(ロシアのプーチン首相(左、当時)と実業家エブゲニー・プリゴジン氏=2010年9月、サンクトペテルブルク郊外(AFP時事)【12月14日 時事】)
【イスラム過激派拡大などで治安状況が悪化する西アフリカ】
西アフリカでは、ナイジェリアを中心に女子生徒の大量拉致を繰り返すイスラム過激派「ボコ・ハラム」に代表されるように「イスラム国(IS)」系やアルカイダ系の過激派が活発化し、加えて、政情不安、部族抗争などで、不安定な状況が続いています。
“武装集団が工事現場襲撃、中国人ら5人拉致 マリ”【7月18日 AFP】
“ギニアでクーデター=特殊部隊が大統領拘束”【9月6日 時事】
“イスラム過激派攻撃で市民480人犠牲に 5〜8月で ブルキナファソ”【9月14日 AFP】
“逃げる人を次々に殺害、ナイジェリアの武装集団が住民を襲撃…民族対立背景か”【10月1日 読売】
“西アフリカ・ニジェール南西部で銃撃、町長含む69人死亡”【11月5日 AFP】
****アフリカでイスラム過激派拡大 自由貿易圏に影****
アフリカでイスラム過激派がテロ活動を活発化している。中東の過激派組織「イスラム国」(IS)や国際テロ組織アルカイダに関連する組織の犯行で、テロの主な舞台が中東から移っている。企業の活動や、1日に始動したアフリカの自由貿易圏にも懸念要素となる。
仏エネルギー大手のトタルは2020年末、アフリカ東部モザンビークで進める天然ガス開発事業から一部の従業員を退避させた。治安の悪化を受けた措置で、AFP通信によるとプロジェクト現場の近くで20年12月に少なくとも4回、武装集団の攻撃があった。
IS系組織の犯行とされるが、正体ははっきりしない。11月には北部のカボデルガド州で住民50人以上を斬首したと報じられた。同国政府は、過激派の台頭で住民57万人が家を追われたとしている。
西アフリカのナイジェリアでは12月、男子寄宿学校が襲撃され多数の生徒が拉致された。後に344人が解放されたが、イスラム過激派のボコ・ハラムが「非イスラム教的な行いをやめさせるためだ」と犯行を主張した。欧米式の教育を否定している。
サハラ砂漠の南の縁に当たるサヘル地域でもテロが相次ぐ。ニジェールでは21年1月2日、イスラム過激派が2つの村を襲い住民100人を殺害したと報じられた。マリ、ブルキナファソでも活動する「大サハラのイスラム国」(ISGS)の犯行との見方がある。
マリでは2日、過激派掃討の任務中のフランス兵2人が簡易爆発装置で殺害された。直前に仏兵3人が死亡した別のテロは、アルカイダ系組織が犯行を主張した。
イスラム過激派がアフリカで勢いを増したのは、中東で掃討され足場が縮小したのが大きな要因だ。「ISはシリアとイラクで敗北後、イデオロギーを広げる代替地とみたアフリカに向かった」とアラブ首長国連邦(UAE)のシンクタンク未来先端調査研究所は分析する。IS系とアルカイダ系がアフリカで勢力争いをしているとも指摘した。
新型コロナウイルスの流行を利用している可能性もある。「パンデミック(世界的大流行)で過激派組織がサヘル地域で支持を広げている」とデンマーク移民統合省は昨年の報告書で指摘した。行政サービスが届かない地域で医療を提供し、住民を取り込んでいるという。
テロの発生は局所的だが、治安の悪化は経済活動や企業進出に影を落とす。1日には大陸全体の共通市場化を目指すアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が始動した。5年以内に9割の関税を撤廃する目標を掲げている。物流インフラの不足がかねての課題だが、過激派の暗躍も経済統合を遅らせる恐れがある。【1月19日 日経】
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【フランスの関与縮小の空白を埋めるロシア民間軍事会社の傭兵】
アフリカにあまり関与したがらないアメリカに代わって、この地域へ関与してきたのは旧宗主国でもあり、権益も多く持つフランス。
マリを中心に軍事介入してきましたが、いつになっても改善しない状況に「これ以上は・・・」という感もあるのでしょう、“派兵を「再構成」する”という形で、事実上関与を減らしていく方針です。
