◇ミケランジェロ・プロジェクト(2014年 アメリカ 118分)
原題 The Monuments Men
監督 ジョージ・クルーニー
◇小説『天国の門』の挿話
PHP研究所発行の小説『天国の門』は、ナチスから守り抜かれた松方コレクションが西洋美術館に収められるまでの物語だけれども、その中途、ナチ略奪美術品捜索部隊のMFAAがアルトアウスゼーにある岩塩坑へたどり着くまでの挿話が出てくる。だから、最初、この映画が制作されるのを知ったときには「おお!ついに、天国の門がハリウッドで映画化か!」と喜んだものの、ぬかよろこびだった。
まあ、モニュメンツ・メンの物語化を日米ともに考えていたってことは偶然とはいえ嬉しいものだ。
映画の中で、ロダンの『カレーの市民』もノイシュヴァンシュタイン城で発見されたし、なんとなく全編にわたって『天国の門』が醸し出されてる感じはあったかも。ま、多少なりともだけど、ね。ただ、MFAAは松方コレクションを敵国財産として没収してしまったという、とんでもないこともしでかしてるのを、ぼくたちとしてはちゃんと覚えておきたいけどさ。
ちなみに、クルーニーの演出はあんまり上手じゃない。脚本にも名を連ねてるけど、散漫な印象はぬぐえない。そもそも2ダースの人員編成だった捜索部隊がまるで『7人の侍』みたいに集められて、さらにはビル・マーレイとボブ・バラバンのコンビは『隠し砦の三悪人』みたいで、なんだかどうも黒澤的な匂いまでする始末で、いちばん問題なのは部隊の面々がいろいろと散ってそれぞれに探索するんだけど、このあたりの展開がわかりにくいのと、おのおのの場面に明らかに余分なものがあるということだ。マット・デイモンが坑道で地雷を踏むくだりは、まじ、いらん。コメディっぽいところも緊張感を削ぐだけで、いらん。たしかに大作であるのはまちがいないし、それなりのモブシーンもあったりするんだけど、それらがいかにもお金足りません的な感じに見えてしまうのは、少々つらい。
これはやっぱり脚本に問題があるとおもわれ、ああ、どうして相談してくれなかったんだろうとおもったりするんだけど、ぼくが身悶えしたところでジョージ・クルーニーの友達でもないから仕方ないんだけどさ。そこへもって、この邦題だ。つらいところだけど、いただけない。ミケランジェロは、ブルージュのマドンナ像の作者っていうだけで、作品の主題とはほとんど関係ないわけだから、いくらなんでも、もうちょっとひねってほしかったな~と。