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「むぎゃぴィ~ッ! ぎょぷ~ッ!」
ど、どうしたんですかっ、テディちゃ?!
「だだだッ、だッてェ、ネーさ、こわいィ~!
このォ、ひょうしィもォ、だいめいィもォ、こわそォでスゥッ!」
はい、怖そぉな表紙絵の、怖そぉな題名のこちらが、本日の一冊です♪
御紹介いたしましょう!
―― 悪魔なんかこわくない ――
著者はマンリー・ウェイド・ウェルマンさん、原著は1963年に発行されました。
原題は《Who Fears The Devil?》、
『誰が悪魔なんかを怖がるっていうんだい?』といった意でしょうか。
「あくまッ?! ひいィ~ッ!」
主人公は、一人の青年。
黒い翼を持った悪魔ではなく、二本の足でてくてく歩く人間です。
名は、ジョン、とだけ。
ジョンがてくてく歩いているのは、アメリカの山の中。
地図ではロッキー山脈ほど目立ちませんが、はい、視線を東部へ移してゆくと、
ありますね、『アパラチア山脈』という表記が。
北アメリカ大陸の東部に位置するがために、
早くから移民が入植していたのが、このアパラチアの山地です。
山間(やまあい)を、ギターを抱えて放浪する人影があったなら、
それはジョンとみて間違いありません。
「ぎッ、ぎたァー……?」
銀の絃が張られたギターです。
このギターを爪弾けば、どうしたことか、
よそ者を警戒する人々は心を開き、
昔話に会話ははずみ、
美味しい食事や一夜の宿を恵んでもらえたり、
「えッ、そォなのォ?」
……或いは、旧く悪しきものたちが目を醒ましたり。
「ひいィッ!」
ギターとジョンの行くところ、不思議な出来事が起こります。
開拓時代から語り継がれる伝承の謎が明かされ、
悪霊は壺に封じ込められ、
強欲な男は相応の罰を受けます。
それは、ジョンの持つ力なのか、
それとも土地にひそむ得体の知れぬ力なのか……。
「……こわいィ~……」
米国の雑誌『マガジン・オブ・ファンタジー&サイエンス・フィクション』に
掲載されたこの連作短篇集には、
ミステリの香りがあり、
サスペンスの要素もありますが、
ジャンルとしてはファンタジーでしょうか。
日本の作品でこのお話と似た味わいのものを探すと……
『遠野物語』に近い、かもしれません。
残念ながら、現在は入手困難となってしまった御本ですが、
こころ優しいジョンの美しい唄と温かい語りに接する機会に巡り会ったなら、
逃してはなりません!
古書店で、図書館で、ぜひ!
「むぎぴィ~、うゥ~、こわいィ~」 (←先ほどから耳を塞ごうとじたばた中)
こわくありませんてば、テディちゃ。
怖い、恐ろしいというなら、そう、『雨月物語』の方がよっぽど怖いわ!
えーと、どこに仕舞ってあったかな~、ちょっと待っててね。
「みきゃきょ~ッ!!」 (←脱兎の如く……)