****仏、アフリカ派兵2千人超削減へ 対テロ作戦を見直し****
フランスのマクロン大統領は9日、同国がアフリカ・サハラ砂漠南部のサヘル地域で2013年以降続ける対テロ作戦の見直しで、来年初めまでに西アフリカ・マリの複数の拠点を閉鎖し、軍の派遣要員を現在の5100人から2500〜3千人に減らす方針を発表した。ニジェールやマリなど地域5カ国の首脳とのオンライン会合後に記者会見した。
マクロン氏は、国際テロ組織アルカイダなどイスラム過激派による戦略が「支配地域の確保から脅威の拡散」に変化したことに対応し、派兵を「再構成」すると説明。過激派の司令部壊滅と地元部隊の能力強化支援を主要任務とするとした。【7月10日 共同】
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アメリカ・フランスの関与が低下して「空白地帯」が生じれば、そこに入り込もうとする勢力も。
経済的にはアフリカへの中国進出は著しいものがありますが、軍事的にはロシア。
それも、国際的に問題となる正規軍ではなく、民間の軍事会社による「傭兵」の展開。
欧米諸国はロシアの「傭兵」派遣が地域を不安定化させると非難しています。
****英仏伊など「マリにロシア民間軍事会社ワグネル・グループが展開」と非難****
イギリス・フランスなどは西アフリカ・マリにロシアの民間軍事会社が展開しているとして、非難する声明を出しました。
イギリス・フランス・イタリア・カナダなど16か国は23日、共同で出した声明で、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがマリに展開しているとして、「西アフリカの安全保障状況をさらに不安定化させる行為だ」と非難しました。
イギリス・フランス・イタリア・カナダなど16か国は23日、共同で出した声明で、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがマリに展開しているとして、「西アフリカの安全保障状況をさらに不安定化させる行為だ」と非難しました。
その上で、「マリの暫定政府が、もともと乏しい公的予算をマリ政府軍や公的サービスに使うのではなく、外国の傭兵部隊に支払う選択をしたことに対して、深い遺憾の意を示す」と述べ、ロシアに対しては「ワグネル・グループのマリでの展開をロシア政府が支援していることは認識している。ロシアに対して、この地域での責任ある建設的な振る舞いに立ち戻るよう呼び掛ける」としています。
ワグネル・グループはロシアの外交政策に連動する形でシリアやリビア、ウクライナ東部の紛争に関与してきたほか、ダイヤモンドなど天然資源の豊富な中央アフリカ共和国でも活動しているとされ、EUは13日、「暴力を煽り、天然資源を奪い、市民を威嚇している」などとしてワグネル・グループと関連する個人らを制裁対象に指定しました。
一方で、マリ北部など、いわゆるサヘル地域ではフランスが8年前からイスラム過激派武装勢力の掃討作戦を行い、リーダーを殺害するなどしてきましたが、武装勢力はニジェールやブルキナ・ファソなどにも拡大するなど、作戦は全体としては成功しているとは言えません。
マクロン大統領は今年7月、サヘル地域におけるフランス軍の段階的縮小を宣言、これについて、去年と今年、二度のクーデターの末に樹立されたマリ暫定政府の首相は9月の国連総会で「一方的な決定だ」と批判、「安全保障のために他のパートナーを探さざるをえない」と述べていました。
今回のワグネル・グループの展開とヨーロッパ各国の反発は中東やアフリカを舞台に関与が弱まりつつある欧米と、そこに入り込もうとするロシアとのせめぎ合いの一つと見ることができます。【12月25日 TBS NEWS】
ワグネル・グループはロシアの外交政策に連動する形でシリアやリビア、ウクライナ東部の紛争に関与してきたほか、ダイヤモンドなど天然資源の豊富な中央アフリカ共和国でも活動しているとされ、EUは13日、「暴力を煽り、天然資源を奪い、市民を威嚇している」などとしてワグネル・グループと関連する個人らを制裁対象に指定しました。
一方で、マリ北部など、いわゆるサヘル地域ではフランスが8年前からイスラム過激派武装勢力の掃討作戦を行い、リーダーを殺害するなどしてきましたが、武装勢力はニジェールやブルキナ・ファソなどにも拡大するなど、作戦は全体としては成功しているとは言えません。
