日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「創薬」と患者

2014-09-22 21:18:04 | 徒然

先日「iPS細胞を活用した、創薬」について、各新聞に掲載されていた。
この記事を読んだとき思い浮かんだことが、「治験」についてだった。
多くの人にとって「治験」と言うのは、「実験材料になる」というイメージがあると思う。
その理由は「まだ安全性が確認出来ていない薬を使う」という、リスクがあるからだ。
「安全性」だけではなく「効果」という点でも、不確定な薬を使うコトへのある種の抵抗感があるのは、当然かも知れない。

反面、がんなどの病気を経験した患者さんにとって「治験」というのは、「命を繋ぐチャンス」だと捉えるケースも少なくない。
と言うのも、抗がん剤による治療には「耐性」といって、ある時期からそれまで使ってきた抗がん剤の効果が薄れる、と言うことが起きるからだ。
すべての患者さんに「耐性」が起きるわけでは無いが、患者さんの中には「耐性が起きる不安」を抱えて治療をしている方も少なく無い。
「耐性」が起きた患者さんにとって、「治験」というのは新しい治療薬を試すコトができる大きなチャンスとなるのだ。

そして、私の様に早期の患者であっても「治験参加」に抵抗感が無いケースがある。
実際、私の様な早期の患者では「参加できる治験」そのものが無く、主治医に話しをしても「該当する治験は無いから」で、終わってしまう。
それが判っていても何故「治験参加」と言うことを話すのか?というと、おそらく「自分の経験を社会に活かしたい」という気持ちがあるからだと思う。
これは私だけなのかも知れないのだが、私の周囲のがん治療体験をしてきた方の中でも「がんと向き合い、受け入れルことができた患者」さんの多くが、「治験に抵抗感がない」という傾向がある様に思う。
話を聞くとやはり「自分ががんという病気になった意味や治療の経験を社会に還元したい」という、ある種の「自己実現」的な気持ちがあるのだ。マーケティングなどで言われる「マズローの欲求の5段階」の中の「自己実現」の欲求に近いかも知れない。

そんな患者にとって、実際の「治験」に参加出来なくても、「自分のiPS細胞」を使って「創薬研究のためになる」となれば、参加される患者さんも多いと思う。
何故なら、今のがん治療は「遺伝子タイプ別の治療」が主流になってきており、「遺伝子タイプを知る」為には多くのサンプルが必要となるからだ。
実際の患者から得られた「遺伝子サンプル」を基に、創薬研究が進めば「治験」に進むときには今よりも患者リスクの少ない治験が行われる可能性が高くなる。
「リスクの少ない治験」の実施は、新薬の承認のスピードアップにもつながる。

この様な傾向は、「がん」と言う病気だけに限らないだろう。
むしろ「難病」と言われる病気の創薬には、大きな力になると思う。
拙ブログに医療者の方が来て下さるとは余り思えないが、「治験」に対して積極的な患者も多くいて、早い段階で患者と一緒になって創薬を作る体制作りが、重要なのでは?と言う気がしている。