孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  銃乱射事件ふたたび トランプ前大統領、銃規制強化ではなく学校の警備強化を求める

2022-05-28 22:15:30 | アメリカ
(ライフル協会年次総会で演説するトランプ前大統領【5月28日 TBS NEWS DIG】)

【飲酒は21歳から、ライフル銃は18歳から】
24日にアメリカ・テキサス州ユバルディで起きた児童19人を含む21人が死亡した銃乱射事件・・・・正直な感想は「またか・・・」というもの。14日には黒人が多く住むニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで黒人10人が自称白人至上主義者に射殺されたばかりです。

バイデン大統領も「もううんざりだ」と行動を求めてはいますが・・・

****米バイデン大統領「もううんざりだ」 小学校で銃乱射、児童ら21人死亡…容疑者の高校生は警官に撃たれ死亡****
アメリカ・南部テキサス州の小学校で24日、銃の乱射事件がおき、地元当局によりますと、児童19人と教師2人の21人が死亡しました。(中略)

容疑者は地元に住む18歳の高校生で、現場にかけつけた警察官に撃たれて死亡しました。(中略)事件のあったユバルディはヒスパニック系が多く住む地域でした。容疑者は事件の前に祖母を撃ったということですが、事件との関連や詳しい動機などはわかっていません。

また、日韓訪問を終え帰国したばかりのバイデン大統領も急きょ演説し、「もううんざりだ。今こそ、この痛みを行動に移す時だ」と述べ、銃規制の強化を訴えました。【5月25日 日テレNEWS24】
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犯行に使用されたのは、AR-15半自動ライフル銃。飲酒は21歳からですが、ライフル銃は18歳で購入できる・・・というのがアメリカ。

****飲酒は禁止、でも半自動ライフル銃=AR15は合法的に購入・所持できるアメリカの18歳****
(中略) 
ライフル銃は18歳、拳銃は21歳から購入“合法”
一方、アメリカでの銃の購入・所持の制度は一体どうなっているのか?

良く知られている通り、銃を持つ権利は合衆国憲法修正第2条で認められている。そして、アメリカ連邦政府のルールでは、購入者の最低年齢は、ライフル銃は18歳。拳銃は21歳とされている。ちょっとびっくりじゃないですか?

それにより、現状、アメリカの50州のうちテキサス州を含む44州では、18歳になったら合法的にライフル銃を購入できる。残りの6州は、2018年にフロリダ州パークランドの高校で起きた銃乱射事件を受けて、18歳から21歳に引き上げられた。(中略)

AR-15は、アメリカ軍が使うM-16自動小銃の民生型で、高性能と信頼性がウリだ。そのためアメリカ社会に広く普及しており、一方で殺傷能力も高いため、銃乱射事件での登場頻度も高いベストセラーだ。そんなライフル銃を18歳になったばかりで(親の同意などもなしに)合法的に買える。それが銃社会アメリカの実態だ。(中略)

お酒は20歳になっても飲めないのに…
もう一つ、年齢との関係で言えば、アメリカの成人年齢は18歳だが、一部の州は19歳や21歳などと定めている。飲酒については全米一律21歳になってからだ。

成人年齢と銃の購入、そして飲酒の年齢はそれぞれに関連し合っていそうだが、「成人になっても酒は飲めないが、AR-15は買える」。それが憲法が認めるアメリカであり、NRA=全米ライフル協会はこの状況を守り抜くために、一切の規制強化に反対する。

日韓歴訪から帰国したばかりのバイデン大統領が、その疲れにもかかわらず感情的な演説をしようと、そんなのは笑止千万なのだ。【5月27日 FNNプライムオンライン】
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【多くの国民は銃規制強化に賛同しているが・・・】
この種の事件の度にメディアでは銃規制の必要性が論じられますがほとんど進展がなく、事件が起きるたびに人々は銃砲店に押し寄せ銃を買い求めるという現実も。

