◎フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年 日本 90分)
英題 Frankenstein vs. Baragon(Frankenstein vs.Giant Devil Fish)
staff 監督/本多猪四郎 特撮監督/円谷英二
原作/ジェリー・ソウル 脚本/馬淵薫(木村武) 撮影/小泉一
美術/北猛夫 特技美術・バラゴンデザイン/渡辺明 音楽/伊福部昭
cast 高島忠夫 ニック・アダムス 水野久美 土屋嘉男 佐原健二 田崎潤 森今日子(森啓子)
◎特撮とボク、その18
この作品のタイトルは、
実をいうと、
「フランケンシュタインたいちていかいじゅう」ではなく「フランケンシュタインたいバラゴン」だ。
「地底怪獣」と書いて「バラゴン」と読む。
なんでそうなったのかは知らない。
知らないことはたくさんあって、
これって怪獣映画初の日米合作なんだよといわれれば、ああそういえばそうなのかな~とおもった。
なるほど『キングコング対ゴジラ』は東宝が権利金を支払ったんだから合作じゃなかった。
そういう意味でいえば、たしかに記念すべき作品なんだろう。
それと、原題がふたつになってる理由は、
ラストに大蛸との戦いがあるかどうかによるもので、
オリジナルではバラゴンを倒しながらも地割れによって地底へ引きずり込まれいくんだけど、
大蛸が追加された版では湖からいきなり大蛸が現れて湖底へ引きずり込まれる。
だから、フィギュアとかでも大蛸との戦い版があったりするわけで、
なんでそんな場面が追加されたのかたしかな理由はわからないけど、
どうも東宝特撮と大蛸とは縁が深い。
キングコングも大蛸と戦ってるし、本作の続編にも登場するし、テレビにも登場してる。
ありものがあったからってこともあるだろうし、
蛸そのものが絵的に不気味さと気持ち悪さを醸し出すからなのかもしれない。
そもそも大蛸は外国ではクラーケンっていう海魔になったりするわけだから、
蛸と怪物っていう印象は強いのかもしれないね。
ところで、ぼくはどうやら「バ」のつく怪獣が好きらしい。
本作のバラゴン然り、婆羅陀魏山神こと東洋の怪物バラン、南洋の冷凍怪獣バルゴン。
どれも好みで、
この3体が登場する作品の出来栄えもあんがい悪くなかったとおもったりもしてる。
ことに本作と『大怪獣バラン』の音楽は伊福部昭の傑作で、
さらにいえば、
バランのテーマ「婆羅陀魏交響曲合唱付」なんて身悶えするくらい好きだったりする。
で、本作なんだけど、ぼくの場合、どうしてか手塚治虫の『ビッグX』と重なってくる。
ちなみに『ビッグX』が少年ブックに連載されたのは1963~1969年で、
本作の製作は1965年だから、どうやらこの時代はナチスの亡霊がまだ漂っていたんだろう。
どちらの作品も、ナチスが秘密裏に研究していた人体兵器であることには変わりない。
それが、死体をもとにしたフランケンシュタインという人造巨大人間なのか、
あるいは正常な人間に投薬して鋼鉄の肌をもつ巨大人間としてしまうのか、
という違いがあるくらいなもので、
ともかく、
ドイツから日本へと心臓あるいは製造方法が伝えられっていう根本的な設定はよく似てる。
人間の発想ってのは、その時代が生み出すことがままある。
もともとフランケンシュタインは、1818年に英国のメアリ・シェリーが著した小説の題名で、
そこに登場するヴィクター・フランケンシュタインなる青年の創り出した怪物の名前じゃない。
この怪物は名前はなく、単なる死体を繋ぎ合わせて意識をもたされた怪物でしかない。
ところが1931年に映画になって、それが伝説的な映画になっちゃったりしたもんだから、
後世、死体を繋ぎ合わせた人造人間をフランケンシュタインっていうようになっちゃった。
でまあ、この怪物は『鉄人28号』でも登場したりして、
当時子供だったぼくらにとってとっても身近な存在になってた。
そんなこんなで、ぼくにとってはかなり印象的な映画なわけだけど、
実はかなりよくできてる。
設定が設定だけになかなか劇場では掛からないけど、
知性を持たされてしまっただけでなく、理性もまた芽生えてゆく中で、
母性を求める哀れさと自分でも理解できない性衝動とが漂い、
ある意味、異色の怪獣映画になってるんだよね。
なかなか、こういう映画はないぜ。