孤帆の遠影碧空に尽き

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ロシア  続く感染拡大 高まる国民不満 対応できていないプーチン大統領の権力基盤に揺らぎも

2020-04-26 23:00:29 | ロシア

(19日、官邸でロシア正教のイースターのお祝いメッセージを述べるプーチン大統領。【4月25日 ロイター】
安倍首相よりはくつろいだ表情にも。ただ、現状は余裕がある事態でもなさそうです)

【感染拡大が続くロシア 長引く外出制限】
欧州では新型コロナ感染拡大がピークを迎える国も出る中で、ロシアにおけ感染拡大は依然として高いレベルにあります。

****ロシア前日比5966人増 コロナ感染者****
過去24時間、ロシア全国で新たなコロナウイルス感染者が約6000人確認された。感染者の最多数はモスクワ市。ロシア・コロナウイルス感染拡大対策本部が発表した。

現時点でロシア全国のコロナウイルス感染者数は計7万4588人。死者は過去24時間で66人増え、681人となった。新たな感染者の48.9%に何の症状もみられなかった。

モスクワ市では過去24時間で新たに2612人の感染が確認された。(中略)感染者の伸び率を前日と比較すると、緩やかな増加傾向にある。4月24日には前日23日から2957人増え、25日には前日24日から2612人増えている。

モスクワ市長は4月21日、コロナウイルス感染者だけではなく、他の急性呼吸器ウイルス感染症の症状をもつ患者の居場所を電子的に追跡するよう指示した。(後略)【4月25日 Sputnik】
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プーチン大統領は新規感染者が4千人台前半とひと頃より減少した20日、当局者らとのテレビ会議で、措置実施にもかかわらずモスクワから80地域以上に感染が拡大したと指摘。感染拡大のペースを鈍らせたことを評価しつつも、「罹患率のピークはまだ来ていない」と警鐘を鳴らしていました。

上記Sputnikによれば、再び6千人ほどに戻っているようです。

****ロシアで感染5万人超、外出制限の延長判断へ *****
ロシア政府は21日、新型コロナウイルスの感染者数が5万人を超えたと発表した。

3月下旬から続く外出制限下でも感染拡大に歯止めがかからず、モスクワ市は同日、急性呼吸器感染症の症状がある市民を自宅隔離の対象にすると決定した。政権は4月末までとしている外出制限の延長を近く判断するとみられる。(後略)【4月22日 日経】
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【強まる国民不満 当局は抑え込みを図る】
長引く外出制限に国民の不満も高まっており、一部に混乱も出ています。

****長引く外出禁止反対デモ、ロシア 北オセチア共和国、約70人拘束****
ロシア南部の北オセチア共和国で23日までに、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにロシア政府が今月末まで導入している外出禁止措置に反対するデモがあり、人権擁護監視サイト「OVDインフォ」によると69人が治安当局に拘束された。10人以上の治安当局者が負傷したという。
 
デモは共和国首都ウラジカフカスの政府庁舎前などで20日に発生。参加者は地元当局発表では約200人だが、2千人に達したとの情報もあり、外出禁止措置の撤廃や共和国トップのビタロフ首長の辞任を求めた。
 
ビタロフ氏はデモ主導者と面会、感染拡大防止のための自宅待機に理解を求めたという。【4月23日 共同】
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ロシア当局は、こうした抗議の封じ込めに新技術を用いるなど躍起になっていますが、国民の側も・・・。

****新型コロナ 露政権と住民がハイテク攻防 監視カメラで摘発強化 “仮想デモ”で抗議****
新型コロナウイルスの感染拡大により各地で外出制限が導入されているロシアで、政権側が監視カメラと顔認識システムを使った違反者の摘発を強化している。

これに対し、仕事の減少などで収入減に直面している住民らは、インターネット上で政権に抗議する「バーチャル(仮想)デモ」を実施。政権と住民の間でハイテクを駆使した攻防が繰り広げられている。

新型コロナ対策としてロシアは3月末、全国で自主隔離を導入。飲食店は店内営業を中止し、企業も在宅勤務に入った。感染者の過半数を占めるモスクワ市はより厳しい外出制限を発動し、違反者に罰金を科してきた。

しかし感染ペースは加速しており、最近は毎日数千人単位で感染が拡大。4月25日時点で感染者は7万4588人、死者は681人に上っている。
 
収束気配が見えない中、モスクワ市は15日、自家用車やタクシー、地下鉄など乗り物での外出時に許可証の携帯を義務化。許可証の取得には、車のナンバーや外出目的、外出先などを市に届け出る必要がある。
 
こうした状況下で、違反者のあぶり出しに活用されているのが、防犯を名目に街角や車道に多数設置されている監視カメラだ。街角の監視カメラはモスクワだけでも18万台あるとされる。

ロシアはこのカメラ網と最新の顔認識システムを活用し、新型コロナ感染者と接触したり、感染拡大地域から帰国したりして一定期間の外出禁止を義務付けられた住民の動向を監視。違反者は摘発している。
 
これに加え、モスクワ市は4月22日、車道に設置された2500台以上のカメラで、通行する車が許可証を取得しているか自動識別するシステムをスタートさせた。イタル・タス通信によると、この日だけで23万件の違反を確認。違反者は5千ルーブル(約7200円)の罰金が科せられるという。
 
先端技術を使って住民の行動を制限している政権側に対し、住民側もITを利用した抗議を始めた。
 
4月20日夕、露大手カーナビアプリの地図上で、露大統領府周辺が無数の丸印で取り囲まれる事態が起きた。このアプリには、利用者が地図上の特定地点を指定してコメントを書き込むと、そこに丸印が表示される機能がある。

本来は事故情報などを共有するための機能だが、この日は政権を批判するコメントが多数書き込まれた。数千人が大統領府を取り囲んだかのような様子を、露メディアは「前代未聞のバーチャルデモ」と報道。デモは自然発生したとみられている。
 
露政権の新型コロナ対策をめぐっては、企業や国民への経済支援が不十分だとの批判がある。書き込まれたコメントも「小規模ビジネスを支援しろ」「仕事に行かせてくれ」「公共料金を払い戻せ」といった切実なものが多かった。

アプリ運営側は目的外使用だとして同日夜までにコメントを削除。しかしその後も「言論の自由を封じるな」などとのコメントが相次いだ。【4月26日 産経】
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こうした厳しい状況で「善意」の取り組みも報じられています。

****困窮者を助けよう…露で「善意の棚」広がる****
新型コロナウイルスの感染が拡大しているロシアでは、仕事を失うなどして生活に困っている人たちを助けようというある取り組みが広がっています。

新型ウイルスに7万人以上が感染し、事実上の外出制限から1か月近くがたったロシア。食料品店など生活に必要不可欠な店以外は営業禁止が続いています。

ある店では、「善意の棚」と呼ばれる棚を設置。店側が、食料品など生活必需品を置いています。(中略)

この棚は、仕事を失った外国人労働者や年金生活者など厳しい生活を強いられている人たち向けに設置されたもので、食料品などを無料で持ち帰ることができます。(中略)

この棚には、市民の人たちも協力しています。
支援者「我々が支援を受けるべき一人一人の家まで行けません。少しでもサポートしたくて、自分のお金で少し食料品を買って置いています」

閉店前には空になるという「善意の棚」。外出禁止が長引き経済への影響が深刻化する中、モスクワ市内では設置する店が増えているということです。【4月26日 日テレNEWS24】
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事態の悪化はプーチン大統領の求心力にも大きく影響しますが、政権側は批判を封じ込める方向で、なりふり構わぬ様相です。

****ロシア、医師に圧力 迫る医療崩壊、政権批判を警戒か 新型コロナ****
新型コロナウイルスの感染者が急増するロシアで、当局が、医療現場の窮状を訴える医師や支援団体への圧力を強めている。感染対策が後手に回っているという印象の拡大を避けたいためとみられる。