銃規制を求める世論がない訳ではなく、むしろ数字的には国民の大半が規制強化を求めています。

****米国民の大半が銃規制強化支持、議会対応には確信弱く=調査****
25日に発表されたロイターとイプソスの世論調査で、米国民の大半が銃規制法の強化を支持する一方、一連の銃乱射事件を受けても議会が対応するとの見方は多くないことが分かった。

調査は940人に実施。前日にはテキサス州の高校で21人が死亡した乱射事件が起きたほか、14日には黒人が多く住むニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで黒人10人が自称白人至上主義者に射殺されている。

調査では、回答者の84%が全ての銃器販売での経歴調査を支持。公共の安全に脅威とされる人物の銃を差し押さえる「レッドフラッグ法」を支持した回答者は70%だった。

さらに、銃購入が可能となる年齢を18歳から21歳に引き上げることに賛成する回答は72%だった。

こうした政策は民主党、共和党で一応に大半が支持しており、これまでに公表された調査結果と一致している。

しかし、大半の回答者は議会が行動するとは考えておらず、年内の銃規制法強化を確信しているとの回答が35%にとどまったのに対し、その確信はないとの回答は49%だった。【5月26日 ロイター】
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議会が行動するとは考えていない・・・大きな理由としては後述の全米最強のロビー団体ライフル協会の問題がありますが、それにしても上記のような規制強化を求める国民が多いのに規制強化が前進しない、むしろ多くの州では緩和されているという現実は日本人には理解し難いところです。

憲法で銃所有の権利が保護されていること(想定している状況が憲法制定時と今では全く異なりますが)に加え、銃規制に反対する人々の論理は、悪いのは銃ではなく、犯人の精神状態が問題、事件を防ぐには「銃を持った善人」を増やして犯人に反撃すること、銃が持つ悪人が多い現状で銃規制を強いるのは銃の犠牲者になることを強いるもの・・・といった考え方です。

【アボット知事に詰め寄るオルーク元下院議員】
とりわけ、今回事件が起きたテキサス州は銃乱射事件が続発する土地柄ですが、事件に関しての会見を行うアボット知事(共和党)に対し、オルーク元下院議員(民主党)が「これはあなたの責任だ」と壇上に詰め寄り退場させられる場面も。

テキサス州は銃規制に消極的な共和党が強い州ですが、オルーク氏は2018年の上院選で現職のテッド・クルーズ氏を約3ポイント差まで詰めて一躍注目を集め、20220年の大統領選にも名乗りを上げています。

****今週もまた…米国で繰り返される銃乱射事件 歴代ワースト10でテキサス州が半数占める訳****
(中略)年々増加する米国の銃乱射事件だが、過去に米国で発生した犠牲者数の多い銃乱射事件ワースト10のうち、半数がテキサス州で発生していた。その理由とは―。

テキサス州ユバルディで24日午前、地元の高校に通っていた18歳のサルバドール・ラモス容疑者が、「(同居する)祖母を撃った」とフェイスブックに投稿し、続けて、「これから学校で銃撃する」などと犯行を予告する内容の投稿をしていたことが分かった。最初に撃たれた祖母は重傷を負ったとしている。

AP通信によると、容疑者は今月、現地で合法的に銃が購入できる18歳の誕生日を迎え、地元の銃砲店でライフルや弾薬を相次いで購入していた。学校でいじめを受けていたとされるが、詳しい犯行の動機などは明らかになっていない。

事件を受けてバイデン大統領は、銃規制強化の重要性を訴えたが、共和党のアボット・テキサス州知事は会見で、その必要はないとし、銃規制をめぐる意見の隔たりが改めて浮き彫りとなっている。

同州オースティンのNBC系列のテレビ局KXANは、過去に米国で起きた銃乱射事件のうち、今回を含む犠牲者数の多い事件ワースト10の半数が同州で起きていると伝えた。

テキサス州は人口規模では全米でカリフォルニア州に次いで2番目。だが、カリフォルニアがワースト10に入っているのは1984年にサンディアエゴのマクドナルド店で21人が死亡したサン・イシドロ・マクドナルド銃乱射事件だけだ。

