孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国の「令和」に対する関心に見る「一衣帯水の関係で、長い友好の歴史がある」日中関係

2019-05-01 22:54:32 | 中国

(【425日 中島恵氏 DAIMOND online】)

 

【日中関係改善を更に促す中国当局メディアの踏み込んだ論説】

中国から日本を訪れる観光客の増加などもあって、中国メディア・ネットには、日本から学ぶべきことが多いとか、日本の素晴らしい点を実感したといった類の情報も多くみられるようで、ひところの「反日」とは異なる雰囲気が醸成されつつあるように見えます。

 

中国側が日本の長所・優れた点を認めるようになった背景には、訪日などで日本に関する情報の質・量が増したということの他、中国の自国への自信が増し、相手を許容できる余裕が出てきたというところではないかと思われます。

 

また、中国はアメリカとの関係が緊張するなかで日本との関係改善を求め、日本もトランプ政権の対応など経済・安全保障等の不透明さが増すなかで中国との関係改善を求める・・・という流れで、政府間レベルでの日中関係も最近急速に改善の方向に向かっていますが、中国メディアの下記論説などには、中国側の“一歩踏み込んだ”感じもうかがえます。

 

なお、論説を発表した「環球網」は、中国共産党の機関紙「人民日報」系列で海外のニュースを中心とした「環球時報」の公式ウェブサイトです。

したがって、その論説は一定に中国指導部の考えを反映しているものと思われます。

 

****日本軍国主義が復活・戦争を発動…などと言うのはよそう―中国で論説****

2019416日、中国メディアの環球網は「日本とは必ず戦争だと叫ぶのは、もうやめましょう」と題する論説記事を発表した。

 

同論説は「日本の若者の間では平和主義が盛んで、軍国主義の復活を過度に心配する必要ない」と主張し、中国が自ら破滅的な失敗をしないかぎり、日本が中国の発展を妨害することはありえないと論じた。

記事は冒頭で、河野外務大臣を初めとして吉川農水大臣、世耕経産大臣ら日本側閣僚6人が13日から訪中して日中ハイレベル経済対話が開催されたと紹介し、「両国関係の改善を示す大きな兆候」との見方を紹介。さらに4月下旬には山村浩海上幕僚長や自民党の二階幹事長が訪中することにも触れた。

日中の近現代史については、日本側を強く批判。日清戦争と日中戦争の2度に渡り、日本は中国の現代化を中断させたと主張。しかし現在の中国は経済規模(GDP)が日本の27倍になるなど、力強い民族復興と現代化を進めており「中国が自ら破滅的な失敗をしないかぎり、日本が中国の発展を妨害することはありえない」と論じた。

さらに、国際社会の現実を見ても、中国と日本はグローバル化の恩恵を真っ先に受ける存在であり、「覇権国家の保護貿易主義と一国主義が横行する今日、世界第2の経済体(=中国)と第3の経済体(=日本)が市場の多元化と全世界貿易の推進を追求するにあたって、求めるところが一致することは自然なこと」と評した。

また、「民族心理」の面から、中国の台頭が始まった初期の段階の日本では不安感も発生したが、日本も適応するようになり、両国関係を不安定にする要因は弱まったと主張した。

記事は改めて、日中戦争について「日本軍国主義が中国に侵略戦争を行った罪は、人類史上でも驚くべき反人類の罪」と厳しく批判し、「日本の右翼勢力も絶対に軽視してはならない」「(日本では)戦後も軍国主義の残余が徹底的に排除されたわけではない」と論じた上で、「民主化の改革が行われ平和が長く続いた日本で、若者の間では平和主義が盛んで、軍国主義の復活を過度に心配する必要ない」との見方を紹介した。

記事は再び、「(日本の)軍国主義の復活を議論する必要はない。歴史は早い時期に、最も頼りになるのは自分だと証明している」と論じ、中国が強国強兵策を推進しさえすれば、日本軍国主義の復活を恐れる心配はないと主張した。

記事はさらに、日中両国関係にとって「最も決定的なのは米国の要因」と主張。中国が台頭すれば、米国が日本に対して対中圧力を強めることをさらに望むようになると論じた。また、尖閣諸島問題で日中関係が全面的に悪化すれば、米国が「漁夫の利」を得ることになると主張。ただし、米国もそのような方法は「成熟した大国がすべきことでなない」と主張。

