(中国が新たに発表した地図 【9月1日 産経】 従来の「九段線」が明確に台湾を囲い込む「十段線」に拡大されています。もっとも、台湾に関しては「今更」の話ではありますが)
【中国の“新たな地図”をめぐって、ASEAN関連会議で問題となる事態も】
中国政府が発表した新しい地図が、国境問題を抱えるインドや南シナ海で領有権を争う東南アジア諸国の反発を惹起しています。
****中国発表の新地図、係争地や南シナ海まで「領土」「領海」表記…アジア各国相次ぎ反発****
中国政府が8月28日に発表した新しい地図を巡り、アジアの周辺国から反発の声が上がっている。南シナ海やインド北東部などの係争地が「領海」や「領土」として示されたためだ。今月アジアで開かれる一連の国際会議では、領土問題で対立する事態も想定される。
ロイター通信によると、地図では南シナ海の90%を中国の「領海」とした。中国が南シナ海の領有権問題に関して一方的に主張する「九段線」は、台湾の東側に引かれた1本の線とともに計10本で構成され、「十段線」となっている。
フィリピンが領有権を主張するスプラトリー諸島(南沙諸島)が「中国領」とされたことについて、比外務省は「中国当局から出された地図を拒否する」と批判した。声明では、「九段線」の法的根拠をオランダ・ハーグの仲裁裁判所が否定した2016年の判決に従うよう求めた。
インドネシアの地元メディアによると、ルトノ・マルスディ外相は「いかなる主張も国連海洋法条約に従ったものでなければならない」と述べた。同国のナトゥナ諸島は南シナ海の南端に位置し、周辺の排他的経済水域(EEZ)は中国が設定した境界線と重なる。付近では近年、中国船の操業が目立っている。
中国との国境問題を抱えるインドも反発した。係争地のインド北東部アルナチャルプラデシュ州の一部と中国が実効支配するカシミール地方のアクサイチンが「領土」とされたからだ。ジャイシャンカル印外相は8月29日の民放インタビューで「こんな筋の通らない主張によって、他人の領土が自分のものになることはない」と反発した。
5日から始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議では、中国と各国が南シナ海の紛争防止に向けて策定を目指す「行動規範」について議論する見通しだが、対立が先鋭化する可能性が出てきた。【9月2日 読売】
**********************
東南アジア諸国では、上記のフィリピン・インドネシアの他、ベトナム・マレーシアも。
“マレーシア政府は、地図について外交的な抗議文書を提出したと表明。同国は新たな地図に何ら拘束されるものではないと述べた。(中略)
ベトナム外務省は、地図に基づく中国側の主張には何の価値もなく、ベトナムの主権と国際法に違反しているとの見解を示した。”【9月1日 ロイター】
ベトナム外務省は、地図に基づく中国側の主張には何の価値もなく、ベトナムの主権と国際法に違反しているとの見解を示した。”【9月1日 ロイター】
中国外務省は、「中国の南シナ海問題での立場は一貫して明確だ」「各方面には客観的で理性的な対応を希望する」としています。
【ASEAN関連首脳会談には習近平氏・バイデン氏ともに欠席】
なお、習近平国家主席はG20(9月9日~10日 インド・ニューデリーで開催)などには出席しないことが報じられています。
****習中国主席、G20サミット欠席 李強首相が代理出席へ=関係筋****
中国の習近平国家主席はインドで来週開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)への出席を見送る見通しだと、インドと中国の関係筋がロイターに語った。李強首相が代理で出席するという。
G20首脳会議は9月9─10日にニューデリーで開催される。
関係筋は、出席見送りの理由は把握していないとしている。インドと中国の外務省はコメント要請に応じなかった。
首脳会議にはバイデン米大統領も出席する予定で、習氏がバイデン氏と会う可能性が取り沙汰されていた。習氏は昨年11月にインドネシアのバリ島で開かれたG20首脳会議の合間にバイデン大統領と会談している。【8月31日 ロイター】
G20首脳会議は9月9─10日にニューデリーで開催される。
関係筋は、出席見送りの理由は把握していないとしている。インドと中国の外務省はコメント要請に応じなかった。
首脳会議にはバイデン米大統領も出席する予定で、習氏がバイデン氏と会う可能性が取り沙汰されていた。習氏は昨年11月にインドネシアのバリ島で開かれたG20首脳会議の合間にバイデン大統領と会談している。【8月31日 ロイター】
