「こんにちわッ、テディちゃでス!
ゆきひろォさァ~んッ!」
「がるる!ぐるるるがる~!」(←訳:虎です!さみしいよう~!)
こんにちは、ネーさです。
YMO高橋幸宏さんの訃報に
肩を落とす日曜日となりました……
心よりご冥福をお祈りし、
優しく柔らかい幸宏さんのヴォーカルを思い起こしながら、
本日の読書タイムは、さあ、こちらの御本を、どうぞ~!
―― 橋の上で ――
文は湯本香樹実(ゆもと・かずみ)さん、
絵は酒井駒子(さかい・こまこ)さん、
2022年9月に発行されました。
ベストセラー絵本『くまとやまねこ』を創り上げた
湯本さん&酒井さんのおふたりによる、
新たな作品は……絵本というよりも、
橋を舞台にした画文集、の感覚でしょうか。
「おおきなァはしィ、でスねッ?」
「ぐるるがるるる?」(←訳:広い川なのかな?)
あちらとこちらをつなぐ、橋。
少年の『ぼく』が立っているのは、
或る橋の上です。
手すりは鉄のようですし、
橋脚もおそらくはどっしりしたもので、
川面も狭くはないようですから、
きっと大きな橋なのでしょう。
『ぼく』は手すりにもたれ、
夕方の川を眺めておりましたが……
「あれれッ?」
「がるぐる!」(←訳:誰か来た!)
いつのまにか『ぼく』の隣に立っていたのは、
雪柄のセーターを着たおじさん。
そのセーターの毛糸は、
何年も何十年も脱いだことがないかのように
ゴワゴワになっていました。
おじさんは『ぼく』に話しかけてきます。
―― 川が好き? ――
べつに。
見てただけ。
そう答えた『ぼく』でしたが。
「………むむむゥ?」
「ぐるるるぅ?」(←訳:本当かなぁ?)
べつに。
別に。別に。別に。
答える『ぼく』のこころの内では、
語り切れないほどの思いが渦巻いています。
あちらとこちらをつなぐ橋は、
しかしまた、
あちらとこちらとを分かつ場所。
こんなところに、どうして『ぼく』はいるのか。
これからどこへ行こうとしているのか。
湯本さんの文章と、
酒井さんの絵が示す『ぼく』の現状は、
たぶん、そう、たぶん、
すべてのひとが辿る《道⦆。
「おじさんのォ、ことばがァ~…」
「がるるるぐるる!」(←訳:ジワジワ来ます!)
名前も知らない、
雪柄セーターのおじさん。
橋の上でのささやかな出会いは
『ぼく』の何かを変えるのか――
酒井さんの驚異的な画力、
湯本さんの磨き抜かれた文章は、
長編映画に匹敵する説得力をもって
私たち読み手を引き込みます。
絵本好きさんにも映画好きさんにも、
いえもう、
全活字マニアさんにおすすめしたい一冊ですよ。
どうかぜひ、手に取ってみてくださいね。