日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

メディアと言葉

2011-10-07 19:41:39 | 徒然
appleのジョブズ氏の死去から丸1日が過ぎた。
世界中の「アップルストア」では、献花とともにリンゴを献果する方も多い様だ。

ジョブズ氏の有名なスピーチに、スタンフォード大の卒業式での祝辞がある。
ジョブズ氏はこのスピーチの最後に「Stay Hungry,Stay Foolish」という言葉を述べている。
日本語訳では「ハングリーであれ、愚か者であれ」と訳されている場合が多い様だ。
もちろん「ハングリー=空腹」では無い、と言うコトはよくおわかりのはずだ。
そして「愚か者=馬鹿者」では無いと言うコトも。
それは「自分の人生に対して夢を諦めること無く、貪欲に求め、自分自身に愚直であれ」と訳されるのでは無いのか?と、感じたのだった。
確かに「Hungry」や「Foolish」という言葉を使っているが、そのニュアンスは英語よりも日本語の方が伝わり易いのでは?と感じたのだった。

ただ残念ながら、新聞などで読むジョブズ氏の言葉は、そのニュアンスというものが伝わってこない。
映像があれば、そのニュアンスと言うモノが伝わり易いし、スピーチ全体を通して聞けばジョブズ氏の言わんとしているコトも伝わってくる。
それが伝わってこないのが、新聞などの活字メディアの限界というコトなのだろうか?と、考えてしまったのだ。

その様なコトを思っていたら、思い出したコトがある。
それは、現在のソフトバンクホークスの本拠地となっている「Yahooドーム」を造った、ダイエーの故中内功さんの言葉だ。
お若い方はご存じ無いかも知れないが、現在の「Yahooドーム」はダイエーの中内さんが相当な思いをもって造ったモノだった。
完成したときのメディア向けの発表会は、とても華々しいモノだったと記憶している。

その発表会後、中内さんはこんなコトを漏らしている。
それは開閉式屋根のドームについて、記者さんたちが質問した内容が余りにも現実過ぎるで、がっかりした、と言うコトだった。
「開閉時間は、どのくらいでどのくらいの費用がかかるのか?」という様な質問ばかりで、「このドームで、どんな野球が繰り広げられると良いですか?」と言うような「夢のある」質問もなければ、「ドームがある福岡がどんな街に変わるのか」という様な「ワクワクさせるコトを引き出す」様な質問がなかったと残念がっていたのだった。

その後、ダイエーは経営不振に陥り、ホークスはソフトバンクにドームはYahooへと経営などが移っていったのは、ご存じの通りだが、もしかしたら日本の「ワクワクやドキドキ」と言ったある種の希望感のようなモノを壊しているのはメディアなのではないだろうか?と、感じたのだ。

事実を伝えるコトはとても大切なメディアの仕事ではあるが、その中に希望や夢と言ったモノも伝えるのもメディアなのでは?
ジョブズ氏の言葉は、今閉塞感に苛まれている若者たちへのエールとしてきちんと伝えてほしい・・・そう思った今日の新聞だったのだ。