◇セインツ-約束の果て-(2013年 アメリカ 98分)
原題 Ain't Them Bodies Saints
監督・脚本 デヴィッド・ロウリー
◇変形版『俺たちに明日はない』
といえばいいのか、ともかく『俺たちに明日はない』のボニーとクライドが生き残ってて、しかもふたりの間に娘が出来てて、捕まったのはボニーだけで、その4年後、ボニーが脱獄して娘に会いに帰ってきちゃうことで悲劇が生まれちゃうっていう物語だ。
だから、続編にはならないんだけど、心情的にはやっぱり続編としかおもえない。ただし、詩情たっぷりの。
こういう詩的な作品というのは陶酔しやすいんだろうけど、そもそも、ケイシー・アフレックとルーニー・マーラは罪を犯してテキサスの小屋に立て籠もってたわけで、しかもケイシー・アフレックに至っては昔の仲間たちからちょろまかした金を隠しててそれでもって嫁と娘ともども暮らしていこうとかおもってたりして、つまりはかなりどうしようもない奴なわけで、これじゃあ、ふたりを育てたとかっていうキース・キャラダインも「てめ、いいかげんにしろよ」とかって怒るのも無理はないし、悲劇に向かって突っ走るしかなくなるのも当然といえば当然の帰結だ。
唯一の救いは、ほんとはルーニー・マーラ自分を撃ったということを知らずに横恋慕し、かつせっせと通い詰めてあれこれと世話を焼いているベン・フォスターなんだけど、こういう人間というのはどうしても好い人なわけでそれ以上の存在にはならない。ほんと、女というやつは困ったもので、世の東西を問わず、たとえそいつが自分のことを悲劇に落としてしまいそうでも、ちょっぴり影のある甘えん坊の不良が好きなんだよね。
まあ、筋立てはともかく、絵は綺麗だ。全体的に雰囲気もまとまってて、そこはかとないうら寂しさが好い。
けど、なんていうのか、出てくる人間みんな似たような顔してて、ぎゅっと真ん中にしわを寄せたような、どうにもおもいつめた表情ばっかりしているのは、ちょっとね。