(ミャンマー不法移民 タイのサンクラブリで “flickr”より By asb110273
http://www.flickr.com/photos/asbasb/1461100502/)
10日ほど前になりますが、ミャンマーからタイへの密入国者に関する悲惨なニュースがありました。
****冷凍コンテナに隠れて密入国の54人窒息死、タイ・ミャンマー国境****
ミャンマーとの国境に近いタイ・ラノーン県で9日、冷凍コンテナに隠れてタイに密入国しようとしたミャンマー人労働者ら少なくとも54人が窒息死した。地元警察が10日、明らかにした。
121人が押し込められていた長さ6メートル、幅1.2メートルのコンテナは、冷凍の魚介類の運搬に使用される気密性の高いものだった。
ミャンマー人らは、タイのあっせん組織に1人あたり5000バーツ(約1万6000円)を支払い、密入国を試みたとみられる。【4月10日 AFP】
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121人が詰め込まれたコンテナ、男女54人が窒息死・・・。
なんとも悲惨で、亡くなった方々には申し訳ありませんが、状況を想像する気にもなれない“地獄絵”です。
こうした移民労働者の死亡事故はミャンマー・タイ国境では頻繁に起きているようです。
昨年12月にはミャンマー国境近くで22人のミャンマー人移民労働者が溺死する事故が、また11月には8人が死亡する交通事故が起きているとか。【4月19日 IPS】
関係者の話では、こうした移民労働者たちが携わるのは、水産業、建設部門、ゴムやヤシ油などのプランテーションでの「危険で汚い」仕事です。
地域大国タイではこのような3K仕事をやる労働者は少なくなっているのでしょう。
「長時間労働や低賃金など、代償が大きいにもかかわらず仕事を求めてくるミャンマー人はますます増えている。 合法的な労働を得られると思い込まされているようだ。」
「移民労働者の移送に携わるネットワークがある。一部の事例は明白な人身売買である。」とも。
07年におけるタイ国内の移民労働者は200万人、そのおよそ75%がミャンマー人ですが、労働許可を得て労働当局への登録手続きを済ませている移民労働者は50万人に過ぎないとか。
増加する一方のこうしたミャンマーからの集団脱出の背景には、悪化する一方のミャンマー経済と少数民族に対する軍事政権の暴力があります。
ミャンマー軍事政権は民衆行動の弾圧、“民政移管”という名の実質的軍政維持のため憲法改正などが話題になりますが、国民を危険な移民に向かわせる内政の停滞にも大きな問題があります。
ミャンマーでは、13日から正月行事の“水かけ祭り”が行われました。
タイ、カンボジア、ラオスでも行われるこのエリア共通の行事です。
5人以上の集会を禁じる軍事政権が自由な集会を認める、年に1度の機会でもあります。
また、軍事政権はふだんは人々に民族衣装の着用を推奨していますが、この祭りのときばかりは、ミニスカートの女性やパンクファッションの若者たちが通りを闊歩しているとか。
企業やナイトクラブや裕福な家庭は、歩道脇に「パンダル」と呼ばれる舞台を作ります。
このパンダルではバンドの演奏が行われ、人々はパンダルにのぼって通行人に水をかけあってはしゃぎます。【4月16日 AFP】
昨年の弾圧を受けて介入も予想されましたが、大きな介入はなかったようです。
人々の生活を圧迫している軍事政権による“ガス抜き”でしょうか。
軍事政権が指導するかたちで起草した新憲法案が先月末から報じられています。
国会は地域代表院(定数440人)と民族代表院(定数224)の2院制とし、両院の各議席の25%は国軍司令官が指名する。
(憲法改正には「議員の75%の賛成」が必要とされますので、事実上は軍の同意なしには改正できない仕組みです。)
国家元首は大統領とし、軍人議員と両院の民選議員がそれぞれ選んだ3人の中から全議員の投票で選ばれる。他の2人が副大統領となる。
大統領や議員は「外国から影響を受けていない」ことを条件とし、英国人と結婚していたスーチーさんには立候補資格がありません。
スーチーさんを戴く最大野党・国民民主連盟(NLD)自体の活動も制限される可能性があります。
一方で、数十年にわたり軍政との間で紛争が続いている少数民族に関しては、130以上ある少数民族のうち6つの民族に対し国境沿いに「自治区」を与える内容となっており、少数民族を軍政側に取り込む側面もあります。
このような分断策が功を奏して、昨年の弾圧時に少数民族が僧侶・市民に呼応することはありませんでした。
新憲法案は5月10日には国民投票に付され、来年10月の総選挙後に発効する段取りです。
軍事政権は国営紙や翼賛団体を通じて賛成票を投じるよう国民に働きかけ、締め付けを強めています。
これに対し、NLDや民主化団体は、“軍政が独断で選んだ人物によって起草されたもので、民主主義や人権を保障できるものではない”と反対票を投じるよう呼びかけています。