医療体制が崩壊する可能性も指摘されるなか、医師らは厳しい立場に追いやられている。

 ■物資不足の訴え、警察取り調べ
モスクワの内科医は19日、朝日新聞の取材に「検査をしていない肺炎患者も来るが、病院には医療用の防護マスクがない。業者も在庫不足で、私たちは自らの身すら守れない状態だ」と訴え、こう続けた。「でも、勤務先の院長はそれを公には話せない。言えばキャリアが終わるためだ」
 
ロシアメディアによると、国内各地で現場の窮状を訴えた医師らが当局の圧力を受けている。

ベドモスチ紙は、ロシア南西部カラチナドヌーの公立病院の医師が、人工呼吸器の不足をネット動画で訴えたところ、警察から「偽情報を流した」として取り調べを受けたと報じた。病院上層部が医師の行為を警察に通報したうえ、物資の不足も否定したという。
 
医師の労組「医師連合」の広報担当者は同院の対応について「病院の窮状は政権に都合の悪い情報だ。病院や政府の官僚は自分が責められるのを恐れている」と解説した。

同連合には各地の医療機関から防護マスクなどの補給要請が来るが、実際に届けようとすると、外出禁止令違反などの理由で警察に妨害されるケースが相次いでいるという。
 
政府によると、国内には4万台以上の人工呼吸器がある。ただ、使用中や故障中のものも多いとされる。医療従事者の感染も深刻で、インタファクス通信は、サンクトペテルブルクの感染症病院で医師や看護師ら131人が感染し、うち3人が重症で人工呼吸器を使っていると伝えている。

 ■感染者が急増、国内全土に
医療従事者からの批判に対する当局の圧力は、急速な流行への対応が追いつかぬなか、世論の反発の増幅を懸念しているためだ。
 
プーチン大統領は3月後半にあった経済界との会合で、「2、3カ月で終息するかも」と楽観論を述べていたが、今月20日の政府対策本部とのビデオ会議では一転して「状況は厳しい」と深刻な表情で訴えた。
 
国内の22日の感染者は累計5万7999人で、1日の約21倍まで急増。極東のカムチャツカ半島から北極圏の地方都市まで全土に広がる。すでに一部地域で、収入の途絶えた市民らから外出制限の緩和や休業補償を求める声もあがっている。
 
プーチン氏は感染の拡大を受け、政府や地方の知事らに対策の加速を求め、たびたびビデオ会議を開催。4月末までに10万床のコロナ患者専用の病床を整備する政府方針の進捗(しんちょく)を閣僚らに確認し、「対策が期日に間に合わなければ、犯罪的な怠惰と見なす」とまで迫っている。
 
ロシアでは22日、プーチン氏の次期大統領選への再出馬を可能にする憲法改正について、事実上の国民投票が予定されていたが、感染拡大で延期された。コロナ禍による経済の失速も避けられず、感染拡大をめぐる対応を誤れば、プーチン体制の維持に向けた道筋も狂ってくる可能性がある。【4月23日 朝日】
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このあたりの対応が、ロシア・プーチン政権の「強権支配」的な限界を示すものです。

【事態に有効にコントロールできていないプーチン大統領 原油価格暴落の経済苦境も重なって求心力低下も】
そうした「強権支配」体制にあっては、頂点に立つ者の判断が決定的に重要となってきます。
かつては国民から大きな信頼を寄せられていたプーチン大統領ですが、このところの憲法改正問題、暴落した原油価格問題、更に新型コロナ対応では明確な戦略が見えず、一貫性を欠くようにも見えます。

「安定の保証者だったプーチン氏こそが今やロシアのリスク要因」との声も。

****ちぐはぐコロナ対応、プーチン氏いまやロシアのリスク?****
最大2036年までの任期延長に向けて着々と動き出し、盤石に見えたロシアのプーチン大統領。その権力基盤が、急速に揺らぎ始めている。

20年もの間、権力の頂点に君臨するうちに現実感覚が薄れ、新型コロナウイルスの猛威を前に、不適切な判断や行動を繰り返しているという指摘も出ている。

さらに、これまでのプーチン政権下では経験したことのない経済的苦境に陥っている。安定の保証者だったプーチン氏こそが今やロシアのリスク要因、との見立てすら出てきている。

