(【4月27日 47NEWS】)
【急増する中国人不法移民】
メキシコとの国境を越えてアメリカに流入する不法移民の増加は、大統領選挙を控えたバイデン陣営(いつまで“バイデン”なのか・・・わからないことは報道のとおり)の(年齢問題は別にして、政策レベルの)最大の問題になっています。
****中国人の米国密航が激増、国別でメキシコを抜き年間2万人を突破―華字情報サイト****
米国で摘発された密入国者の国籍別統計で、2023年度にはメキシコ国境から米国に不法入国した中国人がメキシコ人を抜いて2万人を突破(2万4048人)した。21年度はわずか323人だった。(中略)22年度には1970人だった。
中国人の不法移民は激増しつつある。これまでの経緯からすれば、中国人が米国で亡命を申請すれば認められる可能性が高く、認められなくても中国への送還は難しいという。米国に不法入国する中国人が激増する背景には、「居残ることが容易」という考え方があるとみられる。(中略)
米下院の高官は、米国の国境警備部門は中国人を前にして「途方に暮れている」と述べた。中国人の多くは「出身国をほとんど考慮せずに米国内に解放されている」という。同高官は、「亡命による救済を求めている人もいるかもしれないが、すべての人に十分な安全審査を行うことはできない。特に敵対国の国民の場合はそうだ」と述べた。
米国では、中国人が観光客になりすましてアラスカの軍事施設に入ろうとする事件が繰り返し発生している。うちアラスカ州フェアバンクスのウェーンライト空軍基地では、米軍が中国人を乗せた車両の中からドローンを発見した。(後略)【2月25日 レコードチャイナ】
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「居残ることが容易」という点に関しては、いかのようにも。
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彼らは自ら国境警備隊に出向く。入国管理施設に収容したあと、亡命申請する者に対しては簡単な審査のあと、身柄は解放される。不法移民はいわば自由の身となり、それぞれの目的地に向かう。アメリカでは、亡命希望者は一定の条件を満たせば、アメリカ国内での滞在が認められている。【5月6日 DIAMOND online】
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不法移民増加で、米中両国の当局の協議も行われてきました。中国への送還も行われていましたが、大多数は「居残る」形になっています。
****中国人の米国への密入国が激増、両国当局が協力へ―華字メディア****
海外華字サイト・文学城は7日、中国人の米国への密入国が相次いでいることについて、両国の当局が当事者らを協力して送還すると報じた。
アレハンドロ・マヨルカス米国土安全保障長官はこのほど、「米中は中国国民の中国への期間について交渉しており、重大なブレイクスルーを期待している」と述べた。この件をめぐって、同氏は今年2月に中国公安部長の王小洪(ワン・シアオホン)氏とオーストリア・ウィーンで議論したという。(中略)
記事は、米紙ニューヨーク・タイムズのデータとして、「米国は前年度に288人を中国に引き渡したが、引き渡されるべきなのにもかかわらず米国内に居住している中国人の数はおよそ10万人に上る」と伝えている。【4月9日 レコードチャイナ】
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【中国人の不法移民を大型チャーター機で強制送還 大統領選挙対策としての狙いも】
こうした状況で、アメリカ政府は2日、中国人の不法移民を大型チャーター機で強制送還したと発表しました。米メディアによると、その数は116人。大型チャーター機の使用は2018年以来とのこと。
11月の大統領選で移民問題が主要な争点となる中、バイデン政権として対策に力を入れる姿勢を示す狙いがあるとされています。
****中国人不法移民116人を強制送還 米国土安全保障省****
米国土安全保障省は2日、中国人の不法移民116人を先週末に強制送還したと発表した。大型チャーター機による強制送還は2018年以来。
米国土安全保障省は、強制送還は中国当局との「緊密な連携」によって実施されたとし、引き続き中国の公安省および国家移民管理局と協力して強制送還を進めていくと説明。
中国政府と協力しながら「不法移民を抑制し、密入国を阻止するために法執行の取り組みを強化する」と表明した。
アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、「今後も移民法を執行し、米国にとどまる法的根拠を持たない不法移民を排除していく」と述べ、「密入国あっせん業者の口車に乗ってはならない」と訴えた。
米国の統計によると、このところメキシコ国境から不法入国を試みる中国人移民が急増しており、昨年10月~今年5月に3万1000人以上が確認された。【7月3日 時事】