その全米ワースト10のうち、テキサス州で発生した事件は、24日のもの以外は次の通り。

●1966年8月1日 テキサスタワー乱射事件
元海兵隊員で大学院生だったチャールズ・ホイットマン(当時25)は、テキサス大学オースティン校にある本館時計塔に狙撃ライフルなど銃器を持って立てこもり、銃を乱射。妊娠中の女性を含む14人を殺害、30人を負傷させた。うち2人は撃たれた傷がもとで後日亡くなった。ホイットマンは警察の狙撃部隊により射殺された。

●1991年10月16日 ルビーズ銃乱射事件
ジョージ・へナード(当時35)は、同州中部キリーンにあったレストラン「ルビーズ・カフェテリア」のガラス窓を車で激突させて突き破り、店内にいた客など43人を撃った後、トイレに隠れ、自殺した。この事件で23人が死亡、27人が負傷した。

●2017年11月5日 サザーランド・スプリングス教会銃撃事件
デビン・パトリック(当時26)はサザーランド・スプリングスのファーストバプテスト教会に押し入り、妊婦を含む26人を射殺し、22人が負傷した。パトリックは運転してきた車の中で自殺した。

●2019年8月3日 エルパソ銃乱射事件
米スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」のエルパソ店に、自動小銃で武装したパトリック・クルシウス(当時21)が侵入し、銃を乱射。客ら22人が死亡し、数十人が負傷した。事件後、クルシウスは自首。裁判で被告は無罪を主張し、連邦と州裁の2つの裁判所で公判が行われる。

ちなみに、全米ワースト1は17年10月1日にネバダ州ラスベガスで起きたラスベガス・ストリップ銃乱射事件。ラスベガスの野外コンサートの観客を標的とし、ホテル32階の部屋から無差別に銃を乱射し、60人が死亡、867人が負傷した史上最悪の大量殺人。パドックは警官隊の突入前に自殺したとみられている。

(中略)では、なぜテキサス州でそのような銃乱射事件が後を絶たないのか。
その象徴的な出来事が事件後、アボット知事の記者会見中に起きた。学校の講堂で行われた会見を聞いていたオルーク元下院議員(民主党)が壇上に詰め寄り、「知事、言いたいことがある」と声を上げた。「(事件は)予測出来なかったと言ったが、十分に予測できた」などと主張。不適切な発言だとされ、オルーク氏は講堂から退場させられたが、その途中も同氏は知事に向かって、「これはあなたの責任だ」と訴えた。

オルーク氏が知事の責任を追及したのは、昨年9月に施行された銃規制緩和の新法のことだ。免許を取得せずに、一般住民が安全講習を受けなくても公共の場所で銃を人目に見える状態でも持ち歩くことが可能になったのだ。以前は、免許を持つ住民のみが拳銃の携帯を認められ、講習を修了して筆記試験や実技試験に合格することが条件とされていた。

新法の採決では、同州議会下院で共和党は民主党や銃規制推進派の反対を押し切り、賛成82、反対62で可決。アボット知事は、「ローンスター州(テキサス)に自由を浸透させた」と宣言して法案を成立させた。

これにより、CNNは「警察が銃暴力から市民を守ることが一層難しくなる」と専門家は警鐘を鳴らしたと伝えた。「銃を持つ善人と銃を持つ悪人」を警官が見分けるのが難しくなったというわけだ。

それでも多くのテキサス州の住民にとっては、「事件があるからこそ銃が必要だし、持ちたい市民の権利をはく奪することは死ねと言うこと」という銃社会独特の思考があり、それは米国の合衆国憲法修正第2条で「銃を持つ権利」がうたわれている。

