仁和寺山門前からバスで意気揚々と出発したものの
途中、路線の乗り換えに手間取ったことで
目的地の最寄りのバス停に
約40分程度で到着するはずが
到着予定時間を随分ズレてしまいました。
後冷泉天皇火葬塚
火葬塚の辺りを行ったり来たり、
正伝寺の最寄のバス停『神光院前』に
到着した時刻は、参拝時間終了時刻の
約80分前となってしまったので
神光院前バス停から続く
軽い坂道を蒸し暑さと息苦しさに耐えて
必死こいて早歩き。
スムーズな呼吸を邪魔するマスクを投げ捨て、
苦しさの元凶の肺と心臓を取り出して肩に担ぎ上げて
もっと楽に速く歩きたかった。
吉祥山 正伝護国禅寺 山門
山門に到着してひと安心かと思ったら
これがまたそうではなかった。
正伝寺の参拝受付場所まで
長い緩やかな坂道の参道が続きます。
初めて訪れる場所を落ち着いて観賞するには
敷地規模が広くない正伝寺のような場合でも
最低でも1時間欲しいんですよね。
でなければ近所の寄り合いに
ちょっと顔だけ出したなんてのと同じで
ただ訪れただけになってしまいます。
正伝寺 参道門
へっここが参道門?ここからが参道?
今までの道は参道じゃない?
参拝可能時間が刻々と削られていき、
もう無理だと気持ちが萎える度に
参道沿いの花弁を摘んでは
行く。引き返す。行く。引き返す。
花占いに自分の運命を預けること数回。
ようやく参道坂道の先に
正伝寺の庫裡が見えてきました。
正伝寺 庫裡
正伝寺(しょうでんじ)は、
京都市北区西賀茂にある臨済宗南禅寺派のお寺で、
山号は吉祥山。寺号は正伝護国禅寺。
1268年に烏丸今出川に創建され
1282年に現在の地に移設。
京都の北深くにあるこの正伝寺も
応仁の乱の兵火に見舞われているから驚きです。
正伝寺の見所は、大きく分けて3つ。
①伏見桃山城本丸御殿の一つが移築された本堂。
②その本堂廊下の天井板に用いられている血天井の板。
③本堂前の『獅子の児渡しの庭』。
参拝受付を済ました後、
受付所の前に用意されていた椅子に腰を下ろして
火照った体と呼吸を整えます。
正伝寺 血天井
血天井は、
激戦となった伏見城の廊下に流れ落ちた
鳥居元忠らの血痕が残された床板を
寺院に移し供養した後に
足で踏む床板にしては供養にならないとして
天井板にして供養したものです。
供養してから天井板にするより
焼いた灰を壺に入れて供養塔に収めた方が
供養になるような気もしますが………。
何はともあれ
伏見桃山城の床板を用いた血天井は、
手跡が残るここ正伝寺以外にも、
以前、拝観させて頂いた足跡が残る源光庵。
三千院近くの宝泉院。
三十三間堂近くの養源院で観ることが出来ます。
正伝寺 本堂【重要文化財】
正伝寺庭園
正伝寺庭園は、
京都市から名勝の指定を受けていて
京都で庭園を巡っていると何度も名前を眼にする
小堀遠州によるものと伝えられています。
正伝寺庭園は、
この前拝観させて頂いた圓通寺と同じく
遠くの望む比叡山を借景にしています。
写真で見る限りあまり興味が湧かなかった
圓通寺の庭園を実際に体験したら
印象がまるで違った。
前回、圓通寺庭園を訪れたことで
同じ比叡山を借景にしている
正伝寺庭園にも興味を持ったんですよね。
もしかしてだけど、
比叡山をただ借景にしているのではなくて
比叡山を蓬莱山に見立てた
壮大な庭園構想となっているのかも。
庭園に植えられたサツキの木は、
向かって左から3つ、5つ、7つと
並んでいる『七五三式の庭』で、
別名「獅子の児渡しの庭園」とも呼ばれています。
「獅子の児渡しの庭園」と呼ばれる
南禅寺の方丈庭園や龍安寺の石庭等では、
石を配置して島を見立てていました。
私達の世代では中性的魅力で世界的に人気があり
日本のバンドのファッションにも影響を与えた
英国のロック歌手デヴィッド・ボウイが
日本のCMに起用された際に
本人が正伝寺での撮影を希望しました。
お忍びで度々京都を訪れていたデヴィッド・ボウイが
京都の数ある名園の中から選んだのが正伝寺庭園。
撮影時に正伝寺の白砂の上で
デヴィッド・ボウイは涙したそうです。
その涙の理由を誰も知りません。
正伝寺 勅使門
法伝寺の庭園も圓通寺の庭園と同じく
とてもシンプルな庭園ではあるのですが
借景の比叡山の景観が合わさることで
非常に魅力的な庭園となっています。
正伝寺庭園 七のサツキ
正伝寺庭園 五のサツキ
正伝寺庭園 三のサツキ
正伝寺庭園に口紅を差しているかのような
本堂廊下に敷かれた緋毛氈(ひもうせん)。
正伝寺庭園に流れるBGMは、
自然が奏でる音だけ。
慌ただしい拝観となりましたが
それでも拝観終了前の10分前後の時間は、
正伝寺方丈の縁側に腰を下ろし、
ただぼんやりと心静かに正伝寺庭園を
眺めて過ごす素晴らしい時間を持てました。
庭園正面の空には、ぽっかりと浮かんだ小さな雲。
あの雲の上からきっとデヴィッド・ボウイが
見てくれていたかもね。
正伝寺 鐘楼
正伝寺へと向かう際には気が付かず
帰りに参道から少し入った所にある鐘楼を発見。
再びバスに揺られて出町柳。
鴨川デルタ
主役級の場所が参拝時間の都合で
先送りになるのは日を改めて訪れる気になるので
さほど痛くないのですが
主役近くの脇役を巡り切れなかった場合は、
なかなか足が向かずに拝観が遠ざかるんですよね。
今回もそんな場所が一ヶ所。
皆様 今回も私の趣味である
名所巡りにお付き合い下さり
ありがとうございました。
次回の名所巡りの際も私だけではなく
皆様にも少しでも楽しんで頂いたり
皆様の名所巡りの一助になれば嬉しく思います。