テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

ひとコマむこうの、光と影。

2015-06-16 21:49:58 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 あッ! でんでんむしィ、はッけんッ!」
「がるる!ぐるぐるがる!」(←訳:虎です!なかなか俊足!)

 こんにちは、ネーさです。
 じっと観察していると、けっこう動きが速いものですね、カタツムリ君って。
 本日の読書タイムで御紹介する作品も、
 光のように過ぎた一時代を追う映画評論です。
 さあ、こちらを、どうぞ~!

  



              ―― 映画の戦後 ――



 著者は川本三郎(かわもと・さぶろう)さん、2015年5月に発行されました。
 御本の表紙になっているふたりの男優さんは、
 高倉健さんと、クリント・イーストウッドさん。

「う~むゥ! かッこよいィでス!」
「ぐるるるがるぅ!」(←訳:ハンサムだなぁ!)

 御二方の、かっこいい!を通り越して美しい写真を見るにつけ、
 俳優論なのかしら?と手に取りましたら、
 これが、正統派……というか、
 奇をてらわない、
 どっしり構えた映画と映画文化を分析している御本、なのです。

 本文は大きく、
 Ⅰ部の『戦後映画の光芒』と
 Ⅱ部の『アメリカの光と影』に分かれ、
 戦後――第二次世界大戦後に制作された映画と
 映画界に係わった人びとが論じられています。

「おッきなァ、すくりーんッ!」
「がるるるぐるる!」(←訳:映画館は超満員!)

 そうですね、
 現代からは想像しにくいんですけれど、
 ものすごい熱気だったでしょうね。

 次々と封切られるハリウッドの大作。
 対抗するように黒澤明さんの『七人の侍』が公開され、
 その一方で小津安二郎さんが彼独自の作風を仕上げ、
 そして、孤独な渡世人を演じる高倉健さんがいて、
 子役・高峰秀子さんの人気がスパークする……。

「かつてないィ、じだいィ!」
「ぐるるるるがるるる!」(←訳:映画文化の青春時代!)

 真っ直ぐに育った幼少期から、
 反抗期、
 鬱屈の時代へ。

 Ⅱ部の『アメリカの光と影』では、
 映画大国、つねに映画(と映画文化)を輸出する側であった米国の、
 映画人たちがテーマになっています。

 戦後、西部の男たちがヒーローであったのどかな揺籃期が過ぎ、
 映画界を嵐が見舞いました。
 《赤狩り》という、
 唐突な嵐が。

「だいこんらんッ?」
「がるるぐる?」(←訳:世情のせい?)

 いまもあまり語られることのない、
 政治と映画人の闘い――
 闘いがあったゆえに作られ、世に送り出された名作たち。

 『ケイン号の叛乱』(1954)、
 『十二人の怒れる男』(1957)、
 『イージー・ライダー』(1969)、
 これらの作品の底流に
 映画人たちはどのような
 “赤狩りへの答え”を潜ませていたのか……

 映画論というよりも時代論に近付くこの部分の文章は、
 異様な迫力で読み手に思考を強います。

 なぜ、どうして、こんな泥沼に囚われてしまったのか――

「ひかりとォ、かげはァ~…」
「ぐるるがるるる?」(←訳:いつも表裏一体?)

 映画というモノがあるからこそ生まれた、
 プラスとマイナス、両方の感情と文化。

 映画/映像好きさんに、
 文化史好きな方々にもおすすめの一冊です。
 特に、クリント・イーストウッドさんのファンさんは、ぜひ♪


 
 
コメント
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