2012
年に尖閣諸島を巡る日中の対立が激化したことについては、(中略)東アジアに人民元を基調通貨とする巨大経済圏が出現する可能性が出てきたことで「覇権国家は体中から冷や汗を流した」と主張。2012年に日中関係が悪化したのは、「米国の思惑があった」と示唆する書き方をした。

上記論争は中国の大手ポータルサイトである新浪網も転載した。新浪網は同記事を「官媒(グァンメイ)」の記事と強調した。

 

「官媒」は「当局メディア」を意味し、環球網が中国共産党機関紙である人民日報系の媒体であることを示す。中国メディアが「官媒」からの記事転載と強調する場合、当局の公式見解を直接に反映した記事との見方を示すと理解してよい。

なお、上記記事にある「日本軍国主義の復活を心配する必要はない」などは、2012年に胡錦濤政権が発足した前後に発表された論調の「新思考外交」に類似している。ただし、米国の動きを強く意識したものである点は、異なっている。【416日 レコードチャイナ】

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【中国でも関心が高い「令和」】

日中関係の改善の下地もあって、平成から令和への移行に伴う日本における一連の動きに対する中国側関心も相当に高いようです。

 

****中国主席、陛下に祝電 「素晴らしい未来を」****

中国の習近平国家主席は1日、即位された天皇陛下に祝電を送り「(日中は)手を携えて平和的な発展を進め、両国関係の素晴らしい未来をつくるべきだ」との考えを伝えた。中国メディアは即位を相次いで報じた。

 

習氏は「両国は一衣帯水の関係で、長い友好の歴史がある」と指摘した。退位した上皇さまにも祝電を送った。

 

習氏は4月下旬、日本を6月に訪問すると明言したばかり。貿易摩擦などで米国との対立が続く中、対日関係の改善を進めようとしている。

 

中国のインターネットメディアは1日、陛下が即位に関わる儀式に臨んだ際、スマートフォンのアプリで中継し、経歴も紹介した。【51日 共同】

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祝電自体は一種の外交儀礼ですから、韓国を含めて各国が送っていますが、韓国の文在寅大統領の「徳仁天皇が韓日関係の友好的な発展のため、大きな関心と愛情を持たれることを望む」「退位された明仁天皇と同様に戦争の痛みを記憶しつつ、平和のためのしっかりとした歩みをつながれていくことを期待している」という“何か言いたげ”な文面に比べると、習近平国家主席の方は現状肯定的なトーンにも思えます。

 

中国社会の方は、「令和」で更に盛り上がっているようです。

 

****中国で「令和」関連商標申請が1200件突破****

中国でも「令和」への改元が関心を集めている。日本では元号を使った商品やブランド名の商標登録が原則としてできない中、中国商標局によると、「令和」を使用した商標登録の申請がこれまでに1200件を超えた。

 

同局のサイトによると、新元号が発表された4月1日以前には1件しかなかった申請が、発表当日だけで238件もあった。以後、増え続け、4月28日までに1276件に達している。

 

ジャンルはさまざまで、衣料、製薬、食品などの名前として、「令和」のほか、「令和屋」「令和堂」「令和日語」「令和尺八」などが申請されている。

 

新元号の「令和」が発表された際、中国でも「日本の元号が初めて日本の古典から選ばれた」などと報じられ、話題となっていた。中国では清朝の時代を最後に元号は使用されていない。【430日 産経】

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そのうち、商品名に「令和」を使用した中国製品が多々出回るかも。

まあ、上記は“利にさとい”中国の一面を示すものですが、ネット上の「令和」に関する関心はかなり高いものがあるようです。

 

****「令和時代」が中国版ツイッターの検索ランキングトップ10入り****

201951日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で、「令和時代」が検索ワードランキングのトップ10に登場した。

前天皇陛下が430日に退位されて平成の時代が終わり、51日午前0時に新たな天皇が即位して令和の時代が始まった。新天皇の下で令和という新たな時代のスタートを切った日本に対し、中国国内からも熱い視線が注がれている。

微博でも中国メディアのアカウントから日本の情報を紹介するアカウントまで、多くのアカウントが天皇即位に関する情報を発信しており、430日と51日に行われた退位と即位の儀式の様子を紹介した。

日本時間1日午前1120分現在、微博の検索ワードランキングで「令和時代」が3位に入っており、検索回数は142万回を超えている。また、「日本新天皇徳仁即位」も7位に入り、約40万回検索が行われた。【51日 レコードチャイナ】

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日本国内の動きに関しても、「大げさ」と伝えるアカウントがある一方で、“理解を示す”ような反応も少なくないようです。

 

****令和へのカウントダウンで盛り上がる日本、中国ネットの反応は?****

201951日、中国版ツイッター・微博では、日本で平成から令和へ時代が切り替わる瞬間の様子が紹介された。中にはその様子を「大げさ」と伝えるアカウントもあった。

普段より日本の情報を紹介している微博アカウントは、日本のニュース番組で元号が切り替わる51日午前0時に向けたカウントダウンをテロップ表示し、各地の様子を中継で紹介する動画を転載した。

動画では午前0時の瞬間は東京渋谷の繁華街の様子が映された。雨の中、傘を差した大勢の市民が大声で「321」とカウントダウンし、日付が変わると大きな歓声に包まれ興奮状態となった。アカウントは、この様子について「こんなに興奮するものか(笑)」と評している。

この動画を見た中国のネットユーザーは「この儀式感はいいよ。自国の独特な紀年法を残すというのも文化伝承の一種だ」「まるで新年を迎えたみたいだね」「なぜだか分からないが、こちらまで感動させられた」「明けましておめでとうって叫びたくなるね」といった感想を残している。また、「即位のおかげで連休が伸びたのだから、そりゃあみんな興奮するだろう」「何と言っても10連休だもんな」といった声も見られた。

一方、「みんなこれだけ新天皇の即位を喜んでいると、退位した天皇はちょっと寂しくならないかな」との意見も。これには「これまでの天皇即位は先帝の崩御が伴っていたから。今回はいわば定年退職みたいなものなので、市民も心置きなく即位を喜べるのだ」「前の天皇はずいぶん前から退位を希望していたから」といった回答が寄せられている。

このほか、「新しい元号になったから、社会にも新しい風が吹くといいね」と期待を寄せるユーザーもいた。【51日 レコードチャイナ】

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【文化を共有する民族】

「令和」の元号が発表された際にも、その出典などをめぐって、中国での議論が盛り上がったと報じられています。

 

****中国人が日本の新元号に異常なまでの関心を持つ理由****

日本の新元号「令和」施行について、中国ではまるで自国のことのように関心を示す人が少なくない。なぜ、中国の人々は日本の元号に注目し、関心を持つのだろうか。

 

日本の改元をわが事のように盛り上がる

「今年の51日はちょうど中国も休日なので、朝からインターネットで日本の新元号に関する特別番組を見る予定です!」

 

先日、大連在住の女性とウィーチャット(中国のSNS)でやりとりした際、彼女はウキウキした様子でこんな返信を送ってくれた。

 

新元号「令和」の施行まであと数日。日本では「歴史的な一日」を前にさまざまな準備が進められているが、お隣の中国でも、なぜか日本の改元をまるでわが事のように気に留めて、ソワソワしている人が少なくない。

 

51日は中国では労働節(メーデー)の祝日。この日からちょうど4連休となるため、旅行に出かける人も多いが、私がチェックしたSNSの中には「歴史的瞬間をこの目で見るために、いざ東京へ!」などという書き込みをする日本マニア(?)もいて、一部の人はやけに盛り上がっているようなのだ。

 

中国人も日本の新元号にそんなに注目しているのか――

私がそう感じたのは41日のことだった。菅義偉官房長官による発表が行われたのは午前1140分過ぎだったが、それから数分も経たないうちに、中国共産党機関紙「人民日報」でも「日本の新元号」に関する発表があった。

 

中国の主要紙である「環球時報」などいくつもの媒体でも、同じような報道が続き、日本のメディアとほとんど変わらないほどの素早さだった。また、マスコミの報道を追いかける形で、個人がSNSに投稿する文章が目に飛び込んできた。

 

「新元号は令和!恭賀!(おめでとう)」「安倍首相の安の字は、結局使われなかったんだ!」「平和にするということで、いい響き。いい元号だ」「新元号、ついに決定!」など、新元号に対する反応は、日本人のそれとほとんど同じようなものであり、そんなことが日本以外の国のSNSで繰り広げられ、彼らの関心がそれほど高いことに私はとても驚かされた。

 

新元号の典拠について中国のSNSで相次いだ投稿

よく知られているように、元号といえば中国が発祥だ。

 

(中略)中国は1911年、清朝の「宣統」(ラストエンペラーで有名な宣統帝・溥儀の時代)を最後に、元号を廃止している。元号は、今では本家の中国にはなく、日本でのみ連綿と続いているものだ。

 