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【エクアドル 中国人へのビザ免除を一時停止】
ルートについては、ノービザで入国できる南米エクアドルがポイントになっています。
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ここ数年、中国の国際的地位の向上に伴って、ビザなし、ノービザで入国できる国が増えている。まず目指すのは、ノービザで行ける東南アジア。東南アジアは中国人にとって手軽な観光旅行先だから、中国からの出国も容易だ。
その後、彼らが目指すのは、南米エクアドル。太平洋に面した国だ。この国も、中国人はビザが要らない。そして、陸路、北上する。エクアドルの北に位置するコロンビア、パナマ、コスタリカ、ニカラグア、グアテマラ、そしてメキシコへといったコースだ。
当然、危険も伴う。それぞれの土地で、金を受け取って手引きする斡旋業者がいる。彼らは国を越えて連携している。アメリカを目指す中国人たちは時に、道なき道を行く。そして、アメリカと国境を接するメキシコにたどり着くわけだ。しかし、そこは国境警備が厳重だ。
だが、メキシコとアメリカの国境にも、手引きする集団が存在する。彼らが築いた国境の抜け道を通って、また、貨物にまぎれて、念願のアメリカ入りを果たす。ニューヨーク・タイムズのルポを読むと、中国を出てから2か月をかけた者もいる。【3月14日 RKBオンライン「中国人不法移民がアメリカで急増している!?米大統領選の論点にも」】
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そのため、エクアドルも中国人への対応を変えています。
****南米エクアドルが中国人へのビザ免除を一時停止 半数が期限内に正規ルートで出国せず****
南米のエクアドルは中国人へのビザ免除措置を一時停止すると発表しました。中国からの入国者が激増しているほか、およそ半数が期限内に正規ルートで出国していないことなどが理由です。
エクアドルの外務省は18日、中国と締結したビザを相互に免除する協定を一時的に停止するとSNSに投稿しました。
正規の出国手続きをせずに入国から90日間の期限を過ぎても滞在したり、アメリカなど他の目的地に向かったりする中国国籍の人が急増していることを理由に挙げています。
ここ数カ月、中国からの入国者が異常に増えているうえ、そのうちおよそ50%が法で定められた正規のルートで期限内に出国していないとしています。(中略)
エクアドルの外務省は18日、中国と締結したビザを相互に免除する協定を一時的に停止するとSNSに投稿しました。
正規の出国手続きをせずに入国から90日間の期限を過ぎても滞在したり、アメリカなど他の目的地に向かったりする中国国籍の人が急増していることを理由に挙げています。
ここ数カ月、中国からの入国者が異常に増えているうえ、そのうちおよそ50%が法で定められた正規のルートで期限内に出国していないとしています。(中略)
中国外務省の報道官は「両国のビザ相互免除協定は2016年の発効以来、人的交流や各分野の実務面での協力に重要な役割を果たしてきた」として、ビザ免除の成果を強調しました。
一方で、「中国はいかなる形態の密入国にも断固反対する」と述べ、今回のエクアドルの措置は不法移民対策の一環だと説明しました。【6月19日 テレ朝news】
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エクアドルの措置は、アメリカの要請、中国の理解もあってのことでしょう。ただ、中国は密入国を利用しているという話もあります。そのあたりは後述。
【豊かになった中国からなぜアメリカを目指すのか】
いずれにしても、中国からエクアドル、そこから北上・・・ということで、費用的にも相当な準備が必要なようです。
“李さんは車などを売って得た1万3000ドルの資金を元にことし1月、息子とともに飛行機でトルコを経由してエクアドルに移動。”【2023年7月12日 NHK】
“「不法移民は貧困」の幻想 中国人、越境に930万円”【6月12日 日経】
中南米からアメリカを目指す毎日の生活にも事欠く人々とは様相が異なるようです。
では、そこまでの費用をかけて豊かになった中国から、なぜアメリカに向かうのか?
****中国人不法移民がアメリカで急増している!?米大統領選の論点にも*****
(中略)
豊かになった中国人たちが密入国をする理由は?
かつては日本にもコンテナ貨物に隠れて密航してくる中国人がいた。だが、豊かなになった中国で、不法移民が増えているのはなぜなのか。
彼らの多くが、不法な手段を使っても、アメリカを目指すのは、「今の中国にない自由を求めて」、また「中国国内では経済的に行き詰ったから」…などを理由に挙げている。かつての密航者のように、「着の身着のまま」という感じではない。(中略)
米中関係の新たな摩擦に?
