テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ とある水辺の ものがたり ~

2023-01-15 21:33:48 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 ゆきひろォさァ~んッ!」

「がるる!ぐるるるがる~!」(←訳:虎です!さみしいよう~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 YMO高橋幸宏さんの訃報に

 肩を落とす日曜日となりました……

 心よりご冥福をお祈りし、

 優しく柔らかい幸宏さんのヴォーカルを思い起こしながら、

 本日の読書タイムは、さあ、こちらの御本を、どうぞ~!

  

 

 

        ―― 橋の上で ――

 

 

 文は湯本香樹実(ゆもと・かずみ)さん、

 絵は酒井駒子(さかい・こまこ)さん、

 2022年9月に発行されました。

 ベストセラー絵本『くまとやまねこ』を創り上げた

 湯本さん&酒井さんのおふたりによる、

 新たな作品は……絵本というよりも、

 橋を舞台にした画文集、の感覚でしょうか。

 

「おおきなァはしィ、でスねッ?」

「ぐるるがるるる?」(←訳:広い川なのかな?)

 

 あちらとこちらをつなぐ、橋。

 

 少年の『ぼく』が立っているのは、

 或る橋の上です。

 

 手すりは鉄のようですし、

 橋脚もおそらくはどっしりしたもので、

 川面も狭くはないようですから、

 きっと大きな橋なのでしょう。

 

 『ぼく』は手すりにもたれ、

 夕方の川を眺めておりましたが……

 

「あれれッ?」

「がるぐる!」(←訳:誰か来た!)

 

 いつのまにか『ぼく』の隣に立っていたのは、

 雪柄のセーターを着たおじさん。

 

 そのセーターの毛糸は、

 何年も何十年も脱いだことがないかのように

 ゴワゴワになっていました。

 

 おじさんは『ぼく』に話しかけてきます。

 

   ―― 川が好き? ――

 

 べつに。

 見てただけ。

 

 そう答えた『ぼく』でしたが。

 

「………むむむゥ?」

「ぐるるるぅ?」(←訳:本当かなぁ?)

 

 べつに。

 別に。別に。別に。

 

 答える『ぼく』のこころの内では、

 語り切れないほどの思いが渦巻いています。

 

 あちらとこちらをつなぐ橋は、

 しかしまた、

 あちらとこちらとを分かつ場所。

 こんなところに、どうして『ぼく』はいるのか。

 これからどこへ行こうとしているのか。

 

 湯本さんの文章と、

 酒井さんの絵が示す『ぼく』の現状は、

 たぶん、そう、たぶん、

 すべてのひとが辿る《道⦆。

 

「おじさんのォ、ことばがァ~…」

「がるるるぐるる!」(←訳:ジワジワ来ます!)

 

 名前も知らない、

 雪柄セーターのおじさん。

 

 橋の上でのささやかな出会いは

 『ぼく』の何かを変えるのか――

 

 酒井さんの驚異的な画力、

 湯本さんの磨き抜かれた文章は、

 長編映画に匹敵する説得力をもって

 私たち読み手を引き込みます。

 絵本好きさんにも映画好きさんにも、

 いえもう、

 全活字マニアさんにおすすめしたい一冊ですよ。

 どうかぜひ、手に取ってみてくださいね。

 

 

コメント
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