団塊の世代のつぶやき

誇れる日本を取り戻そう

製造道

2011年11月28日 | 日本的経営の崩壊

  TPPで非関税障壁が問題になっているが、その非関税障壁として剣道や柔道などと同じように製造にも道がある と言う興味深い話題がありました。前田さんはアメリカの製紙会社に長年勤めてアメリカから日本に紙を売り込むことに より日本の特異性を経験されて、その経験からの興味深い話題を提供されているた方です。

 頂門の一針よ り  2440 号  11・11・22(火

  政治家に何が解るのか  前田 正晶

  TPPで第三の開国だとか:

  我が国は十分に開国されていないのだそうだ。野田総理は「そこをTPP に加盟して切り開いて諸外国と自由に交易するのが狙い」だという。私は違うと思って聞いている。我が国の市場と 実際に取引したことがない民主党の閣僚や議員さん方に、何がお解りだろうかと思う。

 巷間、我が国の関税率はすでに十分に低いと指摘されているではないか。しかし、アメリカ等の外国に非関税障壁な どを取り払えと言われて「そうかな」と考え込んでしまう辺りに、自国の技術水準の高さと商取引の実態を知らない世間 知らずがハッキリと見えてくる。

 「製造道」に分け入って:

 その辺りを先ず迂遠なところから解説する。ご存じの方も多いと思うが我が国には世界最大の売上高を誇る二大印刷 会社がある。その二社は長年「追い付き追い越せ」と激しい首位争い(世界の首位であって、日本のそれではない、念の ため)を展開してきた。その激烈な競争は我が国で愛好される「切磋琢磨」の典型だったと言えるだろうか。

 ある時、その一社の一人の営業部長が言った。「我々は常に抜き、抜き返されて進歩してきた。我が社が新製品を開 発して一歩先んじると、競争相手はそれこそ三日もすればそれに勝る新製品を開発して抜き返してくる。

 そしてうちが更なる新製品を開発して抜き返す。その競争の行き着く先は需要家や最終消費者がそこまで求めていな い、言うなれば現実離れした芸術的な高度な品質を備えた製品を廉価で供給する競争にまで発展してしまう。そこに我々 の進歩があり、世界最高となったのだ。

 従って、我々のその競争を支えてくれるような最新且つ最高品質の原材料の提供を確約してくれるメーカーと組まね ば、相手に勝てないのである。御社は協力してくれるか」と熱意を込めて、鋭い語調で私に問いかけてきたのだった。

 品質競争激甚な我が国の市場:

 言葉を換えれば、我が国には業種によってはこの次元の競争が展開されており、その「製造道」とでも形容したいよ うな技術」を超越した「道」の世界に入っているのである。その様子は恰も野球の世界で「球が止まって見える」という 境地に達するまでバッティングを追求する「野球道」の如くである。

 我が国では製造業を中心に「存在していない実需を目指した製品を造るための原材料や、そのための生産設備を求め ている世界というか境地に達し、それを世界最高水準の質を誇る労働力が支えているのである。

 寛大なアメリカ市場と消費者:

 しかし、アメリカのような先進工業国では、需要家も消費者もそこまでの高品質を求めておらず、品質には極めて寛 大な要求しかしてこなかった。そこで、各製品に求められる最低限の品質を備え、生産や加工業者の生産効率を高める製 品であれば十分だったのである。そこには芸術性も追求されていないし、実在しない需要を満たす品質も求められていな い。

 多くのアメリカの製造業者は、我が国のその芸術性追求の壁にぶつかって挫折し、目標とした売上を達成できずに 「買わない日本が悪い」などと捨て台詞を吐いて撤退していった例が数多く見られた。その壁を乗り越えられるか否かが 日本市場での成功の鍵を握っていたのである。

 日米企業社会の文化の違い:

 しかし、これをアメリカの製造技術水準が低いからだけと捉えては誤りだと思う。すなわち、アメリカには「製造 道」は存在せず、製品にはその目指す最低限の品質が備わり、生産と需要の面での目標とする生産効率が達成されること が最も重要な特質なのだから。これこそが、私が長い間指摘してきた「日米相互の企業社会の文化の違い」なのであ る。…以下略

   「製造道」とは思いも付きませんでした。日本人の生真面目さ遺憾なく発揮されていると言えるのじゃないで しょうか。とは言いながら、私などは常に「マアいいか」の精神で、どちらかと言えば見た目は悪くても機能すれば良い じゃないかの方です。性格もあるが、これも戦後教育の所為かも知れません。
  私のような人間が増えているとしたら「製造道」という非関税障壁も案外なくなるのは近いかもしれません。そ んな性格の私が言うのもなんですが、こうした「道」の精神をもう一度復活させることが日本が本当に生き残れる道 なのかもしれません。
  こんな言葉を言える仕事をしてこなかったと今更ながら反省しきりです。

残念!