求心力の低下は、北方領土問題の今後にも影響を及ぼしそうだ。

権限強化、任期延長に道を開いたが、、
プーチン氏は当初、憲法改正に関して、大統領の3選禁止や首相選任などでの議会の役割を強化する方向を示唆した。

だが、3月にまとまった改正案は、むしろ下院の解散や憲法裁判所判事の解任などで大統領権限が強化された。プーチン氏の4期に及ぶ大統領任期がカウントされず、36年までの在任を可能にする改正案も最後に加えられた。

プーチン氏が合計36年もの間、実質的な最高権力者に居座り続けられる憲法改正案だった。

この憲法改正案は、今月22日に設定した「全ロシア投票」で賛成を得て成立するはずだった。プーチン氏は、大統領権限を強化する憲法改正を短期間で終え、圧倒的な政治力を見せつけつつ、自らのさらなる求心力の強化につなげることを意図したとみられる。

新型コロナ、原油暴落で暗転
だが、新型コロナウイルス感染症の急拡大により、プーチン氏が3月25日に全ロシア投票の無期限延期を決めざるをえなくなって、すべてが暗転した。

ロシアの有力紙「コメルサント」は「(プーチン氏の)20年間の統治で初めて自分のシナリオ通りでなく、状況に振り回される事態となった」と評した。
 
原油価格の急落も追い打ちをかけた。プーチン氏はサウジアラビアとの対立により、石油輸出国機構(OPEC)との原油の協調減産から抜ける決断をした。

ところが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、原油の需要が急減。原油価格は、プーチン氏が大統領に就任した20年前の水準まで下がり、ロシアはかつてない経済的な苦境に陥っている。

新型コロナウイルス対策をめぐっては、政権内の足並みの乱れも目立つ。
 
たとえば、ソビャニン・モスクワ市長は、地方構成体の長らでつくる国家評議会を足場に、外出制限に基づく隔離策を強力に推し進めている。

一方、ミシュスチン首相は隔離策が経済に与える悪影響を恐れ、生産や社会のシステムを一定程度保つことを重視し、対立が続いているといわれる。
 
ところが、プーチン氏は両者を調整する労をほとんど取らずにいるという。(中略)

5月9日に予定されたモスクワでの対独戦勝記念式典でも、1万3千人もの軍人が密集して行進する軍事パレードなどの実施にこだわり、今月16日まで延期を決めなかった。

「プーチン氏は側近の経営する石油会社の救済のため、業界全体の反対を押し切って原油の増産に踏み切った。憲法改正も自らの利益のために始めた。現実感覚を失って突発的に行動し、制度の基盤を損なうことも辞さない。今や、リスクの源と化している」
 
ロシアの政治を長く追ってきたジャーナリスト、アンドレイ・ペルツェフ氏は、現状をこう分析する。(後略)【4月26日 朝日】
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プーチン大統領の判断にかつてのような切れがなくなっているとしても、容易に「ポスト・プーチン」の展望が描けないというあたりが、強権支配体制の欠陥のひとつです。

原油価格暴落も大問題です。

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ロシア経済の命綱である石油の価格は、過去約20年で最低の水準に落ち込んだ。ルーブルは現在、世界で最も下落している通貨の1つだ。

ロシア最大手行の予想では、原油価格が1バレル=10ドルを割り込むと同国の国内総生産(GDP)は15%下押しされる恐れがある。(中略)アレクセイ・クドリン元財務相は、失業者数が年内に3倍以上に増え、800万人に達すると予想した。(中略)

ロシア国立研究大学経済高等学院のセルゲイ・メドベージェフ教授は「あらゆる要素が相まって、プーチン氏は執政20年間で最大の試練に見舞われている」と言う。 

「景色が一変した。安定が損なわれ、プーチン氏の権威はがた落ちとなり、(政界・財界の)エリート層は造反を画策しているかもしれない。今後1年間、政権は生き残りモードに入る」 (後略) 【4月25日 ロイター】
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充分な野党勢力がないロシアでは直ちに政権の危機にはつながらないでしょうが、経済的な苦境と新型コロナ対応への不満はプ-7チン大統領への国民支持低下を招き、政権の求心力低下をまねくことが予想されます。

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