これだけ全米各地で銃による犯罪が繰り返される中、テキサス州のように銃規制を緩和する州が増えつつあるのも現実だ。

これまで多くの共和党候補の支援してきた〝全米最強のロビイスト〟と呼ばれる全米ライフル協会(NRA)は27日(日本時間28日)、テキサス州ヒューストンで年次総会を3日間の予定で開く。トランプ前大統領も出席するこの会議で何が語られるか、世界中から注目が集まる。【5月27日 The News Lens】
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【トランプ前大統領 ライフル協会年次総会で「銃を持った悪人を止める唯一の方法は、銃を持った善人」】
でもって、注目された〝全米最強のロビイスト〟と呼ばれる全米ライフル協会(NRA)の年次総会。
テキサス州のアボット知事(共和党)は、直接出席せず、録画したビデオ演説を行うとのことでしたが、中間選挙を控えて活動を強めているトランプ前大統領は出席して演説。

****「銃を持った悪人を止める唯一の方法は銃を持った善人」 トランプ氏、銃規制の強化でなく“警備強化”訴え 米テキサス州****
銃の乱射事件が起きたアメリカ南部テキサス州で銃を持つ権利を主張する「全米ライフル協会」の年次総会が開かれ、トランプ前大統領が演説しました。

アメリカ トランプ前大統領
「昔から言われているが、銃を持った悪人を止める唯一の方法は、銃を持った善人。聞いたことはあるかい?」

テキサス州では24日に小学校で21人が死亡する銃の乱射事件が起きたばかりですが、トランプ氏は演説で銃規制の強化ではなく、学校に警察官や警備員を配置するなど警備強化を訴えました。

銃規制強化を求める市民
「アメリカだけで銃乱射事件が起きているのは恥ずべきことです。アメリカは変わらなくてはなりません」

一方、会場近くでは抗議集会が開かれ、「子どもたちを救え」などと書かれたプラカードを掲げ銃規制の強化を訴えました。【5月28日 TBS NEWS】
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“トランプ氏は演説で「暴力的で精神的に錯乱した者を精神病院に留め置くことをはるかに簡単にする必要がある」と指摘。また学校のセキュリティー向上に強力なフェンスや金属探知機を備えるほか、全ての学校に警官または武装した警備員を常に配置することも必要だと訴えた。”【5月28日 ロイター】

教師に銃を持たせることで学校が安全になるとも。

日本人的には「いや、いや。先ずは規制強化だろう」というところですが、常識が異なるようです。(前述のようにアメリカでも共和党支持者を含め、多くの国民は規制強化を求めていますが・・・)

【選挙活動・集票に直結する一部の「大きな声」に引きずられる党・議員】
一般世論と政党・議員の行動の乖離は人工中絶問題でも見られます。

****米民主党、妊娠中絶政策で支持集める=世論調査****
 ロイター/イプソスの世論調査によると、米国では人工妊娠中絶について、共和党の政策よりも民主党の政策を支持する有権者が多かった。共和党員の5人の2人は、同党の中絶政策を支持しないと回答した。

調査は今月16─23日に実施した。連邦最高裁が中絶の権利を認めた1973年のロー対ウェイド判決を覆す可能性が指摘される中、有権者の間で不安が広がっていることが浮き彫りとなった。

調査対象の成人4409人のうち、34%は民主党の中絶政策を支持すると回答。共和党の中絶政策を支持するとの回答は26%だった。残りの回答者は「どちらも支持しない」もしくは「分からない」と答えた。

61%の有権者(共和党員の38%、無党派の39%)は、中絶を禁止したり厳格に制限する法案を支持する候補に投票する可能性は低いと回答した。【5月27日 ロイター】
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党・議員にとっては、常識的な多数の一般的な声よりも、選挙活動に直結する一部の者の大きな声が優先する・・・ということでしょうか。

そうした“大きな声”を利用するトランプ前大統領は・・・という話にもなりますが、そこらは長くなるのでまた別機会に。

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