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ミスティック・リバー

2015年09月01日 21時47分03秒 | 洋画2003年

 ◎ミスティック・リバー(2003年 アメリカ 138分)

 原題 Mystic River

 監督 クリント・イーストウッド

 

 ◎重油の河のような

 とにかく重くて重くて、それでも何年かに一度は観たくなる作品のひとつであるのはほぼ間違いない。

 あらすじやら分析やらは無数ある批評や雑評に譲ることにして、役者たちの好演とイーストウッドの冷徹で細心な演出を褒めれば、もはやなにもいうことはない。ただ、文明社会の中で、少年愛あるいは幼児虐待などといった異質な事象はいったいいつから現れてきたんだろうと、ふとおもった。

 おもいつつ、自分のことに置き換えてちょっと考えてみた。

 仲の好い幼馴染はいったい誰だったんだろうってまずおもった。主人公たちのように毎日、ホッケーしていたような友達っていたっけ?と。たしかに、すぐ近くの神社の境内で、ぼくは毎日のように草野球をしていた。三角ベースのソフトボールといった方がより正確だけど、そうじゃないときはやはり近所の子と秘密基地を作ったりしていた。で、今はといえば、誰とも会っていない。少なくとも、高校に入るときにはまるで知らない仲になってた。幼馴染っていうのは、そういう記憶の中にいるのかもしれない。もっとも、小学校の同級生ともなればちょっと違うけどね。ある日、誘拐され、暴行虐待されたりしたら、その思い出はずっと残るかもしれない。

 いずれにしても、そんな幼馴染が、やがて、ひとつの事件に絡んだ犯罪者と刑事と容疑者になるってのもかなり強引な設定ではあるものの、小さな田舎町だったら、もしかしたらあるかもしれないなあとおもったりもした。自分の娘が殺されて、その犯人が自分の幼馴染かもしれないとおもったら、ぼくはどうするだろう?いくらもうひとりの幼馴染が刑事になっていたとしても、そいつには任しておかずに、やっぱり自分で殺すだろうなあ。

 ところがそれが間違ってたらどうする?ってのがこの映画の凄いところで、実は、娘の友達の弟に殺されてるわけだけど、そもそもその友達の父親ってのが、自分が過去に殺してしまった人間だったりするわけで、これはなんとも因縁深い。さらには容疑者だった幼馴染は、虐待されかけていた少年を救け、その犯人が過去に自分を監禁暴行した人間だと知るや、みずからの手で復讐殺害してしまったために、その血塗られた手のせいで奥さんに疑われ、その奥さんの告げ口によって不幸な間違い殺人が引き起こされるなんてのは、まさしく因果が巡ってる。そんな幼馴染を間違って殺してしまったりしたら、ぼくはどうするだろう?やっぱり、以前に犯した殺人のように死体を川に流して知らんぷりしようとするだろうか?

 できないなあ、それは。

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