マクロン大統領は今年7月、サヘル地域におけるフランス軍の段階的縮小を宣言、これについて、去年と今年、二度のクーデターの末に樹立されたマリ暫定政府の首相は9月の国連総会で「一方的な決定だ」と批判、「安全保障のために他のパートナーを探さざるをえない」と述べていました。
今回のワグネル・グループの展開とヨーロッパ各国の反発は中東やアフリカを舞台に関与が弱まりつつある欧米と、そこに入り込もうとするロシアとのせめぎ合いの一つと見ることができます。【12月25日 TBS NEWS】
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マリ暫定政府としては、フランスが支援してくれないならロシアに・・・というところ。
****ロシア民間軍事会社に制裁=紛争地帯で破壊活動―EU****
欧州連合(EU)は13日の外相理事会で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」と関連3企業、創設者ら8人に対する制裁措置に合意した。ウクライナやアフリカなど各地の紛争地帯に傭兵(ようへい)を送り込み、人権侵害や破壊活動を行ったとして、域内の資産を凍結しEUへの渡航も禁じる。
制裁は即日発動された。ワグネルはロシアのプーチン大統領に近い実業家エブゲニー・プリゴジン氏が黒幕とされ、政権とのつながりが指摘されている。制裁で活動の押さえ込みを図る。【12月14日 時事】
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【ロシアは関係を否定するも「ハイブリッド」戦争の一翼を担う傭兵 ウクライナでも】
ロシアは民間軍事会社との関係を否定していますが、上記記事に“ワグネルはロシアのプーチン大統領に近い実業家エブゲニー・プリゴジン氏が黒幕”とあるように、プーチン政権の意向を受けての傭兵展開でしょう。
****ロシアの傭兵、アフリカで勢力拡大 欧米の隙突く****
欧州各国の政府によると、ロシアの傭兵(ようへい)がアフリカのマリ共和国に派遣されている。ロシア政府がウクライナ周辺に軍を集結させる中、西側と対立する新たな前線になっているという。
傭兵派遣は、マリのトンブクトゥにある基地に駐留していたフランス軍部隊が今月になって撤退した後のこと。この撤退はイスラム系武装勢力の制圧に苦労した末の軍縮の一環だ。
アフリカでの国際テロ組織アルカイダとの戦いを支援してきたフランス率いる欧州諸国のグループは12月23日、「(ロシアの傭兵は)西アフリカの治安状況を一段と悪化させるだけだ」と述べた。
英国、ドイツ、イタリアを含む欧州諸国は、傭兵派遣の物資を支援しているとしてロシア政府を非難、「西アフリカで責任ある建設的な行動に戻る」よう求めている。
ロシア大統領府は、自国の軍事企業がマリで活動していることについて何も把握していないとし、そうした企業とのつながりを否定している。
西側の当局者によると、ロシアの民間軍事企業ワグナー・グループは、マリ政府と月間1000万ドル(約11億円)で傭兵派遣契約を結んでいる。ロシア政府が自ら手を下さずにアフリカに影響力を拡大させる試みの一環だとみられている。
米国によると、ワグナーはロシアのウラジーミル・プーチン大統領に近い実業家が経営しているとみられ、中央アフリカ共和国からシリアに至るまで傭兵を派遣している。同時に、天然ガスやダイヤモンドなどの資源を開発する契約を現地で結んで利益を得ようとしている。
西側諸国がアフガニスタンや中東、アフリカの一部で起きている紛争から撤退もしくはそれらを回避する中で、マリでのこうした状況は困難な問題を浮き彫りにしている。その問題とは、イスラム急進派などの武装勢力からぜい弱な政府を守るために、特にロシアからの傭兵が介入を一段と強めていることだ。
「自然は真空を嫌うものだ。ロシアはそれを埋めようとしている」。こう話すのは、かつてイラクとアフガニスタンへの派遣で米軍と契約していた米民間軍事企業ブラックウォーターの創業者、エリック・プリンス氏だ。
中国やロシアに対抗するために、米国と同盟諸国が空母や潜水艦、高性能ミサイルといった先端技術に注力する一方、傭兵やドローンなどの安価な機材は、今後の紛争においてローテクな攻撃手段を担うとみられる。