******************
G20に先だって5日~7日にインドネシアで開催されるASEANプラス3(日中韓)首脳会議や東アジア首脳会議(EAS)にも李強首相が出席の予定です。
地図問題で中国への反発が強まる状況で開催されるASEAN関連首脳会議に習近平国家主席が出席しないということで、アメリカが会議をリードするチャンスでもありましたが、そのアメリカもバイデン大統領はG20には出席するものの、ASEAN関連首脳会議は欠席とのこと。
****米政府 バイデン氏のG20出席を正式発表 ASEAN関連会合にはハリス副大統領が出席****
アメリカ政府は、バイデン大統領が9月、インドで開かれるG20首脳会議に出席すると正式に発表しました。
ホワイトハウスは22日、バイデン大統領が9月9日から10日にかけてインドで開かれるG20首脳会議に出席し、気候変動対策やウクライナ侵攻による影響の緩和策などについて各国首脳と協議すると発表しました。(中略)
9月5日から7日にインドネシア・ジャカルタで開かれるASEAN(東南アジア諸国連合)の関連会合には、ハリス副大統領が出席するということです。
バイデン氏は、台頭する中国を念頭にASEAN重視の姿勢を打ち出しているだけに、その姿勢に疑念が生じると指摘する声が上がっています。
バイデン氏はその一方で、具体的な時期は示していないものの、対中国を見据えてベトナムを訪問し関係強化を進めると表明しています。【8月23日 テレ朝news】
**********************
トランプ前大統領もEASを4年連続欠席して「アジア軽視」とも言われましたが、“バイデン大統領がASEANとの会議に出席しないことについて、サリバン補佐官は「政権のこの地域への取り組みは信じられないような実績をあげている」と強調し、地域軽視にはあたらないとの考えを示しました。”【8月23日 TBS NEWS DIG】
【アメリカ ベトナム・フィリピンとの関係強化へ】
ASEAN内部にはカンボジアやラオスといった中国の代弁者的な親中国の国、最近中国との関係を強めているタイなどもあって、中国に関する議題では結局明確な対応を示せないのはいつものことですから、あまりこの種の会議に出席しても成果は期待できないとの判断でしょうか。
それよりは、直接に二国間協議で関係を強めた方が・・・といった考えかも。
その二国間協議としては、バイデン大統領はG20出席後に南シナ海問題で中国と厳しく対立するベトナムを訪問します。
****バイデン大統領 9月のベトナム訪問発表 対中国で関係強化へ****
アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が来月ベトナムを訪問し、最高指導者と会談すると発表しました。アメリカとしては最大の競合国と位置づける中国に対抗する上でベトナムとの関係を強化したい考えです。
ホワイトハウスは28日、バイデン大統領が9月10日にベトナムの首都ハノイを訪問し、最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長などと会談すると発表しました。
バイデン大統領はインドで開かれるG20=主要20か国の首脳会議に出席したあと訪問するということです。
発表によりますと両者は「アメリカとベトナムの協力関係をさらに深めるための方法を協議する」としていて、ベトナムの経済成長の促進や気候変動問題、それに地域の繁栄や安定などが議題になるとしています。
ベトナムは中国との間で強い経済的な結びつきがありますが、南シナ海の島々の領有権をめぐっては対立を抱えています。
一方、アメリカとしては最大の競合国と位置づける中国に対抗する上でベトナムとの関係強化をはかりたい考えです。
アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」は両国が関係を格上げし、外交や経済、テクノロジーの分野で協力を深めることで合意する見通しだと伝えていて、どこまで関係強化を打ち出すのか注目されています。【8月29日 NHK】
バイデン大統領はインドで開かれるG20=主要20か国の首脳会議に出席したあと訪問するということです。
発表によりますと両者は「アメリカとベトナムの協力関係をさらに深めるための方法を協議する」としていて、ベトナムの経済成長の促進や気候変動問題、それに地域の繁栄や安定などが議題になるとしています。
ベトナムは中国との間で強い経済的な結びつきがありますが、南シナ海の島々の領有権をめぐっては対立を抱えています。