中国人は、自分たちがすでに失ってしまったものだからこそ、それほどまでに興味や関心があるのだろうと思ったが、さらに驚いたのは、それから間もなくしてからだった。

 

新元号の典拠について、安倍晋三首相は『万葉集』と発表していたが、中国人の間からは、典拠は(中国最初の詩文集である)『文選』(もんぜん)ではないか?という投稿が相次いだからだ。

 

そうした投稿と前後して、岩波文庫編集部のツイッター(以下の※で解説)上での指摘をはじめ、日本のメディアでも漢学者などへの取材から、「中国が典拠なのでは」という説がどんどん飛び出し、ネット上で大きな盛り上がりを見せた。

 

だが、岩波文庫編集部のようなプロではない、ごく一般の中国人のSNSでも、ほぼ同じ時間帯から同様の指摘をする人がいたことに、私は舌を巻いてしまった。

 

※新元号「令和」の出典、万葉集「初春の令月、気淑しく風和らぐ」ですが、『文選』の句を踏まえていることが、新日本古典文学大系『萬葉集(一)』の補注に指摘されています。「令月」は「仲春令月、時和し気清らかなり」(後漢・張衡「帰田賦・文選巻十五」)とある。

 

漢字や漢文への思い入れが深い中国の人々 日本で開催の『顔真卿展』も大フィーバー

いくら漢詩、漢文のお国柄とはいえ、新元号の発表からわずかしか時間が経っていない段階で、すぐに『文選』にある張衡の詩がもとになっているのではないか、という指摘が飛び出すというのは、非常に鋭いとしかいいようがない。

 

しかも、私とSNSでつながっている知人や友人(大卒者がほとんどだが、特別なエリートというわけではない会社員や教師)でさえそのように指摘しているのを見て、中国人の古典への造詣の深さ、漢文への関心の高さを改めて感じさせられた。

 

この一件で思い出したのだが、今年の2月にも同じように、中国人の漢字や漢文への思い入れの深さを強く感じさせられる出来事があった。東京・上野にある東京国立博物館で開催されていた『顔真卿展』を見に行ったときだ。

 

顔真卿(がんしんけい)とは唐代の書家・官僚の名で、書聖といわれる王羲之を超えたともいわれる人物。今年1月中旬から約1ヵ月間、開催されていた展覧会に私も足を運んだのだが、そこは「ここは中国か?」と思うほど数多くの中国人が入場して、ごった返していたのだ。

 

2月上旬の時点で入場者が10万人を突破した同展には、台北の故宮博物院に収蔵されている顔真卿の傑作「祭姪文稿」(さいてつぶんこう)が展示されており、めったに見られないその作品を目当てに、春節の大型連休を利用して大勢の中国人がやってきていた。

 

日本人でも書道に親しみを感じている人はもちろん多いし、幼い頃から書道教室に通っていたという人も相当いるだろう。だが、一部の書道家や愛好家を除いて、一般の日本人は、草書、隷書、楷書などの書体についての知識や興味はあまり多くないのではないだろうか。

 

また、日本人は、習い事や授業の一環として書道の経験はあっても、その後、わざわざ書道展を見に行く機会は、絵画展などの美術展に行く機会と比べると多くないと思われるし、書道展のほうが規模は小さく、日本ではどちらかというと「書道」は話題になりにくいのではないか、と個人的には思う。

 

だが、同展覧会では、観光で来日していた中国人が、書体の一つひとつを指さしながら「このハネが……」「この筆のかすれ具合が……」などと唾を飛ばしながら激論していた姿があちこちで見られたし、在日中国人のSNSなどでも、「ついに念願の顔真卿展に行った!」「記念に筆や硯、図録を買ってきたので、今度、中国へのお土産にするよ」といったような投稿を数多く見かけた。

 

中国人の「書体や漢字そのものへの関心の高さ」は並々ならぬものがあり、やはり本家は、日本人とは熱の入り方が違うのだなと感じさせられた。(後略)【425日 中島 恵氏 DAIMOND online

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その時々の政治的な問題を取りのぞいて見ると、元号にしろ、古典にしろ、書道にしろ、日中両国は文化を共有する民族であることが改めて実感されます。

 

単にときの政権同士の対立や国際情勢の問題ということ以外に、日本からすると中国の人権・民主主義に対する対応に容認しがたいものがあるという重大な問題はありますが、そうであるにしても、習主席が言うように「一衣帯水の関係で、長い友好の歴史がある」両国が関係を改善させ深めていくことは歓迎すべきことでしょう。


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