彼らは念願のアメリカ入国後、亡命申請をする。冒頭に説明したように、彼らはその理由として、「自由がほしかった」「宗教的な迫害を受けた」などと述べている。もちろん、そのとおりの者もいるだろう。習近平体制が強固になるなかで、息苦しさは増しているからだ。
ただ、それらを理由に挙げることで、亡命申請が受理されやすいように、と考える者も含まれているのではないか。中国からアメリカを目指すのは、ほかにも理由がある。それは経済的な困窮だ。
中国独自の「ゼロコロナ」政策がもたらした中国経済へのダメージは小さくない。生活環境が一変した中国市民は多い。一方のアメリカは好景気が続く。あこがれも強まるのだろう。ただ、「生活が苦しくなった」というのは、亡命理由にならない。(後略)【3月14日 RKBオンライン】
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アメリカ側が中国人に対するビザ発給を制限していることも不法移民増加の理由になっているとの指摘も。
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急増の背景には、新型コロナの感染拡大や米中関係悪化に伴い、米国が中国人に対するビザ発給を制限していることが挙げられる。
米メディアによると、2016年には220万の短期滞在ビザが中国人に発給されたが、2022年には16万に激減。このため、正規ルートで直接、米国に渡航できない人たちが目指すようになったのが、南米から陸路で米国を目指すルートだ。【5月6日 DIAMOND online】
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アメリカにとって、単なる不法移民増という問題以上に注目されるのは、こうした人々のなかには中国側のスパイが紛れているのではないか、あるいは知的財産を盗む可能性も・・・という懸念です。
****アメリカ国境で中国人の不法入国が10倍増、決死のジャングル越えの理由とは?****
(中略)
中南米から米国へ不法入国する中国人が急増中
中南米から米国入りする不法移民の存在は古くから知られているが、ここ数年で中国人の越境が急増している。
成功者がSNSで発信した情報を手掛かりに、1万km以上離れた米南部の国境への片道切符の旅路につく人が続出。
政治・宗教的迫害からの亡命目的のケースもあるが、新型コロナウイルス禍での問答無用のロックダウンを契機に中国脱出を決心した事例も多い。
国内総生産(GDP)世界2位の中国だが、依然として経済的理由から米国を目指す人が多く、米国の支援者は「彼らにとって米国は今も『ゴールデン・カントリー(金の国)なんだ』」と明かす。米中関係が悪化し、米大統領選も近付く中、足元での中国人移民問題に大きな注目が集まっている。(中略)
中国政府の「抑圧」を逃れ密林地帯100キロを踏破、米国へ
2023年に米南部の国境を越えて米国に不法入国した中国人は、国境警備当局が確認しただけで3万7000人を超えた。2022年は約3800人だったから、10倍近くに急増している。国籍別では南米コロンビアに次いで2番目に多い。(中略)
ルートの一つは、まず中国人がノービザで入国可能な南米エクアドルに入り、北上してコロンビアのネコクリに向かう。そこから海を渡って「ダリエン地峡」と呼ばれる密林地帯に入り、約100kmを踏破する。
マラリアなどの感染症やギャングの脅威にさらされながら急流を渡る極めて危険なルートで、命を落とした人の遺体も転がっているという。性暴力や強盗などの被害に遭う人も後を絶たない。
ジャングルを無事に抜けても、そこからさらに何カ国も通過してメキシコと米国の国境地帯に至る4000キロもの道のりが待っている。
米民放テレビが2月に放送したドキュメンタリーでは、早朝にリュックを背負った中国人の集団が次々と鉄条網の脇をくぐり抜け、難なく米国入りする様子が映っていた。警備当局者もそばにいるが、制止するわけでもない。
20歳の男性は40日かけてタイやモロッコ、エクアドルや中米を経由してたどり着き、カリフォルニア州で仕事を見つけたいと話した。コロナ禍のロックダウンで託児所の経営が破綻したという女性や、工場での仕事がなくなり家を売ってやってきたという人もいた。
米国入りした一行は身元調査を受けた後で釈放され、亡命申請手続きに入るという。記者は「移民の多くは『ますます抑圧的になっている中国の政治風土や低迷する経済から逃れるために来た』と話した」と紹介した。
「知的財産を盗ませたら世界一」発言に、トランプ支持者の「国境の壁」建設への熱い支持を思い出す
