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マタンゴ

2014年08月22日 12時10分47秒 | 邦画1961~1970年

 ◎マタンゴ(1963年 日本 89分)

 英題 MATANGO、The Fungus of Terror、Curse of the Mushroom People

 staff 原作/ウイリアム・ホープ・ホジスン『闇の声』

    監督/本多猪四郎 特技監督/円谷英二

    原案/星新一、福島正実 脚本/馬淵薫(木村武) 撮影/小泉一 

    美術/育野重一 造型デザイン/小松崎茂 音楽/別宮貞雄

 cast 久保明 水野久美 小泉博 佐原健二 太刀川寛 土屋嘉男 八代美紀 天本英世

 

 ◎特撮とボク、その33

 今観ても、目をはなせないくらいおもしろい。

 この作品はなかなか観られる機会がなくて、大学に入ってからようやく名画座で観た。

 実をいうと最初に観たときは、それほど衝撃的じゃなかった。

 キノコのお化けはなんとなくちゃちいし、セットもセット然としてるし、

 とくに大学生ってやつはしゃらくさくて、いろいろと文句をつけたがるもんだし。

 てなわけで、斜に構えてたぼくはあまり認めようとはおもってなかった。

 ところが、どういうわけか、徐々に「これ、すごいんじゃない?」とおもいはじめた。

 なにがきっかけだったのか今となってはおぼえていないんだけど、

 いつのまにやら、

 本多猪四郎作品では『ゴジラ』と並んで凄いんじゃないかとおもうようになった。

 原作は読んだことがないからわからないんだけど、

 どことなく洋風な感じが残ってる気がするのは勘違いなんだろか?

 当時の東宝はやけにバタ臭くて、東宝映画の中だけがふしぎな洋風ニッポンだったりしたから、

 この映画が妙に外国風味なのはそういう伝統のせいかとおもってたんだけど、

 もしかしたら、原作の味がかなり残ってたのかもしれないね。

 伊豆大島と八丈島のロケが海岸や森の一部だからなおさら内地とはちがった雰囲気で、

 小泉一のカメラが上手に霧をとらえてたのは大きいだろう。

 それと、特撮っていうより造形の勝利だとおもったのは、ポリウレタンを使ったキノコだ。

 ポリウレタンは発泡ウレタンともいうんだけど、

 建材から衣料品、塗料、自動車製材とかいろいろ使われる。

 でも、

 これが合成されてゆく際の拡張力を利用してキノコの育っていくところを撮ろうとしたのが、

 なんといってもいちばん凄い。

 いや、膨張していく際の質感は抜群で、実写のちからはこういうところにあるんだよね。

 CGじゃダメなんだ。

 ところで、

 マタンゴなんていうちょっと厭らしげな名前は誰がつけたんだろうっておもってたんだけど、

 これ、実はモデルがある。

 もともとは土栗とか土柿とかっていわれるキノコなんだけど、

 福島県あたりの方言ではマメダンゴとかママダンゴとかっていわれるらしい。

 ちょっと変わった形をしてる。

 真ん中に人間の頭のような胞子の袋があって、

 それを包み込んでた外皮が膨れ上がって星状に裂け、まるで蛸の手足のように広がっていく。

 小さな宇宙人みたいな感じだ。

 なるほど、こいつがマタンゴか~って納得できる。

 いつか、しとしとと霧雨にけぶる梅雨の時期に、味噌汁にいれてやろうとおもってるんだけど、

 福島県まで行かないと手に入らないんだろか?

 それとも福島県の物産館に出かければ、マタンゴの佃煮とかって販売されてたりするんだろか?

 ま、それはともかく、

 そういえば、マタンゴの笑い声なんだけど、

 最初に観たとき、

「バルタン星人じゃんか」

 とおもったもんだ。

 けど、実はこれ、順番からいえばマタンゴ→ケムール人→バルタン星人になるんだよね。

 そりゃそうで、ぼくが単に映画を後から観ただけの話だ。

 あらためて「へ~」とおもったのは、別宮貞雄の音楽で、

 最初はいかにも当時のバンド曲だな~ってな感じで軽く捉えてたんだけど、

 いやいや、どうして、物語が進行していくに従って、なんとなく凄味を帯びてくる。

 うまいわ~。

 うまいといえば、役者もまたがんばってる。

 小泉博の抑えた演技もいいし、歯の抜けた佐原健二もいいし、小心者の土屋嘉男もまた味がある。

 けど、白眉は水野久美で、ふとしたときに『アナタハン』をおもいだした。

 ま、男好きするのは、八代美紀のしとやかさかもしれないけどね。

 ともあれ、総じて、おもしろい出来栄えでした。

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