心の扉 神戸カウンセリング花時計

心理療法や催眠療法、ストレス解消や悩み等メンタルに関するもの、そして日常の出来事を自由気ままに掲載します。

許されざる者

2013年09月23日 | 心理カウンセリング




「体に障害を持った息子のために

今まで頑張って来たのですが、

これからも頑張り続けることができるように

もっと気力を引き出してもらいたいのです。」



相談に訪れた女性は、

疲れ果てた表情でそう言いました。



その目的を達成するための方法を検討し、

心理療法でのアプローチも

催眠でのアプローチもやれることはやれます。



しかし、その女性の表情と言葉の調子から

それとは別のことを訴えていると思われたので

それとなく探りを入れてみることにしました。



女性は、妊娠中に体調を崩したので

医師と相談し、

お腹の子供には影響がないことを確認し

薬を服用したのですが、

子供は障害を持って生まれたとのことでした。



「○○さん。あなたは、

そのことで罪の意識を持ち

今日までの何年もの間、

自分を責め続けているのではないでしょうか。

私にはそう見えるのですが。。。」



私が、そう言うと、

その女性から涙が溢れました。



女性が落ち着くのを待ってから

気力を引き出すことに取り組むより先に

自分を責め続けることを止めることの

大切さについて話し合ってみました。



しかし、案の定

「でも。」「しかし」によって

それをことごとく跳ね返します。



それもそのはずで、

息子さんが障害を持って生まれきたことは

自分に責任があると信じ込んだその人にとっては、

自分を許すことは絶対悪なのです。



ゆえに言葉や態度に表さなくとも

心の中で自分を責め続けることで

どんなに苦しくとも辛くとも

それによって最後のところで

自分が絶対悪の人間となることを防ぎ

自分を保つための唯一の方法なのです。



ですから、自分を責め続けているのを止めたいなんて

自分から口が裂けても言えるものではありませんし、

そんな気持ちを自分が持つことすら

許されるものではないと

無意識に押し込めたとしても

何ら不思議ではありません。



しかし、そのままでは、

自分の体が動かなくなるまで

自分の精神がボロボになるまで

自分を責め続けることになるかもしれません。



その女性を、罪の意識から開放し、

責め続けることを止めさせることが出来るのは

女性自身ではありません。

ご主人でもありません。

もちろん、施療者でもありません。



それを止めさせることが出来るのは、

ただひとり、息子さんだけです。



しかし、その息子さんはまだ3歳と幼く

そのような事を母に話せる訳もありませんから

あることを試みることにしました。



私「え~とですね。

ちょっと協力してもらいたい事があるのですが

いいでしょうか。」



女性「どんなことでしょうか。」



私「これから私が目眩を起こして

あなたの上に倒れ込もうと思うのですが

いいでしょうか。

かなり重いとは思いますが。」



女性「ええ、はい、構いませんが。」



困惑しながら許可をくれたので

私は、「ああ、目眩が。」と

言いながら女性の上に倒れ込み

「申し訳ありません。重いでしょう。」

「苦しい思いをさせて申し訳ありません。」

と謝罪をします。



事前に許可をもらっていたので

女性も「いえ、構いません。」

と言うしかありません。



私は、その後も倒れ込んだまま

謝罪を続けます。



私の身長は、高校の時も、その頃も

今も180センチ、

その頃は、空手で鍛えた体に脂肪を蓄えていましたから

かなりの体重がのしかかっていたので

相当苦しかったと思います。



女性「ちょっと苦しいのでもう体をどけて欲しい。」



私「苦しい思いをさせてしまったことを謝罪します。

許しえもらえますか。」と

体を起こさずに謝罪を繰り返します。



女性「本当に重いので体を起こして欲しい。」

と本気の言葉が発せられた時に合わせて

「今、あなたが私に望むのは、私の謝罪ですか、

それとも、私が体を起こすことでしょうか。」



女性「起こしてくださいいいい。」



私は、体を起こしてから間髪いれずに

「あなたの息子さんも、

今のあなたの気持ちと同じだと思いませんか。

息子さんが、いつまでも、何年も

謝罪し続けてもらうことを求めていると本当に思いますか。

そして、今の息子さんが今求めていることは何だと思いますか。

息子さんにとって今一番必要なことはなんだと思いますか。」



次回の施療の時に、その答えを聞かせて欲しいのです。



その後、2週間経過しても女性からの連絡はなく

ちょっと過激な試みだったかと反省もしていたところに

女性から感謝のメールが届きました。



そのメールは、

自分が目をそらしていた

自分の気持ちに向き合えたこと。

自分を責め続けることは

息子のためにも助けにもならないこと。



そう思ったら

自分を責めることを止めることが出来たこと。

そして、上手く言えないけれども

心の様子が違っていること。

気力が出てきて元気になったことを

知らせてくれていました。



催眠療法&心理療法 神戸ストレスカウンセリング・ルーム花時計


投票ボタン

blogram投票ボタン