だが、急増する中国からの不法移民に対しては批判的な見方も少なくない。保守系メディアの米FOXニュースは2月、この問題を報道した際「中国政府は抑圧的で、市民が庇護を求めて逃れるのは自然なことだ」とする支援活動家らの見解を短く紹介したものの、スパイ行為への懸念を重点的に報じた。
メキシコとの国境を取材した記者はスタジオで、不法入国者の中に中国共産党とつながりがある人物が含まれている可能性を米当局が懸念しているとし、「中国は知的財産を盗ませたら世界一だ」とも強調。(中略)
女性キャスターも「多くは働くために来たというし、それは本当だと思う、コロナ禍のロックダウンもあったし。でも、不正目的の人を紛れ込ませるのは中国の戦略の一部のようです」と警戒していた。
メキシコからの不法移民といえば、思い出されるのがトランプ前大統領の2016年の選挙戦だ。(中略)仮に中国に厳しい姿勢を取るトランプ氏が大統領に再選されれば、中国からの不法移民問題に強硬な対応を取る可能性もある。(後略)【5月6日 小野原遼成氏 DIAMOND online】
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中国政府にすれば、別に不法移民の形を使わなくても、アメリカ在住の中国系住民は多数いますし、必要なら合法的にいくらでもアメリカに送り込むこともできるでしょうから、スパイ云々にはやや疑問も。
スパイ云々はともかく、圧倒的大多数は多かれ少なかれ「自由」を求めてのアメリカ入国でしょう。
アメリカへの不法入国を試みた中国人にしてみれば、全財産を注ぎ込んで、命がけの長旅をしたあげく、強制送還。待っている中国当局の対応は・・・ということで気の毒ではあります。
強制送還された者への中国当局の対応がどのようなものなのかは知りません。強制送還する以上は、そのあたりは米中間で協議されているはずなのですが。
【アメリカとパナマ 移民の流入制限を巡る覚書】
中国人不法移民に限らず、南米からの不法移民ルートにおいて極めて危険な地域となっている(中米パナマと南米コロンビアを結ぶ)「ダリエン地峡」に関しては、パナマ大統領選挙で、「ダリエン地峡」の封鎖を訴えていた中道右派のホセ・ラウル・ムリノ元外相が勝利したことで事情が変わる可能性があります。
****パナマ滞在の移民、強制送還旅費を米国が肩代わり 流入制限で覚書****
米国と中米パナマは1日、移民の流入制限を巡る覚書を結んだ。パナマには米国に向かう移民の主要ルートの密林があり、移民の流れに影響が出そうだ。
AP通信によると、覚書はパナマに滞在する移民の強制送還が柱。パナマが送還対象を決め、米国は送還のための飛行機代を肩代わりするほか、移民を管理するパナマ当局の人材育成に協力する。
パナマが南米コロンビアと接する国境地帯は「ダリエン地峡」と呼ばれ、昨年は約50万人が横断した。今年はこれまでに19万人以上が横断し、その大半はベネズエラ、エクアドル、コロンビアの南米3カ国と中国出身者だった。【7月2日 毎日】
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【バイデン政権 硬軟両様の移民対策】
一方、バイデン大統領は6月4日、メキシコとの国境からの不法越境者の数が一定数を超えた場合に事実上の国境封鎖を可能にする大統領令を出しましたが、強硬策とのバランスをとる救済策も。
****バイデン大統領、不法移民50万人に救済措置=ヒスパニック票にらみ****
バイデン米大統領は18日、米国民と結婚し、米国に10年以上暮らす不法移民約50万人について、国外退去を猶予する新たな措置を発表した。
11月の大統領選で不法移民増が重要争点となる中、今月にバイデン氏は移民制限の大統領令を出したばかり。救済策によりヒスパニック系有権者や支持基盤である移民擁護派にも配慮し、バランスを取った形だ。
米国籍の親を持つ21歳未満の子供約5万人も対象。不法移民は通常、永住権申請には米国を離れる必要があるが、救済措置で対象者は国内にいながら手続きが可能となる。政権は「家族の離別を防げる」とアピールしている。
バイデン氏は18日、幼少時に不法入国した若者を強制退去対象から外すオバマ政権の「DACA」政策導入から12周年の記念行事で演説。「移民のおかげで米国は強くなった」と語り、移民を敵視するトランプ前大統領との違いを強調した。【6月19日 時事】
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大統領選挙を前に不法移民対策に追われるバイデン政権です。