催眠のベタな技法の一つに次のようなものがあります。
被験者に一つの暗示を与えようとする時に、
例えば、その暗示が「リラックス。」だとします。
これをストレートに誘導すると、
「あなたは、リラックスします。」となります。
被験者を充分に催眠状態に誘導出来ていれば、
まあ、このやり方でも良いと言えば良いのですが、
私達と言うか、私の場合は、
一つの方向性へと導く働きかけを行う時には、
暗示をしっかりと心に届けるために、
単に、「あなたは、リラックスします。」とはやらずに、
ちょっとした働きかけをすることが普通です。
それを行うか行わないかは、
その時の被験者の様子によって違うのですが、
その言葉の前後に何らかの装飾を加えたり、
その言葉の持つイメージを想起してもらったり、
過去の体験を引き出せるように援助して、
その言葉に勢いと強さを持たせます。
それともう一つ、
本人の心の抵抗が出来るだけ起きないように
配慮します。
「あなたはリラックスします。」と言われて、
その被験者の心が「そうなんだ。」と受けてくれればいいんですが、
「えっ本当かなあ。」とか「ならなかったらどうしよう。」とか、
「えっ私には無理な気がする。」
とかの気持ちが被験者に起きて
言葉の受け渡しがスムーズにいかないと、
その分、暗示の強さが弱くなる可能性があります。
これを避ける方法は沢山あるのですが、
その方法の一つが、
相手に届けたい言葉は誘導者ではなく
相手に言ってもらうようにする方法です。
例えば、
「あなたは、リラックスします。」を3回ほど繰り返した後に、
4回目は、「あなたは、リラ。。。します。」
5回目は、「あなたは、。。。。します。」とやります。
誘導者が。。。。とあえて言葉を言わないことで、
欠落した不十分な状態となります。
その不十分で不安定な感じを嫌い、
欠落した部分を、被験者自身が
心の中で言葉を埋めてくれます。
これで誘導者が伝えたい言葉を、
被験者自身にに言ってもらうことで
抵抗が起きる危険性を排除することが出来ます。
カウンセリングにおける進め方としての、
カウンセラーの言いたいことはクライアントに言ってもらうように、
クライアントが言いたいことはカウンセラーが言う。
という考え方と同じです。
前回のブログの、
私はあなたを大切に思っていると言う
メッセージを届ける事に関しても、
直接的に、私は大切に思っていると言うよりも、
そのメインの部分を伝えたい相手自身に
心で言葉にしてもらう事が出来ることで、
強く働きかけが出来ます。
そして、ただ「私はあなたを大切に思っている。」と言ったとしても、
行動が伴わない言葉は薄ペラで力がありません。
どのような態度をとっているかが大切ですから、
前回のブログの働きかけによって示すことが出来ます。
だからと言って、
全く直接的な言葉を言わないでいると言うのも問題で、
時には、「愛している。」とか「大切だよ。」とか、
直接的なアプローチもすることも
お忘れないようにしなければなりません。
催眠療法&心理療法 神戸ストレスカウンセリング・ルーム花時計