米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのシニアフェロー、ショーン・マクフェイト氏は「辺境での戦いはワグナーのような集団を使ったものになるだろう」と指摘する。
欧米諸国はワグナーの所有者をエフゲニー・プリゴジン氏と特定している。西側の治安当局者によると、この人物は今年夏、マリの首都バマコに使者を送った。フランスが同地域で展開する軍の規模を縮小すると発表した後のことだ。
それからまもなくしてワグナーと関係のある地質学者の一行もマリを訪問。アルカイダの拠点であるマリ中央部の都市モプティにある金鉱を訪れた。最初に派遣されたロシアの傭兵の数は約300人に上るという。
プリゴジン氏はワグナーとのつながりを繰り返し否定している。マリへの派遣団に関する質問に対し、同氏は自身の持ち株会社の広報を通じて次のように答えた。「質問は、いわゆる西洋世界の政府機関に見受けられる慢性的な統合失調症を物語っている」(中略)
2014年、ロシア政府に近い実業家らがウクライナに派遣した傭兵は(親ロシア派の)ウクライナ軍との戦いを支援し、同国東部で2つの共和国創設を宣言するのを後押しした。
欧州の治安当局者によると、ワグナーは政府とのケータリング契約のほか、プリゴジン氏とつながる企業との契約から資金を得ていた。同社はその後、シリアに傭兵を派遣し、アフリカへと進出していった。
フランスが2016年に中央アフリカ共和国から軍を撤退させた後、ワグナーの傘下企業は軍事支援と引き換えに、中央アフリカ共和国政府から鉱業権を与えられたと、前出の欧州治安当局者は話す。一時は同国でダイヤモンドの密輸にも関与し、税関収入の半分を手にしていたという。【12月27日 WSJ】
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欧州において緊張が高まっているウクライナについても、ロシア民間軍事会社を傭兵を派遣しています。
****モスクワと西の緊張が高まる:ウクライナ東部に配備されたロシアの傭兵、シリアでの戦争を経験***
ロシアの傭兵はここ数週間、ロシア政府と西側の間の緊張が高まる中、ウクライナ政府軍に対する防衛を強化するために、分離主義者が保有するウクライナ東部に配備されている、と4人の情報筋がロイターに語った。(中略)
これとは別に、ロシア政府は、その作戦が国と関係のないボランティアと説明された民間のロシアの軍事請負業者とは何の関係もないと述べた。
「このことを聞いたのは初めてで、この声明がどれほど信頼できるのか分からない」とクレムリンのスポークスマン、ドミトリー・ペスコフは言った。(中略)
情報筋の一人で、海外でロシアの作戦に参加し、ウクライナ東部に到着した請負業者は、配備は防衛目的であると述べた。最初の傭兵も同じことを言った。
これとは別に、別の情報筋は、彼は配備に直接関与していないが、特別な訓練を受けていた地上の人々と連絡を取っていると言いました。彼は、配備の目的は、彼がウクライナの安定を損なうために破壊活動と呼ばれるものであると言いました。(後略)【12月24日 VOI】
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民間軍事会社の傭兵は、ロシア連邦軍が公式には介入していない状況で、特殊部隊や民兵、サイバー戦争、プロパガンダ工作などを組み合わせて展開される(クリミア併合で一躍注目されるようになった)「ハイブリッド戦争」に従事しているとみなされています。
民間軍事会社による戦争の下請けはロシアだけでなく、アメリカもイラクやアフガニスタンで大規模に行ってきました。
結果、民間人殺害などの弊害も。
マリについても、フランスならよくてロシアはダメ・・・とは一概に言えないところで、その関与の中身次第ですが、民間傭兵の場合、往々にしてその活動は「水面下」の隠れたものになりがちで、ときに国家責任が明確でないところでの「汚い仕事」も多くなりがちなところが懸念されるところです。
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