一方、アメリカとしては最大の競合国と位置づける中国に対抗する上でベトナムとの関係強化をはかりたい考えです。
アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」は両国が関係を格上げし、外交や経済、テクノロジーの分野で協力を深めることで合意する見通しだと伝えていて、どこまで関係強化を打ち出すのか注目されています。【8月29日 NHK】
**********************
アメリカが中国を念頭に二国間関係の強化を図っているのが上記ベトナムとフィリピン。
南シナ海をめぐって中国との関係が悪化するフィリピンでは今年、米軍が使用可能な拠点の増設が決まったばかりですが、今度は台湾から200kmほどのフィリピン最北端の離島で、米軍と地元自治体が商業港の開発を計画しています。
****米軍、台湾に面したフィリピンの港湾開発で協議中****
フィリピン最北部に位置するバタネス州バタン諸島で、米軍が商業港開発支援を巡って地元政府と話し合いを進めている。同州知事や複数のフィリピン政府高官がロイターに明かした。
米国が取り組んでいるフィリピンとの地政学的な関係強化の一環とみられ、中国側の反発を招く可能性もある。
バタン諸島は、バシー海峡を挟んで200キロ北方に台湾がある。同海峡は西太平洋と南シナ海を結ぶ航路において「チョークポイント」と呼ばれる重要な場所の1つで、特に中国が台湾に侵攻した場合には戦略的に大きな意味を持つ。台湾国防部によると、中国は同海峡に艦艇や軍用機を定期的に派遣している。
バタネス州のカイコ知事はロイターに、海が荒れた際に首都マニラからの物資を揚陸するために必要な「代替港」の建設について、米国側に資金提供を求めたと述べた。
バタン島のバスコという町にある現在の港は、高波発生時に使用できなくなるケースが頻繁にあり、昨年10月に別の港を建設することを決めたという。
フィリピン政府関係者は、米軍の部隊がこの港建設に関する協議のために最近バタネス州を訪れたと述べた。カイコ氏も、代替港建設案の検討を目的として米軍が現地にやってきたと認めた。
在フィリピン米大使館の広報担当者は、大使館と米太平洋軍の専門家がカイコ氏や地元政府の要請に基づき、建設や医療、農業分野での開発プロジェクトの支援について話し合いを行っていると説明したが、この港の問題には言及しなかった。【8月31日 ロイター】
********************
フィリピン・マルコス政権と中国は南シナ海領有権をめぐって対立を深めています。
2月には南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺でフィリピンの巡視船が中国海警局の船からレーザー照射を受けました。
8月にはフィリピンが実効支配するアユンギン礁の軍事拠点に補給物資を輸送していたフィリピンの船に対し、中国海警局の船が放水銃を発射して、進路を妨害する事案も起きています。
この放水銃発射について、アメリカ国務省は「フィリピンの公船や航空機、国軍が武力攻撃を受けた場合、米国との相互防衛条約が発動することを再確認する」と警告しています。
【中国 タイとの関係強化 今後は不透明】
一方、中国はタイとの関係を強化しています。
****タイ海軍が中国と合同演習、過去最大2500人参加…クーデターで米国との関係冷え込み***
中国とタイ海軍の合同軍事演習「ブルー・ストライク」の開幕式が3日、タイ中部サッタヒープの海軍基地で行われた。10日までに過去最大となる約2500人が参加する。
演習は2010年に始まり、19年以来となる今回は5回目。中国軍は揚陸艦や潜水艦などを派遣し、災害救助や潜水艦の操作訓練などを行う。潜水艦の参加は今回が初めてとなる。
タイ海軍のチャーンチャイ司令官は式典で「演習は我々の良好な関係を反映したものだ」と述べた。韓志強・駐タイ中国大使は「タイと中国は他人ではなく兄弟だ。演習で両海軍の協力強化を期待する」と語った。
タイは14年の軍事クーデター以降、米国との関係が冷え込み、中国との軍事協力を深めている。17年には中国の潜水艦の購入契約を結び、19年に中国製揚陸艦を購入した。【9月3日 読売】
*********************
もっとも、周知のようにタイではタクシン派政党のタイ貢献党を軸とした連立政権が成立しています。連立には従来与党の親軍政党も参加していますが、その外交方針がどのようなものになるのか、アメリカとの関係が修復されるのか・・・そのあたりはこれからの話です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます