意見です。
心理学的には「さもありなん」と思いたくなるような解説です。

論点がずれてきましたが、韓国・北朝鮮・中国・アメリカ・日本という微妙な国際情勢のなかで、韓国社会の悩みはしばらく続きそうです。
それにしても、日本にとっては“日本海”という大陸との地理的物理的干渉地帯が存在することは、いくら“ミサイル・核弾頭の時代”とは言っても、やはり大きな安心につながるような気がします。
難民問題にしても、大量に押し寄せたら異民族対応にあまり免疫のない日本社会は韓国以上に大混乱するでしょうし。
(それでも“有事”の場合は相当の難民が来る事態も想定する必要があるでしょう。)

写真は“フォト蔵”より。

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