◇ブルージャスミン(2013年 アメリカ 98分)
原題 Blue Jasmine
監督 ウディ・アレン
◇アレン版『欲望という名の電車』
プライドだの虚飾だのといったものは、たぶん、人間ならば誰でも持ってるものなんだろう。
虚栄心はとってもつまらないもので、たとえば、この映画の主人公ケイト・ブランシェットは詐欺師の夫が逮捕されて自殺したことで虚飾の塊のようなセレブから貧乏のどん底に落ちちゃうわけだけれど、もしも、彼女が虚栄心をさらりと棄てていれば人生はたぶん好い方向に向いたんじゃないかしらっていうのがこの映画の主題だ。
どれだけシャネルのスーツやエルメスのバーキンとかで自分を飾ったところで、教養を身に着けようともせずにただ贅沢三昧をしていれば底の浅い女でしかないのは当たり前なんだけど、ここでおもしろいのは下流の連中は彼女の本質を一瞬で見抜いちゃうような感じがあるのに対し、上流の連中は案外だまくらかされちゃうところだ。だから、虚栄心と欲望をあおって儲けるという詐欺師の夫にどいつもこいつも騙されてきたってことで、所詮、お金のあるなしは人間の本質とはなんの関係もなかったりする。
ウディ・アレンはケイト・ブランシェットっていうとっても頭の良い女優さんを使って、もちろんこの作品でびっくりするほど沢山の主演女優賞を獲ってるけど、虚栄に塗れた痛々しい人間の骨頂を描いているわけだけれど、なにもケイト・ブランシェットが女だからって、男のぼくたちも変わらない。見栄えがどれだけよくても、それが底の浅いかっこつけだったりすると、結局、まわりはこう判断する。
人間としてどうしようもないやつだな、と。
それを、ウディ・アレンは、飛行機の中の会話、義理の妹の友達連中とのやりとり、歯科医のセクハラ、エリート官僚とのうわっつらだけの恋愛などをなんとも痛々しく描くことで、君たちも気をつけなさいよ、と観客にいってるんだよね。つまり、ケイト・ブランシェットと自分とはまったく関係ないから、とかいってけらけら笑ってられるような作品じゃないような気がするんだけどな~。